(※「コクヨ ケ−31 20×20」使用、シャーペン縦書き)
(劇中劇その一)
あたし達はオリス・ケアラン 《暁(あかつき)の星》。
創芸学市アール・ニィでも一番の興行収入を誇る映像集団だ。
仲間の半分は地球人留学生。
その、提案で。
技術の進歩した 進歩しすぎた リスタルラーナの、味覚・嗅覚や温度・振動まで付く個人用密室感受器が一般的(あたりまえ)なところへ、あえて集団観賞用の開放立体映像をぶつけてみた。
ウケた。
部屋から出て、誰かと待ち合わせをし、同時にひとつのものを体験して笑ったり泣いたりし、終わってから一緒に食事でもして、話すうちに時間を忘れる。
そんな後進国地球のいちばん安上がりな娯楽に、文明人は飢えていたのだ。
おかげで人口管理局から“結婚・出産率の向上に功あり”とかで表象までされてしまった。
映画のソフトはむろん、高価な投影装置も飛ぶように捌けて売上は天文学的。
企業は出資をしたがって相乗りでもいいと列をなすし、政府の援助金まで出るし。
新作のための条件は万全なのだ。が
動く絵コンテともいうべき合成画面はおおざっぱな色・形・動きと台詞(セリフ)を投写した立体映像で、会議卓をとりまいた連中がてんでに端末から入力するたびに、主役がおしのけられたり脇役がめだったり、いきなり場面転換だの色調の変更だのしたりする。
飛び交う主張のまあ喧(やかま)しいこと。毎度のこととは言いながら、予定を三日も超過しての連夜の激論である。
撮影の準備はほぼ整っていると、いうのに。
全員そろって息の切れた一瞬の空白を拾い、
「応慶(オー・ケー)」(よろこんで応じます ? “了解”の意の慣用句:翻訳表示)
と、地球前史時代の一地方の俗語(らしき
.
(劇中劇その一)
あたし達はオリス・ケアラン
創芸学市アール・ニィでも一番の興行収入を誇る映像集団だ。
仲間の半分は地球人留学生。
その、提案で。
技術の進歩した
ウケた。
部屋から出て、誰かと待ち合わせをし、同時にひとつのものを体験して笑ったり泣いたりし、終わってから一緒に食事でもして、話すうちに時間を忘れる。
そんな後進国地球のいちばん安上がりな娯楽に、文明人は飢えていたのだ。
おかげで人口管理局から“結婚・出産率の向上に功あり”とかで表象までされてしまった。
映画のソフトはむろん、高価な投影装置も飛ぶように捌けて売上は天文学的。
企業は出資をしたがって相乗りでもいいと列をなすし、政府の援助金まで出るし。
新作のための条件は万全なのだ。が
動く絵コンテともいうべき合成画面はおおざっぱな色・形・動きと台詞(セリフ)を投写した立体映像で、会議卓をとりまいた連中がてんでに端末から入力するたびに、主役がおしのけられたり脇役がめだったり、いきなり場面転換だの色調の変更だのしたりする。
飛び交う主張のまあ喧(やかま)しいこと。毎度のこととは言いながら、予定を三日も超過しての連夜の激論である。
撮影の準備はほぼ整っていると、いうのに。
全員そろって息の切れた一瞬の空白を拾い、
「応慶(オー・ケー)」(よろこんで応じます
と、地球前史時代の一地方の俗語(らしき
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(※「コクヨ ケ……」の「裏紙」利用。シャーペンで縦書き、ものすごい殴り書き☆)
(4枚目)
耐えられるのはたしかだが、滞在予定は未定であるし、大気中の水分はゼロにちかい。
「なんで市街地の空調 ……
……やっぱ、あまりにも判読困難なんで、
アップするのは、やめておきます……☆
(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)”
だってこれ、
手書きの殴り書きの第一稿(?)だけで26枚もあるし、
同人誌既発表の完成原稿が、どっかにあるハズだし……☆
.
(4枚目)
耐えられるのはたしかだが、滞在予定は未定であるし、大気中の水分はゼロにちかい。
「なんで市街地の空調 ……
……やっぱ、あまりにも判読困難なんで、
アップするのは、やめておきます……☆
(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)”
だってこれ、
手書きの殴り書きの第一稿(?)だけで26枚もあるし、
同人誌既発表の完成原稿が、どっかにあるハズだし……☆
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(※青い和紙風背表紙の大学ノート型原稿用紙にシャーペン縦書き)
"The Psy-tech Ladies of Terazania"
presented by Toki, Masato
〇、紫昏迷走
白と青の二連星
それは、予知だった。
ひとを数倍する永い生をへてきたライラは、それでも、おのれの最期の時を知らされた知った者の怖(おび)えで震えながら目を覚ました。
それではとうとう終わりがくるのだ。
終わりのはじまりが。
白と青のふたりが訪れるとき、すべては動きだす。
佳(よ)いほうへか、
悪いほうへか。
世界全体のことなど、じぶんのあずかり知らぬことではあったが。
まだ、だ。
あたしにゃ、見届けておきたいことがある。
冷たい汗にぬれる体をビロードの寝台からひきはがし、としおいた褐色の美貌にこずるい年齢にさまたげられない生気に満ちた微笑をうかべると、 夜の、明けきる前、わずかばかりの荷物をまとめ、豪奢な部屋のすべてを捨てて、
ライラは、逃げた。
一、序章 式典開幕
星史(せいし)十七年〇八〇三(ぜろはちぜろさん)。
地球人の惑星連邦テラザニアが異星人類の星間連盟(リスタルラーナ)と国交条約をむすんで十七年になる。
国境恒星系《最涯(さいはて)》軌道上の公易第七宙港は、折しも任期満了で帰国の途にある対連盟大使ムベンガ・ラナ=ロイシをむかえて、近隣星域中から著名人や高官がつめかけていた。
収容客数二千名をほこる加重力集会場。
遠心力をつかう連邦(テラズ)式宙居にしては広すぎるために床が半球状凹形の局面になっている。
それを逆に利用して壁ぎわからでも顔をあげれば見おろせるよう設計された中央の壇上。
すらりと背すじが伸びて遠目にも美しい女が、はりのある声で式次第を告げようとしていた。
「女史および博士がた(ソリ・セラ・ヴィ) おあつまりのみなさま。本日はようこそ(リ・セーテ・エクセラ) 本日はようこそおいで下さいました」
幾人か列席している連盟人(リスタルラーノ)に敬意を表し、また開国記念ということから、かならずはじめに連盟語(リスタルラン)を、つづけておなじ内容の連邦第一公用語をと、一文ごとにくりかえす。連邦主催の行事における公式礼法のひとつだ。
第一以外の公用語か少数部族語しかわからない参加者のためには個別に通訳がはいるから、そのための時間差も計算にいれてゆっくりただしく。
語学と儀典法の二本立てで難関とされている司会者資格の一級を持っていた彼女は、しかも開会のあいさつから終了後の余興まで二十いくつの演目を、メモひとつ見ずに正確このうえなく伝達してのけた。
「時間につきましては一応……となっておりますが、こればかりは御挨拶をいただく先生がたの、おきもちしだいでございますので」
予定は未定とさせていただきますと茶目っけたっぷりにつけたして聴衆の笑いをとったのは、ひとりふたり、広長舌(ながばなし)で知られる大学教授がいたからだ。
つられてまだ苦笑している宙港総長が話者の一番手として立ちあがり、記念式典は本格的にはじまった。
臨時で公務についているしるしの、緑の連邦記章にはセラ・レン=エラ。 ただし、偽名だ。
二、無重力騒動
無差別投票でえらばれるテラザニアの公職員には講演上手が多い。
だというのに舞台からいちばんはなれた壁に無法者よろしく背をあずけ、退屈そうな視線をあたりになげていた。
紙のように白い肌。冷たい黄色の目。
はやりの鮮やかな青に染めたみじかい髪の前だけななめに流し、おなじ色彩の衣装できめて絵の具が三色あれば肖像画が描けますという極端な外見をしている。
周囲からあたまひとつぬきでる長身。
北欧系にしても高すぎる鼻稜(びりょう)がどこか特異だが、整った顔だちはひとめをひく美貌だ。
つつがなく祝辞のすすむあいだはそれでも遠まきにざわめかれているだけだったが、閉会の辞がおわるころには着飾った女性軍がわれさきにとすりよってきていた。
「キリアスとおっしゃるのね。すてきなおなまえ」
参加者みながつける胸の名札をよみとって、化粧美人がうっとりした声をだす。
こんな美青年をこのあとの祝賀会のあいだひとりじめできたらどんなに気分がいいだろう。
とりかこまれてあれこれ話しかけられるのをキリアス・ヤンセン=エラはしばらくのあいだうるさそうに無視していたが、
「おひとりでいらっしゃったの?」
「いや。相棒が ああ、もう来るな」
講演者が退場していく舞台をばくぜんと示してそう言い、意地の悪い笑顔をそちらへ投げたかと思うと姿勢をただして、愛想よく御婦人がたのお相手をつとめはじめた。
「まあっ、どなたですの」
さては著名人の息子かなにかだったのかとかってに期待してさらに盛りあがる一団。
つかつかと割りこんできたのはさきほどまで中央壇上で司会をつとめていた人物だった。
臨時で公務についているしるしの深緑の連邦記章にはセラ・レン=エラ。
あっさりした銀鼠(ぎんねず)の礼装には飾りといえば純白の蘭だけで、祝いの場所にしてはまわりの華やかさとくらべればずいぶん地味なのだが、信号のように目立ちまくるキリアスと向きあっても、上背のある優美な姿態はけっして見劣りしない。
知性的な面差しに欠点をさがす根性は、色気に満ちた女豹美女のむれにも持てないようだった。
欧亜混淆人種らしい白木に朱をのせた微妙な肌に、やや重いとりあわせの、おさまりの悪そうな濃褐色の髪。
星のような灰色の瞳はさもいやそうに相手の服をながめおろして、
「男装(それ)はやめろと何回言ったっけ」
けっこういい家のお嬢のわりに粗雑な言動なのは、同室のひとつ部屋で旅をつづけるキリアスの悪影響にほかならない。
「趣味だぜ、勝手だろ」
「同性にもててなにがおもしろいんだっ」
「あんたの厭がる顔」
「〜〜〜っ」
たしかに、知らずに見れば細身の男性、それも特上の美青年としか思えないが、よくよく観察すれば立ち襟のなかの細い首に喉ぼとけはないようだ。
あっけにとられる十人ばかりをおきざりに、怒ったセラ・レンは相棒の耳をつかんで曳きずり去った。
こんな人間と一つ部屋で旅をつづける不幸な友人が異性と知りあう機会に不自由したとしても、責任をとってやるつもりは、もちろんなかった。
式次第はつつがなく終了してそのまま祝賀会となる。
歴史が浅い連邦国家の低い税率からの予算であれば豪華であるとも洗練されたともいえないが、四方の通用扉があいて接待係が可搬卓をおしてくると料理がはこばれてくると薄給な為政者達は無邪気な歓声をあげた。
新年と連邦誕生日につぐ年中祭事だ。
食べて飲んで、楽しんだものの勝ちである。
その素朴で陽気なさわぎにまぎれて女性客がひとり、遅れて入場したのをキリアスはふたりとも見逃さなかった。していなかった。
うずをまく黒髪とほの白い肌の、堂々たる姿態の婦人。
高年にしては若々しく華やかな紫と銀糸の絹をみごとに着こなして、今日の主賓であるムベナ大使をかこむ一団へさりげなく近づいてゆく。
セラもキリアスも《闇》の幹部ライラの顔を知らず情報すら得られなかったが、現われた瞬間にひとめで判った。
まぶしいほどの紫光の気波(きは)だ。
これほどの潜在力とは思わなかった。
むろん普通の人間に視えはしないから隠すつもりもないのだろう。刑事たちに気波司(きはし)の素質がなくて助かった。と、考えるうちに、セラが軽い足どりで人波をぬけてやってきた。
司会役を高名な俳優にひきついで記章と蘭の花をはずしてしまった銀鼠(ぎんねず)の服はあっさりしてずいぶん地味だが、孔雀のように目立ちまくるキリアスのとなりに立っても決して見劣りしない。
「 彼女だね?」
かたわらを抜きさりつつ確認のためだけにセラは言い、
ああとうなずいてキリアスもあとを追う。
時間は、あまりなかった。
密輸組織《闇》の取り引きが今日この場で行なわれるとの確証を星間警察はすでに把んでおり、要員も相当数、すでに潜入している。
宴(うたげ)はまさにたけなわで、閉会と同時に参加者すべてが厳重な身元調査をうける。
《闇》の下層幹部で今回の主犯、《紫昏(しこん)の》と二ツ名をもつライラにこちらの正体と条件を説明し、承諾が得られれば、この場からの逃亡を助けてそのまま二人の所属する機関で保護する、と。
手際のよい交渉はセラのほうが適任だ。
キリアスは一歩下がって警察の邪魔がはいらぬよう、周囲に気をくばる。
「ライラ・ミタ=マンデラ女史(さん)? ちょっと内密でお話が」
「 あんたは……あんたたちは……!?」
その瞬間、彼女は自分の予知の正体を悟ったのだ、とは、二人に気付くすべもない。
大使一行と談笑していたライラがぎくりとして不審げにふりかえろうとした瞬間。
「そこまでよ。手をあたまのうしろで組んで、足をひろげて」
銀色の銃を少女の背につきつけて、赤毛の女が断固とした口調で言った。
「連邦星間警察です。密輸および麻薬類不正取引きの現行犯として連行するわ」
「ちょっ……と待って。なんでわたしらがっ」
あぜんとして云いかえすのへ左手がのびてカツラをむしりとる。
「こんな変装くらいでごまかしたつもりなの? 刑事の記憶力をなめないでよね。」
「痛ーったたたっ……」
セラが、悲鳴をあげる。
濃い銀鼠の服のせなかに、白にちかい純灰色の髪が、月下の滝、星月夜の瀑布(ばくふ)のように、ながれておちた。
いつのまにかまわりは私服刑事らしい一団でかためられ、ほかならぬムベンガ大使までが、「失礼」とか呟やいて取り出した銃を、ライラに向けている。
「ててて……。これは、もしかして」
涙のうかんだ目で連盟(リース)側の犯罪組織とまちがわれたかとあきれているセラに、
「らしいな」
と、はやくも気をとりなおして事態を楽しみはじめたキリアスが、皮肉な笑みをうかべた。
よこあいから紫昏のライラをかすめとる心算(つもり)で、どうやらどつぼにはまったらしい。してみると本当の取引相手がどうでるかと好奇心もはたらくが、とりあえず、反応したのはものほんの犯罪者である《闇》の幹部のほうが早かった。
おとなしく手をあげるふりをして髪飾りの石をぬきとり床めがけて叩きつける。
光弾が、炸裂した。
三、無重力空間狂詩曲
閃光。
空白。
悲鳴。
混乱。
首領の合図を受けて、場内に散っていた密輸犯たちは一斉に光弾を放った。
殺傷性はまったくないが、気力と視力の回復に数十分を要する特殊な武器だ。
一時的に盲目となった客たちが恐慌におちいり、
張りこんでいた警官たちとて、すでに役には立たない。
追い討つように遠くでたて続けの爆発音。
ぎしり。と、厭な音を発して。
惑星《大鼻》軌道に停泊中の航宙客船《蒼洋》は、加重力用の回転柱を、止めた。
斜めの揺激。
体重のなくなる一瞬の数秒間の、めまいに似た感覚。
続く数秒で長い裳裾やずるずるの民族衣装の二千人は。
かつて奢侈を誇る高天井だった無重量空間に、手に手をとって舞い散っていた。
料理の大皿があとを追い。
酒びんが中味をまき散らして飛んで行く。
目は見えないながらも皮膚感覚で一張羅に起きつつある惨事をさとり、女性たちが断末魔のような悲鳴をあげてもがきまわる。
ぐずぐずしていて渦巻く酒類だの踊る鮮魚の活け造りだのとお近づきになりたくない。
常人離れした回復力で視力と気力をとり戻し、あたりの悲喜劇を冷ややかに鑑賞したキルは、素速く気波の壁を張り、細かな浮遊物を避けつつ手近に来た大卓を片手でつかまえた。
振り出した反動でまっすぐ出口を目指し、扉の近くの、“床”にとりつく。
最初の光弾からわずかに二分。
常人離れした対応力である。
右腕でかかえているセラは、もちまえのカンのよさで突嗟に顔をかばったとはいえ、至近距離で直撃を受けて半ば気絶した状態だ。失神している。
まだ見えていない大きな目からパタパタ涙をおとしてを見ひらいて、ぶつくさ言っている。
「どおして……?!」
二人は《紫昏の》に会ったことはなかった。
当然彼女もこちらを知らないはずだ。
それが、顔を見たとたんのあの反応。
ちょっとあんまりではないかと茫然自失。
緊急放送がはいるのを聞いてようやく気をとりなおすというあたり、実戦には向かないやつ、と、野戦兵士あがりのキリアスは黄色い目で苦笑した。
(いきなり戦闘体勢?)
