「  さぁ?
  なんとなく考えごとして、
  なんとなく寝て、
  なんとなく寝つかれなくて、
  眼がさめたんで、
  考えごとの続きして、
  解決したんで寝た。」
 
 
 
         (たぶん、サキがレイに言ったセリフ)
 
○ ソレル女史、ESP及びESPERに関する説明語録

「つまり、親子の関係において、子供というものは常に親と同じ物の見方をするものではありません。むしろお香の場合で、子供は親とは異った、新しい考え方、新しい物の見方・感じ方をし、新しい取り組み方で社会に働きかけて行きます。そうしてそれが今日に至る我々の文明を築き上げたのだと言っても過言ではないでしょう。ESPERとは、人類全体の直系の子供なのです。
 どうか、上古の神話時代に逆上る狭隘な迷信に惑わされる事なく、偏見を持たずに、自由な新しい物の見方で彼らを受け入れて頂きたい。」
 
 
                 .
 
◎ 「邂逅」もしくは「宙暦0年」 ストーリィプロット

 ケティア・サーク23歳。リスタルラーナ星間連盟の全権大使として、同僚のエレンヌ,カートと二人で太陽系第三惑星テラに派遣されて、出発後2年目にしてようやく太陽系内にたどりついた所。船長であるキャプテン・ダーナーと喧嘩しながらも、地球連邦へメッセージ
 
 
                  .
 
 タ イ ム
 
   宇宙空間。真空。絶対零度。船の残骸。飛び交う熱線銃の輝やき。自分の手元から応酬の青い光がほとばしり、殆ど無意識に動く体がその度に確実に相手を倒して行く。
 サキは、どこか遠く離れた意識のどこかで、畏ろしいと感じていた。
 自分がつね日頃おもしろがって、スポーツとして訓練したものの結果がこれなのだ。初陣の、しかも絶対的に不利な条件下での撃ち合いに参加していて、何らの精神的プレッシャーを受けもしないで人を殺している。護るべき相手を背後に控えているとは云え、その事に対して恐怖感を覚えないというのは少し異常に過ぎる状態だった。心の中にうずくかすかな異和感。
 「バカヤロウこのボケ。殺されたいか!」
 しかし生まれついての熟練した戦士であるレイには、やはり初心者の危なっかしさが目に余るらしい。例によって口汚くののしられて、思わず言い返そうと意識をそちらへ振り向けた一瞬    ……
 「アホ  ッ!!」
 レイの絶叫がヘッドスピーカーの間で狂気のように反響する。だがそれにも増してサキの心に爪をたてたのは、ギリ、ともビリ、ともつかぬ不吉な運命のきしみだった。肩先の装甲が熱線に吹きちぎられたのだ。
 ぞっ、と背筋が凍りつかんばかりの数秒間。初めはかすかに、徐々に裂け目を押し広げながら、空気がもれだして行くのが感じられる。
 (宇宙デノ戦イノ時ニハ銃ノ目盛リハ絞ッテオク)出がけにレイに注意されたのだ。(えねるぎぃガ長持チスルシ、当リサエスレバ効果ハ得ラレル)。効果  とは、ではこの事だったのだ。装甲に傷を負った者は恐慌に陥ちいり、ほぼ完全に戦闘能力を失う。断末魔の長い分だけ、真空の戦場にあっては即死よりも酷い。
 レイが前面に踊り出て、楯となって狂ったようにビームを乱射している。後方から誰か必死で呼びかけて来るようだったが、もはや空白になったサキの心にはどんな強力なテレパシーですらとどいて聞こえてはこなかった。ぐらり。宇宙震のように世界がゆがむ感覚がある。意識がすっと遠のく。
 
 「バカヤロウこのボケ。殺されたいか!」
 しかし生まれついての熟練した戦士であるレイにはやはり初心者の危なっかしさが目に余るらしい。レイによって口汚くののしられて思わず言い返しそうになりながらも、サキは油断なくレイ・ガンをかまえてあたりに目を配っていた。
 と、まるで予知していたようなタイミングで、目を遣った方角から熱線が来る。サキがやりなれた動作でそれをよけると、背にとった残骸の一部が一瞬輝いて少しばかり溶けた。
 「はッ!」 急に透視能力が働き始めたようだ、サキは今撃ってきた奴の心臓を一撃のもとに貫くと、無意識のうちに銃のゲージを引き上げて正確な連射をくり出し始めた。
 絶対的な暗闇の中、大小の残骸が無数に散らばる中にあって、それから後、サキに急所の貫通以外の傷を終わされた者は一人もいなかった。
 
 頼まれてレイが小型の衝撃銃を作ってやったのは、その事件からひと月程過ぎてのことである。サキは戦闘中の奇妙な重複感、一瞬の夢ともつかぬ恐怖を夢現つのうちに記憶していた。  そして、精一杯 のろいや 罵詈雑言をまくしたてながらも体を張ってかばおうとしてくれたレイの後ろ姿 の残像を
 「なんか最近あいつ気味じゃない?」
 いくらからかっても平然と笑っているようになったサキの事を、レイはそう評してひとしきり首をひねっていた。
 
 
 
                .
 
