二、記 者 団
サキたち三人は一瞬ソレル女史の言った意味がわからずにキョトンとした顔になりました。
地球連邦の会議はリスタルラーナ側と同じ時間に行われたはずです。
と、いうことは、地球側の会議の結果がリスタルラーナに届くのは、早くとも今日の夕方までということになるのです。
『なにをそんなに驚ろいているの?』と、ソレル女史。
こういう時の女史は、ケイがいたずらを考えている時と同じ目をして笑いました。
『だけど女史、いったいどうやって……?』とレイ。
『まだ地球国内にも公布されていない時間ですよ。』
『私の勢力範囲がリスタルラーナだけだと思っていたのなら間違いですよ。古来から自分が行く事のできない場所に代理人(エージェント)を置くのは当然の事とされていますけれどね。』
ソレル女史はいったん口を切って三人が納得したかどうかを確めました。
『ケイの試作したテレパシー感知器の性能がいいと言って喜んでいましたよ』
わあっ と、三人は喜びの声を上げました。
『それじゃわたしたちの“仲間”なのね!?』とケイが言いました。
『どんな人なんですか。名前は? 年は?』とサキが言いました。
『何級能力者なんですか』と、超能力者を別段珍しいとは思っていないレイが落ち着き払って聞きました。
『そうですね。正確には計った事がないけれど、だいたいBの上かA級ぐらいでしょうね。』
ソレル女史は最後の質問にだけ答えました。
その話は食事をしながらゆっくりすることにしましょう、と言うのです。
『今はその暇がありませんからね』
女史の言う通り、四人が歩いて行く先、連合本部ビルの表玄関には、多勢の新聞記者がたむろしていました。
「ギャア!!」 レイがいつもの癖で叫びました。
「ひょっとしてあの連中、あたしたちのこと待ってるんじゃない!?」
「そりゃしかたないよ。なんていったってレイが今日の会議の主役だったんだから。」
「そうそう。ね、サキ、わたしたちは先に行って反重力車(くるま)を出して来ましょうよ。」
「う……ん。そうだなァ。わたしらは今のところ関係ないんだし……」
サキはしばらくためらっていました。レイを見すてるのも悪いんだけど……。
でも結局、目の前の記者陣にはかないません。
ケイに引っぱられて走りだしたサキにレイが一言、
「裏切り者ぉ!!」
ソレル女史が笑いました。
「さ、行(ゆ)きますよ、レイ。話していい事と悪い事と、うっかり言葉じりをとられないように気をつけなさい。なにしろ総会専門の記者のしつこさと言えば、ことわざに引用されるぐらいのものですからね。」
「だいじょうぶですよ女史、間違えやしませんから。……しっかし、議員集団の次は新聞記者か……。ウエーッ。」
ソレル女史が、かつてはいつでも動いていたリスタルラーナ式の自動回転扉を手で押して一歩外へ踏み出すと、……わっ、と記者の群れが押し寄せて来ました。
(☆Gペン入れた「挿し絵風」絵柄の正装の女史とレイのイラストあり)
初めの十分程はレイもあまりひどい目に合わずに済みました。
記者たちが、異星人に好奇の目を向けながらも、まず取材しなれているソレル女史に話しかけたからです。
彼らは、かつての地球の新聞記者ほど無作法ではなく、質問を始める前にはかならず挨拶を交わすことになっていました。
ことにソレル女史には礼儀正しく振る舞います。
彼女が優れた科学者であるということより、彼らにしばしば特ダネを提供するということのために。
ソレル女史は彼らに、レイの母国ジースト星間帝国のことや、レイが女史のもとに来た時のてんまつ、ジースト星系で産出される多量のそして地球=リスタルラーナにはないエネルギー鉱石のことを、かいつまんで話しました。そして、会議で話したと同じ演説をもっと手短かに、わかりやすく話し、最後にこう言って口を切りました。
「わたくしは、リスタルラーナの頭脳たる連邦議員のみなさまが、母星の利害などにひきずられて判断力を失ってしまうようなことはしないと信じています。」
もちろん、この言葉が活字になり、各議員が母星と連絡を取る前に目を通すことを予想した上でのセリフです。
いつも自星の首脳陣としめし合わせて来る何人かの議員に、先手を打ってクギをさしておいたわけです。
ともあれ、これでソレル女史が話すことはなくなりました。
レイは(内心嘆息をつきながら)にこやか〜に笑って、やつぎばやな質問に答え始めました。
4年前、10の時です。女史の宇宙船の中にいきなりはきだされた。
はい。ええと、ジーストはあまり科学が発達してないんです。それで宇宙での事故がよく起こるんだけど、その時できた空間のゆがみではじきとばされて来たらしいんです。まあ、一種のワープみたいなものだと思うんだけど……
実は、あたしにもよく解らないんです。事故の時のケガでところどころ記憶がなくなっちゃってるんですよね。
はい、一度目の呼び出しの時に。
ジーストは身分制度がうるさいんです。帝政ですから。それであたしみたいな身分の低い人間は、元首と会うことは許されない。
レイ。シスターナ・レイズです。
かなり鋭い質問から愚問としか言いようのないものまで、実に延々と長々しく質問が続きます。
最初のうちは落ちついていたレイも、20分もたったころにはすっかり混乱してしまいました。
『女史!!』
ぐあいの悪い質問に黙秘権を行使しながら
『この連中、いつもこんな早口なんですか。』と聞きました。
異国人というのはこういう時に便利です。都合が悪い時は意味がわからないふりをしていればいいのですから。
『そうですよ。むしろ普段より遅いくらいですね。』
いつもこんなのとつき合っていられるなんて、女史はいったいどういう神経をしているのでしょう!!
レイは(もともと短気なので)もう質問を聞くのもいやになりました。
(未完)
(※推測するに、コレ書いてたのは『指輪物語』(原典)を読んだ後で、アニメ映画版を見る前。かな? 竹宮の『地球へ』と萩尾の『11人いる!』の影響モロうけまくり……ていうか既に「模写」状態だった……から脱却して、「海外児童文学または海外幻想文学(翻訳ファンタジー物)の挿し絵風絵柄で、「自分で文章書いて挿し絵も描く!とか、考えていた頃のやつ……☆(^◇^;)☆)