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『 ありえる・たうん 第三話・6 』 (@96.08.25)
2006年9月6日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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『 ありえる・たうん 第三話・7 』 (@96.08.25)
2006年9月7日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-3 『 E.T.』
『 ありえる・たうん 付録三 』 (@1996?)
2006年9月8日 連載(2周目・善野物語ほか)☆ ありえる・たうん 付録三 ☆
『八十一家氏姓一覧』
☆
主筋
・翼(つばさ)
・鳳(おおとり)
・間(はざま)
行政
・翼音(つばさね)
・大鳥(おおとり)
・会田(あいだ)
・間来(はざまく)
祭祀
・白鳥(しらとり)
警備
・鍔実(つばさね)
・鷹嘴(たかはし)・高梁(たかはし)・高橋(たかはし)
・稲架幕(はさまく)
・出来良(できら/旧:いでくら)
・去行(さりゆき)
山林業他
・七木(しちき)
・杣谷(そまや)
・苫屋(とまや)
・居築(いつき)
・樹守(いつきもり)
・道守(みつぃもり)
・竹中(たけなか)
・杉谷(すぎたに)
・沢木(さわき/旧:ざぁき)
農耕・牧畜業
・畑司(はたしぃ)
・稲司(いなしぃ)
・栄田(さかえだ)
・原山(はるやま)
手工業
・炭司(すみしぃ)
・彫手(ほりてぃ)
・塗部(ぬりべぃ)
・織戸(おりこ)
・蓑作(みのさし)
・井筒(いつつ)
『八十一家氏姓一覧』
☆
主筋
・翼(つばさ)
・鳳(おおとり)
・間(はざま)
行政
・翼音(つばさね)
・大鳥(おおとり)
・会田(あいだ)
・間来(はざまく)
祭祀
・白鳥(しらとり)
警備
・鍔実(つばさね)
・鷹嘴(たかはし)・高梁(たかはし)・高橋(たかはし)
・稲架幕(はさまく)
・出来良(できら/旧:いでくら)
・去行(さりゆき)
山林業他
・七木(しちき)
・杣谷(そまや)
・苫屋(とまや)
・居築(いつき)
・樹守(いつきもり)
・道守(みつぃもり)
・竹中(たけなか)
・杉谷(すぎたに)
・沢木(さわき/旧:ざぁき)
農耕・牧畜業
・畑司(はたしぃ)
・稲司(いなしぃ)
・栄田(さかえだ)
・原山(はるやま)
手工業
・炭司(すみしぃ)
・彫手(ほりてぃ)
・塗部(ぬりべぃ)
・織戸(おりこ)
・蓑作(みのさし)
・井筒(いつつ)
『 ありえる・たうん 第四話・1 』 (@96.08.24)
2006年9月9日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
『 ありえる・たうん 第四話・2 』 (@96.08.24)
2006年9月10日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
『 ありえる・たうん 第四話・3 』 (@96.08.24)
2006年9月11日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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『 ありえる・たうん 第四話・4 』 (@96.08.24)
2006年9月12日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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『 ありえる・たうん 第四話・5 』 (@96.08.24)
2006年9月13日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
『 ありえる・たうん 第四話・6 』 (@96.08.24)
2006年9月14日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
『 ありえる・たうん 第四話・7 』 (@96.08.24)
2006年9月15日 連載(2周目・善野物語ほか)(2016.09.22.)
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
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5-2-1-4 『 Never Ending Streets 』
(さらに言うなら、その妹に日本語の日常会話を教える職務をも兼ねていた高級取りの最初の家政婦を、“気に喰わない”という単純な理由で叩き出したのは好一の責任である。
当初、日本式の台所の使い方がわからなかったユミコは家政婦のあとを付いてまわって、米の研ぎかた・味噌汁のダシの取り方からと教えて貰い、日本製の調理用具はアメリカのより小さくてオモチャのようだから、子供の自分には使いやすいと、喜んでいたが。
女言葉の日本語を話す身近な人間がいなくなったという点を抜きにしても、いくら家事一般が趣味とは言え毎日の食事の支度をやらせているとなると、本人は文句ひとつなくこなしているとは言え、負担は大きいだろう。
とは思うのだが、その後も二人の家政婦を、睨みつけて怖がらせたあげくに、退職させてしまった……)
『 ありえる・たうん (没原稿) 』 (@1996.08.24.)
