下記の通り特別講座を開講致します。

 ……とかいうネタを、「講師:アグラ・ラン=アグラス」(※)でと考えていたのだけれど、「執筆作業多忙中につき講義の準備が間に合わない」(笑)そうなので、臨時休講と致します……。

 (^^;)>”

 代わってワタクシ、不肖「桐木りす」が、代打を務めさせて頂きましょう。
 題して、「恥ずかしい資料大公開!!」

 (^◇^;)d”

 ……21世紀地球上における「史略訳出の版権所有者」こそ「自分の正体である」と脳内妄想が暴走している某の、小学校以来シツコク書き溜めては積み上げて来た「記録ノート」の類から、一応、読むに耐え得る(?)レベルのものをチョイスして、そのまんまネット上に大公開してみたいと思います……☆ (……自爆?……)。

 

 実のところ、「連載1周目」記入中は、ほとんど全く「設定資料」に目を通しませんでした。3箇所ほど、どーしても気になった所をパラッとめくっただけです。まったくの「記憶スケッチ」状態で、あれだけの歴史(?)と各々のサイドストーリーの登場人物が、アタマの中に入ってます。てか、ギュウ詰めのギシギシのパンパンの、ビッグバン寸前状態になってます……☆

 (……ので、その他の現実世界のモロモロは、
  「覚えられません!!」状態に……☆)

  (^◇^;)d”

 で。さて……。

 「設定資料」とか「元ネタ」と、
 「記憶スケッチ」を付き合わせてみると……。

 これが、どうなってくるのか……???????

 ?? !(@_@)! ??

 面白いので、「間違い探し」にチャレンジして頂きましょう。

 「連載1周目」と「2周目」以降の記事で、「そりゃないだろう」的な大きな相違点を発見なさった方には「1ドゥイム(*)」を進呈させて頂きます。
 んで、「ドゥイム」(ポイント)が沢山溜まった方には、将来、「出世払い」にて、何か景品とか、「リクエストにお答え権」とかを、考えさせて頂きますんで……。

 (^_-)☆

 どしどしコメント欄に書き込みを、
 「プリーズよろしこ」状態なんであります。

 ♪♪ _(_^_)_ ♪♪

(※講師:アグラ・ラン=アグラス : 「史略学」史上で超有名な人物。サキ・ラン=アークタス氏の第47代目だったかの「傍系の子孫」だったりもする。)

(*「ドゥイム」: テラザニア最大のNGO(?)が発行している、一種の「地域通過」の単位。「夢」という意味の古代語が語源、らしい……。概ね「1ドゥイム」=「1テラス」で換算可。)
 
☆上古神代についての後代の記述

 後に語られる四界神話時代よりさらに遡るものとしての上古神代について、最も長い間、多くを語り伝えたのは大地世界である。

 そのかみ、光り輝く広大なる《聖内界》 − シンシャリティ − に数多の若い神々がより集い、さらなる高みを目指しての研鑽に互いに励んでいたと言う。神々の中でも更に高位なる上古神《ワ・マ》により、特に秀でたる四つ柱の高貴なる神々が選び出され、その神々のもとにそれぞれの界を司る下位神・精霊らがより集って、姉弟界である四界、すなわち内球界エルシャムリア、洞内界ボルドガスドム、大地界ダィレムアース、球地界ティカーセラスが、創造された。

 《上古神代》と呼ばれる世界について最も正確に把握していたのは、高度な精神文化を有していた内球世界エルシャムの住人たちであるが、彼らは他の三界に対して伝承を残すことなく滅亡した。従って、その詳細は残る三界の後代に知られることなく、誤伝と幻想とによる様々な物語=神話が生まれ、各種の芸術の素材となった。
 とりわけ、四界交流時代の史実と、その後の空想とが混同された結果として成立した、球地世界ティカスにおける複数の【唯一絶対の神】の創作などに、その例は顕著である。

 ……以下、ネタバレ防止機能発動圏内…… 
 
 まずエルシャムリアがボルドム軍によって滅ぼされ、リーシェンソルトはグアヒギルグを避けて永き眠りについた。

 マリアンドリームの悲しみは深かったが、なおも兄を憎むことはせず、ボルドムともしげく通じていた。

 しかし、やがてアスールミルがグアヒギルグの甘言により享楽にふけって民を顧り見ないようになり、挙げ句の果てにティクトの反乱で落命した。マリアンドリームもこれを嘆き、ボルドムントをダレムアスの地より追い出し、国をとざした。

 グアヒギルグは妹君をなだめようとして、捕らえていた多くのエルシャマーリャやティクタトックを引き渡したが、彼女が許そうとしないのに怒って武力を持って攻め入った。

 その時の戦いで、ダレムアト最初の長寿人であり女神マリアンドリームと結婚していた一人の騎士が命を落とし、それを見たマリアンドリームは大地の剣でグアヒギルグを倒した。

 その後、マリアンドリームはダレムアスの統治を二人の子ども達の手にゆだね、不老不死なる命を捨てて、大地の奥深くに根をはる火の山の火口に身を投じ、母なる大地と同化した。



D ダレムアス語 略事典

(ただし、【 】内はエルシャムリアにおける同音異義語)

 ダレムアト : ダレムアス人。(人間の意)

 ダレムアトック : ダレムアス人。(ダレムアスに生きるものすべて)。

 ティケ : 地球

 ティクト : 地球人。(人間の意)。科学を使う者、科学者。

 ティクタトック : 地球人。(地球に生きるものすべて)。

 エルシャマーリャ : 天使、天上(神)人。

 エルフ : 妖精人。空を飛ぶことができるが翼は無い。かなり大きな力を持っている。

 ダレムアシー : ダレムアス語(ダレムアス共通語のこと)。
          【変則的な音楽】>プレントロック。

 マ 〜 : 〜よ。(呼びかけのコトバ)。「〜様」などの敬称の意。「 マ・ダレムアトック = すべてのダレムアスびとよ。」

 D(に似た象形文字) : ダレムアスを表す古代ドリーム文字。略号として使用。

 Y(に似た象形文字) : 地球を表す古代ドリーム文字。略号として使用。

 L(に似た象形文字) : エルシャムリアを表す古代ドリームも時。略号として使用。

 F(に似た象形文字) : ボルドムを表す古代ドリーム文字。略号として使用。

 ルワ 〜 : 女の、女性の、 「ルワ・ヘルマ」=女騎士。

 ヨリムヒア : 能力的には何ら変わることなく、歳をとらないか、または成長速度が極端に落ちた者。特に、そのうちで種族の古老の10倍以上生きた、あるいは生きられるであろう者、長寿人。
 (不死人は、能力的にも非常に強い力を持っていた場合の呼び名)。

