山合いをぬう一筋の清流を、囲むかたちで発達した盆地の、特産は木材に炭、草の実で染めた手織りの絹布。
 
 気性の荒い木挽きの野郎衆、情の細やかな桑摘みの女たち。
 戦乱の世も年貢の苦しみも、知らぬげに生き続けるこの小さな山国を、代々の在の者たちは "善き野(おおの)" と呼んだ。
 
 ……やがて、馬子の通った川沿いの山道にはじめての鉄路がはしり汽笛がひびき、いつかまたディーゼルへ、電車へと移ろいゆく足早な時節のなかを……
 
 たゆまずに伝えられる、この野にはひとつの心があった。
☆『大野大祭』コンセプト    善し祀(おおしまつり)


 開店のためのお金がいるので、賞金狙いのできる形にする。
 文学もしくは "仮想" 小説だが、できれば "若向けの読み物"にする。
 あっかるい♪面をおしだして、深刻(シリアス)ではあっても
 暗黒(ダーク)ではない話にする。
 >( seventh側やダークサイドは大祭異聞としてまとめる?)


<あらすじ>
 大野という片田舎のまちがあって、埋もれた観光資源としてSEVENTHグループに目をつけられるが、「ふつうの暮らし」をこわされるのを嫌ったみんなで撃退してしまう、という話。主役は大野という土地柄そのものである。


 こんな町がほんとうにあるんだよと言ったら大抵のひとはまさかと笑うだろう。
 いまどきの日本に、おとぎ話は似合わない。
 そうそう都合のいいことがあるわけはない……と。
 あるいは、
 「小説家になれますね」と
 誉めてくれてしまう人もいるかもしれない。
 だけどこれはぼくの両親と弟たちが住んでいる
 実在の場所で起こったことなのだ。
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 大野市立第二中学(いちりつにちゅう)の職員室の、一年担当の一角で、「またあの、いつもの連中が」と、苦笑まじりで言われる時は、二組の四人のことである。


 祭! …… 大野大祭始末記 …… 善野大祀(おおのおおまつり)
 
 
 
 「なにのどけたこといってんのよ里方は〜。
  山方はいま大変じゃない。
  一中とこなんか生物部でしめはりしよるって」
 
 
 
 この話を書いたのは、正確には、僕のいちばん下のおとうとの清なのだけれど、まあ誤字脱字のあらしの一人称手紙文を整理してワープロで打ったのは僕だし、弟には大学の同人誌サークル誌に中坊の作文が載るっていうのも妙な具合だし、弟にはあらかじめ話をつけて、夏休みのプール3回(昼食とアイスつき)という条件で著作権はぶんどってあるので……まあとりあえず僕のノルマ分としてページを埋めるのを許してほしいと思う。
 弟から毎日のように送ってくる手紙の内容の、本題にはいるまえに少しぼくら兄弟のことを説明しないといけない。
 ぼく、磯原広(いそはら・ひろし)を筆頭に、高、透、厚、と続いてしんがりが清という男ばっかりの五人で、母が異国から嫁いで来たひとなので、みんなそろって世間一般の日本人とはちょっと違った外見をしている。
 基本的には僕を見てくれればわかる通り、すこし浅黒くてホリが深め、目と髪がまっくろで天パーで……というパターンだ。うち、なかの弟の透には隔世遺伝が強くでて、どちらかというと白人めいた顔だちと肌の色だし、清のちぢれっ毛は黒に金かっ色がまざるという珍しいタイプだ。
 古今を問わず「まわりとちがう子供」というのはえてして仲間はずれというか、まあイジメの対象にされてしまいやすい訳で、僕らもごたぶんにもれない例だったが、幸か不幸か並よりはちょっといい頭と運動神経は母親ゆずりの負けん気と楽天性は兄弟共通で、五人兄弟中三人までは、多少腕っぷしが強くなりすぎたという以外、なんの問題もなく素直に(自分で書くのもなんだが)まっすぐフツーに育った。
 のこる五分の二のうちまんなかっ子の透に関しては、こいつには異母兄弟というハンディ「まわりの日本人とちがう」うえに、ぼくら兄弟の共通性とも逆の、むしろ白人系(コーカソイド)の外見をした、「血のつながらないもらいっ子」というハンデがつくもので、一見ひとなつこい性格見てくれのわりには、三回転半くらいのひねり技が性格にはいってしまった。こいつと高の話というのもぜひ書きたくてエピソードメモノートにネタはたまっているのだが、多少社会性に反する話かもしれないし、本人達もいやがるしするので、ちょっとメドはたっていない……
 話がそれた。
 問題の末っ子、清には、「混血の美少年」(いやホントにマジで)のうえに「病弱」というオマケがついた。誰が見ても「まぁ可愛いお嬢さんね」とのたまうほめちぎる顔立ちに、ずっと娘がほしくて男(ヤロー)ばかり五人も産んでしまったオフクロがつい手をかけすぎたのも悪かったのかも知れない。内べんけいの泣き虫で、負けん気は人一倍強いくせに争いごとてんでダメで、どんなに欲しかったもので大事なものをとられても、おとなしく泣かされて帰ってくる……という。僕ら、うえの四人が、これも妹とまちがえて、かばいすぎたのがよくない。