2006年9月17日 連載(2周目・善野物語ほか)☆
その話は、戦後まもなくに遡る……。
過労により脳梗塞で早逝した壮一との跡を継いだ、ここ数十年で飛躍的に事業を拡大し、法すれすれのきわどい商法でもって成り上がった杉谷貿易(株)の代表取締役は、好一の父親である良一だった。
この町の中でも、ひどいスキャンダルを起こしたのは、十年近く前になる。
杉谷グループの強引な攻略に負けて買収の憂き目を見た、おなじく八十一家の一員である栄田商事は、しかし当初は、外界の他の会社に吸収合併されるよりは同じ野者の杉谷のほうがと、楽観的に考えていたのである。
栄田は会田の分家に当たり、それだけ主筋の間に近い。
けれど借財の取りたては苛烈を極めるほどで、苛瞼誅求とさえ称された。
「裏切りもの!」と、この対応は、野者から糾弾されることになる。
時代の流れについて行かれずに酒に依存する傾向の強かった、栄田の当時の若社長であった御曹司は、身代のすべてを奪われると知って逆上のあまり。
猟銃を持って杉谷の留守宅に押し入り、まだ幼い二人の子どもをタテに取って、要求を遠そうとしたのである。
善野という土地の閉鎖性に甘えた行動では、あった。
☆
好一が、覚えているのは深紅。
にんげんが、ぐちゃぐちゃになって壊れてしまった、そのおと。
倒れる、さっきまで生きていたもの。
狂乱の叫びをあげる、その、連れ。
「きー……、きさまぁ……っっ!」
ナイフを持って五歳の子供に突きかかって来る男が。もはや正気だったとも思えない。
再び銃の引き金に指をかけた子供は、妙に冷静に、相手の腹に狙いを定める自分自身を見ていた。
「大人しくしろ」
そのころその家には鍵をかける習慣はなかった。南に面したフランス窓から、覆面をした男たちは、ある日とつぜん押し入って来た。
わずか三歳の妹が泣きじゃくるからと言って壁にぶつかるほどひどく蹴りつけられて。
自分の悪行も大勢から恨みを買っている事も自覚していた杉谷良一の子育ては苛烈を極め、当時五歳に過ぎなかった息子にも、すでにして一通りの護身術や武器類の扱いを教え初めていたほどで。
(もともと良一自身が警護衆の中でも腕利きの戦士であった)。
子供ながらに明確な殺意があったのか、それとも脅してみようというだけの子供らしい無思慮な行動だったのか。
「ユミ、目ぇつぶってろ!」
父親の手入れするのを見慣れていた猟銃(違法改造の散弾銃)を打ち放した好一は、悪質な誘拐犯を自ら撃退した英雄では、あったのだが。
いまだ血まみれで遺体も転がったままの自宅に急を聞いて駆け戻った父親は、妹を守って戦った息子を抱きしめ、よくやったと誉めた。
☆
五歳の子供が殺意を主張したとて外界の法に照らせば罪に問われるはずもない。しかし人の口に戸はたてられず、狭い善野にこれ以上は、住んではいられなくなった。
ちょうど世界市場へ打って出る計画中を進行中だった父親につれられて、アメリカへ渡って行って十年近く音沙汰もなく、旧藩時代の士族の邸宅が集まる住宅地のさなかにあって、杉谷家の本邸は、なかば幽霊屋敷と化していたのだが。
何を考えたのか、昨年の秋にひょっと兄妹二人だけが、市外で雇った住み込みの家政婦を連れて戻って来て住み始めた。
アメリカで敵を作りすぎて家族の安全を慮んぱかったのだとも言い、恥知らずにも御々十三斎に参加させようとて送り戻したのだとも言う。
明確な敵意を持つ旧・栄田系の親族と、どう対応したらよいか判断しかねる他の氏族の曖昧な黙殺の中。
わずか三歳で母国から切り離されて日本語さえおぼつかない妹は、しかし本人には全く罪もない事とて、小学校ではぼちぼち受け入れられていると聞く。
問題は、みずからの意志で殺人を犯したと、五歳にして大人に負けず冷静に主張していた兄のほう、その天才が善野の基準で言えば大罪人である良一にうり二つだとささやかれる、好一なのだった。
☆
(栄田は経済優先策で善野の自然を脅かした。軍部への積極的な協力、杉の植林、化学染料による染色工場の建設で、日の代川の汚染)。