 ヨリム(ヨル+イム) : 長寿、長命、長生き。

 イム : 命、寿命、生命。

 ヨル : 長い、永遠の、尽きることのない、

 ヒア : 人(××国人という場合は「 〜 ト」。ヒアは「人種」または「種族」の意)。
 
 神々の王であり、ダレムアトックの造り手である女神マリアンドリームは、ある祭りの日に、キュピドの神の造った塔の魔法によりダレムアトの王たる者の息子と出会い、恋に落ちた。
 女神は永遠なる命を捨てて彼と結婚することを望んだが、神々はことごとく反対し、王の息子たるダレムアトに永遠の命を授けて神々の一人とすることを勧めた。
 しかし女神は自分の定めた掟を自ら破ることは出来ないとしてこれを拒否した。
 女神の決心を変えることが出来ないことを知った神の一人が自らの命を断つことによって、自分の不死なる命を青年に与えた。
 その神は女神を愛していた。


 D(に似た文字)略事典 2

 ブラダ : 剣士
 ヘルマ : 騎士

 レムリア : エルシャムリア(アトランティス大陸での方言)

 ムー : エルシャマーリャの地球宮殿。(ダレムアトも利用した)。また、宮殿のあった大陸。

 アトランティス : 地球人最古の文明の栄えた大陸。

 ボルドムント : ボルドム人。(人間の意)。

 ボルドムントク : ボルドム人。

 ロック : 〜語。言語。

 マリカル : 魔法、魔術。(おもに大地の魔法)。ダレムアスの【力】。

 プレント : 共通の、一般の。
        〜 プレントロック=共通語。>ダレムアシー。

 フェアリスティラーヤ > フェアリ + スティリ + アーヤ

 フェアリ : 妖精人(地球の言語でダレムアトックの総称)。

 スティリ : 〜の為の。

 アーヤ : 船。

 フェアリスティ : (人間から)妖精人のために(贈った/作った)もの。

 エルシャムシー : (ダレムアトから見て)天上語。

 
ダレムアト
 形態 完全な人間型。
 寿命 500〜800年ほど。(ダレムアス上で)。
 色  肌は、白桃から、カカオ色まで。
    髪・目は、ほぼ地球人と同じだが、緑・赤・青・灰色などが加わる。
 生活 地域、国ごと色々あるが、多くは農耕・狩猟民である。また、魔法使い、祭司などもいる。
 文化 地方によって言語も風習もまったく異なるが、多くは大地と精霊の魔法を使い、女神伝説に基づいて生活している。国ごとに王・法王・領主などが統治し、女神の血をくむヤーン王朝が最高の力を持っている。科学なし。

エルシャマーリャ
 形態 翼がある。他は人間と同じ。背がすごく高く、ほっそりとしている。
 寿命 成熟度による。5000〜10000年ほどが普通。
 色  肌は雪白。髪・目は金・銀がほとんど。
 生活 全員が全員、何かの研究にたずさわり、究極を求めている。
 文化 言語は天上語(エルシャムシー)一種類。光と空間の魔法と、科学・化学。

ボルドムント
 形態 ほぼ人間型。耳がとがってたり、角やしっぽがあったり、細部は人によって雑多。
 寿命 天寿をまっとうしたもの無きため不明。
 色  雑多。
 生活 弱肉強食。自堕落で、力が法になる。魔王に支配され、弱い者は虐げられる。反理想郷。
 文化 雑多な地方言語。芸術は無し。闇と悪魔の魔法を使う。

ティクト
 形態・色は御存知の通り。
 寿命 50〜100年。
 文化 科学、化学。雑多な地方言語。
 
エルフ
 形態 人間型。たけ高く、すらりとしている。羽があるという人もいるが不明。
 寿命 4000〜5000年(らしい)。
 色  はっきり形容できない場合が多い。
 生活 長時間、空を飛び続けられるので、行動範囲が非常に広い。どこかに一族の住まいがあるらしいが不明。また、各地の宮殿に剣客や相談役として滞在していることも多い。
 文化 大地と空の魔法。

 
 昔々、現時点(つまり、私がこの雑文を書いております、地球第4文明期も5000年にさしかかろうという時代)から、はるか時を遡り、地球の海にまだ最初の蛋白質が生まれていなかった頃の事ですが、現在我々が宇宙神(オーバーロード)と呼び慣わしている超越存在者【エル・クュルム・アステトラマ】=彼岸より来る者=は、その子らでもある、女神ラインシエネソラルト、その弟(おと)グアヒギルグ神、またこの二柱の双子の姉弟神、女神マリアヌドライム、男神アステロイティカ、以上四柱の神々に対して、それぞれの【国】を治め統べることを許されました。ただ、末のアスロイティカ神のみは未だにその資格の有る無しが明確ではありませんでしたので、彼には自分の【領地】である銀河系島宇宙の星々の一つ、《青い星》(ティカース)をお与えになり、姉・兄たち三神には、幾つかの並行世界とその星との接点に【国】を築き、出来上がった順に4つの国々の間に橋を架け渡すようにと命じました。これが我々の血統の大本を構成することとなりました四国の、ことの起こりとなります。

 さて、その四柱の神々のうちの長子、ラインシエネソラルト神、またの名を女神リーシェンソルト、彼女は丁度、地球の月の内奥に接する【閉じた球】内の《虹色の光彩》(エルーシャムーリア)に居を定め、絢なす雲の中に雲上人(エルシャマーリャ)の城を築き上げて、そこを極究殿と致しました。
 また逆に次子グアヒギルグ、またの名を男神ガルギンは、地球の奥部につながる【閉じた球】を《岩洞》(ボルドガスドム)と名付け、思いつくままの様々な人型を造って生命を吹き込み、その者たちは不毛の暗い地に石の城塞を築き上げました。
 そうして次なるマリアヌドライム神、またの名を女神マリアンドリームは、地球の面へとそのままつながる【平面】《大地の国》(ダレムアス)に小王国を営み、残るはその双子の弟アスロイティカ、またの名を男神アスールの【開いた球】《テイカース》のみとなったのです。