超古代文明(エルシャムリア)の月面遺跡、なんていうハタ迷惑なものがあって、こいつには時空移動装置がついている。過去も未来も、行けちゃう行かれるうえに、パラレルワールドなんてやっかいなものにも勝手に御招待してくれちゃうという、ひとの都合をてんから無視した母思考機械に牛耳られていて、すべての世界はこいつの外ではなくて、こいつの "内側" に存在しているらしい。

 
 
 
 最後になったけれども、作中で、S〜社の内部事情に関してだけは、別の情報源から僕が取材のマネゴトなどして聞きだしたことをもとに書いてある。
 もちろん、企業戦士の権謀術数、なんてものが しょせん学校生活しか知らない親のスネかじりにまともに再現できるはずはないんだし、ウソくさいとか、ホントはこんなじゃないとかいう批評は、わざわざ送ってくれなくても、いいからね。
 最後の最後になったけれども、推敲と取材を手伝ってくれ、わざわざスケッチ旅行に出かけてまでイラストを描いてくれた琴音まき子嬢に、感謝をこめて。
 
          緑慶……年(西暦20……年)……月……日
 
                磯原 広

 

 解説:
 えー、この本は、K大文芸サークル会誌「  」の 号〜 号にのった……。
 けっこうモテるわりには特定の女性に興味を示す風でもなく、周囲をやきもきさせていた氏は、ある日、超絶美人の新入生を部室にエスコートして来たかと思うと、こともあろうに「婚約者」といって皆に紹介したのである。(ばぁかやろ〜ぉ)
 大学のサークル誌とはいえ、こんなことばっか書いている氏は、いつか情警(※)にとっつかまるにちがいないとあたりをハラハラさせているのだが、実のところ小生も同意見なので……
 ……と言うと、エラそうに説教たれたうえに、先生おちついて
 「大丈夫。あいつの方が先に、とっつかまるから」

 ……あんな美女が情警なんぞにつかまって××されるなんて……

 なんでこんな時代に生まれたんだろうなぁと嘆きつつ。

            (※情警(じょうけー)=情報警備部)



Sugitani
Ezaki
Vivid
Evance, Sesil
Non-Queng-Hallu
Tais
Hi-quolity

 = 七福神財団 =



 ……大野大祭始末記……『祭!』

○ まえがき by 磯原 広
1.レイライン探検隊


 
☆ 大野を"理想郷"にするために必要不可欠なもの。

○ 多国籍人・混血児 …… 杉谷良、磯原家、他

○ 在日朝鮮人(II〜III世)
   → 李 順子(い・すんじゃ)はクラス委員、生物部長

○ 身障者 …… (障害児のための養護施設にマリセ夫人つとめる。
         ただし、国籍の点でパートの扱い。)

○ 身よりのないお年寄り

○ エコロジスト(本当の)

○ 疑問や信念をもってしまった中高生。

 …… こんな人たちが幸せでなければ
    大野はなりたたない。
 
 
桜の日 …… 転校初日は3日目
蛍の夕
祭の夜
雪の朝



ミーニエ・ブランチェスカ = 岳人 =?=
  ・マリセ・磯原 (B)| (AB) |
             |     |
    −−−−−−−−−−     |
    |  |  |  |     |
    広  高  厚  清     秀
    A  AB  B  AB     A
    21歳 18歳 14歳 11歳    17歳


