大地世界物語 〜上古編〜 V
2006年4月2日 連載 コメント (1)ヒトも応えて女神と結ばれ、
やがて女神は双子を産んだ。
半神半女のやんちゃと泣き虫、
みる者すべてを笑顔にさせた。
やがて女神は双子を産んだ。
半神半女のやんちゃと泣き虫、
みる者すべてを笑顔にさせた。
大地世界物語 〜上古編〜 VII
2006年4月4日 連載 コメント (1)女神の夫が深手を負った。
女神の悲嘆に耐えかねて、
副主神たる《智水神》、
身代わりとなり* 帰天した※。
* その界における神格としての聖別命数(存在権限)を委譲し界を去ること。
※ 神格の帰天は、いわゆる人格の「死」とは異なる。
女神の悲嘆に耐えかねて、
副主神たる《智水神》、
身代わりとなり* 帰天した※。
* その界における神格としての聖別命数(存在権限)を委譲し界を去ること。
※ 神格の帰天は、いわゆる人格の「死」とは異なる。
大地世界物語 〜上古編〜 IX
2006年4月6日 連載 コメント (1)女神も己が命数を分け与え、
大地の真芯で眠りについた。
女神の娘が統治を引き継ぎ、
人の地道な暮らしが始まる。
大地の真芯で眠りについた。
女神の娘が統治を引き継ぎ、
人の地道な暮らしが始まる。
大地世界物語 〜人代編〜 (地誌と年代記)
2006年4月7日 連載 コメント (1)【地誌】
[山脈]
はじめに世界は無辺無窮の大いなる平面として成された。平面は無毛の砂漠であった。女神と仲間たちの御幸に伴い、その足音や舞の音色の韻律につれ大地に起伏が成り、《智水神》が数々の泉を呼び出すに従い、あたりに緑が芽生えた。緑の命は広がり、木陰と草原とを形作った。その緑の命をはむ者らが産み出され、それらの巣穴や集落があちこちに形作られた。
暗洞界の魔軍が攻め来たり、智水神が帰天して後、大地に泉の増えることは無かった。大地母神が大地の深奥で界果てまでの眠りについた後、その周辺の地は眠れる女神の放つ夢の気を受けて徐々に隆起をはじめ、長い年月の間に、その頂きが大気の稀薄な天上界に近付くほどになり、大地世界の中心をなす《大地の背骨山脈》と名付けられるに至った。
[水脈]
《大地の背骨》の中心に位置する《智神の最初の泉》からは尽きることなく命の真清水が湧き、背骨の隆起に伴って取り残された盆地を満たして《太古の湖(うみ)》となった。ほどなく水位が限界まで上がり、やがて盆地の北東端の《界果て峠》の岩壁を打ち砕いて山脈を流れ下った。幾つもの峡谷と渓谷と深い淵や穏やかな岸辺を刻んで大地世界最長の大河《銀波青流》と呼ばれる。大河は北東に下り、山裾で北西に転じ、西南に蛇行して白の街道の半ばで大いなる瀬を分け、大地世界最大の水面(うみ)である《北方太湖》と、南に遠く離れて砂漠に流れ込み、地熱で干上がりかけた《南方塩湖》の、源流でもある。
[版図]
《銀波青流》沿いの気候温暖な各平野と、《北方太湖》周辺の起伏の激しい森と草原地帯、《南の曲流河》沿いの高温多湿な湖沼地帯、そして西の半砂漠地方が、地人族の主な版図である。
東方の広大な樹林地帯はもっぱら翅仙族と飛仙族、鳥人など《飛ぶ民》の居住空間であり、大地の背骨山中には、数多の獣人種族の領土とともに、ひそかに隠れ住む魔軍の裔の罠砦などがある。
その他の、生身ある者にとっては過酷な環境の諸域には、今も女神の仲間の末裔や、幻獣、精霊などが疎らに回遊している。
[山脈]
はじめに世界は無辺無窮の大いなる平面として成された。平面は無毛の砂漠であった。女神と仲間たちの御幸に伴い、その足音や舞の音色の韻律につれ大地に起伏が成り、《智水神》が数々の泉を呼び出すに従い、あたりに緑が芽生えた。緑の命は広がり、木陰と草原とを形作った。その緑の命をはむ者らが産み出され、それらの巣穴や集落があちこちに形作られた。
