『 だから平和を歌おう 』 (@中学か高校。)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説)平和の歌を歌おう
友だちが死んだから
鳩は戦いの為の蹴爪を持たない
だから歌おう 白い喉を赤く染めて
平和の歌を歌おう
平和の歌を歌おう
学生達は兵器廠に通っている
道路には地雷が埋められたし
ミサイルが山を覆っている
この上は竹槍をでも磨こうか?
今は玉砕するにしても二億の総人口
毎日の食糧さえ貧しくなっていくのに
戦車に乗って
戦場に通勤しろと言うのか
だから平和の歌を歌おう 友達が死んだから
平和の歌を歌おう 俺たちの歌を
『 憲法改悪反対 』 (@中学 = 1970年代後半)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説)憲法改悪反対!
わたしは声を大にして叫びたいのだが
わたしの回りには「なんとなく」が漂い
シラケ世代の仲間たちの内にあって
真念から出る声ですらが
空に追われる
軍備拡張反対!
わたしは戦争の悲惨さを訴えたいのだが
大人たちはそれを白眼視する
何を若造が と
「戦争を知らない子供たち」が
何をえらそうに言うのかと
『 (無題) 』 (@中学?年の4/21)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説)はじめは冗談だったのさ
この俺 たちが 社会批判 (!?)
メッチャ 古いぜ
はいからあ だよなァー
だけどヨォ おまえら
新聞見たこと あるかい
ドンパチ 人間 死んでらァ
あきれるほどだぜ メッチャシブイぜよ
※歌詞。ブルーハーツみたいな学生有志のパンクバンドが学祭で演奏して問題視され、停学〜退学になるという設定。
『 (無題) 』 (@高校1年の時、……だと思う。)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説)戦争はきっと始まってしまう
人間が理想だけを抱いていられるのは ほんの一時のことだ。
戦争はまたきっと始まってしまう
人間が理想を抱いていられるのは ほんの一時のことだ。
いつか、60年代安保闘争の歴史小説だけは書きたい。
.
『 from 「日本沈没」 』 (@中学……だったかな……?)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説)「だけど
執行猶予を
わたしたち
よく知っている。今、人と神々=自然の仲がうまくゆかずにいる
のは、子らである人が 丁度 反抗期とも言うべき
時期にさしかかっているから、だわ
「
一人一人が小さい分だけ以外と強いもんだけれど、
地殻変動には耐え得たところで60回分もの放射能で
自滅しちまったんじゃ
……これだと当初の設計である「第四種兵器」戦、という
状況設定とは根本からくいちがいますな。
自然科学関係を一からかじらなけりゃならんし……。
『 (無題……夢より。) 』 (@高校だったかな?)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (3)誰が
彼は横たわっていた。
「何故。」
と、彼女は地面を踏み鳴らした。
「なぜ、こんなことをするの、なぜ戦わなくちゃならないの。
人が死ぬばかりじゃない。次々死ぬばかりじゃない。」
誰もなにも言わなかった。誰もなにも言えなかった。
彼は
聞いたような気がした。重い沈黙。その陰にある、ひとつの想い。
「闘かわなければ
(殆どもう僕は死んでるな)
他人ごとのようにそう感じながら、それでも不思議と彼の声には
はりがあるような気が
誰も彼に「 しゃべっちゃいけない」とは、云わなかった。
今、彼が話そうとしていることは、明らかに彼の、『遺言』。
そして彼は、皆の沈黙を、代弁しようとしているのだった。
「戦争が起ったら。こんな風なレジスタンスの小競りあいでなく、
本物の戦争が起こったら。
死ぬのは僕だけじゃない。何百人、何千人の僕が
仲間にみとってもらうこともできず、僕は信じるとおりに生きた、と満足
しながらこの世を去ることもできず……肉体(からだ)も、魂も、
血みどろになって……
のたうちまわって……
僕が死ぬことで僕の弟は死なずにすむかもしれない。僕がここに
こうしていることで、もし、あの……僕の、生徒たちが きちんと大人になって
結婚して、子供……なら、
僕は
壊れた廃水管のような音がどこかでして、ひどく鮮やかなあかいろを
したものが、どこからこれだけ、と ぼんやり彼女に思わせるくらい、
華やかに床をそめあげていった。
僕は………
何だというのだろう。彼は、いなくなってしまったのに。
× × ×
「 あたし、田舎へ帰るわ。」
その言葉を彼女はとても静かに云った。
「 田舎へ帰るわ。もう疲れたの。
秋には柿がなるし、紅葉がキレイよ。あたしはもういちどチョークを
持って……彼の喪があけたら、平凡で、穏やかで、病気と交通事故
以外の死の心配なんかとはおよそ無縁な、優しい人と結婚し……
子供を産んで…… 孫の顔を見て……
平凡に老いて、死ぬわ。」
短い夏の終りだった。
「子供を産むわ。」
サヨナラのかわりに そう言いおいて。
日本が、世界にむけて進撃を開始したのは、翌年12月のことで
ある
.