 
 「それじゃ、お願いね!」
 洗いものを片づけた手ですばやく頭巾とエプロンをはずし、玄関のわきで姿見をあらためながら彼女は云った。
 五人もの子供を育てたとはとても思えない若々しい細身で、ながい指が器用に、腰まである金褐色の巻き毛をくるくると編み込みにしていく。
 ココアクリームの色の肌。……母は、異国の女性(ひと)だ。
 「all right。そっちも頑張って」
 自家製ライ麦パンを消化しながら手をふると、飛び出していく寸前に、くるりとふりむいた。
 「もちろんよ!」
 笑う。彼女は今日から出勤だ。子育ての終ったこの時期に、適職が見つかって嬉しくないはずがない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「さて、と……」
 いつも通り、きっちり清潔に片付けられた窓の広い台所をみまわし、おれは自分の皿をシンクの洗いおけに沈めた。
父はとうに出掛けたあとである。
問題が、あとひとり残っていた。

 
 
 
 

どこまで外国問題>現代日本のふつーの感覚に準じる。
「大野の特徴」入れるの?>(のどかで人なつこい地方都市)


○ 暮らしていくことの幸福の証明。


 
 ○ ママ・マリ出掛ける。
 ○ 台所
 ○ 引っ越し
 ○ 父はとうに出掛けた
 ○ あとひとり問題が

 ○ うちの兄弟全員がおれを含めて重度のマザコンなのは
   ママ・マリが本当にすごい女性なのだから仕方がない
   として、それにしても末っ子の清は……

 
 
   一、
 
 ひゅーると鳴きながらとんびが円をかく。
 寝転がって見る晩夏の天はいっそ眩しくて暗いほどだ。緑深い杉の斜面が鋭角的に空に切れこんでいる。
 「こーあらっ」
 呼ぶ声に子供は飛び起きた。
 「こあらじゃないやい!」
 ベランダ越しに叫びかえしてドダダと階段を駆け降りる。
 「幾時に帰るの」
 母が尋ねる頃には白いバッシュで門扉を開けている。
 「わかんなーい」
 けんけんで靴を直すのに、もたれかかる表札には磯原とある。
 末男 清(キヨシ)
 そう書いてあるのが、子供の名前。
 中学一年であるから、少年と言った方が正しいかも知れない。
 けれどクラスで一番のチビ。
 泣き虫で、喧嘩早くて、甘ったれ。
 誰かれ構わず背中に抱きつく癖があるのと、中近東との混血でココア色の肌をしている所為でか、よく似たオンブにダッコの動物の、渾名(あだな)を付けられた。
 本人は、男の子であるので、可愛い(かわいい)という世間の評価には抵抗している。
 もっとも両親はたいそう喜んだのだ。この大野市に越して来る前、末っ子は、同じ肌の色が原因で、学校でいじめに遭っていた……。
 「お待たっ」
 かつての登校拒否児が元気に家の角を曲がると、すっかり慣染みになったいつもの面子が待っている。
 出来良 了(できら・りょう)
 高橋 博文(たかはし・ひろふみ)
 七木 千 (しちき・せん)
 横河 雄治(よこかわ・ゆうじ)
 市立二中の一年三組、いつでも騒ぎの中心(もと)になるグループだ。
 「おう、行くぜ」
 親分らしく出来良が顎をしゃくる。身軽に歩きだすのは千(せん)が最初だ。
 「おまえ、帽子は?」
 顔をしかめてすぐ怒るのはクラス委員の高橋。
 「あ、忘れた」
 「おばさーん、コアラの帽子ー!!」
 生け垣から乗り出して雄治(ゆーじ)がどなるのは、新来の都会っ子がまた貧血になるのを心配してと言うよりは、単におばさんのファンなのだ。
 「先、行くぞー」
 じれて千が叫べば、肝心の清がとっとと駆け出して行く。
 「おまえなあっ」
 高橋は腕をふりまわして追いかけた。プロレスのしめ技のふたつも試しているうち、雄治が野球帽を持って学年一の俊足で合流する。
 夏休みは残り少ない。
 スパイ活動をするとなればなおさらだ。
 住宅街のはずれからは小川をはさんで裏山で、雑木林のなかを三十分も走りあがれば見事な杉の植栽された林業地帯になる。
 
 
 
 
 
 この話を書いたのは、正確には僕のいちばん下のおとうとの清なのだけれど、まあ誤字脱字のあらしの一人称手紙文を構成しなおしてワープロで打ったのは僕だし、大学のサークル誌に中坊の作文が載るのも妙な具合だし、弟にはあらかじめ話をつけて、夏休みのプール3回・昼食とアイス付き、という条件で著作権はぶんどってあるので、とりあえず僕のノルマ分としてページを埋めるのを許してほしいと思う。
 
