荒れるほどでもない砂風でぼんやり煙っている日だった。
 黄色い砂塵をとおしてさしてくる陽光をさらに濃い黄昏にかえる玻璃(はり)の透かし絵窓の下で私は狩り具の手入れをしていた。
 透かし絵は希望と絶望の神アゾルディアドのずいぶん凝った絵柄で、この砂岩洞のまえの持ち主だった玻璃細工師がひまをみては造りあげたものだという話だ。
 最後の一枚、アゾルの顔の左眼をはめ残したままに、結局それは老いた細工師の遺作となり、縁起が悪いからと誰も買わずに、空き家になっていた洞窟を他所者の私が手に入れてから二年半になる。
 気がむけば岩洞のすぐ裏手からはじまる沙漠へ【牙】を狩りに行き、そこそこの喰いぶちを稼ぎながら、天候の悪い日にはこうして道具を整えるか、書きとめるわけでもなく頭のなかで詩作にふけってみるか。
 ここの暮らしは、けっこう安楽だった …… 《生死をわかつ神》(アゾルディアド)の《闇の半面》(アゾル)を見つめながら、長すぎる余生を送る流刑の身としては。
 コトリ。
 三本目の矢はずをそろえおえたとき、こまかい砂の小路から岩洞の石段へあがる、かすかな足音がひびいた。
 −−……かい? おはいり。
 近所の子供が使い走りで小遣いを稼ぎに来たのかと、私は顔をあげもせず声をかけた。
  先触れの使いも出さず急に訪ってすまないが
 静かに踏み入ってきた見知らぬ旅人は、旅に汚れた貧しげな外被をつけ、やはり 汚れた すりきれた 頭おおいを 手甲をつけた手で頭のおおいをはずす。
 そこには、息をのむほどの美しいかんばせがあった。
 かつて私の、唯一の、《希望》(ディアド)であった者の顔が。

 ……水流(すいる)。なぜ。 ここに。
 ……久しいの、綾士(あやし)。街の者に聞いて来たのじゃ。先触れの使いもせず訪うてすまないことだが。

 皇帝(みかど)の寵を一身にうける高貴の若者は、宮廷儀礼そのままに優美に一ゆうして言った。

 ……聖君ぶりか。それも時と場合による。路銀がつきて、この三日みずだけだ。
 このよい匂いの源を、少し




香蛇竜(カダル)

 


◎ 部屋替え騒動

◎ トルカがジュノかまうのをサイラスが見ている。

◎ 門限のはなし、そのいち。

◎ 


◎ トルカくん酔って御帰還

◎ トルカのおはなし

◎ サイラスのおはなし


◎ 街の火事

◎ トルカを出迎えるサイラス

◎ 自習室にて。……ジュノーをからかう連中とトルカの殴り合い。
          最新技術で作られたミスラス神像が壊れる。

◎ 怒るトルカと、ぶったおれるサイラス。

◎ 医務室にて。


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