暗洞界の魔軍が攻め来たり、智水神が帰天して後、大地に泉の増えることは無かった。大地母神が大地の深奥で界果てまでの眠りについた後、その周辺の地は眠れる女神の放つ夢の気を受けて徐々に隆起をはじめ、長い年月の間に、その頂きが大気の稀薄な天上界に近付くほどになり、大地世界の中心をなす《大地の背骨山脈》と名付けられるに至った。
[水脈]
《大地の背骨》の中心に位置する《智神の最初の泉》からは尽きることなく命の真清水が湧き、背骨の隆起に伴って取り残された盆地を満たして《太古の湖(うみ)》となった。ほどなく水位が限界まで上がり、やがて盆地の北東端の《界果て峠》の岩壁を打ち砕いて山脈を流れ下った。幾つもの峡谷と渓谷と深い淵や穏やかな岸辺を刻んで大地世界最長の大河《銀波青流》と呼ばれる。大河は北東に下り、山裾で北西に転じ、西南に蛇行して白の街道の半ばで大いなる瀬を分け、大地世界最大の水面(うみ)である《北方太湖》と、南に遠く離れて砂漠に流れ込み、地熱で干上がりかけた《南方塩湖》の、源流でもある。
[版図]
《銀波青流》沿いの気候温暖な各平野と、《北方太湖》周辺の起伏の激しい森と草原地帯、《南の曲流河》沿いの高温多湿な湖沼地帯、そして西の半砂漠地方が、地人族の主な版図である。
東方の広大な樹林地帯はもっぱら翅仙族と飛仙族、鳥人など《飛ぶ民》の居住空間であり、大地の背骨山中には、数多の獣人種族の領土とともに、ひそかに隠れ住む魔軍の裔の罠砦などがある。
その他の、生身ある者にとっては過酷な環境の諸域には、今も女神の仲間の末裔や、幻獣、精霊などが疎らに回遊している。
大地世界物語 〜人代編〜 (地誌と年代記) I
2006年4月8日 連載【年代記】I
[神統譜]
女神の娘の無名のひとたりは地人族として生き、逝きし《智水神》の道半ばであった指導を惜しんでその智慧を祀る《智水神殿》を建て《智水学派》の開祖となった。短い寿命を全うし大地のめぐりに還った。
女神の娘の名のあるひとたりは半神女として在ることを選び、残された地人族を統治し、また半神たる真力を以て魔族の残党を狩り、あらゆる大地の生命の守護者となった。地人の寿命の数倍のあいだ大地に留まり、幾人かの地人の夫との間に多くの子を産んだ。半神女であり帰天は叶わず、大地のめぐりに還る(※)にしては聖位にすぎる存在であったので、やがてその生ある暮らしに飽いた時、母なる女神の眠る大地の真奥の洞窟の門を守護する形で、やはり界果てまでの眠りについた。
女神の娘の血を継ぐ者たちは《神統》と呼ばれ、特に血の濃い者や能力識見に優れた者の間でゆるやかな互選制を敷いて、一族の統治者たる役目を委譲し繋いだ。
※ひとつの人格として、大地人または獣人・鳥人族の、転生の輪に還ること。
[大移住]
数代を経て、地人族の最初の居住地であった《太古の平原》は、隆起を続ける背骨山脈に取り囲まれる形で大気の稀薄な高原盆地となり、また《最初の泉》の水位上昇につれ湿地域が広がり、増え続ける人口に比して農耕・居住条件が劣化する一方だった。
どのような対策を採るべきかについて有力な《神統》同士の間でも激しく意見が分かれた(※)が、やがて北東壁の《界果て峠》が水圧に耐えかねて崩落し、平原外に出る道が開かれると、積極的に山脈外縁部へと移住を重ねる者たちが増えてきた。
しかしこれに反対し、聖圏結界外への移住をあくまで拒否する残留者たちとの間にはしだいに距離が広がり、疎遠となっていった。