 弟から毎日のように送ってくる日記がわりの手紙の内容の、本題にはいるまえに少しぼくら兄弟のことを説明しなくちゃいけない。
 
 広(ひろし)という名の僕をかしらに高(たかし)・透(とおる)・厚(あつし)と続いて、しんがりが清(きよし)という男ばっかりの五人。母は異国から嫁いできた女性(ひと)で、チョコレート色の濃い肌に、ほりの深い顔、大きな目、くるくるに渦まいている日に褪せた金褐色の髪。(彼女自身、ずいぶんいろんな血がまざっている)。ゆえに、僕たちは、みんなそろって世間一般の日本人とはちょっと違った外見をしている。

 古今を問わず、「まわりと違う子供」というのは、えてして仲間はずれというか、イジメの対象にされてしまいやすいわけで、僕らもごたぶんにもれない例だったけれど、幸か不幸か並よりはちょっといい頭と運動神経と、負けん気の強さは兄弟共通で、五人中、僕をふくめて三人までは、たしょう腕っぷしが強くなりすぎたという以外、なんの問題もなく素直に(自分で書くのもナンだが)、フツーに育った。
 
 (のこる五分の二のうち、まんなかっ子の透(とおる)に関しては、こいつには「まわりの日本人とちがう」うえに他の兄弟とも逆の、むしろ白人系の外見をした「血のつながらないもらいっ子」というハンデがつくもので、ひとなつこい見てくれのわりには、性格に三回転半くらいのひねり技がはいってしまった。こいつと高のハナシというのもぜひ書きたくてノートにネタはたまっているのだが、公表するのはまずいかしれないし、本人達もいやがるしするので、ちょっとメドはたっていない。……話が、それた。)
 
 問題の末っ子、清には、「混血(ハーフ)」の「美少年」(マジで)のうえに「病弱」という、絵に描きたいようなオマケがついた。
 ほんの赤ん坊のころから、誰がみても「まあ可愛らしいお嬢さんね」とほめちぎる、ぱっちりした目とくるくるの天パーあたま。客がくれば母親のスカートにかくれる人見知りの気性といい、なにかといえば熱を出して「かかりつけのお医者さま」の往診をお願いする体質といい……。
 ずっと女の子がほしくて息子ばかり五人も持ってしまった母さんが、ついつい一人娘を育てるように手をかけて、かけすぎてしまったのがまずかったか知れない。まして上に四人もけんかの達者な兄がゴロゴロしていれば、蝶よ花よとまではいかないものの、すっかり猫かわいがりのお座敷むすこになってしまう。
 三つ四つになる頃には、末っ子は、内べんけいの泣き虫で、負けん気は人一倍強いくせして争いごとはてんでダメ。どんなに大事なものを奪られても、おとなしく泣かされて帰ってくる……そこでまた、四人の兄きがぞろぞろ連れだって報復攻撃に出てしまう……という、今かんがえれば逆効果のうえに思いっきり卑怯(僕と末の弟とでは10歳も年がちがう)な、兄弟以外、近所に友だちの少ない、閉じこもりがちな子供に育ってしまった。
 そんな清が幼稚園で、ほかの女の子がいじめられてるのを助けようとして、かわりに十二月の薄氷の池のなかへ突き落とされた、というのは、むしろ上出来だとほめるべきだった。結果として半年ちかくも肺炎と喘息で入院してしまった、という点を除けば。
 