『 金の鈴 銀の鈴 』 (@中学2年。)
2006年11月2日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (1)先生が逮捕(つか)まった。
ある日ジュンが街を歩いていると何もないところでころばされた。急に足がちょっとしびれた気がしたのだ。
あわてて起きあがって行こうとすると、
「お待ちなさい」
きれいなお姉さんが地味な服を着て うしろに立っていた。
「だァれ?」
「落としものよ。」
すっと さし出された物は3冊の本。
「あらそれあたしのじゃないわ。大人の本みたいだもの。」
「あなたのなのよ。」
「え? ちがうわ。」
「あなたのものなの。今ころんだ時に落としたのよ。いいわね?」
わけがわからない事を云って その本を ジュンの手におしつけて、きれいな女の人はすぐにいなくなってしまった。
家へ帰って あけてみると、ぜんぶ本かと思っていたうちの 1冊は ぶあつい日記帳だった。
びっくりしてジュンはそれを読みはじめた。
『偶然にも楠木綾瀬の娘が はじめて私の担任するクラスに ひっそり埋もれていようとは! なんという幸運! ジュン・アヤセは およそ平凡に見える、別段 目だったところもない大人しげな生徒である。しかし常に周囲とは違う何かを考えることのできる眼をしている。よく放課後の教室で1人で個性的な絵や詩を書いている。9歳にしては相当本を読む。』
そんな風な漢字が多くて むずかしい文で その日記ははじまっていた。
“楠木綾瀬の娘”というのがなんのことなのかわけがわからなかったけれど、とにかくアヤセ・ジュンというのはジュンの自分のことだ。ジュンは辞書を持ってきて いっしょうけんめい わからない字をさがしはじめた。
ぶあつい日記を 少しづつ、そうやって調べては何回も何回も くりかえして読み、むずかしいところや まるっきりわからないところがあってもあきらめないで続けて読んでみた。 まいにち学校から 帰っきて お夕食がおわると 辞書をひきながら 先生の日記帳をひらいて、さいごまでひととおり目を通すのに半年くらいかかった。
ジュンは先生の日記帳を たからものにして だれにも見せなかった。わからない むずかしい字があっても ほかの大人の ところへ聞きに行こうとは思わなかった。なぜって
わけのわからない日記帳を読みおわると あと2冊のわけのわからない本が待っていた。 わけのわからない本のほうは もう本当に わけがわからない、辞書にも書いていない言葉ばっかりがならんでいて、それに書いてあることが自分に かんけい ないことだと思うと あんまり おもしろくなかったので、ジュンは だい と書いた人の名前 だけをおぼえて、机のひきだしのおくに 大事にかくしてしまった。
軽く握ったこぶしで彼は机をポンと叩いた。ポンポンとたたいた。それから指をひらき、指を閉じ、手のひらを机に はりつけ て。そして彼は何も言わなかった。
「まあ、いいさ。今さら何が出てこようと、
おどろきゃしないよ。
おれはただ、小さな女の子(クリシャー)が泣いているのを黙って
見ていられなかった だけなんだ!
それだけなんだよ! 本当に、それだけだったんだよ!!」
アンドロメダ・エメルダ
「無法の衣」って
いい言葉だと
思いません?
ジョンディ・ライバー(※イラストあり)
朝日ヶ森に迷い込んだ
エスパー集団
(※私立朝日ヶ森学園長が、小学部の生徒たちがテロ行為(?)をして
逮捕(拘留)されているのを引き取りに来て牢の前で言う、
……絵コンテ内のセリフ。)
「裁判? 投獄!?