※この時の口論がもとで、移住組の各《神統》同士の間でも親睦が失われ、後の[大分裂]の遠因となったとも言われる。
[神統譜]
女神の娘の無名のひとたりは地人族として生き、逝きし《智水神》の道半ばであった指導を惜しんでその智慧を祀る《智水神殿》を建て《智水学派》の開祖となった。短い寿命を全うし大地のめぐりに還った。
女神の娘の名のあるひとたりは半神女として在ることを選び、残された地人族を統治し、また半神たる真力を以て魔族の残党を狩り、あらゆる大地の生命の守護者となった。地人の寿命の数倍のあいだ大地に留まり、幾人かの地人の夫との間に多くの子を産んだ。半神女であり帰天は叶わず、大地のめぐりに還る(※)にしては聖位にすぎる存在であったので、やがてその生ある暮らしに飽いた時、母なる女神の眠る大地の真奥の洞窟の門を守護する形で、やはり界果てまでの眠りについた。
女神の娘の血を継ぐ者たちは《神統》と呼ばれ、特に血の濃い者や能力識見に優れた者の間でゆるやかな互選制を敷いて、一族の統治者たる役目を委譲し繋いだ。
※ひとつの人格として、大地人または獣人・鳥人族の、転生の輪に還ること。
[大移住]
数代を経て、地人族の最初の居住地であった《太古の平原》は、隆起を続ける背骨山脈に取り囲まれる形で大気の稀薄な高原盆地となり、また《最初の泉》の水位上昇につれ湿地域が広がり、増え続ける人口に比して農耕・居住条件が劣化する一方だった。
どのような対策を採るべきかについて有力な《神統》同士の間でも激しく意見が分かれた(※)が、やがて北東壁の《界果て峠》が水圧に耐えかねて崩落し、平原外に出る道が開かれると、積極的に山脈外縁部へと移住を重ねる者たちが増えてきた。
しかしこれに反対し、聖圏結界外への移住をあくまで拒否する残留者たちとの間にはしだいに距離が広がり、疎遠となっていった。
※この時の口論がもとで、移住組の各《神統》同士の間でも親睦が失われ、後の[大分裂]の遠因となったとも言われる。
大地世界物語 〜人代編〜 (地誌と年代記) II
2006年4月9日 連載 コメント (1)【年代記】II
[大分裂]
大地世界の最多の生命である地人族は、おおむね《銀波青流》の流れに沿って長い年月をかけ移住と拡散を繰り返した。拡散につれ集落相互の連絡も途絶えがちとなり、多くの場合、《本家》と呼ばれる《神統主》の他に、各集落の統治を司る《分統主》や、河筋や街道筋を束ねる《神統補》が選ばれた。やがて各地の様々な《神統》家を支持する者同士で派閥が分かれ、争いが多発し、魔族の残党もまたこれに便乗して跳梁跋扈し、各地方は孤立して、安全な往来が途絶える時代となった。
[再統治]
《神統》家系のはしくれとは言え産まれながらに《血の薄い娘》と蔑称で呼ばれる無力な少女と、その地人族の従兄弟と、偶然知り合った智水学派の青年とが、往来の絶えた大地のありようを憂えて長い長い旅に出た。大地をあまねく経巡り、各地の主たちを説得し、ついには大地の自由な往来を取り戻す。埋もれし古道は整備されて《白の街道》と名付けられ、初の貨幣と貢納(税)制度が定められて、界全体の交易が始まった。
[双統家]
《血の薄い娘》は成人し《女神の遠い孫》の美称を得て大地世界全体を束ねる《白王家》の開祖となり、交易の要衝たる大いなる《銀波青流》の《瀬分けの丘》の一帯の森を開いて《白の都》と定めた。
しかしここで自らの聖統を唱える《最も濃い家系》からの横やりが入った。《血の薄い娘》が大地再統一の功績をもって《神統主》の位に就くのは構わぬが、その後継づくりを考慮すれば、統主の伴侶は《最も濃い家系》の者が務めるべきだというのである。