 僕ら兄弟の父親は、若い頃かなり高名なカメラマンで、そのおかげで外国で死にかけたときに病院で世話をしてくれた看護婦の母さんと恋におちて連れかえったのだけれど、とにかく当時の写真集の印税とかのおかげで結構財力もあり、上の四人はそろってバス通学の、小・中つづいたミッション系の私立に通った。だからこそ、混血といって、それほどの差別にも合わなかったし、まわりもみんな、そこそこに優秀で、余裕のある家庭の子供たちだから、引退した、もと報道家の息子ぐらいのことでは特別視もされない。
 とうぜん、何かと事情のある末息子もそこのお世話になろうというのが両親の計画ではあったのだけど、肝心の受験日に40度近い高熱で、池に落ちた幼稚園児は集中治療室にいたのだ。それにたぶん、退院しても片道30分の朝のバス通学は体力的に無理でしょうという医師の言葉もあって、清はひとり、歩いて10分の近所の小学校への入学手続きが決まった。
 ところで、入院したのが年の瀬で、何度も悪化したせいでいろいろ併発し、退院は梅雨あけどき、通学を許可されたのは七月もなかばになって、夏休みまでの数日間、ためしに、ということだった。
 ピッカピカの新一年生がランドセルもしょいなれて、すっかり仲よしのグループも固まり、プールだ花火だとはしゃいでいるところへ、「からだが弱くてみんなとは遊べない」という、ひとみしりの子供が、おずおずと数日まぎれこんでいたところで、しかも男の子というのに、ものすごくかわいい顔だちながら、肌の色濃い、ちがう外見をしているとなれば、遠まきにじろじろと見物されるのが関の山で、とうてい仲間になんか入れてもらえない。しかも、学校になじむ間もなく始まった夏休みのあいだじゅう、プールにも参加できずに家の敷地のなかだけで過した清が二学期の始業式に出た頃には、もの珍しさだけはすでに薄れてしまい、「ああ、そんな子もいたっけね」程度の扱いで…………。
 からだがほんとうに弱くて週に3日は休む、という末っ子が、それでも熱のない日には律気に時間割をそろえて静かに登校しているので、学校も違って内情のわからない僕たちは、せめて授業に遅れることはないように、と、せっせと交替で勉強をみてやった。これも、愛情から出た逆効果で、進学率の良さで知られる名門私立校の、しかも兄弟同士の暗黙の競争意識で学年での席次を10番と下らずせりあっているような兄貴たちは……自分の感覚でふつうの小学生を、「おちこぼれ」ないよう、教育したのである。
 清の持ちかえってくるテストはほとんど100点とか98点だった。たまに間違えて80点などあろうものなら、一生懸命みんなでなぐさめて、どこが解らないのかとことん調べてやって。(公立小の低学年のクラス平均なんて60とればいい方だ、なんて、僕らは気付かなかったのだ)。
 おもえば当時から、父は、片脚を失ってカメラを手離して以来、自分が私立中学の英語教師として勤めている……早い話がぼくの担任だった……こともあって、そこまでする必要はないんだと、何度も僕たちをいさめていたのだけれど。
 自分が高校受験の体勢にはいってカリカリしていた僕は、からだが弱いからといって成績まで悪くなったら可哀相じゃないか、と、ムキになて反論したことがあるのを覚えている。
 そんなわけで。
 あまり学校に来ず、いてもだれとも遊ばず、まちがっても昼休みのドッヂボールに参加したりはしないで、学級文庫のまえでおとなしく本を読んでいるか、あれいないなと気付くと保健室で寝ていたり、ガイコクジンの母親が迎えに来て帰ってしまったあとだったり……そうでなくても「ゼンソクにわるい」とかでホコリのたつお掃除の時間を免除されていて、みんなより早い時間に、いつも消えてしまう。
(だから、このクラスだけ、HRをしてから掃除になるのだ)。
 そのくせ、テストの成績はやたらによくてしょっちゅう先生にほめられ、授業中だけは兄貴たちのお仕込みよろしく積極的に手をあげて、しかもよくあてられる、とくれば…………。
 今となっては、僕は、清をいじめた子たちを責められないとは、思う。
 
 そう。学年があがり、からだのほうは段々と丈夫になるのに反比例して、清はいじめられっ子にされたのだ。それも、へたをして「発作」をおこしたら困る、という程度の知恵は小学校も3年、4年となってくるとまわるようになるから、殴る蹴るよりもっと陰湿な、「言葉の暴力」というやつでもって。
 「ガイジン」
 「ちゃいろ」
 「キタナイ」
 それが、いちばんよく使われた単語だと、あとで書かれたクラスの反省文集で、僕らは知った。
 僕らもしょっちゅう、言われた。言われるたびに殴りかえして、とっくみあいで相手を泣かして、とうとう誰も何も言わなくなるまで、喧嘩をしつづけたし、それは言ったほうが悪いとさとしてHRをひらいてくれる、先生たちのサポートの期待できる学校だった。そうでなくても僕ら、うえの四人は全員、頑として、絶対に譲らなかったと思うが。
 
 清は、ひとことも、だれにもなにも告げ口しなかったのだ。
 
 本当に、ことが発覚するまで、僕らは、両親も教師も含めて、ただ清を「甘えんぼうの、口数のすくない、内弁慶で、からだの弱い」としか、見ていなかったと思う。
 しょっちゅう、何ヶ月も何週間もの入院生活だとか、苦い薬や痛い注射や、今度こそ危ないかというほどの喘息の発作を繰り返しながら、けれど泣き言や、まわりを本気で困らせるようなワガママを、そういえば決して口にしない子だったと、ずいぶん遅くなってしまってから、はたっと気がついたのだ。
 
