月面及び木星岩石帯(草星)遺跡をのこした超古代文明を第一期、惑星地球上の失なわれた大陸の文明を第二期とする。
 
 二度の破局をのりこえ、海底に没した大陸を捨てて惑星全土に避難して散った人類が、地域によっては一旦、完全に原始レベルへ退行したところから、それぞれの集落ごとに独自に、てんでに再興したものを、無理矢理相互間で流通させ、あまつさえ武力づくで「統合」しようとさえし  ついには失敗して三度目の滅びへの道をたどった。それが惑星地球における第三期文明であり、その後遺症は第四期めの千二百年を経た現在まで続いている。
 
 三期文明の特徴として最大のものは、言語・信教・価値観などの極端なまでの不統一である。この原因は、二期文明滅亡の際に緊急避難として居住不適地にまで多くの集団が送りこまれてしまい、そこでの生存を試みねばならなかったこと、かつ、過酷な環境と労働によって成人が寿命を全うできず、文化や技能の伝承が困難あるいは不可能だったこと、くわえて、磁界の混乱と疑似氷河期の到来によって集団相互の交流がまったく断たれていたこと、などである。数万年に及ぶ惑星規模文明の消失期を経て、人類が再び行動半径を広げはじめた時、かつては単一ではないまでも共通の言語を持ち、ひとつの大陸上に暮らす遠い親戚同士だった彼らは、互いに相手を非・人類と考え、異なる文化形態を野蛮と見なし、居留地間に人為的な境界線を設定して区分を明確にする方法を発明した。一方で、現存人類の繁殖力に圧迫された旧来の土着の亜人族類は次第に衰退し、消滅していった。
 
 局地的ながらもある程度の技術水準と行政機能を持つ都市及び国家が複数成立すると、彼らは異なる文明間で最低限の意志を通じさせる為の手段を開発し、商業活動を行なうようになった。経済的な利害関係はやがて外交もしくは軍事力による相互の合併吸収をまねき、小国・小集落は次第に整理統合され、あるいは連立して、より広域多人数の国家へと成長する途をたどった。
 侵略・征服・逃亡・移住・同盟・統合・分裂・改宗・改革、等といった歴史上の必然をありとあらゆる局面で短期的かつ小規模に繰り返し続けた各大陸文明のうち、いち早く他の大陸へ侵攻する技術と経済力を確立した欧州大陸文化圏が、他文化圏に侵入・征服して惑星規模での一応の覇権を握るに至ったが、その段階においてさえ、欧州文化圏ひとつの中に十を超える主権国家と、それ以上の言語・民族が併存し、競合していた。
 
 その欧州圏を中心に、産業技術と物質偏重型文明が、急激かつ爆発的に発生・成長して惑星文化全体に影響を及ぼし、各国は産業による富の基盤となる地下資源の占有権を求めて、激しい競争を展開し、発達した技術力を軍事に注ぎこんで戦闘行為に用いた。被害者たる弱小諸国をまきこんでの、強国間における数度の局地戦と二度の大戦争を経て、あまりにも強力すぎる全人類規模の殺戮兵器が開発され、各国ともにその使用を恐れた為に、一時的に、武力行使より外交策をよしとする風潮が生じ、その間、文化及び商業的技術が飛躍的に発展した。また、惑星外へ進出するための技術開発が始まり、地表上の国境の枠組みから離れて、事象を地球単位で把えようとする思考法が発生した。
 
 

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