いのなかみをすべてはきもどしてたべさせた。
いのちがけでおしてひいてさいごの母の涙へ。
おおいかぶさり天のにくい光の矢から守ろう。
このめすだけはじぶんよりはやくは死ぬなと。
 
めすはいのちをふきかえし、
ひびわれたこえで細く言う。
このかゆは姉者の味がする。
このみずは兄者の味がする。
 
 
 
 

やがてようよう母が戻った。
なぶるに飽いた父の元から、
はらんだ腹で逃げて戻った。
そしてみつけるわが子の姿。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

月みちて水の初子の弟らも生まれ、
月みちて水の初子の子らも生まれた。
水の初子の雄はみずからを恥じて死に、
水の初子の雌も子らを遺して後を追う。
 
 
 
 
 
 
水の初子の弟妹は、
やはり水気は吸えねども、
父に良く似た傲慢で、
二足で歩いて広がった。

増えて広がりこれでは狭いと、
埋めよ増やせよ《水の島》。
ならねば母をも呪おうぞ。
憎むと脅して使役する。
 
水の初子の子どもらは、
いついつまでも悲しんで、
哀しみの泥をはい回り、
やがて母なる海へと還る。
 
母なる水はもう二度と、
天の子生まぬと決意する。
かなしみひしがれ重さのあまり、
死ぬることさえ奪われた。
 
 
 
 
 
これがわれらのはじまりである。
われらの呪いのはじまりである。
 
 
 
 のちにアトル・アンタイス(水の大陸)初の女性騎士として伝説上の人物となる放浪の女剣士ユリィの、出生の謎と若き日の恋愛の物語。「剣と魔法と冒険」のレトロなファンタジーを装いつつ、実わタイムパラドックスものだったりするので、SF? (笑)
 
 ユリィの残した「伝説」そのものは、長くて面倒臭いので、小説という形には書かないかもしれない。他の作品の中に劇中劇として描出するだけの可能性が大……。
 

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