エスパッションシリーズ Part 1.
癒えない傷跡 ……第二稿……
宙暦17年。リスタルラーナ上空40万km。 ここまで上って来てしまうと最早“上空”等とは言い難い。
大小2つの月すら足下をはるか横切って行くのである。
そんな高所からの惑星のながめは、なかなかに素晴らしいものだった。
サキは今、ふと思いついた自室の大掃除が面倒になって、途中で逃げだして来て一服しているところである。と、言ってもロビーは子供達の遊び場をも兼ねているから、そのにぎやかな事と言ったらないのだが、本に頭を占領されているサキにとっては、まあ、存在しないも同然である。
そんな様子の彼女を見て、
「何、読んでるの?」と、前を通りかかった少女が例の調子でちょっかいをかけて来た。
「ん? ああ……万葉集だよ、ケイ。」
字義通り没頭していたサキは、半ば呆けたような表情で顔を上げながら相手に書名をさし示した。
「またァ?」 ケイが愛らしい群青色の瞳をあげて、あきれた声をたてる。
「たっぷり20世紀は前の本なんでしょう?! それ、そんなに面白い?」と言うのだ。
実際には25世紀近く昔に書かれたものらしいね、とサキが答える。
「これの良さが解らない方がどうかしてるのさ」 そう言って本を閉じると、
「あら、まあ、偉そーに……」とケイが反撃する。「なんなら化(バケ)学の面白さでも説明しましょうか?」「ヒエッ!」
つまるところは、本と言えば少女小説しか読まないケイと、化学と聞くと回れ右して逃げ出すサキとの、いつもの通りのかけあい万才なのである。
そこへ、
「良くやること、ね、おふたりさん」 とばかりに、世紀の金髪美人(ブロンドグラマー)エリザヴェッタ・アリスが割り込んで来た。「お茶を入れたのだけれど……いかがかしら?」
「わっ♪」すぐにケイが手をたたいて喜ぶ。
「サンキュー、エリー!」 サキも笑って手を伸した。「お茶」と言うよりもお茶菓子の手造りケーキの方へである。
3人がジョークの2つ3つ飛ばしながらお茶に口をつけた時だった。壁の向うの廊下の辺りからレイがテレパシーでサキに話しかけて来た。
(サキ!!)
気づいて、サキの飲みかけた茶碗の動きが止まった。(何!? レイ)
(未完)。
癒えない傷跡 ……第二稿……
宙暦17年。リスタルラーナ上空40万km。
大小2つの月すら足下をはるか横切って行くのである。
そんな高所からの惑星のながめは、なかなかに素晴らしいものだった。
サキは今、ふと思いついた自室の大掃除が面倒になって、途中で逃げだして来て一服しているところである。と、言ってもロビーは子供達の遊び場をも兼ねているから、そのにぎやかな事と言ったらないのだが、本に頭を占領されているサキにとっては、まあ、存在しないも同然である。
そんな様子の彼女を見て、
「何、読んでるの?」と、前を通りかかった少女が例の調子でちょっかいをかけて来た。
「ん? ああ……万葉集だよ、ケイ。」
字義通り没頭していたサキは、半ば呆けたような表情で顔を上げながら相手に書名をさし示した。
「またァ?」 ケイが愛らしい群青色の瞳をあげて、あきれた声をたてる。
「たっぷり20世紀は前の本なんでしょう?! それ、そんなに面白い?」と言うのだ。
実際には25世紀近く昔に書かれたものらしいね、とサキが答える。
「これの良さが解らない方がどうかしてるのさ」 そう言って本を閉じると、
「あら、まあ、偉そーに……」とケイが反撃する。「なんなら化(バケ)学の面白さでも説明しましょうか?」「ヒエッ!」
つまるところは、本と言えば少女小説しか読まないケイと、化学と聞くと回れ右して逃げ出すサキとの、いつもの通りのかけあい万才なのである。
そこへ、
「良くやること、ね、おふたりさん」 とばかりに、世紀の金髪美人(ブロンドグラマー)エリザヴェッタ・アリスが割り込んで来た。「お茶を入れたのだけれど……いかがかしら?」
「わっ♪」すぐにケイが手をたたいて喜ぶ。
「サンキュー、エリー!」 サキも笑って手を伸した。「お茶」と言うよりもお茶菓子の手造りケーキの方へである。
3人がジョークの2つ3つ飛ばしながらお茶に口をつけた時だった。壁の向うの廊下の辺りからレイがテレパシーでサキに話しかけて来た。
(サキ!!)
気づいて、サキの飲みかけた茶碗の動きが止まった。(何!? レイ)
(未完)。