第一章
 
 魔 法 の 国 の 真 里 砂
 
 
 
 1、 運 動 会
 
 ダーン!! ピストルが音高くひびいた。
 最前列の選手が一斉に走り出す。
 中等部女子の障害走が始まったのだ。
 二列目にいた真里砂は前列の選手たちを見ながら
 ほほえんだ。
  結局20000m(メートル)のコースを走りぬける人は少ないんだわ。  
 事実、じょじょにむずかしくなる障害物の前で
 立ち止まる者が数多くいた。
 真里砂がどのぐらいの速度(スピード)で走るか考え始めた、
その時、ピストル係の少年が話しかけて来た。
 「この分じゃ真里砂(※マーシャ)が優勝だな!」
 「ありがと! 翼(つばさ)先輩」
 真里砂はふざけて答えた。

 (※真里砂の愛称(ニックネーム))


翼(ツバサ)雄輝(ユウキ)は陸上部の先輩だが、真里砂とは
親しかったので、ふだんは名前で呼びあっていた。
「ねえ、雄輝(ユウキ)……」 真里砂が話し始めようとした時、
「おーい! いつまでまたせる気だあ?」
しびれをきらした観客がさけんだ。
一列目の選手達はとっくに林間コースへ移っていたのだ。
雄輝はあわてて席にもどった。
「用ー意! ダア  ン!」
真里砂は飛び出した。
だんだん高くなってくるハードルを全部飛びこすと、
次はロクボクの間の綱わたり……etc…………
次々と出てくるむずかしい障害物の前に
何人かの仲間が落後していったが、真里砂は
走りつづけた。
4000mある林間コースを通りすぎ、校庭に出ると
1段から12段までの飛び箱がならべてある。
残っていた者の半数近くがキケンを申し出たが
真里砂(マーシャ)は進み続けた。
最後の12段に飛びつき、飛びおりようとした瞬間
 
すべての声が、かき消されたかのように止まった。
飛び箱の下のマットが突如消えうせ、いやその下の大地まで
が暗黒の空間に変わってしまったのだ。
真里砂は音もなくすいこまれて行った。
1秒2秒と時が過ぎていったが、だれも身動き
する者はいなかった。
1秒 1秒が恐しく長く感じられた。
 
その時、消えかけていた暗黒の穴(ブラック・ホール)の
中に1人の少年が飛びこんだ、続いてもう1人……
暗黒の穴(ブラック・ホール)は完全に消滅した。
 
長い長い時が過ぎた。ふいに1人の女性が泣きだした。
真里砂(マーシャ)の母親だった。



(※大学ノートに鉛筆書き。直しの嵐☆)(^◇^;)”)

真里砂は気を失なってたおれていた。
5000mの全力しっ走の後(のち)、疲労した体で暗黒の穴
(ブラック・ホール)に落ち込む事は彼女にとってさえ少し衝撃
(ショック)が強かった。
 
そこはほの暗い森の中の小さな空き地で、かたわらの
小川がさらさらと音をたてて流れていた。
そして、太陽はたった今しずんだばかりで、まだなごりおし
そうな夕焼雲(あかねぐも)が最後のわかれをつげていた。
その時、小川のわきでカチッという音とともに
明るい炎がもえ上がった。
「ふう!やっとついたよ、先輩」
音をたててもえるたき火のわきには二人の少年が
すわっていた。
1人は翼 雄輝  真里砂の先輩  で、
もう1人は 真里砂と同級の 清峰(キヨミネ)鋭(エイ)だった。
この二人は真里砂の後を追って暗黒の穴(ブラック・ホール)に
飛び込んでいた。
「真里砂は?先輩」と、鋭が聞いた。
「まだねむっているよ」と、雄輝が答えた。
すると
「もう起きてるわよ!」と、鋭の背後で真里砂が笑った。
「この妖精の国(フェアリーランド)自体が夢なら別だけどね」
「妖精の国(フェアリーランド)だって!?」鋭と雄輝が同時にさけんだ。
信じがたい話だったが、真里砂は本気だった。
かと言って真里砂が、あれしきのショックで気が狂ったり、夢と現実をとりちがえるとは思えなかった。
「じゃあ、きみはここが……地球(テラ)じゃないっていうのかい?」
「地球(テラ)どころか、別次元らしいわよ」真里砂はかたをすくめていった。
「私がねむっていたらね、だれかが私の名前を呼んでいたのよ。
『真里砂(マーシャ)、王女(プリンセス)真里砂(マーシャ)』てね。」
  <王女(プリンセス)だって!?>  鋭はおどろいたが、
口には出さなかった。
作家志望である真里砂が自分の話しをじゃまされるのを
とてもいやがることを彼はよく知っていたので、
真里砂は話しを続けた。
「私が目をあけると、そこに三人の人が    
 人といえるならの話しだけど    すわって、
いいえそうじゃないわね。
  とにかく、私の顔をのぞきこんでいたのよ。
 一人は 美しい黄金(こがね)色の髪を持った女の人で
 不思議な事に 下半身がまっ白い馬の体でね、
 その人が私に言ったの。
『ああ、やっとお目がさめたようですね王女(プリンセス)』
 その声は黄金(こがね)の鈴のようにやわらかかった。
『急ぎましょう。人間(ティクト)たちが来るかもしれない』
 と、その人の後ろにいた山羊足人(フォーン)が(本当に山羊足人
(フォーン)だったのよ、あなたたち、わたしの話、信じてないわね)」
真里砂はあわてていった。

あらわれたの、そして何だか意味のないような
事をさけんだのよ
『ウェルズ橋(ブリッジ)に月(ムーン)が来た!』てね。
とたんに四人ともかき消えたように見えなくなって
みんなのいたあたりにこれがのこっていただけだったのよ。」

真里砂は話し終えると後ろから大きなつつみを四つ
とりだした。
その中の三つは かれ草色の布ぶくろで
リュックサックほどの大きさだったが、
もう一つは 丸い銀のお盆に うすもも色の布が
かかっているだけだった
「そのお盆の中味が夕食でないとしたら
 ぼくを まぬけだと思っていいよ!」
鋭が楽しそうにいった。
 彼は 朝食のサンドイッチから後、何も口にして
いなかったのだ。
「先に その荷物の中を見た方がいいんじゃないかな」
雄輝が考えながらいった。
「私 うえ死にしちゃうわ!」と、真里砂が悲鳴を上げた。
「私が5000m走ったんだって事忘れないでよ」
その一言で 事は決まった。
 
 
              

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