 しかしアスール神は【国】の基(もとい)である人間を作ろうとはせず、ぶらぶらと山を造ったり川を埋めたりして過ごしているうちに、ある日うっかり流した血の一滴を受けて、海の娘アリティクティカの涙から生命がひとりで誕生し、なおもアスールが泥遊びに耽っている間に、《それ》は成長を遂げて、遂にヒトの姿をしたものとなりました。
 まだ神たるに資格の足りない海の娘が、陸に上がってしまった子どもらの面倒を見切れずに夜な夜な泣きくれている姿に気がついた二柱の姉神がアスールをたしなめても効果は無く、むしろ彼は兄神ガルギンの唆すままにますます悦楽に耽るようになりました。

 その頃に《地球》(ティカース)の人々が住んでいた土地の名前を《ム》と言います。これは大陸の名前が《ム》で、人々の都の名前もまた同じものでしたので、女神リーシェンソルトとマリアンドリームは、それぞれに在地球神殿を建て、海母アリティクティカの願いを聞き入れて、弟の民人たちにそれぞれが科学と魔法を教えるよう、自分の手足でもある他の神々や、精霊・妖精、その他の《力ある者たち》を大勢、《地球》の国へ送り込みました。

 異変が起こり始めたのは、兄神ガルギンが道を外れて姉神リーシェンソルトを恋慕するようになってからの事で、またガルギンは同時に、もっとも激しくリーシェンソルトを憎んだのでした。

 求愛をはねのけられて傷ついたガルギンは、ために自分の兵達を繰り込ませて、戦いを知らな過ぎたエルシャムリアの民を、一夜のうちに攻め滅ぼしてしまい(※)、最愛の姉を奪われた怒りから、女神マリアンが兄神を撃ち倒し、その後、アスール神の圧政に耐えかねた《地球》の民が集結して《神》を殺した事により、四国神の時代は終わりを告げました。

(※ この事は後に語り継がれて、今日ではこの話はレムリア大陸として我々《地球》の民の記憶に留められております。)

  
 1.

 それ故に昔語りを始めよう。そもそもの初源の四界、父神なるティアスラァルには三柱の姉神・兄神ありき。それぞれに大いなる上つ位の神より、治むべき《星々の空隙》を賜る。

 長姉なるリー・シエン・サラルト、閉じたる球の空に光を満たし、天上人これに住まい、共に更なる高みを追いし。この閉じたる球の空をエル・シャ・ムー・リィア。《至高なる夜の守りの内包せし世界》と、人々呼びし。

 長兄なるグァ・ヒーギル、またの名を男神ガル・ギィン、閉じたる地の洞の世界に火の灯り付け入れ、その思いのままに、力有り、さま異なりし生ける者を種々多く造り給う。《閉じたる狭き地の洞》、バール・ド・ガスダームと、人々呼びし。暗き地の火灯りより魂なくして使役せらるる鋼の命、造りし。

 《開けし球の地》のティアスラァルが直ぐ上なる姉の世界、ダァイ・レム・アースル、《開けし大地の国》と言いし。女神なるマライアヌディアドライム、そが世界を治めし。《大地に生ける者》、ダレマース、産み、慈しみ、し給う。

 2.

 それ故に昔語りを続けよう。ティアスラァルが治めし《球の地》が上、《水の浮島》なる卑小なるアトル・アンは、神々の嘉(よみ)し給わぬ土地であった。

 彼の地に棲まう者らが父神ティアスラァルの正嫡なる嗣子でなきが故に、彼の地のヒト族の母が、神族のはしたにすら加え得ぬ、位階低き哀れな水乙女に過ぎなかったが故に……。

 妃神女ネフェルクァイの眷属たる上つ時代の《力有る者たち》は誰も、アトル・アンに彷徨える父神の子らに導きを与えるものではなく、父神ティアスラァルにした所でが、一時の気紛れにより産み出された、ひ弱く力無き者達に、一顧だに与えるものではなかった。

 アトル・アンはそれ故に冷たく、固く、ヒト族の生きるが為には貧しきことこの下はない、土地であった。

 3.

 それ故に昔語りを続けよう。ヒト族の母なる水乙女の名をアテュイ・イィラァ(嘆く者)。《嘆きの主》のアテュイラスカとも呼ぶ。

 アテュイラはティアスラァルの統べる球の地の、聖なる水を司る御霊の三千六百九十一番目の最後の娘であったが、そもそもは末の娘こそが母なる全ての《水の聖霊》の跡目を継ぐべき者であるとする《水》族の掟は、上つ時代の気楽な神々には、預かり知らぬ処ではあった。

 さて、このアテュイラが水乙女たるの資格である純潔を奪われて主神との間に子を成した時、産み出されたその子どもはティアスラァルの重き赤き血を色濃く受けて、《地》の上に住まう者のひとつとなった。

 ティアスラァルによってこの者らに与えられた土地が、アトル・アンである。アトル・アンの地を守護する神はこの汚れた子らを厭うて間もなく去り、幼いヒト族たちは守る者とてなく、冷たく固い大地に捨て置かれる事となった。

 4.

 それ故に昔語りを続けよう。水乙女はみずからの産みし子どもらの命運を哀れみて、《水》の身ながら《地》に寄り添い、その嘆きの声は海の波となり海の泡となり、アトル・アンの地を覆い囲んだ。これが彼の者を《嘆きの主》と名付けし、そもそもの初めであった。

 父神の姉なる神、その治めし大いなる地より来たりて《嘆きの主》の号泣の声を聞き、憐れみをかけ給いし。

 ………………。




 * 用語事典 *

 聖霊  肉体を持たず意識あるもの。自然の法を定め、その因果をつくるもの。神々よりも深く識り、さらに高く歩み、大いなる力を得しもの。

 レムリア  エルシャムリアの転訛。

 ムー  エルシャムリア人(エルシャマーリャ)の地球宮殿。およびその存在した島・大陸。

 アトラン国(てぃす) 地球人最古の文明が栄えた土地。初期には《ムーの天使たち》と、帰化したダレムアト(ダレムアス人)によって文化・文明が伝えられた。
 おそらくは第三間氷期が最盛期で、大アタランの時代には、現代のロシア・北欧並みに気候が寒冷化し始めている。

 アト(地)+ラン(人)+ティス(国・土地・世界) = 地人族の国。
 「アトランの放浪者、女剣士リィ」に関して。
                 in regard to.

