二、地球留学生
 
 リスタルラーナ連合政府がS.S.S.(スリーエス)への地球留学生の編入を認めてから三年。地球の教育制度が改変されてから五年。
今、第一回留学生の乗った船がS.S.S.(スリーエス)内部に入ろうとしていた。
 ファーツアロウという名のその船は地球系連邦から選び抜かれた精鋭、100名の学生たちを一年間かけて運んで来たのだ。
 
 
 (※「金色に輝く弓と矢の形の宇宙船」と、それを司る
  宇宙のトリトン神(?)みたいな色鉛筆のイラストあり……☆)

 (ていうか、この原稿は挿し絵が多い「絵物語」形式です☆)

  (^_^;)>” 

 
 
 「どうしたの、サキ?」
ヘレナが、ぼんやりしているサキを優しくつっついた。
「足をはさむわよ。」
 彼女たちは、ファーツアロウとS.S.S.(スリーエス)をつないでいるベルトウェイを、ファーツアロウの生徒たちの先頭になって通っていた。
 なぜなら、彼女たちは生徒会役員だったので。
とりわけサキの方は一年生にして生徒会長になった人気者で、今年13歳のヘレナと11歳のサキは、いつでもいっしょにいた。
 というより、一人っ子のヘレナにはサキが妹のように思え、一方、地球にいるサユリと別れてきた姉さんっ子のサキは、なにかあるたびにヘレナの所へ相談に行った。
二人とも見かけによらずさびしがりやなのだ。

(※制服姿のサキとヘレナのツー・バストショット。)
 
「どうしたの?」
もう一度ヘレナが聞いた。
サキがすぐに返事をしないとは珍しい。
「ん、ちょっとね。」
 ファーツアロウの一行はベルトウェイから降りて歩きだした。
いよいよS.S.S.(スリーエス)の内部に入ったのだ。
 広いロビーで身分証明書(カード)との照合。

 (※ セイ・ハヤミの正方形のカードのイラスト。)

なにしろS.S.S.(スリーエス)は政府が経営しているにもかかわらず、政府の干渉を許さない。
学生と教師だけで独立した国、より良い教育環境を造りあげることだけを目的とした完全に自由な場所なのだ。
 照合といってもコンピュータが処理するのだからたいして時間はかからないのだが、それでも一度に百名となれば大変だ。
コンピュータにカードをさしこみ、各自の指紋、網膜、声紋と照らし合わせて本人かどうかを確認する。
最初に済ませたサキが、次に検査機(チェッカー)から出てきたヘレナに言った。
「ねえヘレナ。わたし心配になってきちゃった。」
「? ……なにが?」
いつも用件ぬきで結論を言ってしまうのはサキの悪癖のひとつ。
「ほら、あの……なんていったっけ!? S.S.S.(スリーエス)の生徒会長。」
「ああ、たしかフォ……なんとかベルアイルって名前よ。それがどうかしたの?」

. (※悩みをうちあけるサキと応じているヘレナの絵。)
 
「……うん。つまりねェ、聞くところによるとそのフォ……なんとかさんってすごい超人的な人らしいじゃない。」
 実際、そのフォなんとか、つまりS.S.S.(スリーエス)の中央委員長フォレル・シェットランド・ベルアイルという少女は、ある日突然、転入不可能といわれていたS.S.S.(スリーエス)に現れて以来、毎期毎期全科目首席という離れわざをやってのけ、さらに、だれにでも優しいその人柄と適格でいつも冷静な判断からおして、これも毎期連続で中央委員長をつとめていた。つまり、地球で言う生徒会長のような役である。

 (※ 自信なげに首をかしげていじけるサキの絵。)

「それにひきかえ、わたしの方は苦手科目は及第ギリギリしかとってないでしょ!? もし生徒代表ってことで比較されたりしたら……」
「バッカねえ!!」
要するにそれが不安なのだ、とサキが話しを続ける間もなく、後ろからマーメイドとセイが割り込んで来た。

 (※ 手にカードを提げて勢いよく歩いてくるマーメイドの絵。)
 
 マーメイドは遅刻常習犯ナンバーワン。生徒会新聞の腕利き編集長、兼、生徒会書記だ。実際どちらが本業なのか本人にもわからない。
そのマーメイドがバンとサキの背中をたたいて言った。
「そのくらい心配しなさんな。会長は悪くても生徒は優秀なんだから。ファーツアロウの生徒はS.S.S.(スリーエス)なんかにひけはとらないわよ。」
それでもサキの気は晴れず、彼女は抗議するように言った。
  でも!!」
「え!?」
「なんだかわたし、すごおく嫌な予感がするのよ。それにそのフォなんとかって生徒会長のことが頭から離れないの。」
サキのその真剣な口調に三人は一瞬しんとなった。
なぜならサキの予感の的中率といえば生徒間でも評判で、試験前ともなれば多勢で出題のヤマを聞きに来るぐらいなのだ。
 
 (※ 「悪い予感」を訴えるサキの顔。)
 
 しばらくしてからセイがほがらかに、(それでも少し心配そうな顔をしながら)断固とした口調で言った。
「心配するなよ、なにかあってもオレたちがついてる。」
(……そうとも! オレのサキを泣かせるようなやつがいればオレが許さん!!………………)
実際、背が高く色のあさ黒い、スポーツマンタイプの生徒会副会長セイ・ハヤミは、半年前の生徒会役員選挙の前後からサキが気になりはじめ、今では心の中でサキの名を呼ぶ時、必ず「オレの」と修飾して呼んでいるのだった。
 もちろん、体格、精神年齢ともに成長の遅いサキは、およそそんな事を考えたためしもなく、セイとしても当分うちあける気はなかったが……。

 (※ とか言いつつサキの肩に手を置いてカッコつけてるセイの絵……☆)
 (^◇^;)”

 
……セイに言われたサキは、自分が彼らを心配させていることに気がついたので、大急ぎで今までのゆううつそうな顔を引っこめ、さも安心したという風ににっこり笑って一言、言った。
「それもそうね!!」

 (※ にっこり元気なサキの絵)

サキがあまりにも自然に、本当に必然的とでも言えるぐらいにごく当然という顔をしてそう言ったので、マーメイドやそばで四人の話を聞いていた他の生徒会役員たちはすっかりだまされてしまい、ファーツアロウの中では一番良くサキを知っているセイやヘレナでさえしばらくはその自然な不自然さに気づかなかった。
 つまり、まるでセイの一言で本当に安心したように見えるサキが、実際は自分を愛してくれている二人  セイとヘレナ  に心配をかけまいとして無理に自分の心を隠してしまったことにだれも気がつかなかったのだ。
実際、巧みに話題を切り換えて、セイといつもの(面白いと評判の)痴話ゲンカを始めたサキはとても無邪気にかわいらしく笑っていたので、仮にサキの本心を知っている人がいたとしてもかえってその事を疑いたくなっただろう。
 それでも、にぎやかなだじゃれの応酬の合間にサキがふっと遠い目をしたのをヘレナは見逃さなかった。
  しかたがないわ。
ヘレナは心の中で大きなため息をついたがなにも言わなかった。
サキがわたしたちに心配をかけたくない……と思っているのなら、だまされたふりをしていなければ、今度はサキがよけいな気を使うようになるわ。

 (※ 憂鬱に落ち込むヘレナの絵。)
 
 やがて生徒全員の照合が終り、生徒たちは再びベルトウェイに乗った。
次のエアロックを通りぬければ、そおにはS.S.S.(スリーエス)の生徒が待っているのだった。
 
 
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