【地誌】
[山脈]
 はじめに世界は無辺無窮の大いなる平面として成された。平面は無毛の砂漠であった。女神と仲間たちの御幸に伴い、その足音や舞の音色の韻律につれ大地に起伏が成り、《智水神》が数々の泉を呼び出すに従い、あたりに緑が芽生えた。緑の命は広がり、木陰と草原とを形作った。その緑の命をはむ者らが産み出され、それらの巣穴や集落があちこちに形作られた。
 暗洞界の魔軍が攻め来たり、智水神が帰天して後、大地に泉の増えることは無かった。大地母神が大地の深奥で界果てまでの眠りについた後、その周辺の地は眠れる女神の放つ夢の気を受けて徐々に隆起をはじめ、長い年月の間に、その頂きが大気の稀薄な天上界に近付くほどになり、大地世界の中心をなす《大地の背骨山脈》と名付けられるに至った。

[水脈]
 《大地の背骨》の中心に位置する《智神の最初の泉》からは尽きることなく命の真清水が湧き、背骨の隆起に伴って取り残された盆地を満たして《太古の湖(うみ)》となった。ほどなく水位が限界まで上がり、やがて盆地の北東端の《界果て峠》の岩壁を打ち砕いて山脈を流れ下った。幾つもの峡谷と渓谷と深い淵や穏やかな岸辺を刻んで大地世界最長の大河《銀波青流》と呼ばれる。大河は北東に下り、山裾で北西に転じ、西南に蛇行して白の街道の半ばで大いなる瀬を分け、大地世界最大の水面(うみ)である《北方太湖》と、南に遠く離れて砂漠に流れ込み、地熱で干上がりかけた《南方塩湖》の、源流でもある。

[版図]
 《銀波青流》沿いの気候温暖な各平野と、《北方太湖》周辺の起伏の激しい森と草原地帯、《南の曲流河》沿いの高温多湿な湖沼地帯、そして西の半砂漠地方が、地人族の主な版図である。
 東方の広大な樹林地帯はもっぱら翅仙族と飛仙族、鳥人など《飛ぶ民》の居住空間であり、大地の背骨山中には、数多の獣人種族の領土とともに、ひそかに隠れ住む魔軍の裔の罠砦などがある。
 その他の、生身ある者にとっては過酷な環境の諸域には、今も女神の仲間の末裔や、幻獣、精霊などが疎らに回遊している。
 
 
 

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