 1. 国境の町。
 
 辺境惑星リネークーラは雨。
 「……あ〜あ、あ。」
 ようやっと雨やどりに手頃な場所をみつけて駆け込んできた彼女は大きなため息をついた。
 服もカバンも防水加工だから構わないけど問題なのは、髪。やたら長いのが面倒で高々とポニー・テールっぽく結わえておいたのが見事に裏目。水を含んで重いったらありゃしない。
 「携帯式乾燥器、貸そうか?」
 雨宿の先客が声をかけた。
 「ついでに暇つぶしのお茶の1杯くらいにもおつきあいいただけると嬉しいんだけどな。」
 籠っている幌(ほろ)のうしろは居酒屋。
 御注文はの到着をお待ち申し上げる間に個室を借りて、長い髪はすっかり復調したようだ。
 「わたし、サキ。お宅は?」
 「ソルデネーレ,ルイッカクセス。古めかしい名前だろ。」
 「る、ルイッくぁく……」
 「ルイッカクセス。」
 「地球人(テラズ)にはその発音は無理だよお。」
 「へ? キミ地球人!?」
 「そ。……見えないだろー。」
 少女は(
 
 
           (草稿未完).
 
 「わたしゃ“普通の”女のなんぞじゃないってば。そっちこそ普通の、ただの、単なる男の人でしょオっ!!」
 「……あのな。」
 ルイック、振り向いて、こうなれば最後の手段。
 「オレはねェ、ただの、連盟保安局特務部員なの。了解?」
 「ほあん……きょく!?」
 サキは鳩が豆鉄砲の顔をして。
 ルイックの眼がきゅっと細まって職業用おどしの表情に近くなった。もう1度たずねて念を押す。
 「了解?」
 したら部屋で大人しくしていろと言おうとして、
 「りょう、かい、……し・な・い。」
 灰色と銀の瞳に彼がたじろぐほどの物騒な微笑。
 「肩書きがつけば偉いってもんでもないでしょ。」
 
    ☆
 
 
                .
 
 「動物は好きなの?」
 「正直だから」
 「ウソだね。あなたは人間も好きなはずだよ、違う?」
 
 ケイニー。無気味がられて両親には捨てられ、叔父のところで働く。
 
 
 極上の茶にめいっぱいミルクを注ぎ入れたような肌の色。
 
 
 
                .
 
 「サーキ♪」
 「
 「レイにね、頼まれたの。落ち込んでるからなぐさめてくれって。
 あたしじゃだめだ  って、すごく暗い顔してた。」
 「そう……」
 「それでね、わたし少しうれしかったの。」
 「え?」
 「ほら、今までわたしずっとおミソだったでしょう。わたしがいるとみんな気を使って、暗くならないよー、深刻な話題さけて通ってたでしょう。」
 「え、そう  かな、」
 「そうよ。だからわたし今日、わたしの目の前でレイが落ちこんで見せてくれたのって、そりゃ少しはびっくりしたけど、実はとてもうれしかったのよ。」
 「落ちこむと  うれしいの?」
 「ええ♪ だって、ほら、やっと自分も1人前にあつかってもらえたんだな  、みんなの役に立てるくらい大人になれたんだなー、って、満足感があるじゃない。」
 「そ、そうゆうもん?」
 「だからね、サキも頑張って落ちこんでてね。
 これからは、その分わたしがしっかりしててあげるから♪」
 
 
                .
 
 「蘭咲子。咲子  咲く子」
 「花が咲く子、新しい文化の花開く子。
    ……咲子と呼ばれていた頃、わたしには意味があったんだよ。今ではサキ・ランは単なる記号に過ぎない」
 
 
 
 「帰りたい?」
 レイが尋ねる。秘やかに、心の寂しさのありったけをこめて。
 「帰れない」 サキが答える。
 「帰りたい?」
 「帰れない」
 「帰りたい?」          ……
 
 幾度も繰り返される、同じ言葉。幾度も繰り返される、同じ、答。
 
 
 
 
 繰り返し、繰り返し、波のように   向き合った二面のガラスの鏡のように、他のもろもろの感情を押し流して、ただ深い寂静とした哀しみだけが今の二人の間には残されていた。
 「帰りたい?」
        「還れない」
 誰よりもその答を良く知っていて、知っているくせに、レイは、また尋ねるのだった。
 窓の外はただ無限の世界。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                   .
 