女皇はこれを拒否して、従兄弟である地人族をみずからの夫とし、幾人かの後継者を産んだ。これにより、以後の諸皇の寿命はほとんど一般の地人と変わらぬまでに短いものとなった。
聖性を誇る《最も濃い家系》は彼らを《ただびと》と蔑み、これに臣従するを不服とし、自ら《聖帝家》を名乗り離反した。初代女皇の必死の懇請により戦は回避されたが、彼らは袂を分かち、《帝家》とその眷属は、再び移住と拡散の徒についた。
《白の皇都》の西方には、いにしえの暗洞界軍の魔厄によって永遠に緑の育たぬ《うつほの岩漠》が広がる。後代、それを西南に迂回して更に進んだ厳しい環境の中に、聖なる真力の強い者のみが入都を許される、《西の帝都》が築かれるに至った。
《東の白》と《西の聖》。
疎遠ながらも自由と和平を保つ双都の時代が終わりを告げるのは、はるか後の代に、《皇女戦記編》において語られる物語である。
[大分裂]
大地世界の最多の生命である地人族は、おおむね《銀波青流》の流れに沿って長い年月をかけ移住と拡散を繰り返した。拡散につれ集落相互の連絡も途絶えがちとなり、多くの場合、《本家》と呼ばれる《神統主》の他に、各集落の統治を司る《分統主》や、河筋や街道筋を束ねる《神統補》が選ばれた。やがて各地の様々な《神統》家を支持する者同士で派閥が分かれ、争いが多発し、魔族の残党もまたこれに便乗して跳梁跋扈し、各地方は孤立して、安全な往来が途絶える時代となった。
[再統治]
《神統》家系のはしくれとは言え産まれながらに《血の薄い娘》と蔑称で呼ばれる無力な少女と、その地人族の従兄弟と、偶然知り合った智水学派の青年とが、往来の絶えた大地のありようを憂えて長い長い旅に出た。大地をあまねく経巡り、各地の主たちを説得し、ついには大地の自由な往来を取り戻す。埋もれし古道は整備されて《白の街道》と名付けられ、初の貨幣と貢納(税)制度が定められて、界全体の交易が始まった。
[双統家]
《血の薄い娘》は成人し《女神の遠い孫》の美称を得て大地世界全体を束ねる《白王家》の開祖となり、交易の要衝たる大いなる《銀波青流》の《瀬分けの丘》の一帯の森を開いて《白の都》と定めた。
しかしここで自らの聖統を唱える《最も濃い家系》からの横やりが入った。《血の薄い娘》が大地再統一の功績をもって《神統主》の位に就くのは構わぬが、その後継づくりを考慮すれば、統主の伴侶は《最も濃い家系》の者が務めるべきだというのである。
女皇はこれを拒否して、従兄弟である地人族をみずからの夫とし、幾人かの後継者を産んだ。これにより、以後の諸皇の寿命はほとんど一般の地人と変わらぬまでに短いものとなった。
聖性を誇る《最も濃い家系》は彼らを《ただびと》と蔑み、これに臣従するを不服とし、自ら《聖帝家》を名乗り離反した。初代女皇の必死の懇請により戦は回避されたが、彼らは袂を分かち、《帝家》とその眷属は、再び移住と拡散の徒についた。
《白の皇都》の西方には、いにしえの暗洞界軍の魔厄によって永遠に緑の育たぬ《うつほの岩漠》が広がる。後代、それを西南に迂回して更に進んだ厳しい環境の中に、聖なる真力の強い者のみが入都を許される、《西の帝都》が築かれるに至った。
《東の白》と《西の聖》。
疎遠ながらも自由と和平を保つ双都の時代が終わりを告げるのは、はるか後の代に、《皇女戦記編》において語られる物語である。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 I
2006年4月10日 連載 コメント (2)神は無慈悲で浅慮であった。
[重さ]という名の罠をはり、