でも彼らの父親をごぞんじですかしら
はしから
……大臣
……国 首相
……大使
はじっこの金髪の娘は
……国王の一人娘 でしてよ」
生徒:(牢の中で手製の爆弾を持て遊びながら)
「どーせなら最後までやらせてくれればいいのに」
「こいつここで使おっか?」
(※その後、釈放されての「金髪の娘」のセリフ。)
「ウフ♪ でも戦争が始まれば
こっちがひどいめに会うんですもの……
院長がいれば安心だわ
それにわたし
カイやレム好きだから」
(※「盲目の律子」絵コンテ)
「まあ わたしが
反戦運動の指揮を!?」
「光栄だわ
そんなに
活発に
見えますかしら」
(マスミの友人 盲目の少女)
アフリカ …… アスリカ
ソ連 …… セレン
アメリカ …… .
.
◎ ファイアースカーフ哀歌
(別題; “普通の”(オードゥンリー)ジョーン!)
……どっかに Memo があるはずだと思う。
『 ……第二次世界大戦は遠く過去のものとなり、最早それを直接に覚えている最後の者たちが、消えていこうとする時代
Fox.Com 2180
“あなたは、だから今日は、普段(いつも)より遅れてでも帰って来るんですよ。今日はね。……そうすれば私は、明日からも待っていられる。
またどこかで道草をしているな
飲みに行っちまったに違いないてね。”
「待っていてくれるのかね わたしを?」
(※2180年。つまり「地球人類最後の年」に、安全が確保されているはずの地下シェルターから抜けて、わざわざ地表へ、「最終兵器を止めるために」生きては戻れぬであろう旅へと、出て行こうとする「主人」と、「室管理コンピューター」の会話。)
(ファイアー・スカーフ・レイクエム。
超常能力者部隊
オードゥンリー・ジョーン。
『 (無題/草稿) 』 (@高校3年、もしくは素浪人?中☆)
2006年11月4日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (3)「三日ほど、帰らないよ」
岳人が言った。
「まああなた。どうなさいましたの?」
すこし古風な日本語をしゃべる、妻はベドウィンの血統をひいている。
「授業で、うっかり英文に脱線しちまった。明日にはバレていると思う。」
「……査問委員会?」
「いや。そこまではいかないだろう。とりあえず自主反省ということで」
妻は困惑し、不安をあらわにして夫にとりすがった。
「出ましょうあなた。日本を出ましょう。まだ、安全なくには、いくらか残っているわ」
「砂漠には還れない。それに……」
苦悩するように夫は言った。
「いまとなっては、もう
「まあ。」
「それに、すくなくともこの市は、ほかの土地よりはいくらか
「知っていますわあなた。風たちがおしえてくれますもの。ここは、盆地で、水が流れ、春あたたかく、冬さむく、……四季のめぐりがゆたかで、原野にちかく、山々にかこまれて……」
昔人(むかしびと)たちが好んだ土地なのでしょう。かつて住んだ、昔人たちの情念が、結界をまもっている土地なのでしょう。」
妻は、《白の一族》とよばれる、魔術師のうまれだった。
(※善野盆地の鳥瞰図的イメージイラスト?あり。)
むかしびと 縄文 情紋
Κ(カッパ)、Μ(ミュー)、Χ(カイ)、Ω(オメガ)
……朝日ヶ森 反戦基地 少年隊の 班長サイン
カッパの班は工作隊、ミュウは前哨エスパー部隊(元魔法派)
カイが総リーダーの多数派で、オメガ(おメガ)が科学技術を担当
→数I, P294参照
(※ ……小学校のプリントの裏紙をメモ用紙に使っているので、
「数I」というのは、中学1年の数学、だと思われます☆)
『 (無題/下書き) 1 』 (@中学?の夢ノート)
2006年11月5日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (1)彼は写真屋だった。火事場や被災地、戦場かせぎをよくやった。
それは金をもうける為で、もうけた金で彼は秘境や奥地の少数民族を追い、時折故郷に戻ると思い出したように個展を開いた。
その日、彼は砂漠地帯の国境
「わたしを呼びましたか
顔を上げると 青く白くぼわっとして透き通ったものが目の前にあった。その色が何に似ているかと云えば すりガラス越しに見た誘蛾灯の光
彼にはそれが何だかわからなかった。
「
「ヒトは水と火と風と土からできている。今おまえの体からはおまえの中の火のおかげで水がなくなりつつある。
おまえが言っているのは今ここで4つのものに還元することが何らかの理由で不都合だということですか。
「
「わたしは“みず”ですが おまえのいう水とは異ります。ヒト族のコトバでは水の精霊
『 (無題/下書き) 2 』 (@中学?の夢ノート)
2006年11月5日 連載(2周目・最終戦争伝説)彼は黙ったまま見つめていたが、やがて吸い寄せられるように抱きしめると唇を重ねた。水精は抗いはしなかった。ただ その淡い色の瞳の奥に光の渚をゆらめかせていて、彼がそっと離すと、たん、と
後に飛びさがった。周囲で光の輪が めくるめくばかりに きらめいていた。
「なんですか? 今、わたしには あなたの心 が うまく解析できなかった。ハハがわたしたちに寄せる波に少し似ている気もしますが、もっと異質で、入り組んでいます。
興味深いことですね!
