◆●◆●◆
エスパッション号のコンピュータールームでは2人の少女が仕事を続けていた。そこへ2つのかげがあらわれ、またたくまにソレル女史とサキの姿になった。
「あら! おかえりなさいパトロン。おかえりサキ。クラース長官はなんていってましたか?」
「大丈夫、賛成してくれました。それよりあながたたの方はどうレイ? 有能な超能力者がどれくらいいるかしら?」
「ばっちりです。ケイの作った超能力反応装置はすごいんだから。ねぇケイ!」 ケイと呼ばれた少女はちょっとはずかしそうに笑って言った。
「今
「そう。じゃあジースト星と地球への発送準備は私たちがやるから、あなた方は記録を続けてちょうだい。サキ、手伝って」
「はい」
● ●
調査の結果、特に強力と思われる超能力者は、リスタルラーナ星にはシシリィ・カーク、ビスタ・バタケット、レニオン・シーザの3人。ジースト星にはトリーニ・ユウ、コーナ・フレークスの2人、地球にはマリーネ・ノザキと、エリザヴェッタ・アリス・ドン・レニエータの2人がいることが判明した。
「合計7人。これじゃ、あなた方全員にとびまわってもらわなくちゃなりませんね。」
「ふえ〜〜。パトロンひと休みしましょうよ」
「なにいってるんですか。サキ、あなたは地球へ行ってちょうだい。レイはジースト星へ、ケイはここに残ってね。調査期間は1週間。時間の余った人は休かにしていいわ。パスポートはクラース長官に頼んでおきます。」
「わお、行ってきまァす」
「サキったら!」レイがさけんだ「地球までいっきにテレポートしようなんて考えないでよ。あなたってば自信過じょうなんだから」
「あなた方にはワープ客船を使ってもらいます。出発は今日の20時30分、1週間後に折り返しでもどってくるからそれに乗ってね。」
「あらやだわ、あと30分しかないじゃない。サキも荷作り急いだ方がいいわよ」レイはそう言うと自分の個室へ飛びこんで行った。
「荷作り!? あたしそんなもの苦手ちゅうの苦手。ケイいっしょに見てくれる?」
間もなく3人はそれぞれの部屋
「ねえケイ。なんだってこんな大きな荷物になったの?」サキが言った
「ごめんなさい。だけど最低限必要なものだけよ。お金とパスポートとねまきとタオルと超能力者メモと薬を少しと着がえを6組と……」
「着がえが6組もいるもんですか、たかだか1週間! それに薬なんて!」
「やめなさいよサキ。ケイに荷作り頼んだのはだれでしたっけねえ?」
「お客さん。そろそろ宇宙空港に着きますよ」
サキとレイがワープ客船に乗りこんだのは発進10分前だった。
● ●
ベルト着用のランプが消えるとサキはあらためて窓の外を見た。
何度見ても見あきることのない光景だった。黒い空間とついいましがた後にしたリスタルラーナ星の緑の輝きがおどろくほど調和し、そのむこうにはリスタルラーナの太陽、デネブが青白い光を放っている。
サキは宇宙は6度めだったが思わず感嘆のため息をついた。
やがてリスタルラーナ星の光が消えかかるころ、ワープに入る。
距離は1500光年、時間にして数秒、再びベルト着用のランプがついた。
「これよりワープを行います。お客様はベルトをしめ、座席によりかかって下さい。
秒読み開始。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」
サキはエレベーターに乗ったようにすっと体が浮くのを感じた。
目の前がぼーっと暗くなり、どこかで女の子が「ママ!」と呼ぶのが聞こえた…………。
はっと気がつくと船内はざわめきを取り戻していた。
『困ったな。ワープするたびにこうぼんやりしていたんじゃ宇宙では手も足も出ない。なんとかしなくちゃ……』
その時、客席の片すみで、地球だ!の声があがった。
リスタルラーナの緑とはまた違った美しさを持つ蒼い地球は、すでにその姿を大きくのぞかせている。
地球人はもちろん、リスタルラーナ人もジースト人もそれを見つめた。中には、リスタルラーナと地球の美しさを競って口論を始めた者もいる。
宇宙船はバン・アレン帯を通過し大気けんに突入した。
窓は熱に強いジースト産の亜けい砂性クリスタルなので、
とざされはしなかったが、断熱性はないので船内の温度は少しずつ上り始めた。窓の外には紅の炎が流れている。気温は30℃をこえた。冷静で事務的なアナウンスが聞こえた。
「本船ではただ今、冷房をフルに活用してしております。もうしばらくのごしんぼうを願います。放射熱をさけたい方は右手の黒いボタンを押して下さい」
重力コントロール装置が発明されている現在では、ものすごい加速度も無重力もまったく気にする必要がなかった。そしてジーストの真夏よりははるかに楽な大気けん突破が終わると宇宙客船は水より数倍も比熱の大きい特しゅ冷きゃく用水の底にほてる体をしずめた。