「あーくそ、もうっ」
セラが言う。知的な顔だちに似合わない悪舌だ。
二、三度まばたくと意志の勝った灰色の瞳に強い表情がもどる。
ただしキリアスほどの生体回復力は彼女にはない。
眼球と視神経は機能を停止したままで、副次的な知覚を作動させている。
いわゆる透視というやつだが、とりあえず動くのに不自由はない。
「どうする?」と、キルが尋ねた。
「追おう」
「ちょっと待って」
《紫昏》と闇の一味は会場からとっくに姿を消していた。
すぐに追えば船外へ脱出する前に捕まえることもできるかもしれない。
すくなくとも、この機を逃したら再度探りあてるのは至難のわざだろう。
キル一人なら迷わず追跡する。
全艦放送が破壊工作の発生と応急人員の不足を告げ、必要な職能とそれぞれの行くべき所を列挙している。
政府予算の少ない開拓惑星連邦(テラザニア)に独特の、全市民?臨機応変に民間人を行政に組みこむ公職登録制度の発動である。
二人の現在地は医師および無重力救助経験者の急行先として指定されている。
この場で仕事を見つけてもよいのだが、セラは航宙士や宙船整備工の資格も両手にあまるほど持っており。
一方で。
キル一人なら迷わず後者をとった。
自分の身も守れない役立たずに手を貸す趣味はない。
しかしここ(テラザニア)はセライルの古巣だし、主導権がそっちにあるのは認める と。
一単語の質問から言外の含みまで正確に読みとって、あまりのらしさに少女は苦笑した。
キリアスの性格は仲間の一人から「律儀で無愛想」と評されている。
すぐに真顔に戻って繰り返される放送に注意を集中する。
航法室・動力炉ともに人員を要求し、二千人の乗客高官や著名人がが無重力に溺れている会場へは有資格者ではなく“経験者”だけを振り分けているということは。
思ったより事態は深刻らしい。
どうも、面倒なことになってしまった。相棒のうす青く視える気波壁から身をはなして自信の真珠色の気波を張った。
「損害状況を。」
調べようと後半は省略して会場から泳ぎ出す。
よみとったセラは数瞬、考えていたが、「航法室へ」と強く言って会場から泳ぎ出した。
逆に急行してくるのはほとんどがセラと同じく連邦記章をつけた臨時の有志公職官で、それもそのはず、乗客と非番の乗員のほとんどすべては、会場に集まっていたのだから。(船内は無人に近い)
連行されかけて、「それ、女です!」
四、連邦警察第七支部
暫減した部下たちの残りをかき集めて逃走する犯人一味の追跡にあてたがまんまと逃げられ。
かろうじて捕えた二人組はどうやら民間人でこちらの誤解であるらしい。
大使ムベンガの無事だけはいちはやく確認されているのが不幸中の幸いというべきだったが、宙港都市の被害が大きく人員を救助活動にふりむけねばならなかったため、捜索活動は中断。
上司であるアリニカ警部補 たいそうな赤毛の美人 の憤怒の形相に、新任のパリス刑事はおそれおののいていた。
新任といっても連邦警察警備部隊では五年間てがたく勤めた中堅どころである。アリニカより年は上である。
このところ広域化の一途をたどる密輸幻覚剤事件のあおりをくらって捜査本部の応援にまわされたが、聞きこみや情報検索に必要なカンどころがいまいちつかめない。
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『テラザニアの斎姫連(さいきれん)』
夢を迎える者たち
尊貴(とき)真扉(まさと)
着想 一九九一年 三月 十六日
改題着筆 同 四月二十六日
第一稿 目標 五月二十六日
"The Psy-tech Ladies of Terazania"
presented by Toki, Masato
〇、紫昏迷走
白と青の二連星
それは、予知だった。
ひとを数倍する永い生をへてきたライラは、
それではとうとう終わりがくるのだ。
終わりのはじまりが。
白と青のふたりが訪れるとき、すべては動きだす。
佳(よ)いほうへか、
悪いほうへか。
世界全体のことなど、じぶんのあずかり知らぬことではあったが。
まだ、だ。
あたしにゃ、見届けておきたいことがある。
冷たい汗にぬれる体をビロードの寝台からひきはがし、としおいた褐色の美貌に
ライラは、逃げた。
星史(せいし)十七年〇八〇三(ぜろはちぜろさん)。
地球人の惑星連邦テラザニアが異星人類の星間連盟(リスタルラーナ)と国交条約をむすんで十七年になる。
国境恒星系《最涯(さいはて)》軌道上の公易第七宙港は、折しも任期満了で帰国の途にある対連盟大使ムベンガ・ラナ=ロイシをむかえて、近隣星域中から著名人や高官がつめかけていた。
収容客数二千名をほこる加重力集会場。
遠心力をつかう連邦(テラズ)式宙居にしては広すぎるために床が
それを逆に利用して壁ぎわからでも顔をあげれば見おろせるよう設計された中央の壇上。
すらりと背すじが伸びて遠目にも美しい女が、はりのある声で式次第を告げようとしていた。
「女史および博士がた(ソリ・セラ・ヴィ)
幾人か列席している連盟人(リスタルラーノ)に敬意を表し、また開国記念ということから、かならずはじめに連盟語(リスタルラン)を、つづけておなじ内容の連邦第一公用語をと、一文ごとにくりかえす。連邦主催の行事における公式礼法のひとつだ。
第一以外の公用語か少数部族語しかわからない参加者のためには個別に通訳がはいるから、そのための時間差も計算にいれてゆっくりただしく。
語学と儀典法の二本立てで難関とされている司会者資格の一級を持っていた彼女は、しかも開会のあいさつから終了後の余興まで二十いくつの演目を、メモひとつ見ずに正確このうえなく伝達してのけた。
「時間につきましては一応……となっておりますが、こればかりは御挨拶をいただく先生がたの、おきもちしだいでございますので」
予定は未定とさせていただきますと茶目っけたっぷりにつけたして聴衆の笑いをとったのは、ひとりふたり、広長舌(ながばなし)で知られる大学教授がいたからだ。
つられてまだ苦笑している宙港総長が話者の一番手として立ちあがり、記念式典は本格的にはじまった。
臨時で公務についているしるしの、緑の連邦記章にはセラ・レン=エラ。
二、無重力騒動
無差別投票でえらばれるテラザニアの公職員には講演上手が多い。
だというのに舞台からいちばんはなれた壁に無法者よろしく背をあずけ、退屈そうな視線をあたりになげていた。
紙のように白い肌。冷たい黄色の目。
はやりの鮮やかな青に染めたみじかい髪の前だけななめに流し、おなじ色彩の衣装できめて絵の具が三色あれば肖像画が描けますという極端な外見をしている。
周囲からあたまひとつぬきでる長身。
北欧系にしても高すぎる鼻稜(びりょう)がどこか特異だが、整った顔だちはひとめをひく美貌だ。
つつがなく祝辞のすすむあいだはそれでも遠まきにざわめかれているだけだったが、閉会の辞がおわるころには着飾った女性軍がわれさきにとすりよってきていた。
「キリアスとおっしゃるのね。すてきなおなまえ」
参加者みながつける胸の名札をよみとって、化粧美人がうっとりした声をだす。
こんな美青年をこのあとの祝賀会のあいだひとりじめできたらどんなに気分がいいだろう。
とりかこまれてあれこれ話しかけられるのをキリアス・ヤンセン=エラはしばらくのあいだうるさそうに無視していたが、
「おひとりでいらっしゃったの?」
「いや。相棒が
講演者が退場していく舞台をばくぜんと示してそう言い、意地の悪い笑顔をそちらへ投げたかと思うと姿勢をただして、愛想よく御婦人がたのお相手をつとめはじめた。
「まあっ、どなたですの」
さては著名人の息子かなにかだったのかと
つかつかと割りこんできたのはさきほどまで中央壇上で司会をつとめていた人物だった。
臨時で公務についているしるしの深緑の連邦記章にはセラ・レン=エラ。
あっさりした銀鼠(ぎんねず)の礼装には飾りといえば純白の蘭だけで、祝いの場所にしては
知性的な面差しに欠点をさがす根性は、色気に満ちた
欧亜混淆人種らしい白木に朱をのせた微妙な肌に、やや重いとりあわせの、おさまりの悪そうな濃褐色の髪。
星のような灰色の瞳はさもいやそうに相手の服をながめおろして、
「男装(それ)はやめろと何回言ったっけ」
けっこういい家のお嬢のわりに粗雑な言動なのは、
「趣味だぜ、勝手だろ」
「同性にもててなにがおもしろいんだっ」
「あんたの厭がる顔」
「〜〜〜っ」
たしかに、知らずに見れば細身の男性、それも特上の美青年としか思えないが、よくよく観察すれば立ち襟のなかの細い首に喉ぼとけはないようだ。
あっけにとられる十人ばかりをおきざりに、怒ったセラ・レンは相棒の耳をつかんで曳きずり去った。
式次第はつつがなく終了してそのまま祝賀会となる。
歴史が浅い連邦国家の低い税率からの予算であれば豪華であるとも洗練されたともいえないが、四方の通用扉があいて
新年と連邦誕生日につぐ年中祭事だ。
食べて飲んで、楽しんだものの勝ちである。
その素朴で陽気なさわぎにまぎれて女性客がひとり、遅れて入場したのを
うずをまく黒髪とほの白い肌の、堂々たる姿態の婦人。
高年にしては若々しく華やかな紫と銀糸の絹をみごとに着こなして、今日の主賓であるムベナ大使をかこむ一団へさりげなく近づいてゆく。
セラもキリアスも《闇》の幹部ライラの顔を知らず情報すら得られなかったが、現われた瞬間にひとめで判った。
まぶしいほどの紫光の気波(きは)だ。
これほどの潜在力とは思わなかった。
むろん普通の人間に視えはしないから隠すつもりもないのだろう。刑事たちに気波司(きはし)の素質がなくて助かった。と、考えるうちに、
司会役を高名な俳優にひきついで記章と蘭の花をはずしてしまった銀鼠(ぎんねず)の服はあっさりしてずいぶん地味だが、孔雀のように目立ちまくるキリアスのとなりに立っても決して見劣りしない。
「
かたわらを抜きさりつつ確認のためだけにセラは言い、
ああとうなずいてキリアスもあとを追う。
時間は、あまりなかった。
密輸組織《闇》の取り引きが今日この場で行なわれるとの確証を星間警察はすでに把んでおり、要員も相当数、
宴(うたげ)はまさにたけなわで、閉会と同時に参加者すべてが厳重な身元調査をうける。
《闇》の下層幹部で今回の主犯、《紫昏(しこん)の》と二ツ名をもつライラにこちらの正体と条件を説明し、承諾が得られれば、この場からの逃亡を助けてそのまま二人の所属する機関で保護する、と。
手際のよい交渉はセラのほうが適任だ。
「ライラ・ミタ=マンデラ女史(さん)? ちょっと内密でお話が」
「
その瞬間、彼女は自分の予知の正体を悟ったのだ、とは、二人に気付くすべもない。
大使一行と談笑していたライラがぎくりとして不審げにふりかえろうとした瞬間。
「そこまでよ。手をあたまのうしろで組んで、足をひろげて」
銀色の銃を少女の背につきつけて、赤毛の女が断固とした口調で言った。
「連邦星間警察です。密輸および麻薬類不正取引きの現行犯として連行するわ」
「ちょっ……と待って。なんでわたしらがっ」
あぜんとして云いかえすのへ左手がのびてカツラをむしりとる。
「こんな変装くらいでごまかしたつもりなの? 刑事の記憶力をなめないでよね。」
「痛ーったたたっ……」
セラが、悲鳴をあげる。
濃い銀鼠の服のせなかに、白にちかい純灰色の髪が、月下の滝、星月夜の瀑布(ばくふ)のように、ながれておちた。
いつのまにかまわりは私服刑事らしい一団でかためられ、ほかならぬムベンガ大使までが、「失礼」とか呟やいて取り出した銃を、ライラに向けている。
「ててて……。これは、もしかして」
涙のうかんだ目で連盟(リース)側の犯罪組織とまちがわれたかとあきれているセラに、
「らしいな」
と、はやくも気をとりなおして事態を楽しみはじめたキリアスが、皮肉な笑みをうかべた。
よこあいから紫昏のライラをかすめとる心算(つもり)で、どうやらどつぼにはまったらしい。してみると本当の取引相手がどうでるかと好奇心もはたらくが、とりあえず、反応したのはものほんの犯罪者である《闇》の幹部のほうが早かった。
おとなしく手をあげるふりをして髪飾りの石をぬきとり床めがけて叩きつける。
光弾が、炸裂した。
閃光。
空白。
悲鳴。
混乱。
首領の合図を受けて、場内に散っていた密輸犯たちは一斉に光弾を放った。
殺傷性はまったくないが、気力と視力の回復に数十分を要する特殊な武器だ。
一時的に盲目となった客たちが恐慌におちいり、
張りこんでいた警官たちとて、すでに役には立たない。
追い討つように遠くでたて続けの爆発音。
ぎしり。と、厭な音を発して。
惑星《大鼻》軌道に停泊中の航宙客船《蒼洋》は、加重力用の回転柱を、止めた。
斜めの揺激。
体重のなくなる
続く数秒で長い裳裾やずるずるの民族衣装の二千人は。
かつて奢侈を誇る高天井だった無重量空間に、手に手をとって舞い散っていた。
料理の大皿があとを追い。
酒びんが中味をまき散らして飛んで行く。
目は見えないながらも皮膚感覚で一張羅に起きつつある惨事をさとり、女性たちが
ぐずぐずしていて渦巻く酒類だの踊る鮮魚の活け造りだのとお近づきになりたくない。
振り出した反動でまっすぐ出口を目指し、扉の近くの、“床”にとりつく。
最初の光弾からわずかに二分。
常人離れした対応力である。
右腕でかかえているセラは、もちまえのカンのよさで突嗟に顔をかばったとはいえ、至近距離で直撃を受けて半ば
まだ見えていない大きな目
二人は《紫昏の》に会ったことはなかった。
当然彼女もこちらを知らないはずだ。
それが、顔を見たとたんのあの反応。
ちょっとあんまりではないかと茫然自失。
緊急放送がはいるのを聞いてようやく気をとりなおすというあたり、実戦には向かないやつ、と、野戦兵士あがりのキリアスは黄色い目で苦笑した。
(いきなり戦闘体勢?)