すべてのものを閉じこめた。
雑にまるめた泥団子の上に。
ひとつの大きな氷精が
[重さ]の罠に捉えられ、
泥団子に墜ちた衝撃で
砕け四散し滴となった。
罠の虜囚の全てのものが
水精たちを犯し喰らった。
さまざまな者に犯されて、
さまざまな子を水は産む。
無力な小さい水の子が、
[空の王]から犯された。
これがわれらの母である。
われらを産んだ母である。
[重さ]という名の罠をはり、
すべてのものを閉じこめた。
雑にまるめた泥団子の上に。
ひとつの大きな氷精が
[重さ]の罠に捉えられ、
泥団子に墜ちた衝撃で
砕け四散し滴となった。
罠の虜囚の全てのものが
水精たちを犯し喰らった。
さまざまな者に犯されて、
さまざまな子を水は産む。
無力な小さい水の子が、
[空の王]から犯された。
これがわれらの母である。
われらを産んだ母である。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 II
2006年4月13日 連載 コメント (1)《空の王》から犯されて
《水の娘》が生んだ子は
水気を吸うこと能わずに
ははのなかでは溺れ死ぬ。
母は困って必死になって
泥をこねあげ押し上げて
小さな小さな突起を作り
子たちを水より外に出す。
すると無慈悲な風が来て
子らは今にも乾涸らびる。
母は困って雲靄となって、
ひよわな子らに被さった。
それを見かけた《空の王》
あまりに惨めで見苦しい、
わが子と呼べぬと罵った。
嘲りムチ打ち踏み敷いた。
《水の娘》が生んだ子は
水気を吸うこと能わずに
ははのなかでは溺れ死ぬ。
母は困って必死になって
泥をこねあげ押し上げて
小さな小さな突起を作り
子たちを水より外に出す。
すると無慈悲な風が来て
子らは今にも乾涸らびる。
母は困って雲靄となって、
ひよわな子らに被さった。
それを見かけた《空の王》
あまりに惨めで見苦しい、
わが子と呼べぬと罵った。
嘲りムチ打ち踏み敷いた。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 III
2006年4月16日 連載 コメント (1)子らを庇って打擲されて、
泣き叫ぶ母をひきはがし、
マシな子種を仕込もうと、
父は無理矢理連れ去った。
母たる庇護をうしなって、
たちまち干上がる水の島。
母の残したなみだの沼に、
むらがり怯える水の子ら。
熱になぶられ風に曝され、
無力な命は外から消える。
飢えて乾いて塵に帰って、
狂って暴れて泣いても死。
きづいた時にはただ一人。
とり残されたるただ一人。
それが我らの始祖である。
我らの哀しい始祖である。
泣き叫ぶ母をひきはがし、
マシな子種を仕込もうと、
父は無理矢理連れ去った。
母たる庇護をうしなって、
たちまち干上がる水の島。
母の残したなみだの沼に、
むらがり怯える水の子ら。
熱になぶられ風に曝され、
無力な命は外から消える。
飢えて乾いて塵に帰って、
狂って暴れて泣いても死。
きづいた時にはただ一人。
とり残されたるただ一人。
それが我らの始祖である。
我らの哀しい始祖である。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 IV
2006年4月19日 連載 コメント (2)いちばん弱くて
いちばん小さい
いちばん守られ
いちばん真ん中
いちばん最後に
とりのこされて
いちばん寂しい
いちばん悲しい
うえておびえて
とりのこされて
ないてさけんで
あにあねをよぶ
するとこたえて
いちばん大きい
みはりにでた兄
まだ生きていた!!