数分後、サキは半年ぶりに地球の土を踏み、地球の空気をすいながら日本へ帰りたいと思った。南極であろうとサハラ砂漠であろうと、ここアメリカNASAの宇宙空港であろうと地球にはかわりなかった。なつかしい地球。しかし日本にはわが家と家族が待っていた。幼いころ近所の子とけんかするたびに、おまえは優れているのだとかばってくれた母。だれよりもサキに似て超能力の素質のある父。10才近くも離れていて、めったにけんかをしたこともない弟。
そう、仕事が先だ。
● ◆ ● ◆ ●
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第 一 部
第1章
記録はすでに山となりデスクの片すみに積まれていた。
それをながめて長官は深いため息をついた。
「長官、お呼びですか?」 自動ドアがすっと開くとソレル女史がそこに立っていた。
「これを読んでくれたまえ」
長官はつかれきった声で言った。
ソレル女史 は すべての悪事の記ろくである書るいをうさんくさそうにながめた。「今までの事件よりはるかに大規模ですね」
「とにかくすわりたまえ……今日、呼び出したのはパトロール隊の事なんだが。 君も知っての通りこの一年というものありとあらゆる事件が跡を絶たない。そこでだ、今度、銀河連盟では、宇宙パトロール隊を決成することになったのだ……。」
「知っています。」ソレル女史が静かに言った。「その案は私(わたくし)が出したのです。けれど長官、今、われわれの必要としているものはただのパトロール隊ではありません!」
「ただのパトロール隊ではない?」長官はいぶかしげにたずねた。
「そうです。超能力者のグループです。なぜなら1年間で事件がこんなに爆発的にふえたということは裏になにか組織めいたものがあると思ってよいでしょう。それはおそらく銀河連盟以外の未知の惑星あるいは組織だと思われます。彼らは……」
ソレル女史がことばを切ったとたんクラース長官はもう反撃を開始した。
「ちょっと待ちたまえ。その考えはちょっと飛やくしすぎだと思わんかね。確かにわが銀河系には生物の発生が十分考えられる惑星はいくつもある。しかしそれならばどうして彼らは今まで攻撃を加えてこなかったのだ? それに“彼ら”がわれわれと同じ、もしくはそれ以上の能力を持った生物だとすると年代的にぐう然すぎる。 それから君は超能力者と言ったが冷静であるべき科学者に似つかわしくない夢物語だ。地球の神話の類(たぐい)だろう。われわれは今それどころではないんだ。存在しないものに希望をかけることはできないのだよ」
「そうですか……?」 ソレル女史はいたずらっぽい笑みを浮かべて静かに言ったがその声のひびきにただならぬものがあるのを長官は感じた。
「うわっ!」次の瞬間、長官の体を持ちあげた力があった。
そのまま彼の姿は空中にとどまった。
「ど、どういうことなんだ!? おい! ソレル君!」
「長官がお信じにならなかった超能力の中の念動力(サイコキネシス)です。私(わたくし)の案に賛成していただけますね?」
「と、とにかくおろしてくれ。サイがどうしたって? ふう……」
「念動力(サイコキネシス)です。文字通り、念じただけで物体を動かす力です。長官がなっとくなさるまでいくらでもごらんに入れます。……サキ!」
空間の1点ににごりができたと思うとあっというまに人物像が表われた。見るとまだ20歳(はたち)前の髪の長い女性だ。
「私の護衛のサキ・ランです。」それはたしかにソレル女史の声だった。しかしその直後に聞こえた声はちがった。
『サキ・ランです。よろしく。長官はテレポートをご存じですか?』
「なんだって? いったいだれがしゃべっているんだ!?」
『私(わたし)です。心から心へ話しかける、つまりテレパシーです。これも超能力といわれるものの1種です。』
「じゃあ、君は、その……つまり……超能力者か?」
『そうです。私のほかにあと2人います。長官さえ承知して
「おねがいです。長官」
「ウム…………」 2人は息をのんで待った。
「よし、わかった。ソレル君、君にすべてをまかせよう。がんばってくれたまえ」
「はい……! ありがとうございます」 同時に2人の姿はかき消すように なくなった。長官はつぶやいた。
「テレポート……だな?」 そしてにが笑いをした。
◆●◆●◆
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序章
その日は夢と希望にあふれる24世紀最初の日だと
いうのに全世界をさわがしたのは『宇宙人』の三字
であった。
国連では各国代表が血そうをかえてどなり合い、
町からは市民がきえうせていた。宇宙人を見に出かけて行ったのだ。
宇宙人はリスタルラーナ(デネブ第7惑星)からの大使
だと名のり、そのつまも同行していた。
宇宙人たち(サーとケイトといった。)の声は美くしく、力強い
せっとくはしだいに地球人をひきこんで行った。
国連の議論はいままでになく白熱したがついに結論は
出た。地球にも宇宙時代がおとずれたのだ。
それから30年たったころ地球はリスタルラーナ星のえんじょ
のもとに科学力を発達させていた。そして第3の星、