「あーくそ、もうっ」
二、三度まばたくと意志の勝った灰色の瞳に強い表情がもどる。
ただしキリアスほどの生体回復力は彼女にはない。
眼球と視神経は機能を停止したままで、副次的な知覚を作動させている。
いわゆる透視というやつだが、とりあえず動くのに不自由はない。
「追おう」
「ちょっと待って」
《紫昏》と闇の一味は会場からとっくに姿を消していた。
すぐに追えば船外へ脱出する前に捕まえることもできるかもしれない。
すくなくとも、この機を逃したら再度探りあてるのは至難のわざだろう。
全艦放送が破壊工作の発生と応急人員の不足を告げ、必要な職能とそれぞれの行くべき所を列挙している。
政府予算の少ない開拓惑星連邦(テラザニア)に独特の、全市民?臨機応変に民間人を行政に組みこむ公職登録制度の発動である。
二人の現在地は医師および無重力救助経験者の急行先として指定されている。
この場で仕事を見つけてもよいのだが、セラは航宙士や宙船整備工の資格も両手にあまるほど持っており。
一方で。
キル一人なら迷わず後者をとった。
自分の身も守れない役立たずに手を貸す趣味はない。
しかしここ(テラザニア)はセライルの古巣だし、主導権がそっちにあるのは認める
一単語の質問から言外の含みまで正確に読みとって、あまりのらしさに少女は苦笑した。
キリアスの性格は仲間の一人から「律儀で無愛想」と評されている。
すぐに真顔に戻って繰り返される放送に注意を集中する。
航法室・動力炉ともに人員を要求し、二千人の
思ったより事態は深刻らしい。
どうも、面倒なことになってしまった。
「損害状況を。」
調べようと後半は省略して会場から泳ぎ出す。
よみとったセラは数瞬、考えていたが、「航法室へ」と強く言って会場から泳ぎ出した。
逆に急行してくるのはほとんどがセラと同じく連邦記章をつけた臨時の有志公職官で、それもそのはず、乗客と非番の乗員のほとんどすべては、会場に集まっていたのだから。(船内は無人に近い)
連行されかけて、「それ、女です!」
四、連邦警察第七支部
暫減した部下たちの残りをかき集めて逃走する犯人一味の追跡にあてたがまんまと逃げられ。
かろうじて捕えた二人組はどうやら民間人でこちらの誤解であるらしい。
大使ムベンガの無事だけはいちはやく確認されているのが不幸中の幸いというべきだったが、宙港都市の被害が大きく人員を救助活動にふりむけねばならなかったため、捜索活動は中断。
上司であるアリニカ警部補
新任といっても連邦警察警備部隊では五年間てがたく勤めた中堅どころで
このところ広域化の一途をたどる密輸幻覚剤事件のあおりをくらって捜査本部の応援にまわされたが、聞きこみや情報検索に必要なカンどころがいまいちつかめない。
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敬愛する多戸雅之先生と、
わたしに環境意識(エコロジー)をおしえ、
生きかたを変える(さばくにきをうえる)力をくれた
グレンフォード・A・オガワ博士へ。
エスパッション・シリーズ 紫昏(しこん)の闇(やみ)
テラザニアの斎姫連(さいきれん)
土岐 真扉(とき・まさと)
序章・照坐苑(テラザニア)
つよすぎる陽光は影絵のように世界を切る。時刻をあらわす計器だという機械仕掛けの長いほうの指針が二周ほどするあいだ、なにをするでもなくレイは木陰にへたりこんでいた。
ここは公園、と呼ばれる区画らしい。
たたきつけるような恒星の直射と、暑熱にからだの溶けそうな街路を逃れて、どこか一休みできる場所をと尋ねて教えられたのがここだった。
しかし……休息と涼をとるのが目的の施設を、密植された樹林が太陽を遮(さえぎ)るとはいえ気密性のまったくない屋外につくるとは。科学の進みすぎた星間連盟(リスタルラーナ)に籍をおく人間としては冷房装置が恋しくて、理解に苦しむ。
空調技術がないわけではないのに、地球連邦人(テラザニアン)の発想は、どうなっているのか。
とはいえ、黒にちかい濃緑の葉を透かして白金色のひかりが躍るさまは確かに美しかった。
大樹のえだの奥ふかく、砂土の地面にじかに腰をおろすというのも珍しい体験だ。
たぶん呼気の成分調整や温度管理の効率などよりも、そういった心理面への機能を優先して設計された空間なのだろう。
当たらずとも遠くはなさそうな推論をはじきだして疑問を消化する頃には、最低だった精神状態もかなりの回復力を発揮していた。
つまるところ、育った世界がこれだけ違うのだ。解ってたまるか、ばかやろう!と。意志の不通のいいわけは文化の相違におしつけて、ひらきなおるに限る。
遅めの朝食のさなかに相棒と喧嘩をはじめて飛び出したのだから、そろそろ昼だ。容赦のない日光はこれでもかとばかり大地に暗黒を縫いつけている。うすぐらい樹陰にいると外界はまるで白日夢のようだ。
なにやら賑やかな一団がやって来るのも、はじめは声しか聞こえない。小径をゆくのを眺めていると群青に朱線の混ざった鮮やかな制服姿の男たち。めいめい手にさげた小さからぬ包みは、やがて向かいの樹下に敷物をひろげ、車座のなかに繰り広げるにいたって、豪華きわまりない弁当だと知れた。
「……大食……」
ひとりあたりの量と栄養価をおもわず目算して呆れる。とりたてて儀式や挨拶らしいものもなく一斉に食べ始めるのを見れば、祭事や祝日でもなくふだんの献立なのだろう。暗色の肌や彫りの深い顔だちとあいまって、だれも痩身にみえるが、あれを毎日たべて体形を維持するとなると、どれだけの運動量をこなしているのか。
運動……いや、〈労働〉か。
機械を使わない人力の作業に手間暇(てまひま)かけたがるのは連邦制を否定している小数民族に多いと聞いた。だとすると、色鮮やかなそろいの衣装は一族固有のものだろう。そういえば来る途中で地下通路の簡易舗装をモザイク模様の細かい敷石に張り替えているところを、高温で朦朧としながらだが見かけた記憶があった。
みるみるうちに食物の小山はへってゆく。それを見ていると自分も空腹を、覚えるかといえば、このクソ暑いのに食欲のあるほうが信じられない気分だが。
生命力旺盛な地元民たちは快食快眠を実践し、食べ終えるなりごろりところがって公共施設のなかだというのにどう見ても熟睡している。
かなりたってから、起きだした彼らが向かった先に、〈護美箱〉と書かれた備品があった。不用品の集積場だが、むろん分子分解機に直結などしていない。ただ入れておくだけの容器である。
その前で彼らはすこし、揉(も)めているようだった。年の若い、ひとが良くて気の弱そうな男がなにかを主張し、年輩の者たちが軽蔑するような笑みで否定の方向に首をふっている。
「我らは部族民だ(ノ・グ・マー)。ゆえに我らに従う義務はない(ガ・ノ・ガ・ミ)。」
ことばが解れば最年長らしい老人の吐きすてたセリフは聞きとることができただろう。
時報、と呼ばれている合図の鐘が鳴った。
男たちは慌ただしく去り、乱雑に投げ込まれた食べがらが容器からこぼれ落ちていた。
☆
昼の休憩時間が終わったということなのか公園から人がいなくなる。とはいえ午後の灼けつく日ざしのなかでは動きまわるにも気力もない。夕暮れまで待とうと覚悟を決めて、けだるく足をかかえたまま、争点になった四阿(あずまや)をながめていた。
直射熱をさえぎるぶあつい屋根のしたに大きさのちがう箱がとりどりに並べてあり、男たちの使ったものは中央にあって一番大きく、中身があふれてあたりに散っている。
ここで、分子還元するのでなければ、どういうシステムで処理しているのだろう。
箱の表面には二十七種あるという地球系開拓惑星連邦(テラザニア)の公用語が色分けされて書いある。
最上段の第一言語だけはさすがに修得済みなので、好奇心にかられて単語をひいた。
〈無分別〉=分別のないこと。前後の考えがないこと。思慮のないこと。
「つまり……、馬鹿だと言いたいのか?」
これは、悩む。不要品の処分と罵倒語(ばとうご)に関連が、ないこともないような気もするのだが。
そこで否定型をはずした語幹にあたる。
〈分別〉= 一.心が外界を思いはかること。事物の善悪・条理を区別してわきまえること。
「………………??」
ますますわからない。
謎ときに頭をひねっていると何かをひっかくような音が微かに耳に届いた。
視線を転ずれば誰かが道をやってくる。
女、だろう。奇妙にからだを屈めながら、白く塗った細い棒を地面すれすれにさし伸べて、左右に振っている。
砂漠のまちの午睡の樹林にしずかな律音(リズム)。とおりすぎる風にさわりと濃緑の硬い葉が歌う。
杖のさきが小径におちたガラスにあたって、キィンと鳴いた。
「あら」
女は重たげに屈みこむ。
「あら、あらあら、あら」
探るような手のひらがぱたぱたとゴミのころげた地面をなでる。
目が、みえないのだと、気づいて驚いた。
近くまできた女の顔には、あろうことか眼球がない。
まぶたのあるべき位置にはよじれた肉丘の亀裂がのこるのみ。
地球連邦では遺伝子の伝達情報に誤差のある人間も珍しくないのだと聞いてはいたが。厳選された染色体を人工母胎で合成するのが常識の星間連盟では、とても考えられない。
膝をついて紙片を拾いはじめた女の頭巾のうえに七色の星があった。
その意味に、一瞬、ひるむ。
同じ星型がきのうから自分の肩にも縫いつけられている。
説明された機構のしくみをまともに理解した自信はないが、とにかく相互扶助協定のたぐいの識別証であろうと見当だけはつけている。
地球圏(テラズ)では絶対的な権威をもつ組織だそうだ。
〈仲間〉が困っているときに、見捨てるわけにはいかないらしい。
しかしどうやってと悩むよりは先に、座りこむのに飽きたからだが反応をおこしていた。
「手伝おうか?」
まだ使い慣れない第一言語でたずねる。
耳をこちらに傾げた女はゆっくりと腰を伸ばした。
左右で歪みの異なる奇形の瞼(まぶた)が異星人には怖かった。
よくみれば四肢の骨格もどこか微妙に、基本の数値からズレている。
非論理的というよりは、単純に原始的な嫌悪感が背筋をはいのぼって毛根を刺激した。
と。いびつな眼窟(がんか)のしたでふっくらした頬が、純白の歯をみせてふわりと笑った。
「珍しいわね……あなた参加者(ゲーマー)なの?」
第一公用語はおなじく不慣れなようだ。
「ああ。でも加入したばかりで、まだよく解ってないんだけどね」
女のやわらかい笑窪がますます深くなる。
「だれでも最初はそうよぉ。……見せていただける?」
「え? あんた、目……」
「あら? だいじょうぶよ。えとね、あなたの〈星〉に、触らせてもらえるかしら?」
手のひらを立てて探るような動きをみせる。
とまどったが、腕をつかんでひきよせた。
小さな指が小さな金属をたどる。
楕円形に七角の星が浮き彫りになった装置には、表示された色数に応じて点々と奇妙な突起が出る。
「赤と橙(だいだい)が七つずつに、黄色がふたつ。渡航権があるってことは、よその星から来たの? この惑星(ほし)には参加者(ゲーマー)は少ないのよ。たいてい知り合いですもの」
「…あ…? これ、文字なのか?」
「そうよーぉ」
女はますます嬉しげに、
「盲字も知らないなんて、じゃ、どこかの部族出身ね? 連邦参加制度(ゲーマーズ・システム)に登録なさった気分はどぉかしら?」
「え…、っと…」
じつは非合法に入国した、異世界人です。
とは、言えない。
「個人誓約を守れる自信がないんで困ってる」
「まぁ、なんで?」
「喧嘩っぱやいんだ」
「……あらあら」
芝居がかった大きなためいき。
「〈暴力行為の否定〉は、連邦機構の最大原則よぉ。それじゃ、いつか減点になってもいいように、今のうちにたっぷり稼いでおくことね?」
「…だ、ろうな」
「いいわ。ここの掃除で得点(ポイント)を稼ぐのはあたしの特権なんだけど、今日はとくべつに手伝ってもらおうかしら。でも、全部はやろうとしないでちょぉだいね? 視力がなくとも、あたしにもちゃんと出来るんだから」
「……あたしは何をしたらいいのかな?」
「あら、いや。主語の性別を間違えてるわよぉ」
苦笑する女に、公用語は慣れてないもんでと、レイは高い背のうえの広い肩をすくめた。
風にのって、歌うような呼び声が響く。
「キィー…ルー……ゥ? キーリ……アー…スっ?」
レイの姓名はキリアス・ヤンセン=エラと、偽造の証明書には記載されている。
声の主を悟ったとたん思いきり嫌そうに顔をしかめた反応に、気配で女は感づいたらしい。
「お友達が迎えにきたんじゃない?」
「あんなん、ダチじゃねーや」
ぼそっと吐き捨てたのは母国語だったので相手には聞き取れなかったろう。
わざわざ探しに来るからには用事ができたということだ。
〈仕事〉のことなら、無視するわけにもいかない。
「〜〜〜〜〜〜っ。ここだ!」
再度の呼びかけに応えて怒鳴りかえす表情がかなり複雑なものだったのは、聴覚だけに頼る人間にも伝わったのか、どうか。
ここの手伝いならもういいわよと女は笑って手をふった。
直線コースを突っ切ったのか、薮(やぶ)から少女が現れる。
「あーもう、こーんなとこにいてっ!」
怒気をふくんだ第一声は、余人の存在に気づいたとたん、調子をがらりと変えてみる。
「失礼。…こいつってば、なにか悪さをしませんでした?」
「あらぁ、いいえ。ここの得点(ポイント)を半分コしましょぉかって、話していたとこよ」
「ほんとに?」
「なんでそこで疑うんだ?」
「おたくが善行をつむなんて誰が信じるって?」
数年ぶりにふんだ故郷の地(テラズ)での記念すべき最初の食事を、寝起きの悪い相棒に一方的に喧嘩を売られて台なしにされた恨みは深いらしい。
はなから喧嘩ごしのふたりは、だまって並んでさえいれば似合いの恋人同士としか見えない、なかなか美形な青年と少女なのだが。
「…………っ?」
しばらく視線を飛ばしあっていたが、さきに理性を取り戻すのはいつものように少女の方で。
「人手(ひとで)が足りないのなら私も参加させて貰いますけれど?」
相棒が〈必殺愛相(アイソ)笑い〉と評する極上の笑顔にころりと切りかえて、第三者になら礼儀正しく、あくまでもコビを売る。
「そぉねー。でも急ぐんじゃぁ、ないの? 私、もう少しで貴金属階級(メタルクラス)に上がるところなのよね。がんばっちゃおぅかなー」
「ああ。じゃ、代わりに、ごあいさつ点を受けとって下さいね?」
にこにこにこと、人畜無害どころか、地球の宗教でいう神様とやらの使いのごとき。
「いいのぉ? あなたの点が減っちゃうわよぉ?」
「ふっふっふ〜」
こんどのかおは満腹した猫のようだ。
「〈視(み)て〉下さい。これに関しちゃ威張って歩いちゃう」
ひょいと腕をつかんで自分の星に触らせた。ええっと女は叫ぶ。
「まだ草花級(フラワークラス)だっておかしくない齢なのに、光彩(ライト)どころか、もう貴金属(メタル)なの?」
「語学がちょっと得意だったもんで。公用語ぜんぶ、資格とっちゃいました」
「うそぉ、すごーい……! 偉いっ?」
「どうもー?」
公用語二十七種どころか、その倍はかるく解するに違いない超越天才児のくせに。
つくり笑顔でない、はにかんだ表情で、白い歯をみせた。
「おい……急いでたんじゃないのか?」
レイの機嫌がますます悪くなるのに拍車をかけるつもりなのか少女は片目をすがめ、
「誰のせいで時間がなくなったんだ?」
「おまえだ」
「あのねぇえっ」
はたからは痴話喧嘩としか聞こえないのだろう。女は笑いをこらえた顔をしている。
それでも、予定があるのは本当らしく。
ゴミ捨て場である四阿(あずまや)の一隅の、ちいさな戸棚をあけて公用端末をひきだすと、手早く自分と彼女の記章をさしこんで規定の指令をいれる。
淡い緋色の金属でできた少女の記章に変化はないが、光画面表示の女のほうには新たに青紫の一線が加わった。
「じゃ……楽しんでくださいね(ラクエリータ)」
「どうもありがとぉ。あなたもね?(エドレノーシュ)」
少女が本気で立ち去りかけるのに違和感をおぼえて、レイはあわてて心話(はな)しかけた。
『おい…、いいのか? 彼女、眼球が無い』
『出来ることを自分でやるのは人間の権利でしょ? それに…盲目なのは地球圏(テラズ)では別に、悪いことじゃない。音声で話していいんだよ』
御先祖サマが原因な(わるい)んだから変に気をまわすほうが、よっぽど失礼だよと言いさして、でも気をつかってくれてアリガトウと言いなおし、やっと表情をやわらげる。
それではじめて天災少女の低気圧の原因が、自分だけではなかったらしいと、不仲な相棒は遅まきながら感づいたのだった。
……続く……
.
テラザニアの斎姫連(さいきれん)
土岐 真扉
第一章・惑星《最涯(ワンゼルラン)》 その一
☆
うすい酸素の層にまもられた若い大地の東のはてが銀(しろがね)と黄金(くがね)に染まる。
一日のもっとも動きやすい聖なる時刻をのがすまいと起きだす人々のこえ。
祈りの書物がしらじらと暁光にぬれ、燈火のたすけなしに読めるようになるころ。
娘たちは天をあおぎ、金の初矢が蒼空を焦がすをみる。
うなじから背なへと流した被り布をひきあげ、深くひきさげて。
また、熱く灼ける陽光と、炎暑と乾燥の素朴な暮らしがはじまる。
それをこそ、われら部族は選びとった……と。
つつましく誇りやかに、うたいながらの生が。
☆
ふたりが降りたとき《最涯(さいはて)》市街はちょうど夜明けに位置していた。
出てきたばかりの宙港塔が希薄(きはく)な大気をつらぬいて惑星外へと続く、その銀の高みのなかばまでしか陽光は届いていない。
それでも熱気が起こした旋風(せんぷう)は赤い砂をまきこんで街路をけずる。見本のように酷薄(こくはく)な岩石砂漠は地球系人類(テラザニアン)が自力で生息しうるぎりぎりの限界点だ。
と、いうのに〈赤道直下〉ときいて異世界人(リスタルラーノ)が自分でえらんだ衣装は。
肩もあらわに太股むきだし、ほとんど水着の袖なし短パン、海青色に極楽鳥。服に合わせて染めたとおぼしい真青(まっさお)な髪が衛星軌道をむいている。
めだちたがりでハデ好きの浅慮(せんりょ)な性格まるだしと、となりの人間はさも嫌(いや)そうだ。
しかも地球人(テラザニアン)だとすれば純血の北欧種にしか見えない。
出自をごまかすための偽装手術のおかげだが、肩幅のひろい長身のわりにひょろっと生白い手足をむきだしのまま戸外に立つなど、想像したこともない濃褐色(のうかっしょく)の住民たちが、あきれ驚いて立ちどまる。
「……………………………………………………………………………あ……あつい…………」
当人は、たっぷり二分は絶句したあげくにぼそりとつぶやいて。
「だから言ったじゃないか、日中には地球式(せっし)で五十度超(こ)える」
尖(とが)ったこえで刺されたクギは、かなり太いしろものだった。
なにしろ夏でも水は固体であるような極寒惑星(きょっかんわくせい)のレイは出身だ。とりあえず人類の可住地域とされている〈熱帯〉で、表皮を保護する必要があると言われてピンとこなかったのも無理はないのだが。
色素と適応力の欠落した文明人の素肌は、強すぎる直射日光をあびたら五分で火ぶくれだ。
皮膚癌(がん)で死にたいのか!と、あわをくった宙港職員にひきとめられたばかりだ。
それを肩でおしのけて入国管理を強引にくぐり出たのは本人なのだから。
心配するよりさきに通行人の好奇の視線でこちらの顔が火をふきそうだと表情で訴えるつれに、レイはむくれる。
「だって暑いとこってから、地球圏(テラズ)の服わざわざ調べて」
「その恰好(かっこう)は亜熱帯の湿潤地方のやつ。ここは熱帯で、乾燥(かんそう)気候なの」
学術用語で断定する、口調が辛辣(しんらつ)だ。
いけすかない優等生だと前から見ていた相手にとっても、八方美人の九番目の方角に、自分が分類されていると気がついたのはつい最近だ。正確には仲間たちと別れてここへ来る船中で、二人きりになってから突然に、あたりがきつくなった感じだ。
「…………そうなのか?」
「何度も説明したと思うんだけど?」
ひとの忠告はすなおに聞こうねぇと容赦もない彼女は、用意よろしく厚地の外套(がいとう)に深い庇(ひさし)の頭布をかぶり、外見からでは性別もわからない焦茶(こげちゃ)のカタマリと化している。
この土地ではそれがふつうで常識なのだと教えられたのは確かだが。「泳鳥(ペンギン)のまる焼き」と、ごくまともな感想をのべたら一度で見捨てられた記憶が……ある。
それでつい、ムキになった。
「はン、簡単じゃんか」
