×       ×       ×
 
 何のために、故郷へ帰ろうとしているマーシャの後をつけたりするのか、と、鋭に尋ねられて、雄輝は答える事ができなかった。ので、黙秘権を行使した。
は、はん。
鋭はその事をファイルして、頭の中の『雄輝の隠し事』の項に放り込んでおいた。これは、「親父とおふくろが殺され……」と、絶対難か関係がある、と、にらんだのだ。
 あたりは真暗で、月の光が木々の枝をすかしてごくわずか漏れていた。
下やぶと下枝を押しのけ払いのけ、雄輝がかなり無茶をしながら夜の森の中を押し進んでゆく。
(……こいつはどうも、一つっ事ではおさまりのつかない冒険に首をつっこんじゃったらしいな……)。
後について踏み倒された障害物の群れを乗り越えながら、鋭は、後悔とも好奇心ともつかぬ心地でそう考えた。
 
       ×       ×       ×
 
 鋭のデータ・バンク、雄輝の項。

1.「両親が殺され……」した、らしい。
2.何らかの意図を持って、故郷へ帰ろう(!?)としているマーシャの後をつけている。
3.“何らかの意図”云々は、第一の事項と関連アリ。
4.上記の事に、僕も巻き込む気らしい。

 同じく、マーシャの項。

1.黒髪のかつらを常用している、緑の髪の異邦人。(?)
2.出生不明。6歳以前の記憶無し。
3.現在は有澄夫妻の養女である。
4.雄輝の推測によると、彼女は故郷  どこだか知らないけど  へ帰りたくてあせっているらしい。

 つけたり。

 この二人のやる事には“ロボット工学三原則”に背かない限りで絶対協力の事。


               .

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索