リゲル第9惑星(彼らは自分たちの星をジースト星と呼んでいた)
といききすることにも成功し、ワープ航法を知った。
星間会議では、銀河連盟を作ることが決定されつつあった。
名前小辞典
アンドロ・メダ、イーダ、エル、エイ、エンゼル、オーリイ、オル、キッド、キャリイ、カリイ、カーク、キーク、ケート、ケイト、ケント、ケイ、ケリイ、コル、コール、コウ、キャシイ、サリイ、サー、サキ、シス、シシリィ、シーク、シーラ、シオル、シオラ、シエラ、ソウリィ、ソレル、ネリイ、ハリイ、ハル、ハーシイ、マリ、ミル、ミリイ、ミサ、ユケリ、ユリ、ララ、ラリイ、リー、リリイ、リン、ルル、レイ、ロウ、ロン、シャリイ、シャーリイ、シャル、リュシイ、レビイ、ギンガ・ケイ、ラン・キサ、ジュノー、ジュピター、アポロン、セラーノ、ディスカーナ、シェーダ、セーヌ、ローレンス、ソフィア、ナイル、ニース、ビクトリア、ポー、マリ、マリア、マリアナ、リア、リアナ、アナ、ミネア、ロッキー、ローマ、レナ、リース、ライン、ロビア、アトラス、アルジェ、アレキサンドリア、アン、アンデス、イベリア、ウィーン、ライナ、エーゲ、エリー、エル、カシミール、キャンベラ、ケープ、リディア、ディーノ、テレジア、ジェスタ
INDEX 目 次
名前小辞典 page 4
前著失敗作 page 5
「 」 page 19
第1部第1章 page 20
デネブまでの距離 約1500光年 色 白っぽい 温度 約10000℃
リゲルまでの距離 約 650光年 色 青白い 温度 約15000℃
ビーナス 金星
マルス 火星
マーキュリー 水星
アース、テラ 地球
ジュピター 木星
サターン 土星
Urannus 天王星
ネプチューン 海王星
プルートー 冥王星
セレナイト 羽のはえた月人
セルフコントロール 自己制御
COSMO Ship YAMATO 宇宙戦艦ヤマト
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『 超常能力者 (ESPER) 』 (@中学?年)
2006年12月16日 連載(2周目・地球統一〜ESPA) コメント (1)それは、異邦人、異端者、別種の生き物である事
わたしが愛しているもの達とは 決定的な隔りがあるという事。
人々には見えない 他人の心というものが
わたしには 見えるのだけれど
誰もが そんな事は有り得ないと言うし
わたしが視るものの正しさを
証明してくれる人もいないので
わたしは思ってしまう
I am a poor insane human.
ただ幻想の世界の中に
漂っている だけなのだと……
.
『 (無題) 』 (@中学2年。)
2006年12月15日 連載(2周目・地球統一〜ESPA) コメント (1)平和暦43年4月1日
わたしたちはわたしの妻サエムのために
騒々しい集中管理都市(ドーム)を離れて
別荘で暮らしていた。
サエムは生まれつき体が弱い上に
長女サユリの出産で心臓をこわし
5年たっても回復の見込みがたたないままに
次の子供を産もうとしていた
彼女は知らなかったが
彼女には中絶手術に耐えるだけの
体力もなく
まして出産や心臓移植など
考えるだけムダだった
今思えば妊娠8ヶ月まで生きのびていたことすら
奇跡に近かったのだ
彼女は彼女自身も知らぬうちに
一歩一歩 着実に死へ向って歩いていたのだった
(擬音:キィッキィッ キィッキィッ キィッキィッ)
(揺り椅子に腰掛けた妊娠後期の女性の横顔、クローズアップ)
夫「なにをしているんだいサエム、薬の時間だ。
……サエム?」
妻「あ……」
(ピクッと動く右手の中に守り像)
夫「なんだ、またお祈りかい。
あまり根をつめるのはよくないぞ」
妻「だって、あなた
お料理もそうじも、本を読むのまで禁止でしょ。
他にやることがないんですもの……」
(守り像のアップ)
妻「心臓に負担をかけないためだってことは
よくわかっているのよ。
でも
(夫の持って来た薬を飲みながら)
妻「わたし
(ギクッとする夫)
夫「……サエム……」
妻「 ! いやね、あなた。そんな顔しないでよ。
だ・い・じょ・お・ぶ。
ちゃあんと産んでみせるから
せっかくあなたが承知してくれたんですもの、
堕ろさなくちゃいけないかと思っていたのに。
上が女の子だから今度は男の方がいい?」
夫「丈夫でありさえすれば、どっちだって可愛いものさ」
妻「……あなた?! どうかなさったの?」
夫「いや! なんでもないよ」
(慌てて首をふる夫)
妻「ごめんなさい。
わたしが病弱なばっかりに
心配ばかりかけるわね……」
(壁に埋め込まれた端末画面が、
ヴーンヴーンヴーンという音とともに自動で回線開く。)
(擬音: ヅヅー!)
(壁の端末と、夫の腰のベルトに装着した通信機と、
同時に同じ音声)
声「地球および各惑星の
星間統合政府全役員!!
緊急臨時総会を開きます
5時間以内に最寄りの
臨時総会会議場へ集合して
下さい!!」
夫「!」
声「くりかえします!!
