『 一、 (2) 』 (@中学2年か高校1年?)
2007年6月27日 連載(2周目・大地世界物語) コメント (1)朝日ヶ森の森のはずれにある有澄夫妻の別荘には、現在子供たちが三人だけで暮らしている。国家間の情勢変化の激しい時節に、外交官である有澄氏は、2週以上の休暇を取ることができなかったのだ。
決して放縦怠惰にはなり得ない、真実自由で躍動的な、素晴らしい夏休みに毎日を送っていたのである。
しかし、一見気ままに思える日々の裏側では、潮が満ち
「……やっぱり森の奥に向かったな。」
真里砂が姿を消した方角
「え、じゃあ雄輝にはマーシャがどこへ行こうとしているか見当ついているのかい?」
「うん?
「感度は良好。だけど短時間で作ったシロモノだから持続性の方は保証できないよ。
科学狂のIQ400鋭になら、もっともっといくらでも立派な
だが、一度制作にとりかかったら最後、
「どっちみち距離なんぞ問題にならないさ。あいつがこの森の中に踏み入ったら、まず足の速い野生動物でない限り追いつけない。それよりマーシャが見えなくなってから5分経った。出発するぞ」
「ちぇっ!」
鋭は大げさに舌打ちして、受信器を右手に持ち変えた。
古懐中電灯の筒を容器に利用してあるそれは、ある一定の方向に筒先がぶつかると、小さくチカチカ、と明滅する。
別荘の北側へまっすぐ進むと、まだしばらくは温帯性落葉樹の混じる雑木林が続く。十五、六分も歩くと、川が東から南へ直角に曲がっているところにぶつかった。
幅約5m。
登山用地図にも名前は載らない川だが、土地の
鋭と雄輝は黙々として、川曲がりのすぐ上手にあるつり橋を渡った。
川の対岸よりいよいよ本格的な大森林が始まるのだ。月に照らされた木々のこずえが、くっきりと天蓋に浮き上がっている。
「なあ」
「ここへ夜来るのはなにも初めてってわけじゃないが……、今夜は特に水魔でも出そうな雰囲気じゃないか?」
鋭は『水魔』という言葉を聞
雄輝が言うとうり、不気味なほどに青白い月の光
「非科学的だね」
視線を無理にそらしてそちらの方を見ないようにしながら、鋭は精一杯の虚勢を保とうとした。
「立ち止まってないで早く行こう。マーシャの発信器が有効圏外に出てっちゃ……」
バシャリ! と水のはねる音。
雄輝は瞬間的に飛びすさり、鋭はとっさに振り向こうとして、二人ともバランスを失ってひっくりかえってしまった。
しかし、それは単に魚が一匹はねただけの音だったのである。
その事に気
「なんだ、雄輝も怖がってたのか」
「コンピューターでも暗闇は恐しいってわけか。ええ、おい」
あはははは………………。
笑い声が闇を、どんなサーチライトよりも鋭く切り裂いてしまった。
「ねえ雄輝、気がついたかい」
森の中へわけ入ってしばらくしてから、沈黙を破って鋭が話しかけた。
「あん?」
先に立っていた雄輝が軽く振り向く。
「この道……多分マーシャがつけた道だね。」
鋭の言う通り、二人は今道を歩いていた。
道なき道を歩く覚悟で森境のやぶに氏を踏み
(未完☆)