宣言するなり《気波(シ・エス)》をあやつって周辺の分子運動を抑える。
肉眼では感知できない霧状の力場が発生し、ほの青い燐光にゆれる。
たちまち熱量をさげた気波壁(きはへき)のなかの冷涼な空間で腕をくみ、さぁどうだという顔を本人はしたが、
「ひとめを考えてよね。その服装でも身体に支障がないっていうの私にしか〈視(み)え〉ないんだよ。それに……。滞在予定がどれくらいになるか、わかってる?」
悪意としか解釈できない楽しげな嘲笑(ちょうしょう)をうかべられてしまい、がるると唸(うな)ってしかたなく、商店のならぶ宙港塔へ、くるりと踵(きびす)をかえした。
研究所では最強を誇(ほこ)るレイといえども長時間、続けて使えるワザでないのは認めなくないが事実である。
☆
《気波使(きはつかい)》または《気波術者(サイ・テック)》、連盟語(リスタルラン)では《感働人(エスパッショノン)》。古い地球語では《霊力師(サイキック)》とも、《神》とも《悪魔》とも呼ばれたひとびとの、探索および実態調査が今回の目的だ。地球連邦機構(テラザニアン・オリガ)からの極秘だが正式な依頼と、星間連盟総裁(リスタルラーナ・パス)じきじきの財政支援のもとに始動した企画である。
連盟(リース)側の予算確保の名目は『未解決犯罪における手段の実証および再発防止のための法制化』なのだが。四十周年をむかえる新生の連邦(テラズ)としては差別や抑圧を受けている影の存在の権利を、公認することで保護したいという意向がつよい。
その、膨大(ぼうだい)な範囲におよぶ現地調査は一人でやると、彼女が宣言したのがそもそもの始まりだった。
「参加者(ゲーマー)……つまり自主的に連邦機構の運営に協力すると志願誓約(しがんせいやく)している連邦市民の洗い出しは簡単なんだ。参加者協会(アソーシアン・ネット)の情報網が使えるからね。問題はそれ以外の、いわゆる部族民とか独立人として分類されている、戸籍調査すら嫌(いや)がる人たちで……しかも未確認の《気波使》が発見される確率は、変異(へんい)発生指数から推(お)してこっちのほうが高い」
研究所のほとんどを占める連盟人種(リスタルラーノ)を対象に、天才と評されている地球出身の留学生は故郷の歴史と現況を手際よくまとめて語る。
もうすこし、色気と飾(かざ)りけのある衣装にすれば美少女でも通るのに、などと。
職務に不熱心なレイはよけいなことを考えていて、説明はほとんど聞き流してしまった。
「……ということで、実施(じっし)期間は三地球年。都市部における参加者の抽出(ちゅうしゅつ)と面接はエリーが統括(とうかつ)。地方および辺境の調査は、いちばん事情にくわしい私が単独で行います。情報解析(かいせき)班の編成はソレル博士にお願いします。……以上、なにか質問は?」
「まった、地球圏(テラズ)の辺境って、かなり治安が悪いんだろ。用心棒いらないか?」
成人と子供ばかりの研究所内でただふたり、年齢の近い地球人の少女たちが、そろって三年も留守になるのはおもしろくないのが口をはさんだ原因だった。どうせ仕事もない落ちこぼれの所員なのだ、厄介払われもかねて物見遊山(ものみゆさん)としゃれこもうというのが、本音でもある。
いつものように先回りでこちらの意図をよみとって、満面笑顔の
お返事と思いきや、
「説明……、ちゃんと聞いてた?」
意外なことに困惑したふうの八方美人
である。
「もう一度いうけどね、なるべく目立ちたくないわけ。地球本星での最後の大戦の時にどの陣営に属(ぞく)した地域かによって反応は違うんだけど、地球系の文化圏においては、私たちみたいな《気波使い》は、《神》やその部下という解釈で〈聖域〉に隔離(かくり)されるか、同じく《悪魔》かその卷族(けんぞく)だという偏見で追い出されたり、最悪では磔刑(はりつけ)にされたりとか、どちらかだったんだ、つい最近までね。
こういう技能があると周囲に知れたら最後で、迫害だろうが特別あつかいだろうが、ふつうの人間としての、あたりまえの生活や結婚をするのは、ほとんど不可能になる。だから大抵(たいてい)は自分の〈正体〉を隠して平凡に暮らしていくために、しなくてもいいような苦労をしてるわけ。
私なんか、それが面倒で連盟(こっち)まで逃げてきちゃったくらいで。
そういうビクビクしながら生きているところへ、地球人の私が一人で行ってさえ、知らない他所者(よそもの)が何しに来たってだけで不用意にひとの注意を引いて、生活環境を破壊しかねないのに。
異世界人(リスタルラーノ)で、ましておたくのような……。ねぇ?」
意味をたっぷり含ませて首をかしげる仕草に、ひとの目を魅(ひ)くことに快感を見いだしているレイの過激(かげき)な服飾をみなれた一同は遠慮なく笑いをもらした。
「……ったって、ならよけい、危ないだろうが」
優等生のいつになく攻撃的な論法にかすかな違和感がある。
「迫害される地域で、暴走癖(へき)のある《気波技師(エスパッショノン)》のあんたが、ひとりで無事に済むのか?」
力量はあるが細かい作業の苦手な少女はみごとに無表情の笑顔で、
「それは心配ない。抑制(よくせい)装置の小型化はすでに試作にかかってる」
怒(おこ)ったな、とレイは思ったが口には出さずにおいた。
はじめは被験体として参加しながら卓越(たくえつ)した理論構成ですぐに研究職の筆頭(ひっとう)になり上がった天才児は、うっかり自分で気波を飛ばすと実習室ごと破壊する。
一方で所員として失格のレイは、実用技能の正確さと安定性では師範格(しはんかく)を自称している。
そのあたりを酌量(しゃくりょう)した人間がまあまあと仲裁にはいった。
「いいじゃないの、サキ。連れて行っておあげなさいな」
「エリー、そうは言っても、ことは対象者の人権そのものが懸(か)かってる」
「それは解るけれど、あなたのことだから舌先三寸でまわりを胡麻化すくらい簡単でしょう?」
「…それ…、誉(ほ)めてるか貶(けな)してるか判らないんだけど★」
地球人が埓(らち)もない半畳(はんじょう)合戦をはじめたら議題が中断されるとは、連盟人種(リスタルラーノ)の共通認識だ。
「あら、敬愛している友人を、あたくしが貶(おとし)めたりすると考えるなんて、ひどいと思うのよ」
「寡聞(かぶん)にして尊敬なんてされてるとは存じませんで」
「それは不見識(ふけんしき)というものよ。大体あなたは他人の好意に鈍感(どんかん)すぎるきらいがあるわ」
「古傷えぐるの止(よ)そうよね。それを言うならエリーのほうこそ恋文を読みもしないで反古(ほご)にするのはいくらなんでもやめた方がいいと……」
まんまとハメられて脱線しかかるのを、うすい刃物のようにさえぎる声がある。
「所長決裁とします。レイを護衛として、かならず同行すること」
「えっ! …でも博士っ…」
「研究者の貴重な頭脳を危険にさらすわけにはいきません」、と。
それまで議長席で沈黙していた所長から、じかに宣告されてしまっては連邦の公費留学生に反論の余地はない。
緑の瞳のエリーはゆるやかな金の巻毛をかきあげて、してやったりと片目をとじた。
☆
出会ったのはこちらのほうが先とはいえ、おなじ惑星の出身で仲もよいエリーは何か知っているのかもしれない。なにか……、自分は知らないことを。
最初にうけた奇妙な印象は出発の準備がすすむにつれ深まる一方だった。
どうやら相手に嫌(きら)われていると気がついた、それはいい。善人面(づら)したマヌケのおひとよしと、いいように罵(ののし)りながら都合よく利用もしてきた当然のむくいである。それで一緒に旅行なぞ、したくはないと断られるなら疑問も不満もない。
わからないのは、それが理由ではないらしいからだった。
嫌うというより避(さ)けているだけでしょうと、すこし年上の金髪美人は余裕で笑う。
聞き出したいことは色々あったが、同道するからには最低限の言語と礼儀作法くらい覚えてもらうと主張する相棒に、ぎりぎりまで睡眠学習槽(そう)にたたきこまれていて時間がなくなった。
そもそも地球圏(テラズ)の文化が複雑で配慮を要するくらいは誰でも承知はしている。
科学万能主義の連盟世界(リスタルラーナ)とはずいぶん感覚も違うだろうが、レイとて持って生まれた《力》のせいで爆発事件をひきおこし、故星の追放処分をうけて研究所へ引き取られたクチだ。
ほかの人間に同じ思いをさせないよう、必要とあれば隠密行動に徹するくらいできるのは、六年ごしのつきあいで向こうも了解しているはずだ。
それを、人目につくという強引な名分で、切り捨てて一人で行こうとしたのは……何故か。
最終的なうちあわせに至って、それは深刻な疑問符となった。
異世界人である自分が入国後も自由に動けるように、人種的特徴を簡単な手術でごまかして地球人になりすますという配慮はわかる。用意された偽造の身分証でいまさら驚くほど相手の常識はずれな多才ぶりを知らないわけでもない。
だが、なぜ……地球生まれの地球人までが、偽名を使って再入国をする必要があるのか。
今度の調査は連邦の正式な依頼によるものだ。公費留学生が一時帰国して研究活動をするのに、不都合があるとは考えられない。
憶測(おくそく)するにも限界を感じたレイがいいかげん煮詰まったあげくに説明を求めたところ、長くなるとか時間がないとかの口実で逃げられつづけて今日まで来ている。
といただすしつこさのあまりに「だから一人で来たかったんだ!」と怒鳴られて以来、二人の仲はいたって険悪なものになっていた。
現地の気候にあわせた服装をという指示を無視して薄着(うすぎ)をしたのも結局はただの抗議行動だ。
宙港塔の基盤部(きばんぶ)に迷路のようにつらなる商店街で合いそうな上着を探しながら、無駄な馬鹿をやったなと暑さによわいレイは内心ためいきをつく。
深緑(ふかみどり)の紋様(もよう)織りに金糸で刺繍(ししゅう)をほどこした、色鮮(あざ)やかだが悪趣味ではないと少女もしぶしぶ承諾する一着をみつけて市場での用事をおえた。
ついでというふうに二度目の朝食をとりに地元料理の店に寄る。
下船のまえに早すぎる軽食はとっていたので食欲などないレイをしりめに、あれこれ地球式の皿をならべた少女は、時間はずれのこの正餐(せいさん)をじつはずいぶん楽しみにしていたらしい。
八年も異邦で暮らしたあとの最初のご馳走(ちそう)である。
食は文化なりという格言も地球にはあるくらいだ。
あいにくと、定時におこなう栄養補給という貧しい認識しかない文明育ちは、店内にほかの客が少ないのを見てとるなり、すでに習慣と化しつつある質問攻勢を再開してしまった。
「〜〜〜〜〜〜また、その話?」
三日も断食したような風情で料理にとりついていた留学生は、星間連盟(リスタルラーナ)や宇宙船内では望むべくもなかった骨つき肉の焼いたのを丈夫な歯でひき裂きながら、もぐもぐと嫌そうに言う。
「またじゃないだろ、まだ何も聞いてないんだぜ、こっちは」
「渡した資料もろくに読まなかったくせに偉そうに……研究所に置いてきちゃって」
「あんな分厚いもん目を通せるか。学術言語は苦手なの知ってんだろ」
「……さては、開いても見なかったわけね……」
「見たよ! 対照表だの模式図だの、こむずかしいのばっかりだったぞ」
「説明文だよ。ひとが折角(せっかく)おたくの母星語に訳しておいたのに」
むっすり呟(つぶや)いて乾燥植物の浸出液(しんしゅつえき)
「…………へ?」
一拍おくれた反応をするレイを、切って煮た野菜に手を伸ばしながら上目使いに睨(ね)めつけて、
「これだもの。なんでこんな不勉強なやつ連れて来なくちゃならないんだか」
「えー……っとぉ…………。悪かった、あやまる」
嫌いな相手にさえ発揮される八方美人の博愛的な親切心に、なかば呆(あき)れつつ下手にでる。
「簡単でいいから口頭で、説明しなおしてくれる気は……」
「やだ」
「そう言うなって」
「短くできる話なら最初からそうしてる。私の本名さえ知ってれば、調べれば誰にでも解る事情なんだから、自分で勝手に探せば?」
「本名って、サキ・ラ……」
ぱっしゃんと、派手な音をたてて顔のうえを流れたのは草の実の絞(しぼ)った汁だった。
ひとの生き血のような色と味に閉口してレイが注文したきり手をつけていなかったやつだ。
「〜〜〜〜なにすんだっ!」
塩気をふくんだ赤い汁のなごりをとどめたグラスは、少女の器用な指のさきでゆれている。
「その名前、地球圏(テラズ)についたら絶対に、口に出すなって言ったよ」
切りこむような声のひびきは気迫というより緊迫感がある。
「だからっ、なんでだって聞いてんだろっ?」
「…………………………ひきかえして勉強しなおせば?」
邪魔だから帰れと、きっぱり表現されてレイは言葉を失う。
どんなかたちであれ実力行使に訴えるほど相棒が本気で怒るのは長いつきあいで初めてだ。
動転のあまり対処に窮(きゅう)して、原始的な手段にはしる。
がらがっしゃんと半分ほど料理ののこった皿ごと食卓が倒された。
「〜〜〜〜〜〜〜〜たべものをっ!」
すでに声にもならない悲鳴を地球人はあげる。
「これは連盟(リース)の合成品じゃない。土から採れたものなんだよ。よくも粗末(そまつ)にしたねっ」
なにいってやがる、先に果汁をぶっかけたのはそっちだろうが……。
理不尽なセリフに憤激(ふんげき)しすぎて震(ふる)えのきた異世界人は、あいての頬をひとつ張(は)りとばすなり店から飛び出したのだった。
続きます★
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テラザニアの斎姫連(さいきれん)
土岐 真扉(とき・まさと)
第一章・惑星《最涯(ワンゼルラン)》 その二
☆
「……殴ったりして悪かった」
相棒のほおにくっきりのこる指のかたちのアザを認めてしかたなくレイはつぶやいた。半日が経過してなおこの状態ということは、さぞ痛かったにちがいない。
「……なおすぞ」
そう宣言して手をのばす。気波使(きはつかい)にしか視えない蒼光がすぅとひらめいて、傷は癒えた。
「たすかったよ、ありがとう。これで人様を訪問するのはちょっと問題があるものね」
にっこり笑って腕力をふるった当人に礼をいう、少女の神経はレイには不明だ。
「このくらい自分で治せるだろうが。やりかたは教えてやったぞ」
「いやぁ、やっぱり、責任はとっていただかないと?」
「あんたなぁ……★っ」
見せつけるためだけにわざわざ治療はせずにおいたと、言われたほうはがっくり疲れはてた。
こいつには、てめえの美貌の自覚はないのかっ!
毎朝の洗顔のあとで鏡を点検するかどうかも疑わしい無頓着(むとんちゃく)な天才少女は、絶句する面喰いの反応を読み違えたのか底意地の悪い笑顔をうかべて見せて、さっさと歩いていった。
ここは砂漠の宙港都市。その人工緑地(オアシス)のなかである。
「どっちがいい?」
木立に隠れるような半地下にしつらえた石造の休息所で、飲料の缶をふたつ手にして戻ってきた少女は、すぃと流れるような動作ではすむかいに腰をおろして訊ねる。
「どっちたって……これ、なんなんだ?」
(???続きのデータが無いっ!! (T_T)” )
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エスパッション・シリーズ 紫昏の闇(1)
テラザニアの斎姫連(さいきれん) 梗概
尊貴 真扉(とき まさと)
序 章「 」(三十枚)
……キリアスことレイのゴミ拾い。
主役二人と舞台の紹介。
第一話「照坐苑(テラザニア)」(五十枚)
……二人の目的。大体の展開予告。
セラことサキの正体不明。
アリーとパリス(星警)登場。
第二話「 」(五十枚)
……セラとキリアスのESP証明。
レイの性別。テラザニアの公職制度(参加者制度)。
第三話「 」(五十枚)
……ムベラ大使登場。セラの正体?
セラの天才性。事件の進展。
第四話「 」(五十枚)
……セラ、負傷。
キリアス独走して情報入手。潜入不可?
第五話「 」(五十枚)
……セラ、正体の半分。皆無拓に面会、特権発動。
惑星《久別》へ。
第六話「 」(五十枚)
……テラザニアの歴史。
ライラ登場、会談の後、自首。
セラの正体、地球の歴史。
ザイード・アル=ハムラーア・レザン
序 章「迎夢者(げいむしゃ)たち」(二十枚)
キリアスのゴミ拾い。
主役二人と舞台の紹介。
第一話「照坐苑(テラザニア)」(五十枚)
惑星最涯到着。暑い。
ライラ宅訪問。星警とかちあう。
拝礼されるセラ。カツラを買う。
極冠地帯へ。
第二話「記念式典(開幕)」(五十枚)
式典開幕。潜入した二人。
理由は極冠地帯で爆破事件。
ライラ、逃亡。船体破壊。
気波を使う。星警に捕まる。
第三話「外交特権」
星警訊問シーン。レイの性別。
セラ、連行途中で資格取得。
惑星大鼻(ビッグノーズ)到着。
セラ、負傷。キリアス情報入手。
皆無拓に面会、特権発動。
第四話「 」
惑星久別(くさば)到着。本物のセラ。
捕物。ライラと会談、自首させる。
終 章「テラザニアの斎姫連」
テラザニアの歴史概括。
サキの正体と二人の会話。
舞のシーンでエンディング。
.
エスパッション・シリーズ 紫昏の闇(1)
テラザニアの斎姫連(サイキレン)
1.照坐苑(テラザニア)
先進文明のリスタルラーナ星間連盟から来たキリアスことレイ【主役紹介】はゴミ収集システムを目の当たりにしてテラザニアの参加者(ゲーマーズ)制度を学ぶ【舞台紹介】。
相棒のセラ・レンことサキ登場【天才少女の紹介】。「研究者」と「研究材料」である二人の仲は微妙なところでうまくいってない【偽名の理由不明の紹介】。
2.頼等(ライラ)
二人がこの星へ来たのは人探しのためだ。所属するリスタルラーナの研究所の任務で、潜在するESP(エスパッション/気波者)の実態調査と、新たな研究材料(協力者ともいう)の発掘が目的。
宇宙港に一歩降り立った途端、あまりの暑さに圧倒されているレイ。不快指数が拍車をかけてセラ・レンに偽名の理由を白状しろと喧嘩をふっかけ、地理もわからずに飛び出して「1」の状況に至る。その間、探しに出る前に一仕事片付けていたセラはそうとう薄情と言えるのでは……。
それはともかく二人は第一目標のライラのマンションへ行く。が、そこでなんと星間警察の家宅捜査にぶつかり、占い師として活躍していた彼女が実は犯罪組織「闇」(バイラ)の一員であり、逮捕寸前に逃亡したと知らされる。【アリーさんと部員たち登場】。
テラザニアの斎姫連(サイキレン)
1.照坐苑(テラザニア)
先進文明のリスタルラーナ星間連盟から来たキリアスことレイ【主役紹介】はゴミ収集システムを目の当たりにしてテラザニアの参加者(ゲーマーズ)制度を学ぶ【舞台紹介】。
相棒のセラ・レンことサキ登場【天才少女の紹介】。「研究者」と「研究材料」である二人の仲は微妙なところでうまくいってない【偽名の理由不明の紹介】。
2.頼等(ライラ)
二人がこの星へ来たのは人探しのためだ。所属するリスタルラーナの研究所の任務で、潜在するESP(エスパッション/気波者)の実態調査と、新たな研究材料(協力者ともいう)の発掘が目的。
宇宙港に一歩降り立った途端、あまりの暑さに圧倒されているレイ。不快指数が拍車をかけてセラ・レンに偽名の理由を白状しろと喧嘩をふっかけ、地理もわからずに飛び出して「1」の状況に至る。その間、探しに出る前に一仕事片付けていたセラはそうとう薄情と言えるのでは……。
それはともかく二人は第一目標のライラのマンションへ行く。が、そこでなんと星間警察の家宅捜査にぶつかり、占い師として活躍していた彼女が実は犯罪組織「闇」(バイラ)の一員であり、逮捕寸前に逃亡したと知らされる。【アリーさんと部員たち登場】。
エスパッション・シリーズ 紫昏の闇 梗概
尊貴真扉(ときまさと)
1.「テラザニアの斎姫連(さいきれん)」(起)
2.「スランナートの禍い」(承)
2−1.「白と青」
ライラ、牢内で二連星の夢回想。
テラザニアの近代史?粗筋説明。
影男ことサリラ登場。
2−2.「祈人群」
本物のセラ・レン登場。
久別に滞在中の二人の説明。
2−3.「 」
アリーさんスランナートを追う。
被害者としてメグミ(ESP)登場。
事件の説明。
2−4.「 」
ライラ逃亡の報。パリスとエムラン登場。協力要請。
久別草原の炎の回想。
2−5.「 」
ライラ? 闇の側の造反の動き。
3.「 」(転1)
3−1.「 」
地球……エリーさん登場。
3−2.