 ここに来てから泣いてばかりいる新入りに
 レイはいいかげんうんざりしていた。
 
 
 
                  .
 
 “ステメン”主メンバー
 
 
○ 高橋薫(カオ・ターク=モトナカジマ)
  サキに1番声質が近い。ただし“地についた”声。
  オリ・キャラーズ副団長。
 
○ ラーラ(ライオネル・ライヤー=シュテット)
  黒に近い褐色の肌。
 
○ リーク(セーレ,リレキス)
 
○ アルサー・ジャン=ジャック
  オリ・キャラーズ団長
 
○ ジョーグ
 
○ リーツ・ミエア
 
 
○ オランジュ(フランィシ,オラーン)
 
○ シェリル・プラネット(サキ・ラン=アークタス)
 
○ ボルグ・ビヨルン=ブランナー
 
 
 
(※ページ全体にバッテンして「廃案!」と書いてある☆)
              .
 
 女装の美形か男装の麗人か、区別がつかないから、レイは困る。
 大抵の場合は、素直(?)に男に見える。実のところ染色体は、
 XX(ダブルエックス)で、ある。(!!)
 並の男性より高いんじゃないかという身長、どんと低いハスキーボイス、ざりざりに刈りこんじゃった感じの短かい青い髪、色気のかけらもない金色眼。
 唇は薄いし胸も腰も皆無だし、これで男と思うな、って方が理不尽といおうものだが、それにも増して  どうも、本人が、自分を女とは考えていないらしいフシがある。
 
 
 
(※シャーペン描きにサインペンで髪だけ彩色した上半身イラストあり)
                 .
 
   そして語られた通りに、星間連盟と呼ばれるリスタルラーナ文明圏と、地球系・開拓惑星連邦が国交を結んでから十年の歳月がながれた。
 その、サキ。
 サキ・ラン=アークタスという名で戸籍登録された少女は、ひとけのない自習室で最後の入力をすませようとしていた。
 もと稿は、植物の繊維でできた、あまり厚さが均等ではない、紙である。紙を、動物質の糸で幾重にもつづりあわせたものである。
 そこにいっぱいにプリントコピーされた古代文明文字  前アーマゲドン期文化の  まわりいっぱいに少女みずからの手で紙面が黒くなるほどに注釈や構文が書きこまれ、ところどころ、あたらしいプラ紙を耐性のりではりこんで、あるていどまとめた対訳がつけてある。
 それを目で追って、ディスプレイのうえの指が、 うごく はしる。
 翻訳のさいごの一行を打ちおえて、少女はいすの背にもたれかかり、かるくため息をつく。机の卓のコンピューターにメモリーパックの注出を命じ、ほおづえをついた
 ……ほおずえをついてついた少女は確認のために画面にうかんでくる全文(今日うちこんだ分の、だ、もちろん。作業自体にはここ半年以上かかずらっていたのだから)にすばやく目を通してGOのボタンを押す。
 カタリ、と2巻目のパックが少女の手におちた。

     ☆ここでセイ登場でもいい。
 
   妖精、魔法使い、導師、仙人、小鬼。
 これらの概念は“神”や悪魔、宗教という単語とともに、リスタルラーナ文明にはすでにないものだった。
 かたや地球には、統一後、4半世紀をこえるいまにいたっても、それらに類する能力をもつといわれる人々が、たしかにいる。
 なるほど、地球の文化を理解するうえで、これらの研究はたしかに欠かせないものだろう。(  ほんとうにそれだけだろうか?)それだけの目的で、たんに口頭にレクチャーにたよるだけでなく、これだけの量の資料の、翻訳をたのむものだろうか。
 
 正確に知りたい、という要求は、ただ好奇心、探求心というものをこえる、より深い必要に根ざすものであるはずだ。…………
 
 
   ☆サエム夫人、16即位、18解散、20婚姻、
          22出産、28サキ、35死亡、
 
 
 「どう思い考えますか? これらの概念について。」
 かつて存在実在していたものが、時をへて語り草に変化していったものか、それともやはり、文化文明の救いのない闇と恐怖の夜が、人類の心理にふきこんだ数多な想像力にすぎないもんか……」
 
 「原典は、あったのだとおもいます。たとえそれが噂やらによって後代にどれほどゆがめられたにしても。」
 現に、わたしの母は……」
 「あなたは? サキ・ラン」
 
 「……そうして、それに類する現象が……
  あらわれはじめていると言ったら、どうします?
  このリスタルラーナに。」

 
 
(リ)のコンピューター、“糸でんわ”操作にすること。
 
              .
○星火祭
×星炎祭
 
 
     星  火  祭
 
        みほしまつりのなつ   
 
 
 