 彼女の見つけたかったもの − 【自分が属する場所】。それが知りたくて漠然と旅に出、一人の男と闘い合うようになる。
 ある時その男に犯され、子どもを孕んだ。数ヶ月後、その事を知らずに男は、これを最後とばかりに斬り掛かる。深手を負った彼女が無限空間を通り抜け、死の間際に、生まれる子どもの為に助けを求めた家は …… 自分が生まれた家、だった。
 そうして、彼女は、「自分が自分自身に属する者であった」ことを知り、微笑みを浮かべて、忘却の淵に着こうとする……。

 その家の主たちが気付いた時、床の上に残されていたのは黒い胸飾り − かの男がそれと同じ物を身に付けていたが故に彼女は男を仇として追い始めたのだ − と、一輪の白い椿の花だった。

 白い椿は至福の国に咲くという。

 彼方。

 ある日、白い鳥を胸に抱いて駆ける、黒い馬に乗った男を − 見た者がいた。

 (ただし、これだと最初の設定からかなり食い違う……。)

+++++++++++++++++++++++++++++

 「この盗人め! 私の荷と馬を返せ!!」

 「……悪かった。その胸飾りが、私の無くした物と同じなのだ。」

 「嘘ではない。疑うのなら、さぁ、わたしはこの右腕一本で生きている。これを切ってくれ。」

 +++++++++++++++++++++++++++++

 水の十字架 > 水の守護符
 共通点: 銀に水晶を象眼した、珍しい意匠のものであること。

 エルフの血をひく女騎士(ルワ・ヘルマ)=リリィ・カタナ。

 (自作いらすと)   <…… あれ? 銀髪じゃなかったっけ?

 女剣士(ルワ・ブラダ)
 女騎士(ルワ・ヘルマ)

(※この頃は、まだ「漫画家になりたい!!」と言っていたので、設定ノートも文章や文字より、イメージイラストの方が多い……☆)

(……ここにイラストをアップするのって、
 どーやればいいのぉ〜?

 助けてドラエモ〜ン!
 ……ちがった、

 助けて、はるあきく〜んっ!! !(^_^;)!””  )
 
 場所は……古代地球、だったと思う。たしかにあの夢は。
 古アトル・アンと呼ばれ、
 アタラン(聖なる地)とも称えられていた、彼の地。

 そしてまた、その夢の中では、
 あたしはたしかに、もう一人の
 あたし自身でもあったのだ……。

 +++++++++++++++++++

 アタランとも呼ばれる古アトル・アン。
 南方の地は熱樹の緑気したたる。

 ハユンのアマラーサ(マラー、マラーサ)。
 アグニ(アグネ、アグニス)の トゥード。(トゥー)

 ナーラジャ(ナラージャ)姫 = 水精、水妖。
 アグマ = 地霊。

 水の大陸
 月女神・水精姫

 大樹海
 アルノス峠
 寒い南方
 熱い北方
 デネドー
 ジュノセシラス
 アイデマール
 ハンブリハイバ
 魔の海。




 アトル・アンのシリーズは、
 むしろ烈女伝と言うべきで。

  
1. ハユンのアマラーサ。
2. ナズディアのヴラーン。
3. アリティア。
4. 精霊。
5. ハユンのアマラーサ。

『マラーサとその恋人×××。  <アグニスのトゥード。
 ふたりの物語が古アトル・アンに地にひろまるのは、
 これからのことである。』

『その頃、いまだ彼の地では、10人単位の人の動きを超える争いごとというのは存在しなかった。いくさというものは……すくなくとも表面的には……郷と郷を代表する戦士たちによる、双方の長老立ち会いの、一騎打ちに他ならなかったのである。』

☆ 叙人詩(ラグリナーサ) 英雄伝。

☆ 炎銀(ミスリル)の旅 …… リリィ・カタナ。
 プロローグ 〜 出立の光景
 1. 樹海 〜 旅立の説明
 2. ヤチダモ族と嵐 
 3. 隊商宿

 冒 険 譚 − アウルア・ウルウィア・ウルワニス −

 ハユンのアマラーサ
 アグニスのトゥード

 アザール・ノミケ(アザールと18人。)
 イオリア、盗賊村
 ジブの八脚虫

 あたたかい/ぬるぬるのぺのぺした/泥の中で/ヤチダモ族は唄うよ。
 (海にのまれる泥のくに)

 ひとの越えない カリンシカ

 ザグの村  セドの泉水

 アトル・ウルワニ / あうるわ・アウルア

 トカレス

 センド・レーサ(児童戦士)の伝統
 呪文(オラムニ)

 中部亜熱帯地方と灼熱の北方。(地図)

 ザクの村   泥の海  カリンシカ


 古いコトバでミトラ(半身)というのがある。


 +++++++++++++++++++++++

 鳥が、ふぃーく、ふぃーく、と鳴く。
 ここはザグの村だ。
 夜明けだ。

 カン高い声で、ふぃーく、ふぃーく、ふぃーくれく、と鳴く。

 ザグの村は絶壁の腹にしがみつく、いくつもの洞窟の集落村だ。
 半島の上から見下ろす、背なに当たる太陽の熱さ。ソイレカ島が一番光を告げる頃、村の前にあるわずかの傾斜地には白い靄が渦巻き、まだ蒼い薄闇と、白い靄とが踊る。
 太陽の棲む熱い北の海からの潮流を遮る形で伸び出す《指の岬》。その西壁に張り付くようにして、剣聖ザグは彼の弟子たちのための修業の村を建てた。

 ザグの村は戦士の村である。

 明るさをまだ迎えない村の斜面を丈高い姿が歩いて行く。
 すらりとした、女だ。
 均整のとれた体格だ。
 鳥の声に、上を向く。
 黒い目に、長い黒髪の、けれどここらの者ではない、陽に灼けてはいるが白い肌をした人間だ。
 鍛え抜かれた筋肉と同様、しっかりしたアゴの線の、いい表情をしている。
 目的の洞窟の房の、窓の前に松明の灯ったままなのを見て、顔をしかめた。
 足早に近付いていく。

 「ウード!」

 慌てたように振り向いた青年の、右目には、みごとな青アザが有った。

 「……おまえか。」

 憮然とした反応に、訪問者の声が笑いを含む。

 「ひとの気配にも心づかんで、よるの夜明けに何をやっている。」
 「見て、解らんか?」
 「なるほど。」

 手には薬壺と、包帯にする麻布を持っている。

 「派手に、やられたな。」
 「誰のおかげだ。おまえ、あいつらに何を言ったんだ?」
 「……べつに。おまえ一人では心許ないから、付いて行くと。」
 「……わぁ〜るかったな!」
 「事実、剣で5本に3本、弓ではほとんど必ず、私に負けるだろうが。」