 「ビョーキがうつる」
 「死んじゃえ」
 「ズルやすみ」
 「サボリ魔」
 
 言われ続けて、なお一言も、いいかえそうとはしなかったという清が、体育の授業に、少しづつ参加していいと許可が出たのは五年の初夏だった。
 プールで泳ぐのは喘息にいい、というのは定説だそうだけど、プール開きになる前までの時間がみんなの一番嫌いなマラソンとか体力測定で、そのあいだはひとり教室で涼しげに自習をしていた清が、「楽しい」プールにだけ混ざり、しかも不必要なほど先生にかまわれて、ひとりじめしている、とあっては…………。
 夏休みの泊まりがけの臨海教室に、清は始めて参加した。出がけに気のすすまないふうにしているのを、発作が起こるのを心配しているのかと、僕らは励ましたのだったけれど……。
 その時、なにがあったのか詳しいことは知らない。清はけして言わないし、反省文集のなかでも、多くは書かれていない。朝になったら廊下で布団もなく泣き寝入りしていたと、担任が一日早く連れ帰ってきたときにはすでに高熱を発してフラフラで、そのまま夏休みの残りを、また病院で過ごした。
 二学期。自家中毒の症状がはじまり、幾度も吐いた。喘息はほとんどよくなっているのに、原因不明の熱が出たりして、学校を休む日が続いた。
 本当に病気のあいだは、一度も学校へ行けないのを苦にする様子を見せなかった清が、朝、母が欠席の電話をかける度に泣き笑いの顔をして、ひどく自分を責める風で、ふさぎこみ、落ち込み。
 
 ようやく、何かがおかしいと両親と担任が連絡をとりはじめた頃、
 
 
 

 
 大野は、行政上では加賀県の最南端にあたり、地形・交通の便からいえば、長野の北西端になる。
 市に昇格したのは割合さいきんだが、江戸期には小なりといえど歴とした独立したひとつの藩であり、大政奉還以来も、明治から緑慶の時代に至るまで、
  

 
 いつものように学校へ出かけたはずの清が2時間も路上でうずくまっていたと、近所のおばさんにつれられて帰ってきた。

 ぐしゃぐしゃに泣いたあとがあって、けれど理由は言わない。

 放課後、心配してとんできた担任と母にむかって「もう限界」という言葉で、おとなしくて感受性の強い小学校4年生は、自分の状態を説明したそうだ。

 「学校へ行きたいし、行かなくちゃいけないと思うけど、もうどうしても行かれない」と。
 
 そうして、からだはやっと丈夫になって、ようやく普通の子と同じ暮らしができるか……と思われていた清の、こんどは「登校拒否」との闘病生活が、はじまってしまったのだ。
 
 
 
(☆清クンの1歳半ぐらいと11歳くらいのイラストと、
  ユミちゃん(清のGF)12歳ぐらいのイラストと、
  好(ユミちゃんの兄で清の親友?)イラストも、
  シャーペン描きで、あるのですが、
  お見せできないのが……以下略w)


 狷介
 剣呑
 喧嘩
 嫌悪
 険悪

 好が動く理由。
 onlyユミ、キヨ、会田さん、あとエイミ。
 父親だとシチュエイションによっては動かない
 母親ならかなり無条件。
 ユミちゃんは好に守られてるのを知っているから
 無理なことはしないが、
 キヨくんは自覚がないので
 おかまいなし、
 会田さんは苦笑い。

 
(エンタテインメント小説部門)

題名・ ありえるたうん

筆名・ 土岐真扉(とき・まさと)

本名・ ************
住所・ ************
電話・ ************

学歴・ 横浜市立桜丘高等学校・卒(?)
(登校拒否で中退スレスレの出席日数でした★)

職業・ 流しのワープロ打ちこと人材派遣員。
あるいは怪しげな、タロット占い師。
またはたんなるプーとも、いう。

筆歴・ ネタと、書き損じの原稿なら山ほど

年齢・ 三〇歳(なにをやっているんだろう、このトシで……)

(ありえるたうん・梗概)(あらすじ)

