『 (無題) 』 (@中学2年。)
2006年12月15日 連載(2周目・地球統一〜ESPA) コメント (1)平和暦43年4月1日
わたしたちはわたしの妻サエムのために
騒々しい集中管理都市(ドーム)を離れて
別荘で暮らしていた。
サエムは生まれつき体が弱い上に
長女サユリの出産で心臓をこわし
5年たっても回復の見込みがたたないままに
次の子供を産もうとしていた
彼女は知らなかったが
彼女には中絶手術に耐えるだけの
体力もなく
まして出産や心臓移植など
考えるだけムダだった
今思えば妊娠8ヶ月まで生きのびていたことすら
奇跡に近かったのだ
彼女は彼女自身も知らぬうちに
一歩一歩 着実に死へ向って歩いていたのだった
(擬音:キィッキィッ キィッキィッ キィッキィッ)
(揺り椅子に腰掛けた妊娠後期の女性の横顔、クローズアップ)
夫「なにをしているんだいサエム、薬の時間だ。
……サエム?」
妻「あ……」
(ピクッと動く右手の中に守り像)
夫「なんだ、またお祈りかい。
あまり根をつめるのはよくないぞ」
妻「だって、あなた
お料理もそうじも、本を読むのまで禁止でしょ。
他にやることがないんですもの……」
(守り像のアップ)
妻「心臓に負担をかけないためだってことは
よくわかっているのよ。
でも
(夫の持って来た薬を飲みながら)
妻「わたし
(ギクッとする夫)
夫「……サエム……」
妻「 ! いやね、あなた。そんな顔しないでよ。
だ・い・じょ・お・ぶ。
ちゃあんと産んでみせるから
せっかくあなたが承知してくれたんですもの、
堕ろさなくちゃいけないかと思っていたのに。
上が女の子だから今度は男の方がいい?」
夫「丈夫でありさえすれば、どっちだって可愛いものさ」
妻「……あなた?! どうかなさったの?」
夫「いや! なんでもないよ」
(慌てて首をふる夫)
妻「ごめんなさい。
わたしが病弱なばっかりに
心配ばかりかけるわね……」
(壁に埋め込まれた端末画面が、
ヴーンヴーンヴーンという音とともに自動で回線開く。)
(擬音: ヅヅー!)
(壁の端末と、夫の腰のベルトに装着した通信機と、
同時に同じ音声)
声「地球および各惑星の
星間統合政府全役員!!
緊急臨時総会を開きます
5時間以内に最寄りの
臨時総会会議場へ集合して
下さい!!」
夫「!」
声「くりかえします!!
星間統合政府役員は
全員5時間以内に……」
(擬音:カチッ)
(夫、腰の通信機を切る。)
夫「なにが起こったんだろう……
とにかく行ってくるよ」
妻「
夫「ん?」
(妻の父、幼女を抱いて、画面の隅より「スッ」と入室。)
父「呼び出し(コール)を聞いたかね、トキヤ君」
夫「あ、お義父(とう)さん。すぐにしたくします」
父「いったいなにごとだと思うかね」
夫「さぁ……」
(幼女、祖父の腕から「トン」と降りる。)
妻「あ……」(部屋から出て行く夫を呼び止めようとするが、
間に合わない)
(場面転換。家の外。外出できず、窓から見送る妻の遠景)
(孫娘を抱いて見送りに出る妻の母と、扉を開けたエアカー)
(上着を羽織りながら、先に乗り込む義父)
夫「
いい子にしてるんだぞ、サユリ」
娘「うん♪ いってらっしゃ〜い♪」
※ 無地の大学ノートにシャーペン描き
(下書きや絵コンテなしの一発書き!!)による、
未完のストーリーマンガより、ネームのみを抜粋 ※
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