 「ほっておけ! どうせおまえは《剣聖》様だよ!」

 

  

  
 プロローグ・ 出立

 海鳥がふぃーく、ふぃーく、と鳴く。
 ここはザグの村だ。
 夜明けだ。

 かん高い声でふぃーくふぃーく、ふぃーくろく、と鳴く。
 ザグの村は絶壁の腹にしがみつく、いくつもの洞窟の集落だ。

 湾のむこうの山かげからソイレカ鳥が一番光をつげるころ、村のまえにあるわずかな傾斜地にはまだ蒼いうす闇と、白いもやとが残る。
 太陽神の住まう熱い北の海からの潮流をさえ切って、のびだす指の岬。
 その東壁にはりつくようにして剣聖・ザグは彼の弟子たちのための修業の場を建てた。
 ザグの村は戦士の国である。

 明るさをいまだ迎えない、かの地の前庭をたけ高い人影が歩いてゆく。
 すらりとした女だ。
 均整のとれた体格だ。
 黒い瞳に、たばねた長い黒髪の、けれどここいらの土生の民ではない、陽に灼けてはいるが淡色の肌をした人間だ。
 鍛えぬかれた筋肉と同様、しっかりしたアゴの線の、いい表情をしている。
 目的(めあて)の洞窟の窓に明かりのともったままなのを見て顔をしかめた。
 足早に近付いて行く。
 「ウード。はいるぞ。」
 声をかけると同時にたれ幕に手をかける。と、あわてたように振りむいた青年の右目には、みごとな青アザがあった。
 「……おまえか。」
 憮然とした反応(いらえ)がかえる。
 「ひとの気配にも心づかんで、夜も明けぬうちから何をやっている」
 「見て、わからんか?」
 「なるほど。」
 手には薬つぼと包帯にする麻布。
 黒目黒髪、女とおなじ民族の外観をもつその大男が、ひとり全身の怪我の手当てにとりくんでいるさまは、幼なじみでなくとも滑稽なみものである。
 「派手に、やられたな。」
 「誰のせいだと思ってる」
 「わたしの責任なのか?」
 薬草がしみて顔をしかめるあいだの沈黙。
 「おまえ、あいつらに一体なにを言ったんだ」
 「べつに。おまえ一人に任すのでは心もとないし、わたしの故郷のことでもあるのだから、ついて行くと。」
 「わぁるかったな。おかげでこのザマだ」
 「事実、剣で五本に三本、弓ならほとんど、私に負けるだろうが。」
 「ほっといてくれ、どぉせおまえはミスリルの剣の持ち手だよ。……うぁぁ、こんなやつにわざわざ惚れる男どもの気が知れないっ」
 「でかい図体してスネるな凡才。……で、戦果は?」
 「とーぜん。」
 勝った、と、胸をはって見せるのへ、月神の守護者である女戦士(ルワ・ヘルマ)ははじめて笑顔をむけた。
 軽い身ごなしで立ちあがる。
 「セドの泉水をいただいて来よう。いまから冷やせば、出発までにはその腫れもひくだろう。」
 「頼む。」
 持参したケウドの肉の皿を置いて立ち上がる、その姿は見送らず、ウードと呼ばれた男 − アグニスのトウードは、さっそく自分の朝食にと遠慮なくかぶりついていた。

 たいした挨拶がかわされるわけでもなく、通いなれた崖の道をぬけて村落をあとにする。
 二人とも、旅ははじめてではない。ザグの戦士には武者修行の習慣がついている。
 岬のつけ根からは地平にさしそめた黄金の矢をめざして進路をとった。高原の最端部をたどってゆくかすかな獣道である。
 断崖をつらねて急激に落ちこむ台地の下方、樹木のおいしげる岸辺から、はるかに広がっているのはソル湾から外洋へとつながる熱帯の海。
 右に目を転じれば、カリンシカ連峰の優美なすがたが、淡い紫にかすんで彼方につらなっている。
 この地に特有な晴天のもと、刻々とその色彩をかえる鮮やかなエメラルドの海流を見おろしながら、一路、東へ。
 三日ほどして、村の狩猟域をくぎる小さな峠をこえた。
 下れば、さいしょの樹海である。
 半日もたてばまた消えてしまう細い街道の名残りを、剣をふるって交替に切りひらいた。うしろに立つほうは、弓に矢をつがえて危険な小動物の警戒にあたる。
 森のなかは騒々しいほどの原色で、
 「ここはあいかわらず暑いな。」
 いくどめかの休憩で、ウードがぼやいた。
 「あぁ、この湿気がな。」
 うなづく女戦士は、しかし相棒とちがって汗のひとつもかいてはいない。
 「おまえは涼しそうに見えるぜ。」
 彼女、ハユンのアマラーサは呪文(オラムン)を扱う家の生まれである。ひとりだけ何か唱えでもして熱気を断っているならズルイやつだと、むけられた疑惑の目に、
 「修業のちがいだろう」
 笑って、とりあわない。それは事実ではあるので、ウードはぶすくれる。
 道みちに調達する毎日の食糧も、きっかり五対三の割でアマラーサの方が多い。ウードとてけして腕のない狩人ではありえないのであるが、彼女は、といえば、天才なのである。
 生涯不婚の月神戦士(ルワ・ヘルマ)たる誓いを樹てるほどの女は、ザグの修業の村においてさえ特別な存在だ。
 児童供託(センドレーサ)の伝統にもとづいて十歳のときにザグの村へとさし出される子供の、選出のための神前試合に決勝であたって以来、ウードがアマラーサに勝ちを宣したことはほとんどない。ハユンの一族は、もともとの武家ですらないというのに。
 その、思い出のかなたにある、故郷。
 今回かれらの旅には理由と目的があった。
 ウードが、夢をみたのだ。
 呪文使い(オラムニ)の生まれでもないくせにとアマラーサは笑ったが、はじめはかすかに、しだいに明瞭になったその伝言は、温暖な中北部地方の守り神である水霊(アトル)、アウルア・ウルウィアからもたらされたものだった。
  − 拐(さら)われた。
 というのである。
 水霊をうばわれては豊かな郷(さと)に雨はふらない。
 川と森林のアマラーサの氏族はまだしも、小麦地帯であるウードの村のあたりは大打撃であろう。
 そういう時のための供託戦士である。
 ウードは、決意し、アマラーサはそれに従った。
 水霊女神(アトル・ウルワニ)、救出。
 てがかりは海に沿って東方へということだけである。
 凶作はせめて一年で終わらせたい。
 ふたりは、あてもないままに道のりをいそいでいた。