やそかみやは感情的なことは各家で判断せよ。このかみやは別の考え方と立場がある。
三、
それらの印刷物になっている資料は、戦前に、強制的な国の徴兵によって戦場で命を落とす者が増えたために、それによって大昔より語り伝えられて来た〈神代秘事〉(かむなぃひめじ)を継承する者が絶えることを恐れた神事衆(かみごし)……〈八十一家〉の家長たちによる寄り合い……が、“銃後”に残る女性たちを、(それまでの善野では性別に関係なしに、生まれた順序か本人の適性によって、家督を管理する長子衆と、善野を警護する末子衆とに分かれていたのであるが)、姫御衆(秘護衆/ひめごし)として再組織して、秘め事を後の世に託そうとして編纂したものが、基盤になっている。
(それまでは完全に口承であって、さして重要ではない伝統についても、神聖なことに関しては、決して文字に書いてはいけないとされていた)。
☆
善野(おおの)市立第二中学、略して〈二中〉(にちゅう)の沢木
民彦(たみひこ)は社会科教諭で、同じ学校の体育科には双子の弟・邦彦(くにひこ)教諭も勤めているために職員室ではもっぱら民彦先生で通っており、元気の良すぎる一部の生徒たちからは最近ほとんどタミちゃん呼ばわりだった。
対する邦彦は同じ顔でもオニヒコ扱いで、とりわけ顧問を務める武道系部員からはひたすら畏怖されて崇拝さえされている。
僕はいまいち貫禄が足りでやぃと本人苦笑しながらも、生徒たちに慕われて楽しく天職にいそしむ民彦の毎日だった。
沢木はいちおう善野では最も古いとされる家柄〈八十一家〉(やそかみや)の一員で、本家の名字は〈簑作〉(さわぎ)と書く。その血縁(ちながる)の、長男(かみご)である。
放課後の職員室に民彦を、ある日ふらりと訪ねて来たのは善野郷土史資料館のヌシと称して親しまれるゴマ塩あたまの人物で、ほかの用事のついでのように、出された渋茶を飲みほしながら席をたつ最後になって、さらりと本題を伝えていった。
「今年(えな)も(ま)懲(こ)りでやぃ《御々十三斎》(ごみそみそい)な禁やうでぃな、出(い)ゆるやぃ」
ニヤニヤ笑いの人の悪さは、その昔けっこう悪名高かった沢木の双子も同じわるさをやらかして、当時の〈警護衆〉(しめごし)に厳しくとっちめられた事実を、まだちゃんと覚えているからだろう。
〈掟破り〉(きんやうでぃ)の出ない年など実はほとんどないぐらい、それは善野の伝統の、血気盛んな子供たちならではの、冒険なのである。
本当のところ、大人たちは毎年の騒ぎを心待ちにして、はては密かに煽ってさえいるという事実を、純真な子供たちは一向に預かり知らない。
今年注意するべき相手は民彦が担任しているクラスの誰それと名前を挙げられて。
最近ようすがおかしいのは薄々気がついていた民彦は、「やっぱりそうやらし?」と、苦笑しながら監視の役目を引き受けた。
☆
その民彦の受け持つ一年三組には、別の意味での問題児が、もう二人ばかりもいるのだが。そのうち一人の名前を杉谷好一という。
入学式にも出席しないばかりか、新学年が始まって以来一度として中学校に顔を出さない生徒の家に、今日も留守番電話のメッセージを入れながら、民彦はぐちぐちとぼやいた。
「なぁんで俺ばっかり……」
貧乏クジが大挙して押し込まれているクラス編成を見た時には、彼は思わず天を仰いだものだ。
毒をもって毒を制すと学年主任は言ったが。
もっとも一学年四クラスのうち、他の担任がたは定年間近で持病持ちの老人と、九月に出産予定の女性、初めて担任を持った新米という取り合わせなんである。
「俺って職員室でイジメに合ってるって思わねぇ?」
「どうせ俺が手伝うのが解っているからだろうが」
邦彦は、小テストの採点を手伝ってやりながら、笑いをこらえて応じた。
首都圏の予備校の寮に一年間と大学・大学院、二年ほどの留学も含めて合計十年ほども野外で過ごした沢木の双子の会話は、二人だけの時にはすっかり標準仕様となっていた。
「ほれほれ、さっさと家庭訪問に行って来い」
☆