                    柊実 真紅
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
 ながく厄介だった事件もようやく片(カタ)がつき、とたんに気が抜けた  と、いうような時には野郎どものほうが回復が遅いらしいとみえる。ベッドになついて丸一昼夜、それぞれなりに服装を整えて、起きだしてきたのはまずは女性軍ばかり五人だけだった。
 「あら早いわねレイ、おなかすいたでしょ?」
 あまつさえ人より先に目覚ましをかけたらしい、この船の“主婦”なぞは白いエプロンも清々しく、ひさかたぶりのお手製パンの香りが絶妙のタイミングで胃袋を刺激する。
 たっぷりカップの合成飲料(ティレイカ)やミルクティー、各自の好みでとりわけ式の、肉やらエプやら卵やら……
 「ヒマなったねー、いきなり」
 休暇の朝一番の会話がこれだった。
 「あたしなんか仕事、辞めちったんだぜ」
 「それはみんな同じよティリス」
 「あたしもー。休学届けがあと半年も残っちゃったのぉぉ」
 「なんか、あんたら、奴らが捕まったのが残念みたいだな」
 片肘ついて手づかみで野菜を食う、レイの機嫌が悪いのはサキがまだ起きてないのを気づかってのことだろう。
 「あなたたちが引っぱってくる“事件”なんていうのはね」
 エリーが焼きあがったトーストの補給をしながら言う。
 「あたくし達、慣れっこになってしまって」
 ホットミルクのおかわり。
 「あってもなくても今更のことなのだわ」
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
 「そーゆー人間を護る側の身にもなってくれ……」
 がっくりと、疲れたようなポーズを装ってみっつ目のパセリの束にとりかかる。
 肉類に手が出せないというのは、やはり、まだ相当にからだの調子が悪いということなのだろう。レイは野性の獣とおんなじで、薬はとらずに植物で病気を治す。
 一歩、間違えば生きてここにはいなかったはずの彼女だ。
 そんなことは誰もがよく承知していたけれど、たかが、なのである。いちいち感慨に浸っていたらばこの航宙船(ふね)の生活では身がもたない。ましてや全員が、常時命を狙われていたのだ。
 数ヶ月間もの半人質状態から、ある日突然解放されて、事件究明のために走りまわる必要も当座はなくなったとすれば  
 茫然自失の虚脱感。
 すぐには平穏な暮らしに戻れやしないのが、ひとの情動の常(つね)ではあった。
 「う〜〜〜ん。ヒマ、だあぁぁっ!」
 フォークを天につきあげて自己主張する、その背後で、
 「労働中毒(ワーカホリック)。」
 ひとことぼそりと地に蹴落としたのは、毎度おなじみ主人公なのだった。
 「サキ!」
 「あ、戦闘(トラブル)嗜好症とも言うなァ。……傭兵部隊にでも入ってみる、ティリーさん?」
 「サキったらどこへ行くつもりなの?!」
 エリーが叫んだ。
 普段着に、大きめのショルダーひとつ。
 昨夜命を落としかけたナンバー2、それでなくとも一番疲労していた彼女の、見れば確かにいつもの“旅仕度”ではあったのだったが……
 「ちょっとね。地球に帰ってくるよ」
 こともなげに言いおいて立ったまま、ミルクティーを飲みほした。
 「地球(テラズ)へ!?」
 「うん。部族のお祭りがあってさ」
 と、いうからには極東草原だろう。
 民族自治区は同時に、広大な自然公園でもある。
 「五分待ってな」
 レイが素早く戸口に向かった。
 「きゃあん、三十分。お願いいいっ」
 ケイが叫んで走りだせば、ヘレナもティリスも、食べかけを呑みくだして慌てて自室に戻る。
 「えーっとっ」
 五分、程度ならともかく、そろそろ星間便の時間がと、うろたえる長身の少女の前にエリザヴェッタがお盆(トレイ)をさしだした。
 「あ、食事はいら……」
 「一時間、待っててくださるわよねぇ」
 にっこりと、大輪の 蘭 水芭蕉 白百合にも似て、サキは渋々とセリフの続きを飲みこんだのだった。
 
 
 とどのつまり小型艇ごと瞬動(テレポート)をかけてしまえば宙港までなど所用0分である。こっちはサキとレイという二大エスパッショノンをかかえているのだ、恐いものはない。
 「あんたたちって便利だったんだねェ」
 「どーゆー意味だ……」
 「遅刻防止用近道。」
 短い青髪の頭をかかえる。いまひとつ新来のティリスに対する驚異といおうか苦手感覚が抜けきっていないレイである。超能力(エスパッション)というものの実在を知ってまるで動じない普通人というのも、神経回路が並ではない。ヘレナはもっと、知らされた当初は困惑していたものだが。
 「まあまあ」
 そのヘレナがティリスをひきずって行き、疲れきっているレイはエリーがせきたてた。
 実のところ、おちょくって遊ばれているのだとは、気づいていないのは本人だけである。
 IDカードで検疫と出国手続きと。
 地球圏まで十八時間の船旅はいつもの通りなにごともなく過ぎた。
 