  ルワ・ヘルマ  エル・ヘルマ
  ルワ・ブラダ  エル・ブラダ

 

 ※ 冒頭に、シャーペンと鉛筆描きの二人のイメージイラストが入っているのですが、皆さんにお見せ出来ないのが残念?です……☆
 (笑) 
 1. 嵐

 ようやくに樹海の熱気から抜けだせようかという数日後、おいしげった植物群のほとりちかくにたたずんで、アマラーサが、ふと、なにかを指さして足をとめた。
 「妙だな。見ろ」
 「どうした? マラーサ」
 これが最後のひと丁場と、のこり数尋(ひろ)の雑木を怪力と大剣でもってばったばったとないでいたウードが手をとめて戻ってくる。
 「この道祖神(みちがみさま)。」
 「……これが?」
 疑問符のさきにあるのは何の変哲もない、黒石でできた道しるべの像である。過去いくどかこの樹海抜けをするたびに、いつも見てい……
 「あ!?」
 「気づいたか」
 位置が、ちがうのである。
 「この前わたしが通ったときには、これは確かに樹海のきれた[外]にあったんだ。そこで休んだ覚えがあるのだから間違いない。」
 「てぇことは」
 「まわりの樹を見てみろ。この像より光に近い植物は、みなまだ若いぞ。」
 それは本当だった。何千季節を変わることなく茂っていたタチモスの緑の海は、ここわずか1〜2年のうちに20尋ばかりもその領土をひろげようとしているのである。
 「妙だな……」
 「ああ、妙だ。」
 かといって足をとめてうなっていたところで事態のかわるものでもない。大きな町の知学売りでもあるまいに、あてもなく悩むことなど戦士の職分からは遠い。
 十分に注意をはらって残りの行程を切りひらき、その日は、はるか樹海から離れてしまうまで、ふたりは野営をさけた。

 そして、翌日。
 「とんでもねーーーっ!」
 なんともいえぬイヤな予感にふと空をふりあおいで、すっとんきょうに叫んだのはウードの方である。
 「え?」
 北の方、いまは距離のあいている海のうえから、どこまでも青い空をやぶって、暗雲のかたまりが姿を見せている。
 「……なに?」
 こんな時節に雨期がおこるはずはない。
 否定するそばから嵐神はその版図をひろげ。
 めったにないことだがアマラーサがうろたえた。難を避けようにも右も左も、ただ一面の草原地帯である。
 むきだしの肌にうちつける雷雨に体熱を奪われる。熱帯で暮らす人間にとって、サバンナで遭遇する嵐ほど恐ろしいものはないだろう。
 「どうする? 樹海まで戻るか」
 ウードが後方の地平にわだかまる緑のかげをさす。
 「いや、かえって危険だろう。それにどうせ間にあうまい。」
 シーズン中だったとしてさえ異例の速さで進軍してくる雲塊に、はやくも、朝もおそい黄金の太陽が閉ざされ。
 世界がかげる一瞬、さっと水をふくんだ重たい風がはせぬけていった。
 これからどんどん気温が下がる。
 吹きつけるものに、雨滴がまざるようになった。
 「……あちらだ。」
 道からややはずれた前方をアマラーサはさす。
 なにかをいう前にウードは走りだしている。
 野生の獣にも似たふたりの疾走者だ。
 サバンナを、その動物群はといえば何処へ逃げたのか姿もない。
 昏い。
 狂気の最初の一陣が、叩きつけるように左から右へとあおる。
 体重が軽いぶんアマラーサがまかれた。
 走りつづける、ウードが、片手を伸ばして彼女を引きもどす。
 「すまん。」
 「なに。」
 寡黙にただ安全を求めて馳せる。
 いまや嵐は世界を占めていた。
 いったん吹き荒れたら、幾夜眠られぬ夜が続くものか。それは、おとに知られた大陸のはずれの激しい狂宴だ。
 はためく雷光。
 心胆ゆるがす大音響。
 ざっ、と目のまえで草原が薙(な)がれひれ伏す。
 次の一瞬には逆の風にあおられて、昏い銀色の渦をまく。
 大地を蹴る。大地を蹴る。
 稲妻と渦と闇のなか、ただひたすらに突き抜ける。ま濡れて脚をからめる草藪の、腰の強さが邪魔になる。
 「えぇいっ、このっ」
 幾度目か、足をとられかけて怒鳴ったのはどちらだったのか。
 ひとくちに草原といい、平原と呼んでも、それはけして遠目ほど平らかではない。
 シャン、と嵐の轟音のさなかでさえ耳に冴える鮮やかな手さばきで、アマラーサが無音のままその剣をひき抜いた。
 炎銀である。
 呪句(オラムン)の詠唱につれて新月に似た炎銀(ミスリル)の輝きが讃月祭の夜ほどの明るさを放ちだし、と同時に、持ち手の光魂に応じて淡い黄金(こがね)に染まる。
 誓言をたてた女戦士(ルワ・ヘルマ)にしか許されない術ではあった。
 闇と嵐の草原を、光に包まれた二人組が疾駆する。
 「あれだ。」
 「おう。」
 二刻ほどもたっただろうか。ずぶ濡れになって彼女が示した先には、ステップと海岸部とを仕切る岩だらけの丘陵地帯があった。
 迷うているひまはない。道などあるはずもない岩肌にとりついて、よじのぼる。雨が腕をすべらす。渦まく風が横なぐりに吹きはがそうとする。
 ずいぶん難渋して小さな峠から尾根を乗りこえると、海までまだだいぶ距離があるにも関わらず、潮のまじった突風が千人並んだ楯のように一斉に叩きつけてくる。
 「うぇっ」
 ウードの悲鳴をよそに、だが、その昔は火吹き山だったというこのゾレテト山稜のこちら側には、複雑な形の洞(ほら)が多い。
 「……あそこにしよう。」
 うまい具合に風向きから隠されたひとつを探して、ふたりはようやく息をついた。
 長時間の疾走のおかげでずぶ濡れになっても体は冷えてはいない。とはいえ、消耗は激しい。
 呪句を使ったアマラーサはなおさらのことである。
 「人間ランプ」
 「うるさい。」
 常人離れにますます磨きのかかってきた相棒に軽口をたたきつつ、剣(つるぎ)の余光の失せきらないうちにとトゥードは手早く火口(ほくち)の支度をする。
 幸い、このての天然の洞(ほら)で燃料にこと欠くことはあまりない。乾期のこととて − そのはずだったのだ − 結実したまま枯れて次のシーズンを待つ、ふかふかしたコケシダに、一面が覆われている。
 炉床にする分を切りはがしてのけた。
 「すこし休んでろ。メシの仕度なんざ一人いりゃあ十分だ」
 「………………飯………………。ったく、この体力男がっ」
 あきれたように呟きつつ、自分で積みあげたコケシダの山にもたれて素直にアマラーサは寝入ってしまった。
 月神戦士(ルワ・ヘルマ)はただの男戦士(エル・ヘルマ)よりもはるかに夜目の利くものだという事実を、ふたりはお互いによく知っている。
 背袋からよくこれだけと思うほどの食料をゴタゴタと取り出したウードはしばらく迷ったあげく、気に入りの乾肉をあきらめてマラーサの好きな煮豆料理をこしらえることにした。
 外は、荒れている。
 (どうせなら天気ごと変えてくれよなぁ)
 そんな術力を持つ人間は、いない。
 長く待たされることになりそうだった。
 