星間統合政府役員は
全員5時間以内に……」
(擬音:カチッ)
(夫、腰の通信機を切る。)
夫「なにが起こったんだろう……
とにかく行ってくるよ」
妻「
夫「ん?」
(妻の父、幼女を抱いて、画面の隅より「スッ」と入室。)
父「呼び出し(コール)を聞いたかね、トキヤ君」
夫「あ、お義父(とう)さん。すぐにしたくします」
父「いったいなにごとだと思うかね」
夫「さぁ……」
(幼女、祖父の腕から「トン」と降りる。)
妻「あ……」(部屋から出て行く夫を呼び止めようとするが、
間に合わない)
(場面転換。家の外。外出できず、窓から見送る妻の遠景)
(孫娘を抱いて見送りに出る妻の母と、扉を開けたエアカー)
(上着を羽織りながら、先に乗り込む義父)
夫「
いい子にしてるんだぞ、サユリ」
娘「うん♪ いってらっしゃ〜い♪」
※ 無地の大学ノートにシャーペン描き
(下書きや絵コンテなしの一発書き!!)による、
未完のストーリーマンガより、ネームのみを抜粋 ※
.
エスパッション関連年表
(混乱時代)
地球上にて大小国家が入り乱れ、乱世続く。
「最終戦争」の再発が危ぶまれる。
旧コロニスツ諸勢力による介入。
リーシェンソルト及びマリアン等による統一機運の失敗。
「迎夢者(げいむしゃ)」思想の浸透、
初期のゲーマーズ・アソーシアが結成される。
(リスタルラーナより極秘に調査船。
マリア博士夫妻、地球側キラー衛星の誤爆事故により落命。)
(地球統一暦)
1年 リースマリアルによる地球統一宣言。
連邦政府及び議会の樹立。
2年 第1回総選挙の実施。
各地で混乱、暴動・クーデターの鎮圧続く。
〜 旧コロニスツ勢力の連邦議会への復帰・加盟が続く。
迎夢者協会の勢力が伸展、敵対者より「第2政府」と評される。
(マリア=ソレル博士、調査船にて情報収集を再開)
9年 「草」系民族、連邦政府に反し独立維持の機運高まる。
「花」筆頭・蘭家の冴夢による説得。
10年 サエム・ラン、アークタス大使に降嫁。
「草」系過激派の暴動、花嫁略奪未遂。
11年
12年 地球統一連邦、「地球系開拓惑星連邦」と改称、
略称を「テラザニア」とする。
13年 連邦軍の解散と武装解除、
連邦調査局および警護局へと組織改編。
14年 地球連邦初代総裁リースマリアル急逝。
連邦瓦解の危機を臨時総選挙(全者投票)により回避。
第2代連邦総裁として異例の双頭体制。
リースマリアルの養児達が統一の象徴として就任。
15年
16年
17年 サユリ・ラン誕生。
斎姫ではないと発表され、「草」系民族が落胆。
18年 エリー誕生、旧レニエート公国(草系穏健派)にて立太子式典。
19年 「惑星開拓と移民による民族自治推進の法案」小差で可決。
20年 (ソレル女史の調査船、任務終了と見なし帰国。)
21年 (リスタルラーナ連盟議会にて、
対テラザニア開国要求の是非について激しい論争、
一時内紛の危機。)
22年 (ジースト星間帝国の二重惑星アンガヴァスにてレイ誕生)
(星暦)
0年(※統一暦23年)
リスタルラーナ大使船、地球連邦に初の正式来訪し、開国要求。
テラザニア、一時パニック状態になる。
混乱の中、サキ・ラン誕生。斎姫と発表され、
「草」系民族の精神的支柱(宗教的象徴)となる。
1年( 〃 24年)
リスタルラーナ&地球連邦、友好通商条約締結。
地球連邦では星暦に改元。
サエム・ラン退院、改元記念式典に出席し、テロ未遂。
2年 サエム・ランの危篤状態が続き、政界が混乱。
武装蜂起の危機あり、アークタス大使の説得により回避。
(この頃、レイ、ゼネッタ種であると発覚、
両親により反政府組織へ託される。)
3年 「草」系過激派によるサキ・ラン誘拐未遂。
一家でシゾカ市に移住、芸術学院に特別入学。
4年 リスタルラーナ大使ケティア、任務終了により帰国。
船中にてケイ出産、ソレル女史に養育を委託。
5年 サキ・ラン、舞踊部門で学童特別芸術賞を受賞。
6年 サエム・ラン病没。
葬儀席上にてサユリ・ラン、サキに暴行(殺人未遂)。
7年 サキ・ラン、無気力症による不登校。
一時入院の後、気波野草原にて「灰色の一族」として修養。
8年 リスタルラーナ交換留学制度、発表になる。
サキ・ラン帰郷し受験準備に入る。
9年 第1回交換留学資格試験が実施される。
サキ・ラン主席合格し話題をさらう。
アークタス大使の発案による未成年禁酒法案、
過半数により可決。
10年 サキ・ラン誘拐未遂。第1期交換留学生、出航。
レイ、帝国政府に対するテロ活動。脱出に失敗し漂流中、
ソレル女史に拾われ、リスタルラーナへ。
11年 地球交換留学生、リスタルラーナに到着。
ソレル女史、一時教鞭を取る。
12年 リスタルラーナ最高学府にて事故、生徒一名死亡。
サキ・ラン、ソレル女史の内弟子となりESP号へ。
サキとレイ、初対面。非常に仲が悪い。
13年 リスタルラーナによる対ジースト開国交渉の開始。
エリー、ESP号に合流、ソレル女史の秘書役。
レイ、貴族階級に仮装してキャンペーンに出演、
多大なファンを得る。テラザニアで青の染髪が流行。
14年 対ジースト全権大使としてソレル女史一行、星間帝国を訪問。
15年 サキ・ラン、潜入調査のためジーストの女学院に一時留学。
(ロストバージン&失恋)。
レイ帰郷、英雄としてゼネラ反政府戦線に復帰。
サキへの恋愛感情を自覚。
16年 ジースト&リスタルラーナ「不戦条約」の締結。
ゼネラ地下組織、穏健派と過激派に分裂。