一、 まちとの遭遇

 あるはずのない架空のまち・良野(おおの)。
 古代から語り継がれる白鳥天人(しらとりてんにん)の伝説に、
 明治時代の洋風文化がふしぎにマッチした、奇妙な町並み。
 山奥のくせに外来者(そとくもん)に開放的な、お祭気質のこのまちに、
 父親の仕事の都合で磯原兄弟は引っ越してきた。
 もといた横浜ではイジメにあって登校拒否
 だった末っ子の清(きよし)も、ひとなつこい良野者の
 友人たちに可愛がられて、いつのまにか中学校に馴染んでいった。

二、 十三さいの禁ようび

 このまちに伝わる色々なシキタリのなかに
 <御々十三斎>(ごみそみそぎ)というのがある。
 もっとも古い九家と、
 その血縁(ちながり)の八十一家(やそかみや)の
 子供たちは、九歳から始めて九ヶ月ごとの十三回、
 岩屋に篭もって良野の口伝を習うというやつだ。

 前回の〈斎〉(そぎ)の日に、相撲部の試合出場を
 優先してしまった出来良(できら)家の三男坊は、
 罰として一年遅れの衆(組)に落第(いそぎ)することになり、
 同い歳の従兄弟にバカにされてしまった。

 「〜こうなったら自力で秘密を探る!」と、
 叫んだ出来良の友人一同(含む磯原清)は、
 夏休み返上で謎解きに協力するハメになった。

 聖域をまもる注連護衆(しめごし)に掟破りがバレたら、
 大変なんだけど……。

三、 E.T.〜外から来たもの〜

 戦国期には隠れ里とも呼ばれた山深い良野に、
 開発という時代の波がよせてくる。
 良野を細切れにしようとする杉谷産業は、
 もとは八十一家の一員だった裏切り者が経営する企業だ。
 勝手に測量や基礎工事を進め、開発反対派の市民運動や、
 政治家や有力者をまきこんでの
 注連護衆(しめごし)たちの攻防が、水面下で続く。

 そんな中、杉谷産業の社長の息子であり、
 それを理由に〈斎〉から村八分(そぎのけ)にされている
 杉谷好一(すぎたに・こういち)は、
 やはり自力で〈良野間道〉(おおのはざまみち)伝承の
 謎を解くべく、マイペースで行動していた。

四、 はてしのない街道(Never Ending Street)

 結局、出来良たちのモクロミは、注連護衆(しめごし)からの
 厳重注意をくらって挫折した。
 ひとり、「俺は良野者(のもん)じゃないから、
 罰とか関係ないもんね〜」と探索を続けた清も、
 山中の洞窟までの急坂で、侵入者よけの 罠(トラップ)にハマり、
 体力がつきてダウン。

 気絶している清を偶然ひろって、仕方なく肩にかついだ
 杉谷が、良野の〈神座〉(かあざ)である〈はざま杜〉の
 洞窟で見つけたものは……。

 数万年の昔から地球に隣接している異世界
 〈誰夢明日〉(ダィレムアース)の首府へと続く、
 今は使われていない神代の通廊だった……。

 ……ただ、それだけの話です。
 
(2016.09.22.)
こちらの中味は下記へ移動しました。
(有料です。100円カンパよろしくです♪)
 ↓
http://p.booklog.jp/book/109537/read
リステラス星圏史略 古資料ファイル
5-2-1-1 『ありえる・たうん』

(2016.09.22.)
こちらの中味は下記へ移動しました。
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リステラス星圏史略 古資料ファイル
5-2-1-1 『ありえる・たうん』
(2016.09.22.)

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5-2-1-1 『ありえる・たうん』
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5-2-1-1 『ありえる・たうん』
(2016.09.22.)

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リステラス星圏史略 古資料ファイル
5-2-1-1 『ありえる・たうん』
(2016.09.22.)

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リステラス星圏史略 古資料ファイル
5-2-1-1 『ありえる・たうん』
(2016.09.22.)