いちばん小さい
いちばん守られ
いちばん真ん中
いちばん最後に
とりのこされて
いちばん寂しい
いちばん悲しい
うえておびえて
とりのこされて
ないてさけんで
あにあねをよぶ
するとこたえて
いちばん大きい
みはりにでた兄
まだ生きていた!!
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 V
2006年4月20日 連載あえて嬉しいと、
弟は心底思った。
その水を寄こせ!
と、兄は叫んだ。
《いちばん弱い》が守られていた、
《ははのなみだ》のさいごの沼の、
ちいさなからだのちいさなかげの、
さいごにのこったどろみずだまり。
それを寄こせ!!と兄は叫んだ。
狂った顔して、突進してきた。
奪られたら死ぬと弟は思った。
怖くてその後、覚えていない。
よろめくからだにつめのないうででくみついて、
さけぶあいてのはなをまだみじかいおでうって、
ひびわれたはだにきばのないくちでかみついて、
くちのなかにしみでたちのあじに歓喜し叫んだ。
「 お い し い 」 ……………… !!!!
弟は心底思った。
その水を寄こせ!
と、兄は叫んだ。
《いちばん弱い》が守られていた、
《ははのなみだ》のさいごの沼の、
ちいさなからだのちいさなかげの、
さいごにのこったどろみずだまり。
それを寄こせ!!と兄は叫んだ。
狂った顔して、突進してきた。
奪られたら死ぬと弟は思った。
怖くてその後、覚えていない。
よろめくからだにつめのないうででくみついて、
さけぶあいてのはなをまだみじかいおでうって、
ひびわれたはだにきばのないくちでかみついて、
くちのなかにしみでたちのあじに歓喜し叫んだ。
「 お い し い 」 ……………… !!!!
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 VI
2006年4月20日 連載そしてきづいたときにはただひとり。
そらは蒼くてくらくてがらんどうで。
すべてのものがにくくて悔しかった。
たべられたほうがましだったはずと。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
いちばんよわいはよろぼいあるいた。
ははのなみだにあたいもせぬおのれ。
あにのちのしみからさまよいはなれ。
てんなるちちよはやくきてころせと。
するととおくでひくくうめく声がする。
あにあねのむくろにうもれすすり泣く、
いちばんよわくていちばんあいされて、
かばわれむくろのかげにまもられた牝。
そらは蒼くてくらくてがらんどうで。
すべてのものがにくくて悔しかった。
たべられたほうがましだったはずと。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
いちばんよわいはよろぼいあるいた。
ははのなみだにあたいもせぬおのれ。
あにのちのしみからさまよいはなれ。
てんなるちちよはやくきてころせと。
するととおくでひくくうめく声がする。
あにあねのむくろにうもれすすり泣く、
いちばんよわくていちばんあいされて、
かばわれむくろのかげにまもられた牝。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 vII
2006年4月21日 連載いのなかみをすべてはきもどしてたべさせた。
いのちがけでおしてひいてさいごの母の涙へ。
おおいかぶさり天のにくい光の矢から守ろう。
このめすだけはじぶんよりはやくは死ぬなと。
めすはいのちをふきかえし、
ひびわれたこえで細く言う。
このかゆは姉者の味がする。
このみずは兄者の味がする。
やがてようよう母が戻った。
なぶるに飽いた父の元から、
はらんだ腹で逃げて戻った。
そしてみつけるわが子の姿。
月みちて水の初子の弟らも生まれ、
月みちて水の初子の子らも生まれた。
水の初子の雄はみずからを恥じて死に、
水の初子の雌も子らを遺して後を追う。
いのちがけでおしてひいてさいごの母の涙へ。