前にはあなたの心には、そんな熱くて制御のきかない感情は感じられませんでした。人間の感情というものは際限なく ふくらんでゆくものなのですか?
教えて下さい。あなたがたは それを何と呼んで いるのです?」
彼に答えられる筈もなかった。どうして口に出して云うことなどできるだろう。だが今は、水精の言葉の調子にもまるきり無邪気とは言い切れないところが あるようだった。
驚き
もしも彼女の好奇心というものが それほど強くなかったならば、困惑の表情さえ見ることができたのではないか?
だが全ては彼の勝手な幻想にすぎないのかも知れない。
成長につれ 精たちは“性格”が はっきりしてくると水精は云った。
荒々しい性格になる者が確かにいるのなら、優しさや弱さといったものを理解するようになることだってありえるかも知れない。
彼は待つことにはなれていた。
なにかに魅かれ追われるように国を出た。
幸い、メシのたねだけは確保してある。
写真だ。
戦場を撮り、クーデターを撮り、飢餓を撮り、たましいと獣たちを撮り
みずから硬質ガラスの一個の
日本には彼のいるべき場所はなかったようなのだ。なにか
運命と、ひとはそれを呼んだのかもしれない。彼は、どんなところでも、風と水からことばを得ることができた。
♪ 最期の一滴 あるいて二滴
飲まずにゆくならみち教よう
ひとにやるなら
たんと飲まそ。 ♪
「変わった歌だ」
カサカサに乾いた男は意識の奥でつぶやいた。
北へ還る、南へ往く。
むかしびと。
婚姻によって生まれいでた一族。
すこしはおさまろうよ。
救けたろうものを。
すっかり疲れてしまったよ。
雨はならぬ。真人(マヒト)の末裔(すえ)らが病(やまい)する。
わき水のめぐみをな……
水の地 (アトル・アン)
>水の地の王国(アトル・アン・ティス) > 海中島(アタラン)。
……時代を追って隆起・乾燥。
地の水(アナトル)……池・川・泉の水など、
子らを思いやる水母の命により
交替で陸にのぼる“娘(ウルワニ)”らの
職番。
水命宮。
なにかにせかれ追われるように国を出た。日本という場所には 在りたくない気が彼はしたのだ。
さいわい、食ってくための技術には自信があった。
写真だ。
ひとびとの倦み疲れた表情を追い、ねじれた森を探り、裂けた魚や斃(たお)れゆく獣たちの慟哭を伝えつづけるうちに、
いつしか、彼は、戦場にたっていた。
一面の、荒れた すなはら……
かつて、けれどさして遠いことでなく、ここにも木草は茂っていたのだという。
いま視界にはいるのは、どこまでも点々と散るほそく小さな生き物の白骸と、ちかくに倒れた数人の、血。
膝から下がずたずたに裂けた自分の脚を見おろして、座りこんだ彼は、茫然としていた。
止血が してある。だれも、生きて残っては いないというのに。
かたわらで彼を護るように横たわって死んでいるのは、この戦地へ来て雇ったばかりのまだ若い助手。
彼、日本人、ISOHARAの写真集に、何年も前に生き別れた家族の無事な姿を見たのだと、出会った時に静かに語った。
それは、彼が身内の恩人であるかのように、若者に錯覚させたのだろうか……
腹部の深い裂傷は、だが絶息するまでに いくらか時間がかかっただろう。
爆風でとばされたすこし離れたところから、這い、にじって 彼の安否をたしかめに来たあとが 沙になかば 吸われた血痕となって つづいていた。
びょう、と、旋風が吹く。
もはや遺体となった連れたちに葬悼の白いすなが降る。
ジープは爆発転倒して、なお炎をあげていた。
そうだ。
地雷かなにかを踏んだのだ。