その少年が夕方になって家に帰って来ると、見知らぬ男が応接間に上がり込んでいた。
「おにぃーチャン、オキャックさぁまだ、よぉ」
どうも自分の影響で男言葉の日本語を覚えてしまいつつあるらしい妹が、タドタドしい発音で苦労して言いながら、お茶の準備をしている。
「……ユミ、オレの居ない間に知らないヤツを家に上げるなと言ったろう!」
警戒心から、つい声を荒げると、
「? ガッコのセンセだてぇ、言ってるよ?」
白い指で紅茶の葉を数えている、その動きを止めて怪訝な顔をした。
「教師だからって子供に手を出さない保証があるか? レイプでもされたらどうする!」
おいおい……、
アメリカ育ちでかなり悲惨な経験もして来ているとは噂話に又聞きしたが、聖職者とさえ呼ばれる身分でいきなり童女強姦魔にされては割に合わないぞと、肩をすくめる民彦であった。
「ほれ今日は土産つきだ」
ケーキを差し出されてゲーっ。
しかもこの銘柄は確か妹がマズイと言っていたやつで。
「お兄チャンの、お客様よね?」
自分はまじめに学校へ通っている妹は、兄の不登校については別に何も言わないが。
甘いものなど大の苦手と知っている妹に、ニッコリ笑って皿の上のケーキを差し出され。
番茶とはしでもって無理矢理流し込む好一なのであった。
☆
なんでこんな目に合わねばならんのだ! と父親の陰謀に憤る。
この市にある秘密を捜せと言う。見つけて、なおも日本に興味が持てなければ、帰国するなりどこかへ留学するなり、好きにすれば、良いと。
慣れない日本語の学校で苦労している妹を見て、早く謎を解いてしまわなければと、内心の焦りを抱いている彼なのだった。
☆
その時の杉谷の顔を思い返しては笑いを堪えつつ、これは美味しいと定評のある地場産のミルクプリンを購入した民彦は、次いでもう一人の登校拒否児の家へと向かった。
善野学園の代々の外国人講師のために用意されていると言う官舎の一つ、善野の景観の名物でもある古風な洋風建築のそれは、二階建てで、木造・石積み・赤レンガと無秩序な建材でもって増改築を重ねたらしい奇妙な外観で、前庭の木立になかば隠されて、表の砂利道からは隔たっている。
その玄関口に辿り着くと、取り替えたばかりと覚しい新品の青い引き綱に、「御用のあるかたは、この紐を引いて下さい」と、丁寧な手書きの木札が下げられていた。
言われる通りにしてみると、ドアの内側でかなり大きな呼び鈴の鳴る音が、カランコロンと賑々しくも華麗なリズムを奏でる。
☆
旧街道に沿って発達した問町(といまち)商店街のはずれに位置する市立五小の職員室で、ここ数年来「いつもの四人組」と言えば、高橋博文(ひろふみ)と七木千(しちき・せん)、横川勇二に出来良 了 (できら・りょう)からなる、幼なじみの一団で。
学年ごとの行事はもとより大仕掛けなイタズラ騒ぎのたぐいの時には必ずいつも真ん中にいて、盛り上げついでに行きすぎないよう仕切り役をも果たしてしまうという、たいそう大人うけの良い名物連である。
その子供達がこの春先に、そっくりそのまま二中に進学し。
そろって同じ三組やぃと喜んだのも早々に、いつのまにやら五人に増えて、朝な夕なに連れだって歩く姿がひとの耳目に慣れたのは、入学式から十日ほど、卯月も半ばの頃だった。
「磯原君(いそはらぁさ)、今日(えい)なカスミ月原(つくばる)な廻(むあ)って帰らぁし?」
神経の細いらしい転校生がきょうは誘って貰えないのかと不安げな顔になる前にと、HRが終わると同時にまっさきに呼びに来るのはたいがい面倒見のよい博文である。
清がはじめのうちは一人で通っていた公道沿いは遠まわりのうえに、車が多くて喘息持ちには決して良くないと、最初に気がついて声をかけたのも、彼の功績で。
地元の野者(のもん)でさえ時々は迷うという網の目のような善野の小路や細道を、あちなこう、こちなこうやぃと教えては、毎日いろいろな場所を散策しながら戻るのが、新入生の所属クラブが決まるまでの短いあいだ、彼らの日課になった。