3−3.
3−4.
3−5.
3−6.
3−7.
4.「 」(転2)
4−1.
4−2.
4−3.
4−4.
4−5.
4−6.
4−7.
5.「ブラインド・ポイント」(?)(結)
☆─────────────────────────────☆
The Darkness with The Purple Twilight
(The Series of "ESP-assion" vol.1)
Chapter One. The Psy−Tech Ladies of TERAZANIA
Presented by Masato Toki
☆─────────────────────────────☆
Paragraph 0. TERAZANIA
TERA−ZA−NIWA
--- The Ideogram " 照 坐 苑"
means "Sitting in the Garden Sunshined".
The powerful sunlight cuts the world out like just a shadow picture.
While the machine, it counts the time passing, made its longer stick go round twice, LEY sat under a big tree alone.
This secion is called "park" , Ley heard. It’s the place to take a rest and "cooling-down" escaping from heat and sunstroke.
But why? Why did they make a facilitty like this on out-door?!
Ley came from The RIS-TAR-LARNA --the leageu of stars--, so it is hard to understand. How does the people in TERAZANIA --the commonwealth of the planets reclamed by earthian-- think and act? Ofcourse they have good technology to air-control in door!
But... it is very beautiful, looking dark green leaves are dancing with white gold sunlights. And sitting right on sandy ground is extra-ordinary experience for Ris-tar-larno.
Maybe, it is a place for mental efect like this more than for mecha-nical efficiency.
When finishing guesswork, Ley’s worst feeling has gotten better.
"It is a matter of course I can’t understand her solutely, because there are too many differences between our cultures... Damn it!"
Such a dis-communication made the foreigners turned upon, a quarrel about a trifle with a partner made Ley run away from tea-shop, though.
It happend during a late breakfast. Now it is time for lanch.
The sunbeam with heartless heat is sewing darkness on the earth for show. Sitting in the dim light under a big tree, the external world looks like a day-dream.
So, Ley can catch merry voices first. Then a group pass on a path.
The men in a dandy uniform, blue-black with bright red lines, are carrying large parcels and sit in a circle, under the tree in front of Ley’s one.
"What are the piled things wrapped in square cloth?"
They open them. ... ah? ... "How BIG lanch boxes!!" Ley is amazed.
It seems just a daily lanch, not for festival nor ceremony, because they start to eat together, without any special words.
"They all are Big-Eaters! How can they keep their body slim eating such a high calorific value?"
Yes, of course, they are far from fat. They looks very firm-fleshed with dark colored skin and clear-cut faces.
"How hard training? ... Oh, no. It must be hard ’work’! "
Ley heard that some minority races being against the TERAZANIAn rule,love to ’handwork’ without machine power.
If so, the vivid costumes are not uni-forms but folk-wears. And that remind Ley of the red and dark-blued mosaic-work. Growing faint from the heat though, Ley saw them at work tiling on the way to here.
……たしかに自分で書いた(訳した?)英文のはずなのですが……
A^−^;)
まぁ、自閉症?もどきの時にやった事なんて、
シラフ(?)の時には、理解できないものよね……☆
<(-_-;)>”
(今となっては、書くどころか、読めません!!) (^◇^;)”
.
The Darkness with The Purple Twilight
(The Series of "ESP-assion" vol.1)
Chapter One. The Psy−Tech Ladies of TERAZANIA
Presented by Masato Toki
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Paragraph 0. TERAZANIA
TERA−ZA−NIWA
--- The Ideogram " 照 坐 苑"
means "Sitting in the Garden Sunshined".
The powerful sunlight cuts the world out like just a shadow picture.
While the machine, it counts the time passing, made its longer stick go round twice, LEY sat under a big tree alone.
This secion is called "park" , Ley heard. It’s the place to take a rest and "cooling-down" escaping from heat and sunstroke.
But why? Why did they make a facilitty like this on out-door?!
Ley came from The RIS-TAR-LARNA --the leageu of stars--, so it is hard to understand. How does the people in TERAZANIA --the commonwealth of the planets reclamed by earthian-- think and act? Ofcourse they have good technology to air-control in door!
But... it is very beautiful, looking dark green leaves are dancing with white gold sunlights. And sitting right on sandy ground is extra-ordinary experience for Ris-tar-larno.
Maybe, it is a place for mental efect like this more than for mecha-nical efficiency.
When finishing guesswork, Ley’s worst feeling has gotten better.
"It is a matter of course I can’t understand her solutely, because there are too many differences between our cultures... Damn it!"
Such a dis-communication made the foreigners turned upon, a quarrel about a trifle with a partner made Ley run away from tea-shop, though.
It happend during a late breakfast. Now it is time for lanch.
The sunbeam with heartless heat is sewing darkness on the earth for show. Sitting in the dim light under a big tree, the external world looks like a day-dream.
So, Ley can catch merry voices first. Then a group pass on a path.
The men in a dandy uniform, blue-black with bright red lines, are carrying large parcels and sit in a circle, under the tree in front of Ley’s one.
"What are the piled things wrapped in square cloth?"
They open them. ... ah? ... "How BIG lanch boxes!!" Ley is amazed.
It seems just a daily lanch, not for festival nor ceremony, because they start to eat together, without any special words.
"They all are Big-Eaters! How can they keep their body slim eating such a high calorific value?"
Yes, of course, they are far from fat. They looks very firm-fleshed with dark colored skin and clear-cut faces.
"How hard training? ... Oh, no. It must be hard ’work’! "
Ley heard that some minority races being against the TERAZANIAn rule,love to ’handwork’ without machine power.
If so, the vivid costumes are not uni-forms but folk-wears. And that remind Ley of the red and dark-blued mosaic-work. Growing faint from the heat though, Ley saw them at work tiling on the way to here.
……たしかに自分で書いた(訳した?)英文のはずなのですが……
A^−^;)
まぁ、自閉症?もどきの時にやった事なんて、
シラフ(?)の時には、理解できないものよね……☆
<(-_-;)>”
(今となっては、書くどころか、読めません!!) (^◇^;)”
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The Psy−Tech Ladies of TERAZANIA
Paragraph 1. At The Planet "One/Zero-Land"
Presented by Masato Toki
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(...It’s just outline of this story though...)
It was one of frontier planet new reclamed by Terazania. Silverry Space-Port-Tower rised from the ground to satellite orbit though, it was ruled by racial self-government. They chose natural simple life over civilization.
The city by the tower, capital and only one, was in a desert on the equator.
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☆─────────────────────────────☆
Though the Two came here down at daybreak, it had already got too heat.
Because Ley from Ris-Tar-Larna just wore minimum, lemon yellow shorts and sky blue tank-top (three paradise birds printed), on such red desert.
"Of course I said you must dry up", a girl in sun & sand guard coat shrugged. "You did not hear me."
"Uh...Ah! It’ll be OK.", Ley said.
☆─────────────────────────────☆
☆─────────────────────────────☆
Suddenly, white blue luminescence of the ’Key-Wave’ appeared.
It guarded Ley’s body and made the air in ’psy-wall’ cool down. "ha ha! I’m great", sky blue haired alien triumphed. "Oh... I am afraid of being observed. In Terazania, you look like a naked Scandinavian in heated hell, and", the girl sneered, "Don’t you know how long we intend to stay here?".
☆─────────────────────────────☆
☆─────────────────────────────☆
The foreigner groaned. Though Ley had been the strongest in their institute at managing Key-Wave, it was impossible to keep psy-wall longer than hours.
They were called ’Key-Wave Master’ or ’Psy-Tech Engineer’ in Terazanian, ’Es-Passio-non’ (=emotionalist) in Ris-tar-larn. Old Terrestrials thought them, ’the Psychics’, as a kind of ’Gods’ or ’Devils’.
☆─────────────────────────────☆
☆─────────────────────────────☆
The Sori-Solelu’s Private Institute to study Key-Wave had started a big project at Teraz-Orga’s request, to serch them in all area of Terazania, to investigate how is their human rights, and to examin the class.
"We can do it easy to check the ’Gamers’ ... are citizens of Terazania, who volunteered to participate in steering our Organization ... using The
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Gamers-Associa’s Com-Network. But there are others, named ’Stand-Alones’ and ’Tribes people’, evading anykind of count by the Orga, including just for family register. Maybe most of undiscovered ’Key-Wavist’ are living in such area", a Teraz student in Ris, called ’the gifted girl’, explained the circumstances of her home world to Ris-no staffs of the institute.
☆─────────────────────────────☆
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"And one problem. There were THE FINAL WAR at The Planet Earth about 1,300 years ago. After the destruction, peoples got diferences according as the shelters belonged to The Space Colonists or to The Earth Lovers.
One side started to deify Psychics as Gardian Gods, another hate them as Devils destroyed the world peace, and often did bunish or lynch."
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"Many of Key-Wavist have made their ability secret for long time. When the crowd knows it, a person will loss one’s freedom wheather persecution nor deification isolated in sanctuary. And that’s because I came here in Ris avoiding such trouble", the girl finished, "So this serching will be done by only Teraz members without Ris-no staffs to keep their secret and
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life from the curiosity of neighborhoods." "But it’s dangerous", Ley said.
Though the girl was a special genius in reserch activities, was not good at managing her own Key-Waves. She sometimes destroyed training rooms in a passion. Ley was afraid she can’t hide it in Teraz lynching area, too.
And she and other Terazanians in this institute didn’t know how to fight
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and defend themselves from any violences, Ley thoutht.
"Yes, it’s all right. I already made a mini-sized controler", she said.
"But you must plan to make yourself to go to the most dangerous area, I know", Sori(=Doctoress)-Solel, the head of the institute, gave her short order, "Take Ley as your guard, please". So it was decided.
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"Oh", the girl sighed, "With you, I’m afraid of object’s human rights".
"ha!", Ley laughed, "Of course your brain is of greater value to Ris".
She was moved to anger. "Of course you are not Terazanian Volanteered ’Gamers’, so I understand you don’t know about the rights of lives... But I HOPE you to do like Gamers in Teraz, PLEASE?". "Yes, maybe" Ley answered.
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The girl and her friend Terazanian staff, golden haired beauty named Ery, threw the alien into the Sleeping Study Tank with larning program of Teraz official languages and minimum manners. And they prepared so much datum and
reports about Teraz social systems, historys, cultures, folklores and more.
But, of course, lazy Ley negleted to read them at all.
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That’s because Ley couldn’t understand why people ware guard cort on the deserts. The sunstroke must develop a skin cancer. So the two turned back to the shopping center under The Space-Port-Tower. Sky Blue haired alien
(looks like a skandinavian) chose the bright green one, bordered with gold embroidery.
... To Be Continued ...
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The Psy−Tech Ladies of TERAZANIA
Paragraph 1. At The Planet "One/Zero-Land"
Presented by Masato Toki
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(...It’s just outline of this story though...)
It was one of frontier planet new reclamed by Terazania. Silverry Space-Port-Tower rised from the ground to satellite orbit though, it was ruled by racial self-government. They chose natural simple life over civilization.
The city by the tower, capital and only one, was in a desert on the equator.
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Though the Two came here down at daybreak, it had already got too heat.
Because Ley from Ris-Tar-Larna just wore minimum, lemon yellow shorts and sky blue tank-top (three paradise birds printed), on such red desert.
"Of course I said you must dry up", a girl in sun & sand guard coat shrugged. "You did not hear me."
"Uh...Ah! It’ll be OK.", Ley said.
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Suddenly, white blue luminescence of the ’Key-Wave’ appeared.
It guarded Ley’s body and made the air in ’psy-wall’ cool down. "ha ha! I’m great", sky blue haired alien triumphed. "Oh... I am afraid of being observed. In Terazania, you look like a naked Scandinavian in heated hell, and", the girl sneered, "Don’t you know how long we intend to stay here?".
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The foreigner groaned. Though Ley had been the strongest in their institute at managing Key-Wave, it was impossible to keep psy-wall longer than hours.
They were called ’Key-Wave Master’ or ’Psy-Tech Engineer’ in Terazanian, ’Es-Passio-non’ (=emotionalist) in Ris-tar-larn. Old Terrestrials thought them, ’the Psychics’, as a kind of ’Gods’ or ’Devils’.
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The Sori-Solelu’s Private Institute to study Key-Wave had started a big project at Teraz-Orga’s request, to serch them in all area of Terazania, to investigate how is their human rights, and to examin the class.
"We can do it easy to check the ’Gamers’ ... are citizens of Terazania, who volunteered to participate in steering our Organization ... using The
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Gamers-Associa’s Com-Network. But there are others, named ’Stand-Alones’ and ’Tribes people’, evading anykind of count by the Orga, including just for family register. Maybe most of undiscovered ’Key-Wavist’ are living in such area", a Teraz student in Ris, called ’the gifted girl’, explained the circumstances of her home world to Ris-no staffs of the institute.
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"And one problem. There were THE FINAL WAR at The Planet Earth about 1,300 years ago. After the destruction, peoples got diferences according as the shelters belonged to The Space Colonists or to The Earth Lovers.
One side started to deify Psychics as Gardian Gods, another hate them as Devils destroyed the world peace, and often did bunish or lynch."
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"Many of Key-Wavist have made their ability secret for long time. When the crowd knows it, a person will loss one’s freedom wheather persecution nor deification isolated in sanctuary. And that’s because I came here in Ris avoiding such trouble", the girl finished, "So this serching will be done by only Teraz members without Ris-no staffs to keep their secret and
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life from the curiosity of neighborhoods." "But it’s dangerous", Ley said.
Though the girl was a special genius in reserch activities, was not good at managing her own Key-Waves. She sometimes destroyed training rooms in a passion. Ley was afraid she can’t hide it in Teraz lynching area, too.
And she and other Terazanians in this institute didn’t know how to fight
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and defend themselves from any violences, Ley thoutht.
"Yes, it’s all right. I already made a mini-sized controler", she said.
"But you must plan to make yourself to go to the most dangerous area, I know", Sori(=Doctoress)-Solel, the head of the institute, gave her short order, "Take Ley as your guard, please". So it was decided.
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"Oh", the girl sighed, "With you, I’m afraid of object’s human rights".
"ha!", Ley laughed, "Of course your brain is of greater value to Ris".
She was moved to anger. "Of course you are not Terazanian Volanteered ’Gamers’, so I understand you don’t know about the rights of lives... But I HOPE you to do like Gamers in Teraz, PLEASE?". "Yes, maybe" Ley answered.
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The girl and her friend Terazanian staff, golden haired beauty named Ery, threw the alien into the Sleeping Study Tank with larning program of Teraz official languages and minimum manners. And they prepared so much datum and
reports about Teraz social systems, historys, cultures, folklores and more.
But, of course, lazy Ley negleted to read them at all.
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That’s because Ley couldn’t understand why people ware guard cort on the deserts. The sunstroke must develop a skin cancer. So the two turned back to the shopping center under The Space-Port-Tower. Sky Blue haired alien
(looks like a skandinavian) chose the bright green one, bordered with gold embroidery.
... To Be Continued ...
☆─────────────────────────────☆
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-- I’m sorry. I had tried to translate this story though, I just found it out is very difficult for me. But... Never give up! I WILL DO for next time.
Now, I want to try to express about this story for you.
★─────────────────────────────★
These stories, named“Series of ESP-assion”, and all of main characters have caught me long time. The first time they appeared for me was,ofcourse I remember clearly, at the age of 10, boring mathematics class.
SAKI is the name of heroine, and next is LEY. Erie, Kei, Dr. Malia-Solel, and there are so many people.
★─────────────────────────────★
First, I thought they were police-women or a kind of heros like Superman... (how strong heroine!)... though, ofcourse I was just a silly child.
They have a talent called“Psy-teck". But it is just a talent, not Power. They are ordinary persons, not heros. They lives only their human life. But it is dangerous having big psy-power during some political
★─────────────────────────────★
powers are contesting.
TERAZANIA --the commonwealth of the planets reclamed by earthian-- was built only before about 40 years ago, including many racial movement.
The year, TERAZ met The RIS-TAR-LARNA --the league of stars-- first, SAKI was born in world confused.
★─────────────────────────────★
And LEY’s true home-planet is in GYEST --the empire of the galaxy--. In that country, the minority common race have ruled, with scientific military power, the majority psy-teck races.
So, this story is long and never-ending. Expect me! Thank you.
.
Now, I want to try to express about this story for you.
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These stories, named“Series of ESP-assion”, and all of main characters have caught me long time. The first time they appeared for me was,ofcourse I remember clearly, at the age of 10, boring mathematics class.
SAKI is the name of heroine, and next is LEY. Erie, Kei, Dr. Malia-Solel, and there are so many people.
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First, I thought they were police-women or a kind of heros like Superman... (how strong heroine!)... though, ofcourse I was just a silly child.