 「一般船室にしましょう。その方が目立たないわ」
 言ったエリーのセリフはもちろん、逆に、とか、かえって、とかいう意味だ。VIPはVIPの顔を知る。休暇の間中またいつかのように、記者だの求婚者(やじうま)だのについてまわられたのではたまらない。
   彼らはそもそも、とある著名な科学者のもとに超越能力者の研究という名目で集められたスタッフ達だった。むろん、世間に対してはそんな能力が現実に存在する、実在はおろか、博士の研究所自体が極秘にされている。
 いずれ、もっとも着実な方法で、社会への公表と市民権の獲得を、というのが、全国の隠れエスパッション達を探し出しては秘かに連絡を保っている、特にサキの、目標だったのだが  とまれ、科学者の秘密、なぞというものは裏街道のいらぬ誤解をうける。
 スパイやら特殊部隊やら、降りかかる火の粉を払っているうちに

 
 
 さあらさら……

 古代の謡(うたい)のひびきのとうりに草原のうえを風が吹きぬける。

 さあらさら……
 むかし むかしのものがたり……

 「広いわねぇぇ」
 だれかの呟やきに、舞のかたちをとりかけたサキの指がとまった。
 「怖い?」
 「ケイは宇宙船生まれだもんな」
 「大丈夫よ……でも」
 「こうして見ると、つくづく水の豊かな星だねぇ」
 「本当にこんな所があるんだねぇ」

 
 リスタルラーナ星間連盟首都惑星から地球まで、何万スランという距離も、いまでは片道わずか十八時間。船旅はいつもの通りなにごともなく過ぎて、ところが、そこから先がおなじくらい長かったのだ。
 極東草原地区に一番近く、隣接して建てられているシソカ市まで民間航空機で六時間。そこで一泊して、出身者のサキはともかく、他都市の人間やら、レイ、ケイ、ティリスといったまったくの異星人達が民族自治区に立ち入る許可をとりつけるために、半日。
 (結局のところサキの“顔”が通用したけれど  これは、実際、異例のことなのだ)
 磁性列車とエアローバーを乗りついで、目的地のサキの生家にたどりついたのは、さらに次の日の午前になっていた。
 「秘境〜(田舎)」
 「驚異の世界っ」
 「まだ本当にこんなところがあるのねぇ……」
 等々。
 機械と文明にかこまれて育った四人娘たちは行路のあいだじゅうきゃあきゃあと騒いでいたが。
 海港都市シソカから長い長い傾斜地をよじのぼり、極東の、草の高原のはじまって数キロのところに、サキの生家は建っていた。
 白い、小さな館(やかた)である。
 見渡すかぎりの草の原、そのただなかに、塀も門もなくすらりと緑のなみに洗われている。
 「マハール廟のようだわ」
 すでに失なわれて久しい遺跡の名を、写真で思いだしてエリーが呟いた。
 「似たようなものかもね。いまは母さまが眠っているし」
 「“灰色の貴婦人”が?」
 「ここは、部族最後の祭祀のあった土地なんだ」
   地球現代史の幕あけとなった、その事件を知らない者はないだろう。かつてここは二度にわたって世界を動かす舞台になった。いずれも主演は一人の女性  サエム・ラン=アークタス、あるいは蘭家の冴夢と呼ばれる、伝説の最後の巫女王である。
 「ここは、部族最後の祭祀のあった地なんだ。普通はもっと御山(みやま)にちかい辺りでやるんだけどね」
 「で、その御山とやらまではどうやって行くんだ?」

 
 
 
 
 
   さあら さら
   さあら さら
   むかし むかしの ものがたり
   死ぞ過(か)し往きて 還りこず
   ただひとなみの 白き骨
   うたうはされど 恋人か
   木々の梢えの枯れわたる
   鳴き 泣きゆきし 神鳥の
   ひびきの明日こと地につかん
 
 
       人の世の知らぬげに
          草原はただ 風の楽土  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   エリー、ケイ、ティリス、ヘレナ、レイ

   ここでの生活は身がもたない
 
   たけたかい草の荒原は夏。
 
   生女神、巫女王、斎姫、祭司
 
 
                  .
 