ソレル女史一行、リスタルラーナに帰還。
ESP計画の発動準備を開始。連盟総裁のGOサイン。
リスタルラーナ首都市街にてESPの浮浪児を多数発見、保護。
テラザニアにて「指輪事件」発生。
17年 ESP計画発動。サキとレイ、地球圏の探査を開始。
指輪事件捜査陣に協力(?)。
地球統一40周年の式典を狙うテロが多発、
要人が多数死亡し、行政機能が一時麻痺・混乱状態。
迎夢者協会が一部の行政を自主的に代行。
エリー、調査補助の為の一時帰国中に要人として活躍。
18年 サキ・ラン、「双総裁」に請われてアソーシア・プログラム
の強化(再構築)に協力。
調査局と警護局が再統合し連邦警察となる。
指輪事件の一応の決着。
ソレル女史、ESP第1次調査結果を内々に発表。
19年 ジースト政府、テラザニアとの国交樹立を拒否、
不干渉条約のみ締結。
サキ、レイと共に気波野に一時帰郷。
ESP一行、リスタルラーナに帰還。
連邦警察のアリー警部、密輸組織と間違えてESP号を誤爆。
20年 リスタルラーナ特務機関とテラザニア警察による
合同捜査組織「リゼラセート」の発足。
サキ・ラン、特別捜査官として訓練を受ける。
レイ、ジーストに一時帰国。
21年 リレク(清峰 鋭 )、リゼラセートに入隊。
サキ・ランと一時コンビを組む。
22年 レイ帰国、リゼラセートに入隊、サキとコンビを組む。
リレク除隊し、ソレル女史の助手を務める。
23年 ソレル女史、テラザニア・リスタルラーナ航路の
時間短縮技術の開発に専念。
24年 テラザニア・リスタルラーナ直通航路(往復4日)開通。
ソレル女史、暗殺未遂。気波野で休暇。
25年 ESP計画、第2次調査の開始。
エリー暗殺未遂、レニエート公国の後継者問題を解決。
旧最高学府跡地に芸術府(学園都市)創立。
テラザニア・リスタルラーナ間の私費留学生が増加。
26年 ゼネラ反政府組織の内紛、レイ一時帰国、
「紫の瞳」支持を表明、敵対派との武力抗争が激化。
エリー、テラザニアの「花」系民族代表議員に就任、
2重生活を開始。
27年 地球統一半世紀記念式典。(※旧「地球統一暦」50年。)
サキ・ラン、旧領アルバトーレ星域に潜入し、
タイムスリップを経験。
ダレムアス王女マーライシャに遭う。レイに救出される。
(その後、気波野にて……★)
最高学府時代の学友達に再会。
ティリス、ESPの伝記作家として記録活動を開始。
28年 ソレル女史、暗殺未遂。
紫紺の闇の復讐事件で、ヘレナ・ストール落命。
29年 ESP計画第2次調査結果を内々に発表。
公表・法制化の時期を模索。
アルバトーレ星域へのESP校の建設計画が確定、
政治的調整に入る。
30年 芸術学園府内の自主組織オリスケアランが
歴史再現映像シリーズの制作を開始。
31年 サキ・ラン、芸術府に編入。
オリスケアランの時代考証スタッフとなる。
ティリス、娯楽作品としてのESPシリーズの連載を始める。
32年 ソレル女史の出資による「最終戦争伝説」シリーズ撮影開始。
レイ&リレクの撮影参加。
(リーツ・ミエア退学し、看護婦としてゼネラ紛争地へ。→外伝)
33年 「最終戦争」ブームになりシリーズ延長。
歴史学を選択する学生増える。
清&杉谷役の俳優が婚約。
同性愛の是非についてリスタルラーノが拒絶反応、論争起こる。
34年 リスタルラーナ考古学の復興ブーム。
リース博士の星船発掘作業にサキとリレクが一時合流。
タイムスリップしてユヴァの猿族に遭う(?)。
35年 テラザニア&リスタルラーナ同根説の流行。
前先史文明への探求の開始。
ESPシリーズ娯楽作品の映像化。
サキ・ラン、ステラの偽名で音楽活動を開始、人気急上昇。
36年 ESPシリーズ賛否両論。
内々に旧アルバトーレの自治権獲得、開校準備に着手。
エリー、議員を辞職。
37年 地球統一60周年記念式典にてESP法案公表、
テラザニア混乱状態。反「草」系による暴動の発生。
サキ・ラン、正体を明かし説得に当たるが、
「ステラ」のコンサート妨害される。歌による暴動鎮圧。
38年 ESP校創立。37年パニックの被害者の避難所と化す。
校内でESP先駆スタッフへの賛否両論。
ソレル女史、体調不良で倒れる。
エリー、初代事務総長として就任。
ジースト内でのゼネラ勢力による武装闘争が
テラザニア国境に飛び火。サキとレイ、停戦の陣頭指揮。
39年 ESP訓練が軌道に乗ると同時に
S級能力者の異端者視が始まる。
ソレル女史、病気療養を名目に引退。
40年 ティリス、記録文学としてのESPシリーズの執筆開始。
「最終戦争」前史の掘り起こし進む。
41年 サキ・ラン、淡い恋愛と相手の死。
前世記憶の萌芽による精神不安定。
ハヤミ・セイに再会、深探査船計画に参加を決意。
レイとリレクが追って同乗。
42年 深探査船出航。「邪魂樹」仮説の追求、高次文明と接触。
サキ、対者カイと再会。
43年 「邪魂樹」討伐戦においてサキ・ラン「死亡」。
レイとリレク行方不明(「死亡推定」)。
サユリ・ラン出産、アリサと命名。
ジースト・地球境界惑星にてアビス・クリア誕生。
44年 ソレル女史、出奔し以後の足跡不明。
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
♪ 初 夢 企 画 ♪
地 球 「 星 府 」 樹 立
の た め の 準 備 委 員 会 を
たちあげて、みちゃいませんか……??