この四人組、なぜか一人っ子と末っ子ばかりであったので、二回りもからだの小さい異邦人にあれこれ世話を焼いてみせるのが、弟ができたみたいで嬉しかったのである。
本当なら中学二年になっているはずの実は一歳年長だとは、落第坊主もなかなか白状できないでいた。
「……今日(えい)ちょっと体調よくないシ」
はやくも伝染しはじめた怪しげな善野なまりで、清が困って応じると、
「そんなの(なぁが)知ってやぃ。カスミ月原な、内緒ぅ近道なや」
ヘヘンと笑って清のカバンを持ち上げると、勘のよいマイペースな千(せん)がさっさと先頭を切った。
〈内緒ぅ近道〉とて彼らが言う場合、多くは他人さまの庭先の無断通行だと、案内される側が理解したのは数日まえである。
「……まぁた生け垣とか、よじ登ったりするのぉっ?」
感情が動くとすぐに戻ってしまうカン高い横浜なまりの語尾を、テレビ言葉なやぃ」と呼んで何だかおかしそうな顔をする四人は、
「今日(えい)はでぇやい」、つまり「やらない」と請け合って、ずんずん歩いて行った。
☆
わさりわさりと厚く積もった去年の朽ち葉を踏み散らす。今日の通路は梢の風に金緑の萌芽がひるがえる、雑木林の踏みわけ道だった。
「雑木なでぃ、母な木(ぼなぎ)な呼びやらぁー」
ひと抱えもある銀灰色の幹がすっくり並んでいたかと思うと、その向こうには折れそうに細い彦ばえに、のしかかるような大枝の夕焼け色のゴツゴツした樹皮の松がある。
清には樹木の種類はあまり見分けがつかないが、地元民の得々とした蘊蓄(うんちく)に耳を傾けてみれば春の蝶から夏のセミ、秋にはアケビやキノコも穫れる、とても豊かな土地らしい。
住宅街から少し離れた深い木立ちの日溜まりに、いくらかの苔に覆われて素朴な句碑が配されていた。
はるやよい
かすみつくばる ごぼうやま
〈カスミ月原(つくばる)〉というのは地図にある正式な名前でなし、そこを遊び場にする代々の子供たちによる縄張りわけの通称である。
わさび田のあるカスミ沢、山頂ちかくの月神社(つっかんみや)、原山(ばるやま)さんちの牧草地。
この三箇所をまとめて呼ぶからこの名になったというのが博文の講釈だったが、湿気が多い土地なので上に霞がかかる(つくばる)からだと大人達は説明していると、雑学家の千がすかさず混ぜ返す。
そもそもが、呼び名と句碑とはどっちが先に出来たのか?
それを言うなら句碑に書かれた「はるやよい」は標準語(?)の「春は(や)良い」なのか、「春・弥生」か。それとも善野の方言で、
「夏(はる)だ(や)なぁ(よぃ)」という意味なのか……?
どう思うかと不意に意見を聞かれた清は、
「うーん……、ワカンナイ」と、苦笑してごまかした。
判らなかったのは議論の是非でなく、早口な善野弁のほうなのでは、あったが。
登記上の区分で言うなら善野市街の南東部を占める〈五芒山〉(ごぼうさん)の、東麓斜面の一帯。
なるほどそこを突っ切れば南麓の谷地水(やちみぞ)あたりの磯原家の新居まで、最短距離の近道である。
(ちなみにゴボウ山という音を聞いてしばらくの間、清はそこでは根菜の牛蒡(ごぼう)が採れるのだとばかり、てっきり思いこんでいたものだ。正しくは、神社を祀った山頂を中心に、上から見ると五筋の低い尾根が星の形に広がっている所から、この名があるらしい。)
「晴(はる)な続かんでら、沼(ぬま)らって通(たぁ)らでやぃ」
善野の子供相撲の連勝横綱だという出来良(できら)はふっくらした指をまるめて足元を指さした。
日陰の沢地は雪解けが遅いので、春も深まるまでは湿気が残って足場が悪いのだ。
教えられて靴の先でかきまわして見ると、なるほど乾いた落ち葉が占めるのは、ほんの地表の数センチばかり、そのまた下にはしくしくと水気を含んで黒錆びた、重たげな腐葉土層が積み重なっている。
ここで転ぶと実に悲惨な汚れかたをするんだと、自宅からは反対方向になる“近道”に喜々としてつきあっているノリのよい勇二は、自分の失敗談を身ぶり手振りで熱演し、清を爆笑させた。
油を含んだ朽ち葉の底はなかば泥炭と化していて、肌に染みたら容易なことでは色も臭いも落ちないものらしい。