見かえれば、後にしてきた前線の駐留基地は はるか地平に没し、水も食糧もなかまとともに失っていた。
そして、足が動かない。
ただカメラだけが彼の胸に無意識にかばわれて、まったくの無傷で有った。
苦笑して、彼は手をのばし、一歩をいざった。
すこし動いてからふりかえり、勇敢で無謀だった仲間たちの末路と、ぼろになった自分の足とを、苦心してアングルにとらえる。
フィルムの殘数を確かめて再びいざりはじめた。
もうそれほど離れてはいないはずだったのだ、目的地は。
危険だという強硬な反対を押し切って出てきた以上、捜索や救援部隊は望めまい。おなじこの荒沙のさなかで朽ち骨をさらすなら、せめて、最後まで意地を通したかった
傾きはじめた巨大な太陽の方角を、彼は目指した。
この条件では自分は三日ももつまい。けれど、5年、10年たって、この不毛で醜悪な戦争にもいつか終りが来るとき、誰かが忘れられた写真を発見してくれれば、それでよい……もっとも、この過酷な環境下でフィルムがそれまで保てば、の話だが。
いざりはじめて次の日の夕刻、すでに伝説となった最後のオアシスが、濃い朱色のなか、黒い影となって前方に浮かびあがった。
水の場(オアシス)。
このあたり一帯のそれが、もう幾年も前に化学物質が大量に流布されて以来、草原のなか生きものの集う宝玉ではありえず、ただ白い沙原のそこかしこに点々と散る濁った銅色の鏡、あるいはもっとも少額の、クズ同然のはしたの価幣にしか、例えられなくなって、久しい。
そして、植物のまもりを失った泉のほうもまた、年々その力を衰えさせ、餓えた虚空に吸い上げられてゆく運命にあるらしい。
そうした厳しい現実を 彼もほかの取材屋たちも危険な戦場めぐりのうちに目のあたりにしてきた。それが、どういう風向き加減でか、たったひとつ薬品の害から免がれえた泉地があるという。
難民たちからの定かではない情報に、飛びつくようにあわただしく出発してきたのは、ひとつには“彼らを保護する”名目でこの地のいさかいに介入してきた大国の駐留基地で、奴隷同然に浅黒い美しい肌の人々を扱うそのやり方を、これ以上は見ていたくなかった、というのがあるかも知れない。
日が没し、彼は うめいた。
すでに死期は近く、眼はふさがり、のどはひあがり、意識は朦朧としている。
だが、死よりも悪い光景というのはあるものだ。
彼の目指してきた聖地は枯れていた。
昇りそめた月が彼の影をながく前方に投げかける。その先に、葉をおとし黒ずんで枯死した、ひとむれの樹々。
では、最後まで、残っていた、というのは本当だったのだ。
そしてそれすらも力尽きたということだ。
渇いて動きはせぬ舌で彼は つぶやいた。
這い、たどってきた道程のせいで傷つき、よくは動かない指で、かすむ目をまばたきながら 静かにシャッターを押した。
彼は、なおも、這った。
生きるものが水を必要とするように、水とても植物の護りを必要とする。ここに至る水脈のすべてが滅びつつあるというのに、たとえ人の造った愚かな兵器の害は直接には避けられたとしても、たったひとつの泉だけが、淋しく 永らえていられるものではない。
小さな けものたちの 骸(むくろ)が ふえていた。
逃げこんで、二度とこの地から出ることもかなわずに、餓えてじわじわと 殺されていったのだろうか。
ときおり、とどまっては、フィルムにおさめながら、もはやよける力とてない彼は、もろく砕ける骨をのりこえて、泉の奥をめざした。
泥が、ひろく、溜まっていた。
枯れてかたむいた木立ちの輪のなかで、すでになかば表面は干涸らびて、無数の亀裂をはしらせている。