おおいかぶさり天のにくい光の矢から守ろう。
このめすだけはじぶんよりはやくは死ぬなと。
めすはいのちをふきかえし、
ひびわれたこえで細く言う。
このかゆは姉者の味がする。
このみずは兄者の味がする。
やがてようよう母が戻った。
なぶるに飽いた父の元から、
はらんだ腹で逃げて戻った。
そしてみつけるわが子の姿。
月みちて水の初子の弟らも生まれ、
月みちて水の初子の子らも生まれた。
水の初子の雄はみずからを恥じて死に、
水の初子の雌も子らを遺して後を追う。
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 VIII
2006年4月21日 連載 コメント (1)水の初子の弟妹は、
やはり水気は吸えねども、
父に良く似た傲慢で、
二足で歩いて広がった。
増えて広がりこれでは狭いと、
埋めよ増やせよ《水の島》。
ならねば母をも呪おうぞ。
憎むと脅して使役する。
水の初子の子どもらは、
いついつまでも悲しんで、
哀しみの泥をはい回り、
やがて母なる海へと還る。
母なる水はもう二度と、
天の子生まぬと決意する。
かなしみひしがれ重さのあまり、
死ぬることさえ奪われた。
これがわれらのはじまりである。
われらの呪いのはじまりである。
やはり水気は吸えねども、
父に良く似た傲慢で、
二足で歩いて広がった。
増えて広がりこれでは狭いと、
埋めよ増やせよ《水の島》。
ならねば母をも呪おうぞ。
憎むと脅して使役する。
水の初子の子どもらは、
いついつまでも悲しんで、
哀しみの泥をはい回り、
やがて母なる海へと還る。
母なる水はもう二度と、
天の子生まぬと決意する。
かなしみひしがれ重さのあまり、
死ぬることさえ奪われた。
これがわれらのはじまりである。
われらの呪いのはじまりである。
『水の大陸』 〜銀の道〜
2006年4月21日 連載 コメント (1) のちにアトル・アンタイス(水の大陸)初の女性騎士として伝説上の人物となる放浪の女剣士ユリィの、出生の謎と若き日の恋愛の物語。「剣と魔法と冒険」のレトロなファンタジーを装いつつ、実わタイムパラドックスものだったりするので、SF? (笑)
ユリィの残した「伝説」そのものは、長くて面倒臭いので、小説という形には書かないかもしれない。他の作品の中に劇中劇として描出するだけの可能性が大……。
ユリィの残した「伝説」そのものは、長くて面倒臭いので、小説という形には書かないかもしれない。他の作品の中に劇中劇として描出するだけの可能性が大……。
『水の大陸』 〜カリ・ン・シカの満月〜
2006年4月22日 連載 コメント (2) これもやはり大陸の伝承詩上に名を残す、剣の天才にして月女神の聖巫女でもあるハユン・オノ・アマラーサと、その幼馴染みで元許婚者でもあったアグニス・オノ・トゥードの、諸国放浪の物語。
すれちがいの恋愛模様ありーの、天下を乱す大陰謀の謎解きと悪人(悪神)討伐ありーのの、異世界(超古代)ものファンタジー風、じつは水戸黄門漫遊記、だと思って頂ければ、ぜんぜん間違いないかも……。(笑)。 (^◇^;)d""
すれちがいの恋愛模様ありーの、天下を乱す大陰謀の謎解きと悪人(悪神)討伐ありーのの、異世界(超古代)ものファンタジー風、じつは水戸黄門漫遊記、だと思って頂ければ、ぜんぜん間違いないかも……。(笑)。 (^◇^;)d""
『水の大陸』 〜滑崖落〜
2006年4月22日 連載 コメント (1) このタイトルはカツガイラク、と読んで下さい。
「ヤツィー族」の後日談でもある、とってもかなり、暗いお話……。(T-T)
しかも「腐女子」向け恋愛ネタでもあるのだ……。
投稿するなら、某誌限定?? (^◇^;)
「ヤツィー族」の後日談でもある、とってもかなり、暗いお話……。(T-T)
しかも「腐女子」向け恋愛ネタでもあるのだ……。
投稿するなら、某誌限定?? (^◇^;)
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