 目覚めると、歌声である。
 ウードははじめ、アマラーサが歌っているのかと思い、彼女はといえば子供のころの夢をみていた。
 やがて同時に、ふたりではね起きる。
 ………明るい。
 晴れている。
 四日ぶりにようやくすべての音のたえた[外]から、ずいぶん遠くからその歌の音(ね)はきこえてくるらしかった。
 消えかけた白いたき火をはさんで顔を見あわせ、すぐさま行動する。
 大気の澄みわたった世界は早朝。
 そして地勢は、まるきり一変していた。
 「……ウソだろう、おい。」
 眼下にひろがる一面の泥の海を見てウードが呆然とつぶやく。
 海、というのは比喩にはならない。本当に、はるか見わたすかぎりの − おそらくは実際の海岸線にゆきあたるまで − ただ泥、なのである。



 虹の鮮やかさをあわせ持つ銀の色
 淡い黄金のオーラの持ち主。
 ウードはたぶん炎銀色だろう。

 
晴崖の章 二人が旅に出る。南を目指す。
     旅の理由と、村と谷と月巫女の説明。

暗雲の章 原人族ヤツィダモと遭遇。
     水の大陸「神話」の説明。
     (人族の種類)。方向転換。

緑霧の章 二人の関係の説明。
     娼婦に出会う。
     町の噂をひろう。
     トラブルに巻き込まれる。
     方向転換その2。

碧風の章 碧照(フェンテル)国門で恋歌を唄う。
     王太子のプロポーズ。星船遺跡を訪ねる。

月天の章 一行三人で、荒野を目指す少女を拾う。
     フクザツなウード。荒野で月女神と会合。

暁闇の章 黄沙の王を倒す(?)。水霊を谷へと還す。

付・「月天の章」拾遺 月下でアムがウードに謝ったこと。
           その夜の二人の消息。
           月女神殿について。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 《水霊》と《風霊》:
 《森の谷》を守る精霊族の束ね。半物質の存在。かつての大災厄で《地》と《火》を失っているため力は弱まっている。女性体のイメージ同士だが、関係としては恋人に近い。

 《月女神》(レリナルディ):
 本人(?)の弁によれば【神】ではなく【監視者】である。《月宮殿》と呼ばれる光球に居住している。大きすぎる頭と子供のような肢体の、だが文句なしの美形。寛容な性格だが、判断基準は常人には判らない。
 アマラーサの能力は高く評価して(気に入って)いる。
 男嫌いらしい。

 アグニスのト・ウード(ウード)=(アグニス谷の一族のウード七世):
 《森の谷》出身の奉献童子。義崖(ギガイ)の村の若手ではNo.2の戦士。(一番はアマラーサ)。
 根っから陽性で単純明快な思考法の持ち主だが、事実上の許婚者であったアマラーサに一方的に婚約破棄をされて以来、少々グレている。
 一応主人公。

 ハユンのアマラーサ = 《革細工(ハユン)谷》の《謎(アムル)の愛しい(アル)子(アサ)》:
 森の谷の捨て子。義崖の村のNo.1戦士だったが、出俗して月女神の巫戦士となる。人界のすべての法より自由。いささか口の悪い知恵者であり、知識欲・探求心が強い。身分を隠して旅する時の名は歌姫《眉びきの君》。
 月巫女として様々の不思議の技を使える。
 弓の名手。

 (なまえなんだっけ?):
 碧照国の王太子。独自の星船神話を持つ。
 自称「おかざりの遊び人」だが、実権はきっちり把握している。あなどれない辣腕の行政官。月巫女に、それと知って求愛できる根性と知識の持ち主。陽気な皮肉屋で、芸技・学問等はほとんど万能である。
 王家の先祖と月女神族とは特別のつながりがあるらしい。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(※それぞれイメージイラストが描いてあるのですが、
  皆さんにお見せ出来ないのが…… 以下略。(笑) )
(冒険譚・梗概)

 ハユン家の養女アマラーサは《谷》の一族の生まれだ。八年前、童子送遣(センドレーサ)の伝統に従い戦士の村ザグへ献納されて来た。いずれ《谷》の危機を救う者が出るという、一族の予言を成就させるために。
 守護童子(センテンティア)を選ぶ神前試合で最後まで勝負がつかず、先例のない二人童子として遣わされた相棒の名はアグニス家の長子トゥード。それまで面識のなかったふたりはザグの村に《谷》の血統を絶やすなという不文律により、その時から掟の定める許婚者となった。