ごくわずかに残された底のほうの水面も、風や水とともに流れこんだ薬品に汚染された徴の、奇妙な緑色にゆらめいて月光を拒絶していた。
一枚、一枚、命数とひきかえにアングルを決めてゆく。
ついにフィルムが尽き、彼は、ほとんど動かなくなった腕で長い時間をかけて湖底の泥をかきだし、小さな山と横穴とを築いてカメラとフィルムケースをおさめた。
ふと、のこしてきた日本へあてて遺書というものを書こうとも思ったが、やめた。
真実をとらえたものが いつか 人の手に渡るのなら、十分、その役を果たしてくれるだろう……
小さな塚山により添うかたちで横たわり、彼はとうとう深い眠りにつこうとしていた。
ひと息ごとにからだからなにかが流れてゆくのがわかる。
つぎの夜明けの冷気をは、耐える力はもはやないだろう。
抱いた築山がまるで女性の子宮のようだと静かに微笑して、目を、閉じた。
欠けはじめの月が宙天をはしりやがて傾いてゆく。
現し身から抜け出しかけた魂は そして不思議な光景を 砂漠のうえに 視た。
それは、時間を超越した あるいは現象だったかも知れない。
彼の視座は閉ざされたまぶたの奥にいまだあるようで、同時に高く虚空に飛びたちかけてもおり、眼下、一面の廃土には、悪魔の孫(DEMON-III)とも呼ばれる薬品特有の傷膿のような薄い黄緑色が、月に照らし出されて渺々(びょうびょう)とひろがっていた。
点々と、ひときわ濃く散るのが汚染された泉の姿か。
おともなく風もない世界でたましいは、寒さだけを感じた。
地獄
そう、呟やきかけたとき。
荒漠たる地平の彼方より、純粋な靄(もや)だけがもつ白ひといろの光が、ひとつ、ふたつ……そして無数に、たち昇り現われた。
白虹。
いや、おぼろな 人影 とも見える。
光柱はそれぞれに散らばり、地の上に降りたつと、くまなく覆うように漂よい動きまわる様子だ。ふとたましいが心づいたことには、それらが通り過ぎた後には大地はひとしおに寒々と
かわりに、ごく小さな無数の金色の光粒が、よくこれだけと思うほど地表や地底から丁寧に集め
ちかくで視ればひとつひとつは小さな生き物の姿をしているだろう、そう思考するわけでもなく たましいは感じた。
こころひかれた魂は、いつしか己れもまた、さまざまなひかり渦まくさいはての野へと 吸いよせられ、まざりこんでいた。
見上げるばかりに宙天を指す、ひかり、またひかりの柱。
そこには、遠い潮騒やかすかな瀬々らぎ、はるかな鳴滝にも通じる、無限にくりかえし、つつみこむ、時そのものを楽の音にしたような不可思議なざわめきが、静かに満ちていた。
いつしか、遠い潮騒やかすかな瀬々らぎ、はるかな鳴滝にも通じる、無限に くりかえし、たたみかけ、包みこむ、時 そのものを楽の音にしたような不可思議なざわめきが、沙の封土のうえいっぱいを、静かに満たしていた。
よく聴こうとすればそれは、光の柱や光の粒子たちの、声やことのはとも思える。
魂は、呪詛の声をなかば、救われた声をなかば、小さな光の亡骸たちに望んで、その群のさなかへとわけてはいった。
けれど、異(ちが)ったのだ。
しれらは一様にかたくまぶたを閉ざし、彼のように目覚めているものさえいない。
野に斃れたけものたち、ひとたちの失なわれた姿は、胎児のようにまるまり、ただかつての生命の残光を発しながら白虹の周囲をへめぐり、乱舞し
魂は、おののいた。
うつくしすぎる光景だった。
おのれもまた、呼びよせられた ひとつとして、気がつけば 小さな光柱の力に とらえられている。
魂は、ふるえた。
消えるのは、いやだ 消えたくない……!