They have a talent called“Psy-teck". But it is just a talent, not Power. They are ordinary persons, not heros. They lives only their human life. But it is dangerous having big psy-power during some political
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powers are contesting.
TERAZANIA --the commonwealth of the planets reclamed by earthian-- was built only before about 40 years ago, including many racial movement.
The year, TERAZ met The RIS-TAR-LARNA --the league of stars-- first, SAKI was born in world confused.
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And LEY’s true home-planet is in GYEST --the empire of the galaxy--. In that country, the minority common race have ruled, with scientific military power, the majority psy-teck races.
So, this story is long and never-ending. Expect me! Thank you.
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To Dear Sister
人参の皮をむいたら右腕がイエローアラート★ と、ゆうことでまたぞろワープロだ。すでに破滅が来たりて笛吹いてるわね……っ (だから筆不精なんだぜ、マジで。)
教養ゆたかにして高学歴なお姉様。同封した歌詞カードのコピーを解読して下さいませ。わたしゃ筆記体は読めん★ ついでに対訳つけてくれると無学者の妹はとっても助かるのだが。せめてVoxだけでも……。
サラ・マクラクランは古CD屋で見つけて名前とタイトルで掘り出して来たんだが有名な人なのか? 低音部のイメージがサキに近いのでもっぱらのBGMであったりする。他にもアルバム出してるようなら教えて下さい。もし知らないなら必聴! エンヤとインド音楽を煮込んでエコロジーを添えたような味だ。いや今、シチュー鍋がぐつぐついってるんで☆
そのほかのエスパ用BGMはといえば、今回の話のトータルイメージはなぜかマドンナの「ラ・イスラ・ボニータ」。サキに対する視点としてのレイのイメージソングが同じくマドンナの「プリテンダー」と「ステイ」。シンディ・ローパーで「トゥルー・カラーズ」。なんて色気ないやつらだ☆ 地球系開拓惑星連邦(テラザニア)のテーマがシーラ・マジッドの「マヌシア」(この人はマイナーかも知んない。マレーシア人だ。Sheila Majid "Legenda" に所収。日本版は東芝EMI発行)及びサラ・マクラクランの「Touch」。それとシンディに戻って「Iko Iko」。ま、そんなところかな。
あいかわらずエスパの世界は女ばっかり☆ なので男性のゲストキャラが乱入しました。アリーさんの親友で通称「黒公爵」。同性のみを恋愛対象にしている黒髪美形キャラ☆ 実際、長女(サキ)に限ってどーしても余計なムシをつけたくないのは何故なんだろう☆ レイなんか「手当たり次第」のサイテー野郎なのに★ サキほどの美女(?)が人生に3回しか恋愛沙汰がないとゆうのはぜったい不毛よね☆ しかも最後一人で妊娠・出産して心中(後追い自殺)までするという。お手軽な奴☆★
……やっぱり相手の名前が悪かった(?)のね……★
とりあえず今回の話ではリスタルラーナは名前しか出ません。私が完全な所有権を主張したいのはテラザニアについて。でもすでにかなり勝手な歴史とか設定とかでっちあげてるので摺り合わせは必要だろーなぁ☆ 基本的にリスと地球とは「同一の」先祖もしくは実験生物としての創造者を発生源にもってます。惑星リスタルラーナの上に現在あるのは行政府と学都だけで商業機能は衛星軌道に隔離されてます。海もしくは水分は大半が地底に潜ってます。太陽は青白くて、地球でいう蛍光灯の濃くしたような色彩です。暦は十進法で合理的にできてるでしょう。あと、任せた。じつは物理条件はどーでもいい。わたしの興味は社会体制に集中してるので。
「滅亡」に関しては……。謎の古代文明の遺産がじつは「惑星改造装置」とは知らずにいきなり作動させてしまったアホウな「考古学者」が約一名。わずか半日で人口が百分の一になったら気分は小松左京では? トラウマになりまくったリスタルラーノは、以後、「古い事物に興味を持つな」というインプリンティングから、使い捨て万能文化に走ったりするわけです。
だから生物学的には地球人との混血が可能だ。もとは多様だった外見も遺伝子の管理と人工胎児があたりまえになってから均一化が進んで、まるで現代の日本人のよーに「みんな同じ」と、地球人には思えるよーな中肉中背の茶眼茶髪。はやくも気力減退で種の限界点が垣間見えたりしてるので、突破口としての実験体をパラパラ造り、同じ動機で地球との国交をむりやり開始しました。ソレル女史のよーな銀髪や金髪は実験体である場合が多く、ほかに「二万人に一人」と定められた割合で緑色の髪の人間がキチェスやラフェール人のような役割で存在しています。どちらにしても地球人との顕著な差異は「耳の形が平たくて丸い」という程度。生存に適した気温としては地球の摂氏式で25度くらいを好みます。
愛玩動物と生活を共にする習慣はありません。野性生物と接する機会もほとんど無い。食用の蛋白質はすべて合成品です。ペースト状で、地球に来たリスタルラーノは食生活で相当の苦労を強いられます。
エスパの時代は西暦1990年代から見れば約1300年後……だと思う。磯原清くんが2005年頃の生まれで、約150年後にタイムスリップし、その40年ほど後に地球文明圏は一旦壊滅し、這いずり上がるのに1000年かかった、という計算。謎の超古代文明というやつは恐らくアステロイドと化した旧「草星」あたりにあったのではあるまいか? 現存する最大の遺跡は地球の月面上にあり、長く地球の「監視」を行っていたらしいことがやがて解明されつつあります。
ちなみに杉谷好一のアホウが破壊しやがったのは「この地球」とは多少異なった歴史を持つ「隣の地球」です。面倒なので小説としてはこちら側のつもりで書く予定だが、どうやら実在する世界かも知れないのはタツヒラチカが傍証してくれました。……「ぼくたま」なんてば目じゃないかも……っ 聞きたい?
ところで「バラを摘んでた女ガンジー」てばリースマリアルのことですか? 的確☆☆
ESPの科学的説明なんて私が感知してるわけないでしょう。サキの部族語では「気波」と呼ぶ現象です。このへんの話は「斎姫連」で描けると思います……。
ブラッドリーとも方向性は似てると思うよ、かなり。ただエスパがいきなり天皇制否定の話になるとは思っていなかったけど☆ ダレムアスなら中学当時からそうだったんだけどね☆★
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P1.
概 略 ・ 創 世 記
昔々、神人(かみびと)の長(おさ)なる女神(ドライム)マライアヌがこの地に来たるる時、大地は、まだその姿を定めず、うなうなと優しいこがね色にたゆたい、たゆたい、見渡すかぎりにまどろんでおりました。
それから長いながい年月(としつき)のあいだ、女神はひとつの巌の上に一人で眠っておりました。
そうしている間(ま)に地は熱く猛(たけ)りまた凍(い)てつき、その繰り返しの内に、聖なる大地の霊から空とそれを司(つかさ)どる霊が生まれ、無慈悲な虚空を追い払って母なる大地の囲みをかためました。
それから、大地のおもてより、幾たりかの水乙女たちが抜け出でて白い雲、黒い雲、灰色の雲となり、星々の目から大地を護って、女神の目覚めのその時までひたりと動こうとはしませんでした。
うねり、また炎を噴き上げ、身震いをし、大地はゆるゆるとその形を整えてゆきました。
× ×
また長い時が過ぎて、ようやく女神の目覚めの日がきました。
女神が目覚めた時、東の地平から雲が退き、太陽は初めてこの世界を見ることを許されました。
彼女はやさしいままの姿で朝陽の祝福の輪の中に立っていました。
彼女にとって大地の新しい姿を見るのが初めてなら、自分の新しいからだを見るのもこれが最初のことでした。
彼女の名前はマリアンドリーム。
かつて、幾度も生まれ変り生まれ変りして、まだ普通の人間であった最後の一生に、彼女はその同じ名で呼ばれていました。
それから、彼女は記憶を失わない者、この世の外にあってこの世に含まれる者、不思議の探求者、彼ら流に言えば“真実を探す者”の一人となったのです。
P2.
女神は、まず、空気から着物を作ると、そのまま歌いながら歩いてゆきました。
ちょうど六節歌ったところで三羽の渡り鳥が現われました。
「渡り鳥、渡り鳥、私(わたくし)の兄弟たちはどうしました。」
「姉君様は光の国(エルシャムリア)に」
「双子の弟君は地球星(ティカセルト)に」
「兄君様は空虚の洞窟(ボルドガスドム)に」
「それぞれ国造りを始めておられます」
それを聞いて、女神は真赤な血を燃やし、紅蓮の炎から三羽の鳳凰鳥を作って尋ねました。
「そして私(わたくし)はどこにいます?」
「大地(ダレムアス)に」
それから鳳凰たちは女神(ドライム)の目覚めを兄弟神たちに告げに飛び立ってゆきました。
(☆平城京風、というか山田ミネコ風のハルマゲドン・シリーズ風…A^-^;)…薄桃色の肌着に青碧色の衣装に、朱色の袖くくい紐と軽翠の地金に金の鈴が輪状になった飾り鈴クシロを身に付けた、黒髪巻毛に翠の瞳のマライアヌの図、あり。シャーペン描きに色鉛筆塗り。)
P3.
女神は更に歩いて行って、土から六人の人間を作り、マルダノビメ、マライヒメ、サルルヒメ、クルスタカワケ、オルノミコ、アスタイラツコと名づけました。
これが今日の大地の国人(ダレムアト)の始まりであります。
女神はこの地をハジメノハラと名づけ、それから七十二たび、お山の上を太陽が横ぎるまで(※1)そこにとどまって、人間に食物を与え、言葉を与え、考える力を与えて、喜びと悲しみと愛することを教えました。
生まれる者、死んだ者、女神の庇護のもとに人の数は三十と六人になっていました。
ある日、女神はさびしさ、と、いう感情を思いだしました。
大人が乳飲み児の世話だけでは生きていくことができないように、女神もまだほんのわずかな感情しかしらない幼ない人間たちの間では孤独な存在でした。
「いまぞ時は至れり。」
女神は立ちあがってそう言うと、まだごく小さい大地(ダレムアス)の世界をとりまく深遠なる淵を超えて、遠く、遠く、心の輪を広げ、深く、深く、呼びかけました。
きてください
きてください
きてください
きてください
わたしの仲間たち
きてください
きてください
きてください
きてください
※ お山、つまり後に時の果てまで山と呼ばれるようになるかの山の頂上はハジメノハラから見ると、一年に一度、春分の日にしか太陽がかからない。
P4.
真実を求める者よ
わたしのそばへ
わたしの国へ
ただ束の間であろうとも
一時(いっとき) この国 わたしと共に
一つの道を
共に!
それからまた長い時が過ぎて、女神は“誰か”が大地(ダレムアス)にやって来たことに気づきました。
一人、また一人。
別の世界、別の宇宙、別の大地より、さながらほうき星のごとく輝く尾をひいて、女神の呼び声に応(こた)える者たちが、次々と大地(ダレムアス)の懐(ふところ)に集って来ます。
遂に女神(ドライム)マライアヌのもとにそろった神々は三十と五(いつ)柱。
ここに大地の国(ダレムアス)の最初の神人(かみうど)、三十六神がそろったのです。
「我々は何をしたらよろしいでしょう。我ら六人をのぞけば、皆、我らの仲間に加わったばかり。何をなすべきかを知りませぬ」
「どうぞお指し図を、マライアヌ」
「……この大地(ダレムアス)は、生まれて間もない、若い国なのです。若い世界に若い者が来て国を造る。なんの怖れる事がありましょうや。
わたくしとて国を造るような大いなる業(わざ)をなすのは初めてです。が、これが我(われ)らに与えられた課題ならば、必ずや見事になしとげてみせましょう。」
(女神のうしろななめ横顔のイラストあり)
P5.
ここに至って、神々(こうごう)しい集団に驚いて物陰に隠れていた人間たちがようやく顔を見せました。
「まあ心配はいらないのですよあなたたち。このかたがたは、わたくしの仲間。これからわたくしと共にあなたたちを導びく役目をします。あなたたちは、わたくしたちから様々な事を学ぶでしょう。そうすれば、もう今までのような純粋な幸福を手にすることはなくなるのです。……この大地の国(ダレムアス)は人間の国。やがてわたくしたちに替わってあなたたちが大地の国(ダレムアス)を統べるようになるでしょう。
今、大地の国(ダレムアス)の歴史が始まるのです……。」
(誇らしげに語りかける女神のイラスト、描きかけ☆)
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概 略 ・ 創 世 記
昔々、神人(かみびと)の長(おさ)なる女神(ドライム)マライアヌがこの地に来たるる時、大地は、まだその姿を定めず、うなうなと優しいこがね色にたゆたい、たゆたい、見渡すかぎりにまどろんでおりました。
それから長いながい年月(としつき)のあいだ、女神はひとつの巌の上に一人で眠っておりました。
そうしている間(ま)に地は熱く猛(たけ)りまた凍(い)てつき、その繰り返しの内に、聖なる大地の霊から空とそれを司(つかさ)どる霊が生まれ、無慈悲な虚空を追い払って母なる大地の囲みをかためました。
それから、大地のおもてより、幾たりかの水乙女たちが抜け出でて白い雲、黒い雲、灰色の雲となり、星々の目から大地を護って、女神の目覚めのその時までひたりと動こうとはしませんでした。
うねり、また炎を噴き上げ、身震いをし、大地はゆるゆるとその形を整えてゆきました。
× ×
また長い時が過ぎて、ようやく女神の目覚めの日がきました。
女神が目覚めた時、東の地平から雲が退き、太陽は初めてこの世界を見ることを許されました。
彼女はやさしいままの姿で朝陽の祝福の輪の中に立っていました。
彼女の名前はマリアンドリーム。
かつて、幾度も生まれ変り生まれ変りして、まだ普通の人間であった最後の一生に、彼女はその同じ名で呼ばれていました。
それから、彼女は記憶を失わない者、この世の外にあってこの世に含まれる者、不思議の探求者、彼ら流に言えば“真実を探す者”の一人となったのです。
P2.
女神は、まず、空気から着物を作ると、そのまま歌いながら歩いてゆきました。
ちょうど六節歌ったところで三羽の渡り鳥が現われました。
「渡り鳥、渡り鳥、私(わたくし)の兄弟たちはどうしました。」
「姉君様は光の国(エルシャムリア)に」
「双子の弟君は地球星(ティカセルト)に」
「兄君様は空虚の洞窟(ボルドガスドム)に」
「それぞれ国造りを始めておられます」
それを聞いて、女神は真赤な血を燃やし、紅蓮の炎から三羽の鳳凰鳥を作って尋ねました。
「そして私(わたくし)はどこにいます?」
「大地(ダレムアス)に」
それから鳳凰たちは女神(ドライム)の目覚めを兄弟神たちに告げに飛び立ってゆきました。
(☆平城京風、というか山田ミネコ風のハルマゲドン・シリーズ風…A^-^;)…薄桃色の肌着に青碧色の衣装に、朱色の袖くくい紐と軽翠の地金に金の鈴が輪状になった飾り鈴クシロを身に付けた、黒髪巻毛に翠の瞳のマライアヌの図、あり。シャーペン描きに色鉛筆塗り。)
P3.
女神は更に歩いて行って、土から六人の人間を作り、マルダノビメ、マライヒメ、サルルヒメ、クルスタカワケ、オルノミコ、アスタイラツコと名づけました。
これが今日の大地の国人(ダレムアト)の始まりであります。
女神はこの地をハジメノハラと名づけ、それから七十二たび、お山の上を太陽が横ぎるまで(※1)そこにとどまって、人間に食物を与え、言葉を与え、考える力を与えて、喜びと悲しみと愛することを教えました。
生まれる者、死んだ者、女神の庇護のもとに人の数は三十と六人になっていました。
ある日、女神はさびしさ、と、いう感情を思いだしました。
大人が乳飲み児の世話だけでは生きていくことができないように、女神もまだほんのわずかな感情しかしらない幼ない人間たちの間では孤独な存在でした。
「いまぞ時は至れり。」
女神は立ちあがってそう言うと、まだごく小さい大地(ダレムアス)の世界をとりまく深遠なる淵を超えて、遠く、遠く、心の輪を広げ、深く、深く、呼びかけました。
きてください
きてください
きてください
きてください
わたしの仲間たち
きてください
きてください
きてください
きてください
※ お山、つまり後に時の果てまで山と呼ばれるようになるかの山の頂上はハジメノハラから見ると、一年に一度、春分の日にしか太陽がかからない。
P4.
真実を求める者よ
わたしのそばへ
わたしの国へ
ただ束の間であろうとも
一時(いっとき) この国 わたしと共に
一つの道を
共に!
それからまた長い時が過ぎて、女神は“誰か”が大地(ダレムアス)にやって来たことに気づきました。
一人、また一人。
別の世界、別の宇宙、別の大地より、さながらほうき星のごとく輝く尾をひいて、女神の呼び声に応(こた)える者たちが、次々と大地(ダレムアス)の懐(ふところ)に集って来ます。
遂に女神(ドライム)マライアヌのもとにそろった神々は三十と五(いつ)柱。
ここに大地の国(ダレムアス)の最初の神人(かみうど)、三十六神がそろったのです。
「我々は何をしたらよろしいでしょう。我ら六人をのぞけば、皆、我らの仲間に加わったばかり。何をなすべきかを知りませぬ」
「どうぞお指し図を、マライアヌ」
「……この大地(ダレムアス)は、生まれて間もない、若い国なのです。若い世界に若い者が来て国を造る。なんの怖れる事がありましょうや。
わたくしとて国を造るような大いなる業(わざ)をなすのは初めてです。が、これが我(われ)らに与えられた課題ならば、必ずや見事になしとげてみせましょう。」
(女神のうしろななめ横顔のイラストあり)
P5.