 古くは《[水]の結界》(アトル・アン)ともよばれたこの大陸(ティス)には複数の民族が住むが、絶対多数を占める大陸人(ティセラタン)は造物主ティアスラァルを謀殺して以来みずから「祖神(おや)殺し」を名乗り、超越者に頼らず生きることを誇りとしている。
 数多の神々がヒトの驕りを見捨てて去った惑星で、《異》や《魔》とよばれる者たちや《谷》の一族のような他界からの移住民は、風や水の精霊の加護をうけて昔ながらの暮らしを続けていた。
 唯一、特異なものとして、しかし広く認められている月女神(レリナルディ)信仰は、満月の夜に死を恐れず荒野へ出て祈る者にはすべての掟や法則から解放された「まったき自由」が与えられると説く。
 ザグの村で戦士としての修業を積み弱者を護るための旅をくりかえすうちに、アマラーサは月女神の教えに魅かれた。《谷》の守護者である義務を捨て、《闇に輝く》(レリナルディ)そのひとにまみえたのは二年まえ。人を超え、《仙》と呼ばれる無限の力を得ると同時に、彼女と許婚者を結びつける絆もまた消滅した。
 無断の行動に傷ついたのはトゥードである。出会った時から美貌の少女の恋していたし、力強い女戦士をまた親友とも考えていたのだ。
 ザグの村では有数の使い手である彼も《仙》士が相手では敵すべくもない。動揺を顔には出さずただ修業も怠りがちに無為な日々をおくる。
 発心(ほっしん)、というのだろうか。その他火(たひ)に出(た)つべきときが私を訪れたのは、涼気をよぶ亜熱帯の月がわずかに欠けを見せる、季節のはじまりだった。
 てばやく荷をまとめ、村をたばねる老にだけ出立を告げて歩きだす。眼下の斜面でもう夕刻だというのに、ひとり鍛錬にはげむあいつの姿があった。
 彼が負かしたい相手はしばらくいなくなる。永遠に、とあるいは言うべきか。今度の旅がかなえば、私はきっと異(ちが)うのだろうから。
 ……怒るだろう。
 まして黙って去るならなおさらだ。これまで私はいつでも、武者修業に足がおもむく前にはあいつに断わりを入れていた。
 あいつが、私にたいしてそうするように。
 


 ……知ったら、どうするだろう。

 あるいは、運命が異れば、夫としたかも知れなかった相手の顔を思い浮かべてアマラーサはくすりと笑った。
 あいつの反応などいつでも手にとるように判る。
 蓬髪の仙戦士。
 そこ抜けに陽気で単純明快な……。

 愛しているよ。

 けして相手は知らぬそのことを、ひとり、胸のなかで呟いてみる。……女として、男を。

 それでも自分は選んだのだ。

 短かいこの旅が終われば、彼女はすでに人外の存在、不可侵なる月女神につかえる聖巫女戦士となる。




 『月仙譚』

 郷戦士 戦師
 剣策士 仙士
 仙戦士 仙女士
 女仙士 月媛
 仙者  聖戦者
 選戦者 巫女戦士

 ……言わずに出てきた。
 さぞかし、本当に、怒って拗ねるのだろうなと、笑う彼女につられるように野営の火花がはじけ、姿をあらわした最初の細い月が静かに荒野を観ていた。 


 神
 |
 聖
 |…………
 尊 >
 | > ここまでは「人界」に属する。
 仙 >
 |…>……
 貴 > < 以下、「俗界」。

 
 ヴァラン ヴァラン …
 慈弦のひびきの最後の調律。
 バルララン! バルララン!
 龍琴の音の力強さ。

 ほら貝が天に哭く。
 地をもゆるがす鼓の波音(プァルラ)
 楽人の声たからかなる、
 讃えよ! 今日のこの日を。

 
 
……《碧天(フェンテル)》王家の七恋歌 ……
− あるいは、星よりきたる青銀の船のこと −

  口上 ・ 剣士にして吟遊詩人 …… 一、
  一の歌・ 星華蘭の雅歌

  星華蘭 − ひともとの花にまつわる雅歌(うたがたり) −

 まえの村で売られようとする薄幸な孤児(こども)たちのために有り金ほとんど投げ出した。その結果がこれである。

 「財華の入市税はひとり七ソル(銅貨)。一年前にはそうだったはずだが」
 憮然として腕を組む男は徒歩(かち)での長旅に汚れた姿に長剣を吊り、荷駄の一頭も連れてはおらぬ。
 市門を守る兵たちはあからさまな表情を浮かべて逆手に槍を構えた。
 「あいにくと昨秋の祭りから、ひとり三ラソル(銀貨)になってな」
 「暴利だ。財華は自由な商いが自慢の都邑(みやこ)だろう」
 「さればこそ、食いつめ者など市(いち)には無用、治安が乱れるだけとの、大公様のおおせよ」
 紋章をカサにきて言いたいことを口にする。富裕な都に雇われるだけあって腕も確かであろう衛兵隊は数も多いし、片手で黙らせて押し通るというわけにも行かぬ。
 「〜〜〜〜っ。やつの言いそうなこったぜっ」
 もとより知り人のいる街で無用な騒ぎを起こすのは本意ではないのだ。そうこうするうちにもうしろに検門の順番を待って、行列ができはじめる。
 どうする? と、まだ若い旅の戦士は背後の連れをふりかえった。
 若い、女である。
 こちらもわずかばかりの荷を背に負って長剣と小弓をたずさえただけの仕度。
 ほこりと陽光をさけるためか薄布をまぶかくかぶっているが、均整のとれた長身の肢体といい、かいま見える切れながの黒瞳といい、兵たちの関心をひくには十分にして過ぎる。
 その、まれにみる美女と二人連れであることで自分への風あたりが余計にきつくなるのだとは、呑気な本人は気づいてすらいないが、女の方にはしっかり自覚がある。
 「金はないなら作ればよいのであろう?」
 苦笑を秘めたまなざしで問い返すその指には、ごくごく小さな銀づくりの竪琴がいつのまにか握られていた。
 「放たれた故郷とはいえ我らは本来《谷》の民。ひさびさに伝来の技で生計を立てても路銀を稼いでも、バチはあたるまいと思うぞ」
 とたんに男は嫌そうな顔になる。
 「戦士たる身が大道で、歌舞で路銀を得るとはを売るしかないとは情けない……」
 「それを私に言えるのか、おまえが?」
 剣の技倆においては彼女のほうが格段に上である。
 「オレに唄わせるつもりか?」
 「当然だ。よい声なのは知っている、隠すな。

  ……そうだな、せっかく二人いるのだから……、『星華蘭の雅歌』がいい。覚えているだろう?」
 「おい、待てよ、オレはまだやるとは……!!」
 連れの抗議など黙殺して、さっさと歩き出した女戦士は城壁を背にとって隊商たちと向かい合う。
 「お聞きのとおりの故(ゆえ)にてかたがた、吟遊詩人の最初の一弦、一刻ばかりのお耳よごし、御容赦願いたい。
  ……それは昔の物語。西のかたなるアルヴェの岬に《碧天》(フェンテル)という小さな国があり、」
 和音。旋律……前奏。
 しょうことなしに唄いはじめた青年の声が青空のしたに広がった。


 

 星妃香蘭
 星銀の星船

 天碧き星よりの歌
 天碧き地の者たち

 尊貴真扉
 東木真土


 斎 真扉
 朝 真扉
 東輝真扉
 尊貴真扉
 
 

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