逃がれようとする異なる分子のあることに、人影とも思える天高くそびえる光は、気づいたようだった。
気配がのびてきて、魂に触れる。
光が魂を識るのと同時に、たましいは、光人のいま視ている世界をかいま見ることになった。
女性……で、あった。
植物に そそぐ 夏の雨のように、かつて生命あった金色の光たちを力としてとりこみながら、その大いなる数多の存在は
いつしか息絶えかけた泉のかたわら、自分の体に戻り、目を瞠(みひら)いて精霊界の出来事を見上げながら、彼は、声を聴いていた。
この地をお見捨てなされた。
以後この荒土には一雨、一滴たりとも流れ降りることはないゆえ、
あとは煮るなと焼くなと、皆さまのよろしいように。
……母上様はお怒りです……
……お怒りです……
殷々とひびく深い銅鑼のような波動で、光柱のどれかが語ったその意味を、ふいに魂は はっきりと覚った。
……もはや、水の太霊(おかあ)さまはこの地をお見捨てなされた……
……お見捨てなされた……
幾多の光柱が、くりかえしよせるように それらの思念を、反復し、伝えあい、境土の隅々へと浸透させてゆく。
……地よ、火よ、風よ……
……他の三族の皆さまに申し上げる……
……申し上げる……
……我ら、水霊……
……これより後、この荒土には……
……一雨、一滴たりと 流れ降りることはない……
声はひとつのもののようでもあり、光柱すべてが潮の響きのように唱和したものとも、思えた。
ややあって、
(
という応えが 地、火、風、 それぞれの波動で届けられた時、すべての気配は消え、彼は異し世を見る力を失い、正気づいたと思った。
燥いた世界。
荒涼ただひといろの……
動かぬ瞳であたりを見渡せば、先刻まではたしかにあった周囲の木立ちの枯れた姿もなく、湖底の泥も その亀裂も さらさらと風に吹きくずれて、ひとかけらの湿りけもないただの無機物、細かく砕かれただけの鉱石と帰していた。
月面の、クレーター、というのがオアシスの最後にもっともよく似たものだろう。
西の地平にその月は沈みかけ、おびただしい白虹の群れが遠く海の方角に尾をひいて飛び去ろうとしていた。
星々だけが はるか高処に凍てつき、塵のような惑星上のことなど、そしらぬ貌をしている。
軌道のうえを人工衛星が すばやく よぎって行った。
その動きにつられて視線を転じた彼は、おのれの傍らに、なにかの気配があしをとめ、うずくまるのを感じた。
気配はさきほどの白虹だったろう。
応えるともなく波動がひろがり、無数の、もとは生き物たちだった光の粒子をまといつかせて、その存在は青白い純粋な光そのものと、彼の意識には映った。
俺の魂を連れて行くのか……?
笑い、ともとれる、ゆらめきの波をたたせて、精霊はそう告げた。
好きなところに行くがよい。
したが、そなたの器のなかの〈水〉、
それは我らのもの、我ら一族のもの、
我ら〈水〉が神々とそなたに貸して
与えてあるもの。
返してもらおう。
そなたの滅びと共に。
彼は呟やいた。では、俺の魂は どこへ行くのだ?
精霊は冷たく応えた。
転生流転の行く果てなど関わりなきこと。
器を離れて まで 何故みずからに固執する?
聖霊 精霊
DEMON-THIRD、デモサード
「渇くのなら求めるのなら、
我らの庇護する世界から
出でなければよいものを!!
・神霊と精霊、転生と変化のこと。
・魂と器の構成物質のこと。
・人祖、ティクス=アセル神が水霊を犯して生ませた人族のこと。
・人界神話のこと。
・精霊世界のなりたちのこと。
(……未完……★)
あいすみません。(^^;)
こちらの中味は移動しまして、
ちゃっかり「有料」とあいなりました…☆
↓
http://p.booklog.jp/book/109754/read
リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-2-5-0
「街の外れの高い壁」
あしからずご了承下さいませw
(2016.09.29.)
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リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-2-5-0
「街の外れの高い壁」
あしからずご了承下さいませw
(2016.09.29.)
こちらの中味は移動しまして、
ちゃっかり「有料」とあいなりました…☆
↓
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リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-2-5-0
「街の外れの高い壁」
あしからずご了承下さいませw
(2016.09.29.)