ここに至って、神々(こうごう)しい集団に驚いて物陰に隠れていた人間たちがようやく顔を見せました。
「まあ心配はいらないのですよあなたたち。このかたがたは、わたくしの仲間。これからわたくしと共にあなたたちを導びく役目をします。あなたたちは、わたくしたちから様々な事を学ぶでしょう。そうすれば、もう今までのような純粋な幸福を手にすることはなくなるのです。……この大地の国(ダレムアス)は人間の国。やがてわたくしたちに替わってあなたたちが大地の国(ダレムアス)を統べるようになるでしょう。
今、大地の国(ダレムアス)の歴史が始まるのです……。」
(誇らしげに語りかける女神のイラスト、描きかけ☆)
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さらに時代は下って、ハジメノハラには人間の“国”と呼べるだけのものができあがりました。
ハジメノハラの北西にあたる山地のはずれ、なだらかな丘陵地帯のふもとに築かれた神宮(じんぐう)マドリアノビ(マドリアナビ?)を中心に、暖かな地方に向って肥沃な畑や、実り豊かな水田が広がり、その所々に、いくつかの村、いくつかの町、いくつかの庄がありました。
神宮殿(マドリアノビ)はそれだけで一つの都市であり、同時に一つの家であって、工芸や建築にたけた神々が何年もかかって造り上げた美しい都(みやこ)でした。
塔や二階建は少なく、土地の起伏に沿って、点在する小さな白い館を三つ四つ、五つ六つと渡り廊下でつなぎ、中庭表庭なども含めて生け垣や白い土塀で囲いました。
とりわけ長い廊下には優しい東屋をもうけ、垣と垣の間や中庭や広場などには質素な輝きを持つ石段や石畳の細径小径。大道、大路には泉水や、虹のようなたいこ橋、目もあやな歌舞殿などが随所に設けられていました。
マドリアノビができて数十年たつと、神々は異世界へ通じる“道”の扉を除々に開け放ってゆきました。
まず初めは女神マライアヌの姉リーシェンソルトの治める
(※未完※)
(☆文中に「庄」という語を発見!! (^◇^;)”
……と、いうことは、『指輪物語』は読んだ後
(中学1年以降)ということですね………………☆
山田ミネコと古事記の影響もバリバリ入ってます☆)A^-^;)”
.
『 魔法の国の戦い 』 (@小学校4〜6年?)
2007年6月7日 連載(2周目・大地世界物語) コメント (1)魔 法 の 国 の 戦 い
序章
ダレムアスと三つの国々
はるか昔 四つの国あり
四つの国 治める 四人の神あり
四人の神は兄弟で、
宇宙の神の子であった。
四人の神はそれぞれに
別の世界を治めていたが
魔法を使い 行き来した。
一番上の姉君は
気高き女神 リーシェンソルト
治める国こそ エルシャムーリア
天使が暮す 気高き国よ
二番目兄君 ダーギング
世界でもっともおそろしき
ボルドム軍を指揮しておった
ああ ボルドム軍こそ悪魔の国よ
三番 弟 アスールは
人間たちを 治めていたが
すごいよくばり いばってた
最後の四番目 妹君が
治めていたのが ダレムアス
妖精、人魚、魔法使い、
だれでもここに住んでいた
リーシェンソルトとダーギング
たいそう仲が 悪かった
ある時ダーギング 女神に聞いた
「姉君リーシェンソルトよ、
なぜ、私(わたくし)のボルドム軍を
エルシャムーリアより追いだしたのか?」
女神は答えた弟に
「私の国は天使の国、
そなたの家来の悪魔ども
いれるわけにはいきませぬ」
かくてダーギングの いかりは はげしく
ボルドム軍を けしかけて
貴(とうと)き エルシャムーリアを
一夜のうちに ほろぼした
しかしダーギングのいかりは おさまらず
なげき悲しむ姉君を
世界の果ての魔の山の
氷の室(むろ)に閉じこめた。
それ以来、
三つの国は つながりを断ち
「時」は静かに歩(あゆ)んで行った。
悪魔はどんどん ふえて行(ゆ)き
ついに 地球まで占領したが
それでも まだまだ ふえつづけ
ダレムアスに魔の手がのびた。
かくてダレムアスに戦いは起こる。
.
(大学ノートにシャーペン横書き)
P1.
昔、はるかなるダレムアスの大地に幸せの花が咲き乱れていた頃、王の中の王の都、ルア・マルラインが美しく栄えていた頃、国中の祝福の中で、王の第2子、王女マーライシャが生まれました。
王女は、母君の美わしきエルフェリヌ(エルフ乙女)、水面月のフェイリーシャ様に似て、透けるような白い肌と美しい声を、そして、王家の誇りたる豊かな黒髪と星の光る夜の空の色の瞳をしていました。
ただ、その髪の色は普通の黒ではありませんでした。
母君の深緑色の髪のせいか、陽の光のもとでは濃い緑色に見えるのです。殊に王女が笑っている時には緑の色が強くなるようで、兄君と一緒に遊んでいる時などには、夏の山のような緑色の炎が王女のまわりでゆれました。
ある年のこと、ダレムアス全体に、わけもなく不安な空気が広がりました。
草も、木も、太陽の色も、どことは言えず、なにかがおかしいのです。
賢者や魔法使いなど、ダレムアスに住む力有る者たちはこれを神々からの警告であると判断しました。
即座に賢者会議が開かれ、魔法使いや賢者は言うまでもなく、天翔けるエルフェリ族や、異世界から来たエルシャマーリャ(天上人)、名高い王侯騎士たちなど、ダレムアス世界の主だった力有る者が続々と王都ルア・マルラインの城中に集まってきました。
彼らは城の奥深くにこもり、異変を告げる数々の兆候を、ありとあらゆる角度から調べ上げ、検討し、数週間に渡る会議のあげくに、遂に一つの恐ろしい結論にたどりつきました。
「 おのおのがたにけしてこのことを他言なさらぬようお願い申す。」
賢者団の議長、予見者グラウドは老いと数週間の心痛のあまりにふるえる声で、しかし厳しく一同に言いわたしました。
そして更に数週間、語るべきことは全て語りつくして、会議の出席者たちは旅出って行きました。
ある者は故郷へ、またある者は長い放浪の旅路へ、不安げな顔もあり、悲痛な面持ちもあり、ただ、皆一様に厳しい決意の色を表して、来るべき嵐を向え打つために、長い孤独な戦いに踏み出しました。
P2.
けれど、最も苛酷な運命を負うことになったのは、まだやっと馬に乗り始めたばかりの幼ない王女でした。
王女は、万ヶ一王城が陥ちた時の事を考えて、王家の血統を絶やさぬため、また来たるべき日のための隠し刀として、今は絶えて行き来のない、かつての姉弟世界、異世界ティカースへ移されることになったのです。
ある月の晩、うばとたった二人の騎士と共に、王女は異世界へ抜ける魔法の通路(みち)を歩いて行きました。
丸い大地の国(ティカース)へ。
王女も、また、他のだれもが、かの恐るべきボルドムの魔手がすでにティカースへさえ伸びていることを知りませんでした。
そして、それがこの物語の始まりだったのです。
(☆8歳ぐらい?の略武装の剣と宝冠を身に付けて暗い不安げな表情の
王女マーライシャのシャーペン描きのイラストあり)
(未完)
.
P1.
昔、はるかなるダレムアスの大地に幸せの花が咲き乱れていた頃、王の中の王の都、ルア・マルラインが美しく栄えていた頃、国中の祝福の中で、王の第2子、王女マーライシャが生まれました。
王女は、母君の美わしきエルフェリヌ(エルフ乙女)、水面月のフェイリーシャ様に似て、透けるような白い肌と美しい声を、そして、王家の誇りたる豊かな黒髪と星の光る夜の空の色の瞳をしていました。
ただ、その髪の色は普通の黒ではありませんでした。
母君の深緑色の髪のせいか、陽の光のもとでは濃い緑色に見えるのです。殊に王女が笑っている時には緑の色が強くなるようで、兄君と一緒に遊んでいる時などには、夏の山のような緑色の炎が王女のまわりでゆれました。
ある年のこと、ダレムアス全体に、わけもなく不安な空気が広がりました。
草も、木も、太陽の色も、どことは言えず、なにかがおかしいのです。
賢者や魔法使いなど、ダレムアスに住む力有る者たちはこれを神々からの警告であると判断しました。
即座に賢者会議が開かれ、魔法使いや賢者は言うまでもなく、天翔けるエルフェリ族や、異世界から来たエルシャマーリャ(天上人)、名高い王侯騎士たちなど、ダレムアス世界の主だった力有る者が続々と王都ルア・マルラインの城中に集まってきました。
彼らは城の奥深くにこもり、異変を告げる数々の兆候を、ありとあらゆる角度から調べ上げ、検討し、数週間に渡る会議のあげくに、遂に一つの恐ろしい結論にたどりつきました。
「 おのおのがたにけしてこのことを他言なさらぬようお願い申す。」
賢者団の議長、予見者グラウドは老いと数週間の心痛のあまりにふるえる声で、しかし厳しく一同に言いわたしました。
そして更に数週間、語るべきことは全て語りつくして、会議の出席者たちは旅出って行きました。
ある者は故郷へ、またある者は長い放浪の旅路へ、不安げな顔もあり、悲痛な面持ちもあり、ただ、皆一様に厳しい決意の色を表して、来るべき嵐を向え打つために、長い孤独な戦いに踏み出しました。
P2.
けれど、最も苛酷な運命を負うことになったのは、まだやっと馬に乗り始めたばかりの幼ない王女でした。
王女は、万ヶ一王城が陥ちた時の事を考えて、王家の血統を絶やさぬため、また来たるべき日のための隠し刀として、今は絶えて行き来のない、かつての姉弟世界、異世界ティカースへ移されることになったのです。
ある月の晩、うばとたった二人の騎士と共に、王女は異世界へ抜ける魔法の通路(みち)を歩いて行きました。
丸い大地の国(ティカース)へ。
王女も、また、他のだれもが、かの恐るべきボルドムの魔手がすでにティカースへさえ伸びていることを知りませんでした。
そして、それがこの物語の始まりだったのです。
(☆8歳ぐらい?の略武装の剣と宝冠を身に付けて暗い不安げな表情の
王女マーライシャのシャーペン描きのイラストあり)
1.嵐の晩に
「ひどい嵐になったわね」と、有澄夫人。
窓ガラスに両手をあてて、雄輝は外の暗がりをながめていました。
「うん。まるで川の中にいるみたいだよ、おばさん」
外の景色があまりものすごいもので、この嵐のせいで小学校最初の運動会が流れてしまったことなど、すっかり忘れてしまった様子です。
ピカッと光った雷に「キャッ!!」とすっとんきょうな声。
これは雄輝の母、翼夫人です。間髪を入れずに
グァラ グァラ グァラ ドッシーン!!
「うわあ、今のはどこかに落ちたぞ」
森の中の一軒家は気楽なものです。
「カーテンをひいて下さらない、冴子さん。わたし雷って苦手で。」
「なァんでさ、お母さん。こんなにおもしろいのに」
こんなやりとりをしり目に、翼氏と有澄氏は優雅にチェスに興じています。
旧式の大きな暖炉に、照り返しでチカチカ光る石炭をたすと、ゴォッとかすかな音をたてて燃え上がりました。
時計が9時を打った時、
(未完)
.
『 序 』 (@中学2年か3年?)
2007年6月9日 連載(2周目・大地世界物語)
これを読んでくださるもう大人になってしまった方々へ
童心にかえって読んで下さい。
これを読んでくださるまだ大人に、なっていない方々へ
わからないところはじぶんでじしょをひいてね
P1.
序.
その昔、皇女(おうじょ)マーライシャがまだ幼なく、現実よりも、ふわふわとした突拍子もない夢の中に暮らしている方が多かった頃、父皇(ちちおう)の片腕たる、がんこ頭の『曲(まが)り赤松』・トーザン卿にこんな質問をうけた事があるといいます。
「皇女(ひめ)さまが大きくなられたら、一体何になるおつもりなのですかな」
それというのも、マーライシャには、地球式に数えたなら六つ違いの兄上、マリシアル皇子がいて、彼が皇位につくことになっていたし、勝気な皇女(おうじょ)のこと、普通の皇女(ひめみこ)や王女(おおきみ)が望み夢見るような少女らしい憧れは持たぬだろうと、トーザン卿は思ったのです。
少々からかいをこめたこの質問を、幼ない皇女は真顔でうけて、さらりと、こう言ってのけました。
「わた
皇女は決して俗に男女と呼ばれる類(たぐい)の乱暴な少女ではなかったのですけれど、この時からすでに『男の子』になって少年たちと駆け回ることを夢見ていたのだそうです。
はっはっは、と、皇(おう)の愉快そうな笑い声が、南に張り出した一段高い庭の、低い石垣の上から聞こえてきました。
そうかそうか。このあいだまでは戦(いく)さ乙女(おとめ)になるとか言うていたのに、ついにそんな事を言いだしたのか。……しかし、大人になったら男の子とは……はははは。さすがはわたしの娘だけある。」
「笑いごとではございませんぞ、皇(おう)よ。実際、皇女(ひめ)のお転婆(てんば)は少し度が過ぎます。」
「良いではありませんか。あの子はわたくしの血を受けて身が軽いのですもの、少々高い木や塔の上に登っても、危険なことはないでしょう。」
「しかし女皇(めのきみ)、マーライシャ様は年も満たぬうちから馬や弓のみならず剣の稽古(けいこ)まで始めているのですぞ。」
女皇(めのきみ)、とは、もちろん皇女の母フエヌイリ姫のことです。
P2.
姫にはトーザン卿の苦い顔
その立ち姿の麗(うるわ)しさといったら笑んだ口もとの指先から銀の光が飛びちるようです。
「知っておりますとも。なんといってもわたくしがそれを許したのですから。
そろそろわたくしたち精霊の天翔(あまか)ける技(わざ)を教えてみようと思うのですけれど。」
「本当!? お母さま!」
いきなり頭上からはずんだ声が降(ふ)ってきて、屋根の上で立ち聞きしていたマーライシャは、礼儀をわきまえぬ行(おこな)いをたっぷりと叱られて、それでも次の誕生式から『お空の歩き方』を教えてもらえることになりました。
「叔父さまみたいに最果(さいは)ての月立(つきたち)の国までも飛べるようになるかしら? いいえ、わたしはうんとたくさん練習して、お月さままでだって飛べるようになるの。」
「それではおみやげにうさぎ
「ええいいわ、トーザン卿。……でも、うさぎ
皇と女王は目を見かわして微笑(ほほえ)みました。
かわいい二人の宝。
彼ら流の数え方でやっと18年目、幼児期の終りにさしかかろうかという皇女に、月(レリナル)とこの大地の国(ダレムアス)の間にひろがる距離がわかるはずもなく、無邪気に行けると信じるその愛らしさは、国と国とのもめごとや国民の幸福といったものによる心の痛みや疲れを、すぐにいやしてくれるのでした。
けれども、フエヌイリ女皇と皇女との約束は遂に果たされませんでした。
ちょうどマーライシャの誕生式に前後して始まったあの『異変』が、皇と女皇から平和な団欒(だんらん)の時間をうばってしまったのです。
P3.
青天(せいてん)には霹靂(へきれき)が、獣たち家畜たちには恐怖が訪ずれました。
ダレムアス全土の国々を統べる、女神の子孫たる皇には休むいとまもなく、ただちにダレムアス中の力有る者たちに招集をかけました。
かの血なま臭い戦国時代より、皇家五代の長きに渡って封じられていた、ルア・マルラインの『会議の間』の扉が遂に開かれることになってしまったのです。
けれどマーライシャにとってそれが意味するところは難しすぎて、幾度となく裂ける天を恐ろしく思い、聞きかじった父皇たちの話から何事かがおころうとしていることを感じとりはしましたが、それでも何よりも悲しく思ったのは、母フエヌイリ女皇がいなくなったことでした。
アイデルフ皇と結ばれてルア・マルラインで暮らすようになってからも、精霊の一族(エルフエン)としての彼女の魔力の強さは変わらず、
「 Martia [Marlitia]」なるタイトルで、「K子姉・筆」と私が注釈を入れている、シャーペン描きに色鉛筆塗りの、稚拙なイラストあり。
……この頃すでに1歳半上の姉よりも私の画力のほうが上達してしまい、それがバレたら虐待を受けるのは明白だったので……、
必死で姉の目から自分の画帳を隠していたために、まだ自分のほうが「絵が巧い」と思い上がっていた姉が、勝手にエラソウに「イラスト、描いてやったぞ!」と、ひとのノートにラクガキしやがったのでした……………………o( ̄^ ̄;)o”
コドモ心に傷ついた。なんで私は「虐待(暴力)」を怖れるあまり、自分の描きたい絵を堂々と描いて、誰かに見せて誉めて貰いたい、という成長途上の子どもとして当然の欲求を、満たすことが出来なかったんでしょうか………………。
(※ で、そのすぐ後に結局、実力全開で描いていた漫画の練習帳を姉に目撃されてしまい……………………「ふぅぅぅぅ〜ん………………★」と、ものすごい目で睨まれて……………………
今に至るまで続く、実姉による暴力支配(虐待or家庭内暴力)の日々が、始まってしまったのでした……………… (T_T)/"
私の「基本的人権」って…………どこよ?