 「  仮に、思想的・人間的に未発達な精神を抱えている“誰か”がいたとして、その“誰か”の知的能力が十分に高くさえあれば、綿密な分析や計算の上に立って、表面的な「人格者」を装うのは不可能事じゃない。現にわたしはそうした人たちを幾人か知っていたし  そのうちの1人、本人でさえ自分の演技を自覚しえない程完璧に成りおおせていた人はとりわけ見事に周囲をあざむき続けていた人は、周囲から冗談で、“ソレル女史2世”なんて呼ばれていたよ……」
   ティリスは何も云わなかった。それから、ややあって、目線を上げた。
 「レイは? さっきから何も言わないみたいだけど……」
 「  ああ、レイに関しては意見を言わせようとした所で無駄ですわ、ミズ・ティリー(ティリーさん)」エライジャ(エリー)が口をはさむ。
 「ある2つに実害を及ぼす事のない限り、彼女は女史に対しては絶対服従ですわ。ゼネラの倫理観というものはあたくしには理解しかねますけれど、サキの部族の古語にそれに近いものがあったように思います。そう  確か、イッシュキッパンノウンギ……だったかしらね? サキ?」
 サキが彼女の発音を直している間にそれまで黙りこくっていたレイがふいと立って窓際へ移動する。
 「然りそのとーり、ってね。『どーとくてきかんじょー』なんてシロモンはあいにくとあたしには何の価値もない」
(「じゃあ『ある2つ』ってなあに」いつ目を覚ましたのかケイがそう質問したが、それは今のこの話題には関係ないわ、とのエリーの声で大人しく黙らされ、ティリスは考え深げな顔でレイの方を盗み見た。)
 
               .
◎ エスパッション・ストーリィズ第1話草稿として。
     ティリーさんによる前書き。        83.1.10.

 この話をあたし、1人称主語で書く気ってなかった。あのですね、この話、あたしの話ではないわけなんです、もちろん。なんでもちろんかっていうと  読んでみてもらえれば解ると思うけど、こんな凄いマネ、あたしにできる筈がない!
 実話です。
 んで、他人の話なのに、なぜあたしが1人称代名詞を使って文章書いちゃうか  ていうと、この話を身振り手振りでえんえんしてくれたサキ達の語り口調があまりにも達者だったからで。どんなに巧く書いても、あたし、3人称主語で彼女の物語のあの臨場感、出せる自信ってない。
 それと。
 つい最近、やはり同じサキが、地球の古代小説1話、訳して誕生日に贈ってくれまして。それがやっぱり1人称主語の、仮空のストーリィだったんですよね。
 それまで公式に、地球の文化史の一端を招介する為として直訳されていた“シショウセツ”てやつしかあたし“自分”をあっし示す主語で書かれた物語って知らなかった。あたしあの根の暗いなんかぐちゃぐちゃしてわけの解んない話ってきらいで。だからだいぶ以前にサキと議論しまして  “なんで地球ではこういう表現形態つくられたわけ?”
 あ、その地救語にもこの話、翻訳してもらえる予定だから、これだけのフレーズって不親切か……リスタルラーナ文明圏ではこういう形式の文学ってこれまで存在していませんで。だからとっても不安……自分で、うまく書けているのかどうか。
 どうも話がズレました。とにかく。1人称主語形式の小説のごく1部しか読まないで“不健全、意味のない思想”と決めつけていたあたしにサキがあらためて贈ってくれた話……面白かったんです。もの凄く。
 「地球式の分類でいくと、それって“文学”扱いはされていないんだよ  。」
 とは、サキの言。……どうもいまいち、あたしは地球人の物語観というものはつかみきれない。あの話あんなに面白かったのに。
 すっかり考えをあらため、“1人称主語”に惚れこんでしまったあたしは、ともかく実験作としてこのストーリーをみなさまにお届けしようと思います。
 だけれど始めに書いたように主人公はあたしではないので。“わたし”とサキは自分おことをきちんと発音して呼びます。
 
 それでは。
 むかし、むかし……と、実はつい最近のできごとなんですけれど、リスタルラーナ文学最盛期のもっとも正統な語りくちからこの物語を始めることといたしましょう。御用意は、よろしいですか? それではしばしひととき。
   むかし、むかし……
 
            宇宙暦0018.第9月.41日,
            ティリー、ことティリス・ヴェザリオ記。

 
 
 
                              

○ 1話終わったあとにラストとして
  “タイム”のエピソードもって来よう。

○ テーマは? とにかくエスパッション書きたい。

○ ラスト、てか後がきがわりに「どお?」
  「う〜ん。やっぱ実名出すのってなまずいんじゃないの?」
  とか、入れる? ソレル女史云々のふくせんとして。

○ あんまし大枚にはしたくねーなー。“俺と好”もぜんぜんメド
  ついとらんのだし。

○ とにかくこれ書くとしたらよほどいっしょけんめ書かなきゃ。
  んでもって本物の後書きに“実は姉貴と共同の物語なので”
  ての書くわけ。

○ ……だけどホントにマジに1人称で書くわけ  
  まあ、試作の1話くらいはいいんじゃないの? うん。

◎ 前書き(ティリー)  本編(サキ)  後書き(会話)
    あとあがき(まやと)、くらいの構成。

○ え、あたしの悪友たちの莫迦話につきあって下さっちゃって
  ありがとうございます、てんであとあがきはじめたいな♪ 

 
 
               .
 