もちろん「お遊び」ですが、本気で楽しみましょう♪
参画をご希望のかたには、お申し込み先着順で、
『地球星府《要員》認定番号』を、
発行いたします。
(登録数が1億“命”ぐらいになったら、
NYまで国連ビルを乗っ取りに行っちゃいましょ〜ねッ(笑)♪)
☆ 地球星府《要員》応募資格 ☆
(下記のいずれかの要件を満たす方に限られます)
1. 太陽系第3惑星「地球」の大気圏内にて
出生・発生・孵化・発芽・製造・複製、
またはそのほかの過程によって、存在を開始したもの。
2. 太陽系第3惑星「地球」の大気圏内に
現に在住・棲息・存在する、
または申告時点において通過中および滞在中のもの。
3. 太陽系第3惑星「地球」の大気圏内への移住を将来的に希望し、
申告時点においては調査検討中であるもの。
☆ 《認定番号》発行のためのお申し込み方法 ☆
1. まちがいなく本“命”であることを確認できる形象……
本人直筆署名(電子サインも可)、
または拇印、または前肢等を用いて押印した足形、
または枝葉・根節・ウロコ・鱗粉など構成体の一部、
またはその拓本)……と、
(※当該個体との関係を証明しがたい無機物……
印鑑・住民票・IDカード……などによる代用は不可。)
2. もっとも確実な連絡方法(一定の住所地名またはその
緯度経度座標、もしくは電子機器類の通信網における
宛先番号等あるいは移住・行商・旅行・放牧もしくは、
渡り・回遊等の予定通過ルート
およびそのおおよその季節・日時などなど)と、
3. 参画を希望する「委員会」名または「役職」名
(下記参照。複数可)を、
4. 紙片・布片または平滑な木板や、乾燥した樹葉等に明記して、
最寄りの記録代行業者(下記)に対して送付し、請求すること。
(本“命”の参画意志が確認できる場合にかぎり、
家族・血族・友人または
本“命”から依頼されたものによる代筆等でも可)。
(※この場合の「家族」とは、生活をともにしている同居関係の
異種族間、……猫:人間、犬:人間……等の関係を含む)。
☆ 地球星府樹立のための準備委員会 ☆ (略称“SAFE”)
(“Society Actting For Earth”)
……が、
☆ 今回募集する役職一覧 ☆
1. 「周知徹底委員会」の各分科会要員、およびその統括委員長。
(1) この文章をかってにコピーして沢山バラまいてやろう、
というかた。
この企画をインターネットや自分のミニコミなどで拡大
宣伝してやるぞ、というかた、大々的に募集させて頂きます。
(2) この文章にイラストやレタリングをつけて、
もっと美麗なものにしたり、
「星旗」や「星歌」やロゴマーク、マスコットキャラ等を、
かってにデザインしてやろう、というかた。
(3) この文章を地球上の全ての生物種族の各言語に通訳・翻訳して、
設立意義を広報宣伝してやろうという、“ドリトル先生”的な
才能をお持ちの皆様。
(もちろん「人間語しか出来ない!」というかたでも歓迎させて
頂きます。人類諸族の各地域言語への翻訳チラシを作成・配布
したりして下さい)。
2. 「《法案》起草委員会」の各分科会、およびその統括委員長
(1) 現在ある《地球星府憲章草案》を叩き台に、
「あるべき《惑星地球星府》の社会制度および法体系》」に
ついて、新論・珍論・激論・反論をブチあげて下さる、
できればド素人のかた、
または各問題についての具体的な条文や細則づくりに参加したい
ぞ、という、専門的知識のあるかた。
(2) 現存する各地域・民族の法制度等について、上記(1)との比較
検討を加え、研究成果を素人むけに広く解釈・講義して下さる
かた。
3. 初代「星府長」その他の重職に、
将来的に立候補される意志のあるかた、
または現在検討中のかた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
以上、じつわけっこう本気のネタだったりします……(笑)。
《地球星府》樹立宣言は、
2001年10月02日、
堂々布告!の予定だよん♪ (^_-)☆
at.2001.01.29 歌う大地♪
.
