磯原岳人氏の夫人・マリセは異国から嫁いで来た人で、肌色の濃い砂漠の民の容貌をいちばんよく受け継いだ末の息子の清(キヨシ)は、そのせいで、いつかクラスのなかで除け者のいじめられっこになっていた。
 「どうして?」
 おかあさんが、よその国の人だったらいけないのか……と、新しい服をドロドロにされて泣きながら帰ってきた息子の問いを抱きとめて、母・マリセには、かけてやる言葉がなかった。
 かつては、国籍などまるきり無視した組織のなかで、看護婦として難民のために働いていた彼女だ。我が子を、自分の母国へ連れて帰ってやること、あるいは、世界のどこへでも連れて引っ越して行ってやることは、いつでも出来たけれど、だからこそ、幼ない子供を餓えさせず、病気に冒させもせず、安全に護り育てることのできる国がどれだけ少ないかも、よくよく承知していた。
 「あなた、お話があるのですけれど」
 ある晩、いつも帰りの遅い夫を出迎えて彼女は相談をもちかける。いまでは珍しくなったほど正確な、古風な日本語で。


 
    磯原岳人 = ミーニエ・ブランチェスカ・マリセ
  Aやぎ1/20  |  B水がめ2/14
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広     高     厚     清
A     B     B     AB
19か20   17     13     11
水がめ   カニ    牡牛    天びん
2/3     7/21    4/7    10/10

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