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 寮母(ハウスマザー)はいたが、アロウの寄宿舎は起床・消燈から食事の献立てに至るまで、全て上級の舎監生による、完全な生徒自治区になっていて、ヘレナは幸いにも舎監委員会の方に「顔」が利いたので、サキと二人、具合い良く東棟の2人部屋におさまった。
翌朝、四月三日、  サキの10回目の誕生日。
ヘレナはだまってショートケーキを二つ買ってきた。
むかいの部屋の、落第(どっぺっ)て再新入したという金髪の長い少女がお茶をわけてくれて、二人はやはりだまったまま、それを食べた。
この日も一日、二人はほとんど口を利かず、四月に入ってからほんの5〜6回しか話していない。
原因は、サキにあった。
 
四日、午前中、校内を見学。午後校外の地の理を見て歩く。
夜、夜ふけてサキが声をしのばせて泣いた。
隣のベッドに横たわったまま、ヘレナは何時間もそれを聞いていた。
 
五日、入学式、入寮式、新入生歓迎祭。
基本科生徒会長が面白い人で、身振り手振りも大げさに、今年の新入生は恐しくていけない。半年後の大難関を気にして今からライバル意識なんぞをむきだしにしていると、ペーパーテスト以前に性格審査で落ちるだろうにと嘆息してみせたので一同大爆笑となった。
サキが久し振りに笑った。と見る間に、何がおこったのかにわかにしゃべり始め、昔のこと、未来のこと、どうでもいいこと、大事なこと、話しつかれて寝入った六日の夜明けには、すっかり以前の快活さに戻ってしまった。
六日、生徒総会の間中、ヘレナはサキのことばかり、眠い目をこすりながら考えていた。
委員選びでヘレナは前期に続いて今度は会計委員長となり、サキは、なにかしらやりたそうな顔をしていたけれど、結局何にもなれなかった。
 七日、授業が始まり、サキは生徒会新聞部に入部した。
 
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