《 地 球 星 府 憲 章 》 草 案
1.「やりたい」やくそく
1の1 いのちあるものは みんな、 たのしく 生きて、
安心して 死にたい。
1の2 いのちあるものは みんな、 たっぷり 食べて、
ゆっくり 眠りたい。
1の3 いのちあるものは みんな、 自分で 選んだ 場所で、
自分で 選んだ 仲間と、 暮らしたい。
1の4 いのちあるものは みんな、 自分で 選んだ ことを したい。
1の5 地球で 生きる 私 は、 みんなの「やりたい」を 大事に したい。
2.「やらない」やくそく
2の1 いらない ときには、 殺さない。
2の2 いらない ときには、 傷つけない。
2の3 いらない ものまで、 ほしがらない。
2の4 やりたくないことは、 やらない。
2の5 なにが、「いる」もので
「いらない」もので、
「やりたい」ことで
「やりたくない」ことなのか、
……は、いのちあるもの みんなが、
それぞれ よく考えてから、 話しあい、
なるべく たくさんの 意見を きくまでは、
かってに 決めたり、 おしつけたり しない。
※ 人類の普通参政権(選挙・被選挙)の参画年齢を満10歳からと想定して起案しました。(at.1998.12.12. 文責・土岐真扉)
.
1.「やりたい」やくそく
1の1 いのちあるものは みんな、 たのしく 生きて、
安心して 死にたい。
1の2 いのちあるものは みんな、 たっぷり 食べて、
ゆっくり 眠りたい。
1の3 いのちあるものは みんな、 自分で 選んだ 場所で、
自分で 選んだ 仲間と、 暮らしたい。
1の4 いのちあるものは みんな、 自分で 選んだ ことを したい。
1の5 地球で 生きる 私 は、 みんなの「やりたい」を 大事に したい。
2.「やらない」やくそく
2の1 いらない ときには、 殺さない。
2の2 いらない ときには、 傷つけない。
2の3 いらない ものまで、 ほしがらない。
2の4 やりたくないことは、 やらない。
2の5 なにが、「いる」もので
「いらない」もので、
「やりたい」ことで
「やりたくない」ことなのか、
……は、いのちあるもの みんなが、
それぞれ よく考えてから、 話しあい、
なるべく たくさんの 意見を きくまでは、
かってに 決めたり、 おしつけたり しない。
※ 人類の普通参政権(選挙・被選挙)の参画年齢を満10歳からと想定して起案しました。(at.1998.12.12. 文責・土岐真扉)
.
連邦調整会議に参加し、発言と投票を行なう者は、
以下のことを誓約する。
☆星間連邦開拓惑星連邦総則 ☆
1.戦闘行為の禁止。
2.戦闘準備の放棄。
※ 2点の定義については連邦会議で定める。
3.通貨の統一。
4.通信(規格)の統一。
※ 2点の細則については連邦会議で定める。
5.通商の公正。
6.
『 (リースマリアル) 』 (@中学2年以降。)
2006年12月11日 連載(2周目・地球統一〜ESPA) コメント (1)地球統一を完成させた者・リースマリアル
あまりにも人間的で
たおやかで
もろくありすぎた
1人の王女の
成長の物語
リースマリアルは欠点の多い人間だった、
と、
どの伝記もその例を列挙する。
.
第二話 地 獄 (ヘル)
かつて地下核シェルター〈北米S(サウス)−127〉として建設された街市の末期における総人口は推定約三万。隔壁扉が封鎖されていらい千数百年を経て、最終戦争を生き残った人々の子孫である住人
たちからは単純に〈地獄〉(ヘル)と名付けられていた。
大旦那(プレジデント)と呼ばれる一代限りの独裁者と、隙あらばその座を狙う権力者、旦那衆たち(チーフパーソンズ)。
彼らに仕えることで比較的富裕な暮らしを保障されている知識階層の平民。
そしてその所有物となり辛い労働に耐えさえすれば、少なくとも働ける体のあいだは飢える心配だけはしなくてもすむ、奉公奴隷。
伏せた半球形をした地下都市の設計構造そのままに、厳然たる階級構造(ヒエラルキー)をなして住み分ける彼らの中でも、奴隷たちより更に低い・卑しい身分と蔑まれているのは、現時点で正規に使用されているうちでは最も下の階に広がる迷路のような貧民窟
(未完)
第一話 地 上 (アース)
こんなばかなことがと、くりかえし呟いた。
「義姉さんさえ、あんな考えにとりつかれたりしなければ、こんなことにはならなかったのよ」
若い叔母の途切れがちな声が戸棚のなかのディビニアの耳にとどく。
この騒ぎが始まるまえに母親からすごい力で暗いかたすみに押し込められたのだ。
飾り格子のすきまから見える部屋の中は壁も床も一面に赤い絵の具でベタベタになっていた。
(こんなに汚したら母さまが怒るのに)
なぜ母は彼らをきちんと叱りつけないだろう?
部屋のなかに倒れているたくさんの人間たちから絵の具は途切れることなく流れ出していた。
はじめてみるキツい深紅を、たしか絵の具とは呼ばないはずだと五歳の少女はぼんやり考える。
そうだ……これは「血」という名前だったっけ。
手や膝をすりむいたときにぽちっと滲みだすものとは違う。
ときどき母さまの下着に染みついている緋色より、もっともっとたくさんの、血。
(たくさん出るのはたくさん痛いんじゃなかったっけ?)
