(※「コクヨ ケ−31 20×20」使用、シャーペン縦書き)
 
   (劇中劇その一)
 
 あたし達はオリス・ケアラン  《暁(あかつき)の星》。
 創芸学市アール・ニィでも一番の興行収入を誇る映像集団だ。
 仲間の半分は地球人留学生。
 その、提案で。
 技術の進歩した  進歩しすぎた  リスタルラーナの、味覚・嗅覚や温度・振動まで付く個人用密室感受器が一般的(あたりまえ)なところへ、あえて集団観賞用の開放立体映像をぶつけてみた。
 ウケた。
 部屋から出て、誰かと待ち合わせをし、同時にひとつのものを体験して笑ったり泣いたりし、終わってから一緒に食事でもして、話すうちに時間を忘れる。
 そんな後進国地球のいちばん安上がりな娯楽に、文明人は飢えていたのだ。
 おかげで人口管理局から“結婚・出産率の向上に功あり”とかで表象までされてしまった。
 映画のソフトはむろん、高価な投影装置も飛ぶように捌けて売上は天文学的。
 企業は出資をしたがって相乗りでもいいと列をなすし、政府の援助金まで出るし。
 新作のための条件は万全なのだ。が  
 
 動く絵コンテともいうべき合成画面はおおざっぱな色・形・動きと台詞(セリフ)を投写した立体映像で、会議卓をとりまいた連中がてんでに端末から入力するたびに、主役がおしのけられたり脇役がめだったり、いきなり場面転換だの色調の変更だのしたりする。
 飛び交う主張のまあ喧(やかま)しいこと。毎度のこととは言いながら、予定を三日も超過しての連夜の激論である。
 撮影の準備はほぼ整っていると、いうのに。
 全員そろって息の切れた一瞬の空白を拾い、
「応慶(オー・ケー)」(よろこんで応じます    “了解”の意の慣用句:翻訳表示)
 と、地球前史時代の一地方の俗語(らしき 
 
               .

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