と、実家や親戚宅に顔を出すたびに思う人生って……
って、……あ、全然本文とは関係のないオハナシでしたっ★
||||(-_-;)>”||||
『 第 一 章 』 (@中学2年か3年)
2007年6月10日 連載(2周目・大地世界物語)P3
第一章
雲一つなく晴れわたっているはずなのに、空の光は遠く、空と大地の間に薄い浅黄色の幕が張りめぐらせてあるようでした。
大人たちの話では、その目に見えないほど細かい火山灰は、はるか彼方の、母神マリアンドリームが眠る炎の山より風に乗って飛んできたものなのだそうです。
マーライシャは一人窓辺にほおづえをついて、少し行儀の悪い恰好で空と、その青い布に時折現われる、様々な色合いの光のレース模様を見るともなしに見ていました。
つまらないのです。たいくつなのです。
かなり前から始まった地震や雷、加えて一昨日(おととい)からのこの火山灰天気で、遠乗りやらはともかく、庭へ出ることさえ禁止されてしまったのです。
それでなくても、こう空気中が黄色い細かい灰でいっぱいでは外に出る気などおこるものではありません。
マーライシャは朝から三十と六回目のため息をつきました。
まだ十時のおやつにさえなってはいなかったのですが。
すると、幸わいにも兄上のマリシャル皇子が戻ってきました。
「マ・リシャ、遅くなってごめん。待たせた?」
「ほんの少しだけだわ」
マ・リシャというのはマーライシャのごく内輪の愛称で、皇と女皇と皇子、それにフエヌイリ姫の兄、フエラダル四人しか使いません。
マリシャル皇子は少しばかり偵察に出て、食物倉から少々お菓子を失敬し、それと共に一大ニュースも聞きかじってきていて、すっかり興奮していました。
ところがマーライシャときたら、皇子が口を開くよりも早く、彼を一目見るなり聞きました。
「一体何が起こったというの!?」
「これはしたり。まこと皇女(ひめ)の勘の良さには敬服せざるを得ませんな。」
皇子が、秘密を言い当てられた時のトーザン卿の憤慨ぶりそのままに、おまけにひげをしごくまねまでもしてみせたもので、マーライシャはことこと笑いころげ、つられて皇子も笑いました。
「まったく、内緒にしておいてあとで驚ろかせようと思ったのに、おまえときたらすぐに見抜いてしまうのだからなあ。当てられたからには仕方ない、話すけれど……。」
深皿に入ったすてきにべとべとする煮りんごを突つきながら、皇子は聞きかじってきたことを全部妹君(いもうとぎみ)に話して聞かせました。
皇女と皇子の年の差を考えれば当然のことなのですが、彼女には皇子がその時に教えてくれたことのうち三分の一は理解できず、わからなかった事柄や、理解はしても直接自分に関(かか)わりがなさそうに思える所は聞くはじから忘れていきました。
西の谷の村で、突然季節はずれの大雨が降って、折(おり)からの地震と共に山津波(やまつなみ)となって村を襲い、逃げ遅れた人達が十人近く死んだこと。
同じような災害が各地におこって、その救済のために多勢の力有る者(ちからあるもの)、すなわち魔法使いや精霊、神々の血を受けた者たちが力をつくしてはいるものの、着(き)の身(み)着(き)のまま全財産を失ってしまった人たちが大勢いること。
話を聞いているうちに、マーライシャはだんだん興奮してきました。
「ひどいわ。いったいなぜ、だれがそんなことをしているの!?」
「いや、だから、そこが不思議なところなんだよ。ぼくらの住んでいるこの美わしの白い館(ルア・マルライン)近辺は、土地そのものに護りの魔力が強いからまだ被害が少ないけれど、“異変”はダレムアス三百六十六国、程度の差こそあれ、全ての国を覆っているんだ。特に大地の背骨山脈の周囲の国は、ひどい地震がかた時も休まらないそうだよ。女神の山が火を噴く前ぶれだなどと言いだした者もいる。根も葉もないうわさで、すぐに消えたそうだけど」
「当り前だわ。女神の山が火を噴く時は世界の終る時ではないの。」
「だから単なる流言だよ。……ただ、おかしいのは、だれもそんなことは
P4.
ことなんだ。」
「だれも!?」
「そう。だれも。これだけの大異変を引き起こすには恐ろしく強い魔力が必要だ。最も力の強い精霊でもそれだけの力はないよ。父上と母上が力を合わせても無理だろうな。とにかく、それ程の魔力が振るわれていれば、どんなに当人が気を使ったところで、心の瞳をいっぱいに開けば、見つけられないはずがない。」
「それでもわたしは見つけられないわよ。もう何回も試しているのに、」
「だろう!? だからこの異変は大地の国人(ダレムアト)が魔法を使っておこしたものではない。と、すれば、残るは神々か、あるいは聖なる霊達御自身の力しかない。ここまでは父上達にもすぐわかったんだ。問題はそこから先さ。何のために? 力有る者は皆、災害を食い止めるのに急がしかったから、異変後一週間たってから、やっと理解した。神人(かみうど)の長(おさ)、女神マリアンドリームを始めとした諸神が“大地の言葉”を借りて、ぼくらに何かを伝えようとしているんだとね。」
「大地の言葉って、この世の始まりに女神が聞いたというあの声と同じものなの?」
「うん。どうもそうらしいよ。ぼくにもよくはわからないんだけど。
それから後は、危うくばあやに見つかりそうになってね。聞いている暇がなかったんだ。」
(☆窓辺に寄りかかって林檎を囓りながら語る黒髪の皇子と、足下に座って話を聞く緑黒髪の皇女の「挿し絵」あり。シャーペン書き、色鉛筆塗り。)
第一章
雲一つなく晴れわたっているはずなのに、空の光は遠く、空と大地の間に薄い浅黄色の幕が張りめぐらせてあるようでした。
大人たちの話では、その目に見えないほど細かい火山灰は、はるか彼方の、母神マリアンドリームが眠る炎の山より風に乗って飛んできたものなのだそうです。
マーライシャは一人窓辺にほおづえをついて、少し行儀の悪い恰好で空と、その青い布に時折現われる、様々な色合いの光のレース模様を見るともなしに見ていました。
つまらないのです。たいくつなのです。
かなり前から始まった地震や雷、加えて一昨日(おととい)からのこの火山灰天気で、遠乗りやらはともかく、庭へ出ることさえ禁止されてしまったのです。
それでなくても、こう空気中が黄色い細かい灰でいっぱいでは外に出る気などおこるものではありません。
マーライシャは朝から三十と六回目のため息をつきました。
まだ十時のおやつにさえなってはいなかったのですが。
すると、幸わいにも兄上のマリシャル皇子が戻ってきました。
「マ・リシャ、遅くなってごめん。待たせた?」
「ほんの少しだけだわ」
マ・リシャというのはマーライシャのごく内輪の愛称で、皇と女皇と皇子、それにフエヌイリ姫の兄、フエラダル四人しか使いません。
マリシャル皇子は少しばかり偵察に出て、食物倉から少々お菓子を失敬し、それと共に一大ニュースも聞きかじってきていて、すっかり興奮していました。
「一体何が起こったというの!?」
「これはしたり。まこと皇女(ひめ)の勘の良さには敬服せざるを得ませんな。」
皇子が、秘密を言い当てられた時のトーザン卿の憤慨ぶりそのままに、おまけにひげをしごくまねまでもしてみせたもので、マーライシャはことこと笑いころげ、つられて皇子も笑いました。
「まったく、内緒にしておいてあとで驚ろかせようと思ったのに、おまえときたらすぐに見抜いてしまうのだからなあ。当てられたからには仕方ない、話すけれど……。」
深皿に入ったすてきにべとべとする煮りんごを突つきながら、皇子は聞きかじってきたことを全部妹君(いもうとぎみ)に話して聞かせました。
西の谷の村で、突然季節はずれの大雨が降って、折(おり)からの地震と共に山津波(やまつなみ)となって村を襲い、逃げ遅れた人達が十人近く死んだこと。
同じような災害が各地におこって、その救済のために多勢の力有る者(ちからあるもの)、すなわち魔法使いや精霊、神々の血を受けた者たちが力をつくしてはいるものの、着(き)の身(み)着(き)のまま全財産を失ってしまった人たちが大勢いること。
話を聞いているうちに、マーライシャはだんだん興奮してきました。
「ひどいわ。いったいなぜ、だれがそんなことをしているの!?」
「いや、だから、そこが不思議なところなんだよ。ぼくらの住んでいるこの美わしの白い館(ルア・マルライン)近辺は、土地そのものに護りの魔力が強いからまだ被害が少ないけれど、“異変”はダレムアス三百六十六国、程度の差こそあれ、全ての国を覆っているんだ。特に大地の背骨山脈の周囲の国は、ひどい地震がかた時も休まらないそうだよ。女神の山が火を噴く前ぶれだなどと言いだした者もいる。根も葉もないうわさで、すぐに消えたそうだけど」
「当り前だわ。女神の山が火を噴く時は世界の終る時ではないの。」
「だから単なる流言だよ。……ただ、おかしいのは、だれもそんなことは
P4.
ことなんだ。」
「だれも!?」
「そう。だれも。これだけの大異変を引き起こすには恐ろしく強い魔力が必要だ。最も力の強い精霊でもそれだけの力はないよ。父上と母上が力を合わせても無理だろうな。とにかく、それ程の魔力が振るわれていれば、どんなに当人が気を使ったところで、心の瞳をいっぱいに開けば、見つけられないはずがない。」
「それでもわたしは見つけられないわよ。もう何回も試しているのに、」
「だろう!? だからこの異変は大地の国人(ダレムアト)が魔法を使っておこしたものではない。と、すれば、残るは神々か、あるいは聖なる霊達御自身の力しかない。ここまでは父上達にもすぐわかったんだ。問題はそこから先さ。何のために? 力有る者は皆、災害を食い止めるのに急がしかったから、異変後一週間たってから、やっと理解した。神人(かみうど)の長(おさ)、女神マリアンドリームを始めとした諸神が“大地の言葉”を借りて、ぼくらに何かを伝えようとしているんだとね。」
「大地の言葉って、この世の始まりに女神が聞いたというあの声と同じものなの?」
「うん。どうもそうらしいよ。ぼくにもよくはわからないんだけど。
それから後は、危うくばあやに見つかりそうになってね。聞いている暇がなかったんだ。」
(☆窓辺に寄りかかって林檎を囓りながら語る黒髪の皇子と、足下に座って話を聞く緑黒髪の皇女の「挿し絵」あり。シャーペン書き、色鉛筆塗り。)
『 序 章 』 (@中学……か高校1年か……?)
2007年6月11日 連載(2周目・大地世界物語) コメント (2)
彼(か)の昔
哀しみの姫てふ侍女なる娘の
皇女(おうじょ)に問ひける。
「国がため
未だ見ざる男(ひと)に嫁ぐ。
これ幸福(しあわせ)であられるや」
皇女答ふること能はざりき。
序章
一、
その昔、危機皇治世の時代58年、第一皇子マリシアル様御成人と第二皇女マーライシャ様“学び始め”のお式がちょうど重なった年のこと、一人の娘御が皇女付きの侍女として“麗しの白き都(ルワ・マルライン)”のお城に上がられました。
そのお方は実はアーシュラ・グィドと申される、帰化地球人(ティクト)自治領のとある大国の姫宮であられましたが、皆にはそれを伏せてただ“哀しみの姫”とだけ呼ばれておりました。
さて、折しも始まった大異変のために、長い平和の時代を裂いて諸侯会議が開かれたのは、丁度この年の事でございます。
御存知の通り大異変の原因は母なる大地の女神よりの急を告げる警告。
諸侯会議の際に遂に明らかにされたその内容が実に恐ろしいものでありました事は、今更申すまでもございません。
その危機に立ち向かうためには、長い間二つに割れて戦争(いくさあらそい)の原因にさえなってきた高貴な血筋を今こそ一つに戻し、全ての確執を取り払って大地の国(ダレムアス)全体を一つに統べる事のできる皇を誕生させなければならない。
その場に集った皇と王たちとがそう断を下した時が、全ての物語のそもそもの始まりでありました。
この時を境に、大地は大いなる歴史の流れの上を巡り始めたのでございます。
(※「コクヨ ケ−10 20×20」原稿用紙にシャーペン書き。)
『 (無題) 』 (@中学か高校。)
2007年6月12日 連載(2周目・大地世界物語) コメント (2)業火。
美しかったルア・マルライン
「こっちだ、マ・リシャ!」
「はい、兄様(にいさま)!」
心を引き裂く程の苦しく辛い想いを、今、二人は考えてはならないのです。
駆け抜けて行く幾筋もの闇。火の手。
どこから現われるか知れない卑劣な地獄の群れ。
射かけられる火矢の一つ一つに対してさえも、互いにかばいあっている余裕はありません。
全神経を張りつめて走ってゆくさなかにあっては、涙で視界を乱す事、即ち死です。
幸いにも城のこちらの翼へは、まだあの悪鬼たちも入り込んでいないようでした。
二人が後にして来た皇の執政の間から、鈍い戦いの音がかすかに追いかけて来ます。
父母たる皇と女皇への強い愛情が、きりきりとちぎれんばかりに二人の眉をしめ上げ、唇からは細い糸のような血の筋が、涙の代りをつとめるかのように湧れ出してゆきました。
今はもう、聞こえる音といえばどこかで城が燃え落ちるゴウッという響きと、駆け続ける二人の足音と、荒い自分の息だけです。
マーライシャ皇女は必死で嗚咽をかみ殺しました。
皇統連綿たる女神マリアヌディアイムの直系、是が否でも生き残らねばならぬ皇位継承者であるという誇りと責任とだけが、この年若いというよりはあどけなさの多く残る幼い皇女を走り続けさせている全てでした。
回廊を一つ曲がると、そこはもう奥宮の西のはずれ。
自らつけた炎に照らされて、地獄鬼(ガラゴドム)どもの一隊が聞くもおぞましい下卑た喚声と共にちょうどその時攻めのぼって来ました。
建物の中の暗さが幸いして、まだ二人は見つかってはいません。
が、厩舎へ向う以上遅かれ早かれ真向からぶつからねばならない難関です。
皇子と皇女はほんの一瞬だけ立ち止まって互いに目を見交わし、それだけで全てを了解し、二振りの剣が同時にひき抜かれました。
もはや自分の二本の腕、二本の脚で、打って出るより他生きのびる道はないのです。
不意に皇女がのびあがって、兄皇子の頬に唇を触れました。
「どちらか一人だけでも」と皇女は言いました。
「必ず生きて逃げましょうね。」
兄皇子はすぐにその言わんとするところを悟り、思わず空いていた左手で妹を張りつけました。
剣において勝っているのは自分です。
足の速さにおいても、運の強さにおいても、生きのびる事のできる確率が高いのは妹皇女(ひめ)ではないのでしょう。
皇子はぎゅっと皇女を抱きしめました。
大地の国の明日のために、瀕死の深傷を負った父皇や全滅したに等しい軍を率いて最後を守ろうとしている母皇に、別れを告げて走って来る事はできても、妹皇女(ひめ)マーライシャを見殺しにする事だけは皇子マリシアルにはできませんでした。
正式の習練はまだ積んでいないとはいえ、生まれつき『見はるかす眼』と心話の術(すべ)とを身につけている兄妹にとって、相手の悲しみは過敏にすぎる程の鋭さをともなって互いの心につきささります。
皇子の皇女に対する愛が、単に妹を思う兄のそれからはるかにかけ離れている事は、とうの昔から二人ともが認識している事実でした。
マーライシャ皇女
こんなにも近く頬と頬とが触れているような時には、二つの心が近くにいる段階を通り越して、まるで一つの魂に二つの心が迷い混んでしまったようです。
縛(いまし)めをひきちぎらんばかりにして叫んでいる半馬神の激流が兄の心なのか自分の姿なのかを見誤らないために、マ・リシャは全ての心を閉じ、渦巻きだそうとする淡い夢を押えつけて、深い沼の底の歩んで来た年月と共に降り積むった泥層深くにまで打ち込まれた、呪縛にさえ似た楔を見つめ続けました。
マ・リシャの心をつなぎとめているものに気づいて、皇子の心に雷撃にあったようなふるえが走り、それからぱったりと静かになりました。
マ・リシャが顔を上げると、攻めのぼって来る地獄鬼どもの足音が先程よりはかなり近くに響いています。
「マーライシャを……」言ってマ・リシャは口ごもりました。
「ダレムアス皇女“マルラインの若葉”マーライシャを、ガルゴドム達は殺さないわ。
ここで捕えられて地獄の帝王(ボルドゴルム)の後宮に放りこまれるのも、生きのびていつか西の皇のもとへ嫁(ゆ)くのも、わたし個人
「ダレムアスの皇女は、母なる大地の災いとなる事を望みません。」
マ・リシャは一瞬、細い首をきっぱりと持たげ、それからまた目を伏せました。
「
皇子には答えられない質問でした。
マ・リシャは大きく息を吐き出しました。
「だから万ヶ一敵の手に陥ちるようならば、わたしは潔く舌を噛むわ。 兄さまは必ずかたきをとってくれるわね?絶対に。」
無言のままマリシアルはうなづきました。
「マ・リシャ……」
「え、なあに兄さま」
マ・リシャが顔をあげると、城の焼け落ちる炎に照り映えて、兄の頬に流れるものが光っています。
マリシアルは目を閉じ、顔を上に向けたまま、声のふるえを隠そうともせずに言いました。
「わたしのかわいそうなマ・リシャ。……生きるね? 西との婚儀はきっとわたしが何とかする。この先どんな辛い事があろうとおまえを守ってやる。だから生きるんだ。いいね!?」
「兄さま」
マ・リシャはゆっくり答えました。
「わたしは女神の直系、大地の皇女。お父さまとお母さまの娘です。誓って逃げたりはいたしません。」
マリシアルの黒い太陽のような瞳が、真っ直ぐにマ・リシャの瞳を射抜きます。
正統なる女神の子孫であり、母の娘であることの誇りをかけて、マ・リシャはその視線を受けとめました。
「父の息子であることにかけて言っているんだぞ。」
「母の娘であることにかけて答えていてよ。」
マ・リシャは両腕を交差させて胸の上に置き、肩をつかんでいる兄の腕に手の平を重ねました。
「大好きよ兄さま。大地の上のだれよりも。」
二人は再び走り始めました。
遂に皇女皇のいた執政の間すらも陥ちてしまったのでしょうか、城の中心をついて天高く火の手が上がるのを二人は見ました。
思わず濡れそうになった悲鳴をふせぐために、噛みしめられた左の指から、紅い涙のような血が流れだします。
皇子と皇女を探せ!という声が、口々に叫ばれ始めました。
幼ない頃から毎日かくれんぼをしてきた宮殿内です。
植え込みの中の秘密の通路を通り抜け、渡殿の下に秘み、中庭から中庭へと流れる小川に身をしずめて、二人はじりじりと厩舎に近ずいて行きました。
全ての地獄鬼が二人を探そうとくり出して来ている今、もはや二振りの剣のみで切り抜ける事は不可能です。
明る過ぎる炎がより一層闇の暗さを濃く見せていたという事実がなければ、二人は半時間と無事にいる事はできなかったでしょう。
(※「コクヨ ケ−10 20×20」原稿用紙、シャーペン書き。)