○ やっぱ3人称にしましょうね。1時の興奮でペースを乱しちゃ行けない。
 

(起) 仕事か何かで移動の際に休暇を兼ねて
    豪華客船で時間を潰すことにしたソレル女史一行。
    / 連盟警察特務版(男女2名 or 男性数人)が
    悪人(テロリスト、惑星独存論者、ケティアと同郷かしら)
    追っかけて船に乗りこんだところVIPがいたんで
    万がいちを考えて護衛に人数をさく。

(承) 悪人集団との実に明るくインケンな小競りあい。
    サキ達と特務の珍道中。

(転) 盛り上がりの大詰め。宇宙空間銃撃戦。

(結) 目出度目出度(めでためでた)。

 ※  あくまでも長編にする気はない★ 100枚or400枚だっけ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 う〜。設定資料持って来とらんと無理じゃー。
 注)<って書き込んであるってことは、
 つまり、学校で授業中に書いてたわけですね、これ☆ (^◇^;)”

 
 
 登場人物。
 
 ソレル女史御一行(女性5名):
 ソレル女史。…… 氷の女博士はまだ外面が悪い。
 サキ  ………… 基本設定おっかけると暗くなる。
          初期のイメージで。16歳半くらい。
 レイ  ………… 同上。髪切ったあと。17歳。
 エリー ………… ソレル女史の片腕としての活躍の片鱗を
          見せはじめている。えっと、20?
 ケイ  ………… いつもどーりだよ。15歳の誕生日を兼ねる。
 
 特務班御一行(男性6人):(男女、&関係ないの、1人?)
 ロキ
 レザイ
 サリス
 リセ
 ヤミン
 ラシエ
 
 悪人さま御一行 : なにをやらせよう?
 
 
+++++++++++++++++++++++++++++++
 
 
○ やっぱり彼らの時間的・社会的 situation をしっかり考慮に入れなければストーリー、組めないよ。明るい話、暗い話の別は小手先で変えられるんだから、さ。

○ 時間的には基準年齢であるサキ・17歳の1歩手前。16歳半。
  レイは髪を切り、サキは片方失明した後で、だけど1ト月も間を置けばこの連中のことだから、他人の前ではもうすっかり明るくなりきってる能天気少女。エリーはジースト滞在中にすっかりソレル女史側近としての能力を身につけはじめ、外交官になろうという志望を確立している頃。ケイは……スクーリング期間の楽しい思い出があるね。
  やっぱりエスパッション号を舞台とする。のだとしたら都合上ジーストの子供達を迎え入れる以前、てことは  レイがまだリスタルラーナに戻っているヒマがあるのだから、“嵐のはざまに”からそれほど時間たってないね? てことはサキはまだなんとなく暗っぽい。悪人が乗り込んで来た時に素直に善悪2元論はたてない筈。
 ソレル女史は不在。
 
○ 社会的には……もちろんソレル女史の名を出せば誰も知らぬ者のない。でもそれはまだ高名かす崇高な女性科学者として。サキは“サエムの娘”として地球知識人階級ではどこへ行っても通用する筈だけれども、無名。レイはジースト開国前後にヴィジ・スター程の知名度になっちまったけど髪切ったし大分面変わりしたからね。
 
 
(サキ、レイ、ケイ、エリーの雜描きイラストあり。)
1.14
 
○ よーするにさー、“散る宇宙(そら)”と“癒えない傷跡”の中間に入る物語書きゃあいいわけでしょ? 明るいストーリー考えようとしてこれ以上の所はないって位置ねっ!!
 