◎ テーマ という おそろしいものについて。
1.まず題の通りの“俺と好”から話は始まってんのだ。
ナナの S of Highschool に触発されてることは
いうまでもない。
清がESPだという設定もここに含まれる。
2.別世界でのドタバタ宇宙活劇(スペースオペラ)。
正行とアルテミスがひっついてメデタシメデタシ。
3.未来世界の荒廃と混乱ぶり。現代(近未来)との
2層構成により学生の意識のありかたってのも
書いてみたい。
4.舞台設定の必然性から鋭やアリサが
なだれこんできますな。「ふたり」の話になる。
5.俺と好、ゆかり姫(もしくはユミちゃん?)等々の
存在による というものの是非。書けっか?おまえに。
逆う人たちの 生きざま とゆーものも書きたいの!
☆ ええい! また長編になりそうじゃっ☆
○ だからさ、“俺”たちの未来世界へのかかわり方の度合で(※)
ストーリーが決まるんじゃない? なんにせよ。
○ 清が好を「探しに行くからな」、もしくは「探しに行く」
もしくは「とうとう見つけた」、「やっと!」……あたりで
話をぶったぎる。だから第1のテーマは答えが出ず
じまいなのだ。
「探す」過程をどのあたりまで長くするかによって(※)は決まる。
◎ “?”のプロット。
○ “俺と好”の舞台設定「すけべの好一くん」。ゲイ・バー。
↓ ユミちゃんに 買わせたくなかったら まりくつ コンビ。
正行−好の伏線?
○ 「異世界」へ、ふっとぶ。「会田正行・ゆきかたしれず」
↓ ゆかり姫。ユミちゃん。ひろとヘンパイ出すか出さんか?
くっちゃんを にする手もあるのだ。
人数増やすと新選組っ!
○ 宗女による援助願いと「やったろうじゃんか」。
↓ 月中心のコロニスト連合。重力の問題。
○ 「俺たちは無責任のかたまり」
↓ 清のESP、バラすか否か?
○ 「まいごのまいごの正行や〜い!!」
↓
○ 地下のパルチザンたち (※)
○ 正行救出、ハッピーエンド
↓ すでにアルテミスとくっついている。
○ 「杉谷好一ゆきかたしれず。」
↓
○ 「現代へ戻る。
↓
○ 学園祭実行委。「必ず探しに行くからな!!」 end.
(注:
(※)部分に 「うああああ、短いっ!♪ 1984.2.29.」
というコメントが入っているので、その更に数年前に書いた
初期設定だということが、伺われます………………(笑)。 )
コロニスト と フロンティア
◎ 時代設定はいつなんだ!!
○「現代」
高校が4年制化して数年。教育の複線化が進みつつある。
図書館蔵の古い歴史や現代社会の教科書が貸出禁になっているが、
誰もそれを気にとめない時代。
○「未来」
第3次世界大戦からハルマゲドンまでの小康期(→時空間転送機の項)。
大戦中に、母なる大地を勝手に破滅させられてたまるかという主旨のもとにゴウダがコロニスト連合国家を建国している。主として商業・資源を背景に地表人の自殺行為に圧力をかけているのだが、地上では宇宙乞食の造反と見なして地球連邦政府を設立。but,旧国家同士の思惑がらみで実際的な力なし。
地表において大戦前と同じ政府、政治制度の生きのびている国はまれである。かつてあった“国家”という存在そのものが形骸化しているアナーキーな状態に近く、国境、だとか政権、といった定義も過去のものとなりつつある。力の時代である。
資源争いから直接の戦場となった第3文明圏の惨情は正視に耐えない。宇宙空間を除いて、世界は縮小再生産の機構になり下った。黄昏を待つばかり。
環太平洋地方を中心に経済ブロックを敷き、遂には旧皇国軍事独裁政権をもその走狗と化さしめた「七福神財団」。それに席捲されつつあるが、軍事的には皇国軍瓦解の直接原因となっている旧U.S.A.・旧カナダの新興王国。北アメリカ南部とアフリカ南端には有色人種による白人差別の社会が成立したが、その他の地域では有色人種は大量虐殺の後である。欧州はゲリラ政権の乱立。ソ連邦は共和国単位に分裂。中国〜中央アジアにかけて末世的な新興宗教が流布しつつある。
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