たいして昇って来たとも思っていなかったが、林を抜けると一望のもとに視界が広がって、清は歓声をあげた。
三月なかばに梅が開くここでは、四月も下旬にかかろうかという今が桜のさかりである。
善野盆地の外輪をかこむ山々からも残雪の消えたころ、銀鼠ににぶく輝く木々の樹冠のうえは日々刻々と微細な彩りを増し。
河原の土手に植樹されたソメイヨシノとはまた違う、ひときわ白い山桜のほの明かりも、裾模様のあちらこちらに散見されている。
鳥が梢で高く鳴き、一陣の春風がなまめいた花の香りを抱き込んで、かすかに渡って行った。
☆
カスミ沢というのはその名の通り、流れが速いために気泡を含んで濁ってさえ見えるが、本当は、ごく清洌な湧き水をたたえた、幅は一. 五mほどの冷たく鋭い渓流である。
道とも言えない落葉樹林の踏み敷きあとを抜けて、いきなり見晴らしの開けるあたりは川べりの草地になっていて。
大人の腕ほどの丸太を三本並べて樹皮ごと縄でくくっただけの、簡素な橋がかけてある。
「……転(てん)でぇやぁ?」
二人並んでは通れないそれに心配症の博文から危惧の声が上がったが、苔と水しぶきで滑りやすい幅狭なそれを、しかし平衡感覚は悪くはない清は、難なく乗りこえた。
橋から下には丸石積みで列を仕切って流水を整えた場所があって、ワサビ田を見るのも初めてな都会っ子はしばらくあれこれ尋ねる。
橋から上に広がる斜(ずり)面は原山(ばるやま)さんちの牧草
地。
古くは農耕や運搬に使う小型馬(おおしぃま)を代々産していたそうだが、機械の普及に流されて畜牛業に転換し、今では市内最大の乳牛牧場である。
まだ春が浅いので牛は畜舎で飼料をはんでいる。
谷地(やち)口にある青い屋根の加工場で自家殺菌したミルクは近隣の学校給食に卸すほか、問町商店街の一部の店でだけ、その日のうちに買うことが出来ると言う。
家業の高橋豆腐店で、これはミルクプリンを製造する手伝い(もっぱら味見)をしている博文がつい宣伝を始めると、今度ゼッタイ買いに行くからと、清は目を輝かせて約束したものだった。
☆
見慣れぬ自然の風景に、編入生があまりはしゃいで興味を示すので、ついでだから少し回り道して月神宮(つっかんみや)にも詣で、山頂からの善野の眺めも見せてやろうじゃないかという、純粋な好意から出た四人の提案は、しかし裏目になった。
ゆるやかではあるがけっこう長いダラダラの登り坂……しかも木の根が多くて足場が悪い……の中腹三分の一あたり。
もともと新学期が始まって以来の緊張と疲労がたまって体調の悪かった(しかもそれを顔に出さないよう我慢していた)清は、とうとう貧血を起こして、倒れてしまったのである。
慌てふためいた四人組は、一番の力持ちである出来良の背中に清を背負わせて、おろおろしながら家まで送って行った。
出迎えた磯原夫人に、「無理をさせてしまってすみません」と、一斉に謝ったのであるが。
夫人は笑ってとりあわず、逆に、迷惑をかけて申し訳なかったと、頭を下げながら、
……こんなのは、いつもの事だから、あまり気にしないで。
軽く告げられた言葉が、逆に四人の心臓に染みこんだ。
幼い頃から野山で育って来た彼らにしてみれば、ただ歩き回っていただけのつもりでも、長期療養のあとで筋肉も脂肪も落ちている清にとっては、十分ハードな遊びで。
毎日それではとても体力がついて来れないと、気がつくと同時に反省することしきり。
……これからもどうぞ、一緒に遊んでやってちょうだいね?
夫人の言葉にもちろんですと、良い子の返事をし。
天気のよい外遊びの日には清を先に図書館まで送り、夕方また迎えに行って一緒に帰らぁというパターンを定着させたのは、自分もけっこう読書好きな千の発案によるものだった。
……そんな風にして磯原の末っ子は、仲間たちに大事にされながら善野の暮らしに馴染んで行ったのである……。
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