 
◎ その半年間のサキの行動  

  ある程度元気を回復させてからジレイシャ・アンガヴァスを離れる。(レイは?)
  しばらくうろついた後、
  エスパッションへ帰り、
  リスタルラーナ上に下宿を持つようになって、
  その間E.S.P.によるものとしか思えない犯罪があいつぎ、(“傷跡”発端)
  ソレル女史が従兄妹の保安局長にかけあって、
  サキ、レイ、調査の為ジーストに飛ぶ。
 
◎ 100枚という枚数制限がある以上、登場人物は極力しぼらなくちゃいけない。……だってさ。100、てゆーのは、1聞、大変そうに聞こえるけれど結局は短編でしょ? (調べてみたらば“あたしの中の……”が90枚。)ついでに仮にもコバルトへ初投稿しようって作品である以上、それらしいネタも仕込んどかなければならない。

◎ 
 
 
+++++++++++++++++++++++++++++++

? ヒッチ・スペースシップやってぶらりぶらぶら1人旅途上のサキ、とある辺境航路で、半年前に発見されたばかりの“虹色岩礁”を撮りに行くというカメラマン(実は連盟保安局情報部or特務部)と知り合い、ヒマなこととて着いてこうかなァという気になっている。

? 途中、恒星系近くでワープアウトしてきた他の船とガッシャン。乗っているのは子供ばかり。

? 虹色岩礁に最も近い恒星系の唯一の惑星へ、非合法にだまされて入植させられた1団が危機に瀕しているという。あいにく通信器とレーダーがいかれまして。(対隕石バリアは無事)。

? 空気量が足りなくなったら惑星に不時する余暇ナイのではないだろうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○ テーマっていったって結局はサキの恰好良さを描きたいだけなんだい。

○ “エスパッション”てな言葉や具体的にで表すのやめよう。その方が2作目おもしろい。
 
 
 

                .
1.19.

 あらすじ第1稿

(プロローグ) 10枚

○ 雨やどりから知り合って偶然同じ船に乗ることになっていた2人。
  (でなくても良いなァ、別に。)

○ サキとルイック。宙港に向かう途中でチンピラにいちゃもんつけられて(>人買い船の伏線?)サキが腕がたつこと、慣れてる様子であることを示す。

  決めなきゃならないこと。
  ・ どこの惑星? 辺境だよ。 < リネークーラ。
  ・ 虹色岩礁の説明。 < 必要なくなったね。

(起) 20枚

○ 船旅は数日間、チェスでもやって「お宅……手を抜いてるね」で知能の高さ。ぐわしゃんと事故ってサキの即応性、簡単な医術。船長・船医なかと知り合ってコックピットへ入り込む。

(承) 20枚

○ 酸素が足りない。通信機がいかれた。とりあえず応急処置中にブラックシップの攻撃。航行機能はなはだしく落ちる。ルイックが後ろからまわって敵さんやっつけようという計画をたて、「あ、わたしも行く。」「普通の女の子が……オレ保安局。」「肩がきありゃ偉いってもんじゃないでしょ。」 で、勝利。サキESP伏線?

(転) 20枚

○ 人殺し!! つーんでサキが落ちこむ。空気足りないし座標を失っちゃった。……んで不時着。子供達が回復してダメだダメだと騒いだ時には遅すぎた。気絶して助けられて「何処です」「惑星アンブラ」「失われた楽土(リアンブラ・アルマローロ)?!」
 隊長さんのお話。「エルリエイラ(大エイ帝国)も地におちたなー。」

  ・ ディテール作ること。

(結) 20枚

○ 数日たってサキは子供の相手したりなんだり。脱出作戦途上にスパイと看視員たち相手にドンパチやってルイックのフラッシュボン☆
「これは試作品だったんで性能あまりよくないんだ」ゆーて工具借りて自分のを改良するサキ。そうこうするうちに日数がたって敵さんの船がおりて来る。ドンパチ。「人殺すのやだ!」「殺さなきゃやられんだぞ」「そのほうがいいもの!」「オレ達見殺す気か? かもしれない知らない人間の方が、あんたが死んで悲しむ人間より大事だってのかよっ!!」
 そして  サキは撃ち。特務部Dクルーがドタンバで騎兵隊。
 
 
(エピローグ) 10枚

○ 船着場にて。ルイックはDクルーと共に更に追って行く。サキはまたヒッチハイクひっかけて。
 
○ 「“死んで悲しむ人間”のリストにオレも入れといてくれよな。」
  握手して good bye.
 
 
 
(※ サキのESPと世界情勢と保安局の機構と、
   どこに入れるのよお?っっ)
 
 
                 .
1.21.

 設定なんかもういいじゃぁないか書きだしちゃいたいよ、という気がしないでもない。下の絵を見てタージが描いてくれたやつ、次ページ。

(※高校の時の友人?の描いてくれたイメージイラスト
  ……あったはずなんだけど、現在行方不明……(T_T)” 


 そうかサキってもともとこーゆー顔でこーゆーきつい表情をしてたんだ。う〜ん。なまじ迷いや色気が出てから紀久子さんに“女々しい”と酷評されるようになったもんなァ………………

 
 120ぶんの設定を決めるまでは描かないこと。
 
 

 (サキとレイのイメージイラスト(自作)あり)

                .

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