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5-2-1-1 『ありえる・たうん』
☆ ありえる・たうん 付録一 ☆

『善野方言簡略辞典』

 (善野観光協会発行パンフレットより抜粋)

ああ   良い、正しい、本当。
     そう、はい。(返事)。

ある   来る。

あらす  いらっしゃる。

いす   聖、斎。=(みそぎ神事に携わる事・者)。

いそぎ(出削ぎ)・いすで(不斎)
     =みそぎに参加しない・できない事。転じて落第するの意。

いたこ、いらこ 出た子。不戻児。=「やそかみや」の生まれだが、
        善野の外で生活し、帰郷の意志がない者。

いる   出る。

いゆる  去る。

いらす  出てお行きになる。

うな   吾。=身分の高い女性の一人称。

うみゅぅく 海口。=善野盆地南辺にある日野代川流出口とその滝下の湖。

え    今。=今、現在。

ええ   長、永。=長い間、ずっと。

ええのしぃ 永生。=健康、無病息災の。

おお    真とか善とか美とかの総称。

おおしい  好い、美しい。愛らしい。

おおのしぃ 「善哉(よきかな)」。素晴らしい。
      =転じて、世話や頂き物にたいする謝辞。ありがとうの意。

おおまつぃ 善祭。=善野市最大の秋祭。感謝祭。

おきさぁ  翁様。=男性高齢者の尊称、または長老・代表者の意。

おなさぁ  媼様。=女性高齢者の尊称、または長老・代表者の意。

……が   ……だ、である。(語尾)

かぁさ、かぁざ  神様。神座。=高位の抽象的・象徴的な神。
         「神の領域」の意。(または白鳥天宮をさす)。

かみ    一、初、上、神。

かみご   長子、初子、神子。=長男・長女の意。
     (家を継ぎ、神事にたずさわる。)

かみごし  長子衆。=「やそかみや」各家の家長による寄り合い。
      善野の伝統的な自治組織。

かむさぁ  神様。=生活に関わる身近な神。

きみゆぅ  決みゆ。=決める、決断/判断/裁決する。

くぅ    冬。=(「食って寝る」の意か?)

くかみや  九上家。旧神家。=「やそかみや」を束ねる最も古い
      本家九姓、またはその家長による寄り合い。

このみや  九宮。旧宮。=くかみやに同じ。

ごみそみそぎ 御々十三斎。=「やそかみや」の子供たちの十三歳の成人式。

しぃ 儂。=自分、俺。(一人称。)

しめ 五、終、下、締め。=(転じて、下っぱ、二番目以下という意)。

しめご 五児。下子。末子。=次男・次女以下の子ども。または末っ子の意。

しめごし 警護衆、注連護持衆。=善野の伝統的な自警組織。
    (危険を伴うので戦国時代には長男・長女は除外した。
     現在は兄弟姉妹の順を問わず、
     未婚の若年層を主体に運営されている。)

すん 寸。=すぐ、じきに、一瞬。

そぎ 斎、潔、削。=修行または精進決斎すること。みそぎ。

そぎのけ 削ぎ除け、不潔。=「ごみそみそぎ」から除外すること、
        転じて「村八分」の意。

そとく、そとら 外来。=善野以外の出身者。

たぁ    誰。

たぁる   通る。

ちながる  血流、血縁、親戚。縁戚。子孫。

つぃ    次。継。=次の番、後継者。

〜で、でぃ  不、未、否。だめ。=〜しない。(否定の意。)

なぁ   諾。はい。=承諾、了解の意。

なわし 注連縄師、縄持ち。=「しめごし」の実働部隊、またはその要員。

のい   後。

はる   夏。=(晴天が続く季節)。

ひめごし 姫御衆、秘め護衆。=善野の伝統的な婦人のみの寄り合い。
     長である媼様は「しめごし」「かみごし」と長老と同等の
     発言権を持つ。

ふゆ 秋。=(蓄えが増える季節)。

まれんしゅ  稀衆。=遠くから来た珍しい客人。転じて外国人の意。

みやご  宮子、宮姫。美嬰児。=童女、幼女。女の赤ん坊。

みゆ、みゆる  見解る。=理解すること。

もえる  詣る。=神社に参拝する。

やぁし  やーい、おーい。(やれやれ)。

〜やぃ 〜だ。〜である。〜だった。(語尾)

やぅでる  破でる。=破る、壊す。破戒する。

やそかみや  八十一家。(異説には「耶蘇神家」)。
      =善野の先住民とされる旧家群の総称(現存するのは七十二姓)。
      その家長で構成される寄り合い。

〜やら   〜だろう。〜らしい。(語尾)

ゆぅる   去る。

ゆらす   お去りになる。

らす    来る。=「いらっしゃる」の略。転じて皮肉?の意趣。

わく    春。=(新芽や雪解け水が湧きだす季節)。
 
 
(2016.09.22.)

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リステラス星圏史略 古資料ファイル
5-2-1-2 『十三祭の禁ようデイ』

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