磯原 広 : 体力は、筋力・持久力ともにあるが、
 なぜか教習所に半年以上通ってまだ通らない……
 という反射神経をしている


6. 作家の卵 ・ 磯原 広、と、その婚約者、琴音一之瀬まき子嬢。

 関西の都市近郊の国立大学の教育学部児童心理科に在籍。高校2年の時に大検に合格、3年時はほとんど登校せず、自宅で登校拒否児の弟の家庭教師をつとめながら受験勉強をしていて、立派に国公立に受かり、奨学金までふんだくったんだから、かなり頭がよかろう。……性格は温厚な思索家タイプだが、視野が広すぎて、やや脈絡のない変人に見られることも。
 かなり浅黒い肌にふわふわぐるぐるの天パー頭だが、日本で暮らしていてもさして誰も不思議がらない外見である。教員資格と公務員資格を取得する予定で、障害や病気のある児童のための施設で働きながら小説が書けたら……というのが将来の展望。Aのてんびん。
 尊敬する人、灰谷健次郎。読書傾向は乱読の一語に尽きる。

 広が高校2年の折、関西で行なわれたSF・FTファンのための全国大会会場で、「未来のために緑をまもろう」というビラを一生懸命くばっていたのが、琴音まき子嬢。セミロングのおかっぱ頭に細い首、年齢よりかなり幼ない印象を与えるが、二浪して広と同学年になった(しかもそれを周囲に隠してへーぜんとしている)強者である。対人的な性格は勝ち気で過激で行動的、……が、猫かぶりも名人級の、射手座B型。北海道のナショナルトラスト運動のメンバーで、林野庁を目指すか、「さすらいのイラストレーターになって緑をまもる」。趣味はパソコン通信、マザーテレサのミーハーファン。
 

 「日本ほど数多くの人種と民族がなんのこだわりもなく融合されている国家は例がないと思うんだ……」
 広は言った。
 「街を行く人たちの人相骨格を観察してると判るんだけど、ありとあらゆる人種の顔があるだろう? メラネシア・ポリネシア・アボリジニー……漢民族の南方系、北方系。モンゴロイドと呼ばれて、騎馬民族系の血統を色濃く表わしているのが日本人の標準みたいに言われているけれど、決してそうじゃない。北の街へ行けばエミシ、エゾ、アイヌ系にゲンダーヌ……端的に言って、京都市街を歩く人の波と奈良、遠くは鹿児島や高知、松本、新潟や青森……写真を並べてみればはっきり見えてくるよ。ひとつの人種としてカッコでくくってしまうのは乱暴すぎる。みんな、お互いに、異なった先祖と文化をもつ少数民族同士なんだ。それが全部、日本列島弧という気候条件に適応した色彩の肌と頭髪をして……ほぼ単一の言語を使うよう、自然に統制されてきている。」
 「それ、今後の論文のネタ?」
 「まあね。」
 シャコンシャコンとカメラの連写ボタンを押して、自説の "証拠写真" を街ゆく人波から採集するのに余念がない。
 「標準語の普及……は、つい近年の皇国教育とNHKテレビの影響が大だからあっちへおくとして、もともと、異文化をさほど抵抗……



 「もともと相違をさほど気にせず適応できるっていう、原日本人の性格があったんじゃないか? そうでなきゃ、欧州のように群小の民族区が入り乱れて国家公用語の統一がきかないような状態になるだろう……? 受け入れて、互いのいい所を統合していくような……価値感の多様性というか……ヤマト朝廷その他の侵略による統一とおしつけがはじまる前、本当の原日本列島人には、そんな素質があったと思うんだ。」

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