『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 V
2006年4月20日 連載あえて嬉しいと、
弟は心底思った。
その水を寄こせ!
と、兄は叫んだ。
《いちばん弱い》が守られていた、
《ははのなみだ》のさいごの沼の、
ちいさなからだのちいさなかげの、
さいごにのこったどろみずだまり。
それを寄こせ!!と兄は叫んだ。
狂った顔して、突進してきた。
奪られたら死ぬと弟は思った。
怖くてその後、覚えていない。
よろめくからだにつめのないうででくみついて、
さけぶあいてのはなをまだみじかいおでうって、
ひびわれたはだにきばのないくちでかみついて、
くちのなかにしみでたちのあじに歓喜し叫んだ。
「 お い し い 」 ……………… !!!!
弟は心底思った。
その水を寄こせ!
と、兄は叫んだ。
《いちばん弱い》が守られていた、
《ははのなみだ》のさいごの沼の、
ちいさなからだのちいさなかげの、
さいごにのこったどろみずだまり。
それを寄こせ!!と兄は叫んだ。
狂った顔して、突進してきた。
奪られたら死ぬと弟は思った。
怖くてその後、覚えていない。
よろめくからだにつめのないうででくみついて、
さけぶあいてのはなをまだみじかいおでうって、
ひびわれたはだにきばのないくちでかみついて、
くちのなかにしみでたちのあじに歓喜し叫んだ。
「 お い し い 」 ……………… !!!!
『水の大陸』 〜ヤツィー族の伝承歌〜 VI
2006年4月20日 連載そしてきづいたときにはただひとり。
そらは蒼くてくらくてがらんどうで。
すべてのものがにくくて悔しかった。
たべられたほうがましだったはずと。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
いちばんよわいはよろぼいあるいた。
ははのなみだにあたいもせぬおのれ。
あにのちのしみからさまよいはなれ。
てんなるちちよはやくきてころせと。
するととおくでひくくうめく声がする。
あにあねのむくろにうもれすすり泣く、
いちばんよわくていちばんあいされて、
かばわれむくろのかげにまもられた牝。
そらは蒼くてくらくてがらんどうで。
すべてのものがにくくて悔しかった。
たべられたほうがましだったはずと。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
はやくしにたい。
いちばんよわいはよろぼいあるいた。
ははのなみだにあたいもせぬおのれ。
あにのちのしみからさまよいはなれ。
てんなるちちよはやくきてころせと。
するととおくでひくくうめく声がする。
あにあねのむくろにうもれすすり泣く、
いちばんよわくていちばんあいされて、
かばわれむくろのかげにまもられた牝。