それに「死ぬ」とかいうこともあったりして、とっても大変らしいのだ。
(母さまは、どうして?)
こんな大騒ぎをきちんと片づけないだろう?
いつもはあんなにきれい好きで、ひまさえあれば掃除をしたり、花を飾って友達を呼んだりするのに。
格子のすきまからは母親のすがたは見えない。
さっきまではすすり泣くような苦しんでいるような、きいていて恐くなるような辛そうな声が、部屋の向こうから確かにきこえていたのに。
泣いているらしい母さまのところへとんでいって、助けてさしあげたかった。
子供のじぶんでは何もできないけれども、慰めてあげるだけでもいい。
けれど母さまが呼ぶまではけして戸棚の奥から出てはいけないと、どんなことがあっても悲鳴をあげたり泣いたりしてはいけないと、きっぱり念をおされた言いつけをディビニアはきちんと守って歯をくいしばっていたのだけれど。
「………………ディビー…………」
やっときこえたしゃがれた音は、やさしい母さまの声とは思えないほどだった。
「……ディビニア……。……どこ……?」
「母さまぁ!」
ほっとして、少女は大声で泣き出した。
もう何も不安はない。母さまが、ぜんぶ良くしてくださるはずだ。
ずっとしゃがみこんで自分の腕をきつく握っていたせいで、体が動かなかった。
でも大丈夫。待っていれば、母さまがすぐに抱き上げてくれるはずだから。
「……まだ生きていたの義姉さま」
ツケツケと痛い針のような叔母の声がきこえた。
「百年つづいたミニストラエ家もこれで終わりね、あなたのせいで」
父の亡いあと女当主となった母に、一族のみながきつくあたるのはいつものことだった。
「レーダ、わたしはまちがったことをしたとは思っていないわ」
細く震えながら、けれどいつものようにゆらぐことなく静かに反論するこえ。
母さまが自分のところに来てくれるのは、もうすこし後になりそうだ。
あきらめてディビーは小さな腕で重い戸棚を押しあけた。
「そのかっこうで。……この、惨状(ありさま)で?」
部屋のなかはほんとうに真っ赤でどろどろだった。
さっきまではディビーのお誕生会だったはずなのに。
戸口にもたれている叔母は、さむいのになぜか服を着けていなくて、びりびりに破れた布の残骸のあいだから、やっぱり赤黒い液をどくどくと流していた。
「だからこそ……、こんな非道なことをする彼らを、許しておいてはいけない」
反対がわで何とか起きあがろうともがいている彼女は、叔母よりもひどい顔色だった。
今日のために新調したばかりの淡い水色のドレスは直しようがないほどのズタズタ。
おなかに大きなケガがあって苦しそう。
尖ったナイフが突き刺さったままでいるせいだ。
「母さま! 痛いっ?」
「いい子ね、ディビー。……だいじょうぶ」
お風邪をひいた時よりも、ずっと蒼いかお、震える声だった。
「抜いてはダメよ……、出血が酷くなる」
「どちらにしてもアナタも私も、この傷ではもう救からないわ」
「そうね」
あっさりとうなずいて、少女の母親は残された気力だけで、弱ったからだを起こした。
「徹底している。これが彼らのやりかたよ。見せしめの為なら女も子供も見境なく、一番残酷な方法で殺す」
「……母さま……?」
「あなたにだけは、あやまらなければ」
こんなに小さいのに、たった一人にしてしまう。
つぶやいて、泣きながら彼女は娘を抱きしめた。
「生きて。お願い。生きて」
母さまのように非暴力への信仰をつらぬかなくてもいい。たとえ盗んでも、殺しても。お願いだから…… どうか、生きて。
「母さま。いやぁ、母さまっ」
さっきから嫌な臭いがしていた。
階下から煙があがってきている。
火事だ。
彼らが火をつけていったのだ。
「逃げて。生きのびて」
いつの日か、自分のちからで幸せに。
「ディヴィニア……、これからは人に名前をきかれたらデイヴァインだと答えなさい。ディヴァイン(神の恩寵)よ。これなら男の子の名前だからね……」
あなたにはまだ解らないだろうけど、できることなら外の世界では女だということを隠しなさい。
外は、地獄。
それでも。
「……いいえ……、たとえ神に背いても、売春婦に堕ちてもいいわ……。
生きて。」
あふれる涙をぬぐいもせず彼女は娘をバルコニーの階段へ向けて突きとばす。
「母さま!」
「言うことをお聞きなさいっ!」
「母さまぁ……っ」
煙にまかれて咳きこめば腹部からの出血がいっそう酷くなった。
義妹のレーダは苦しみ焼け死ぬよりはと、もはや自殺を選んだらしい。
主のおしえに背く行為だ。
わたしはどんなにくるしくても。
星ひとつない夜の荒野へ駆けていく娘を見送りながら、クリスタ・ミニストラエは最期のちからで立ち上がり、バルコニーの手すりにもたれかかった。
「たとえわたしがたおれても、誰かが次なる夢を迎える」
聖リース、救主(すくいて)と呼ばれるリースマリアルが撃たれて果てたときに遺した言葉を呟いてみる。
だいじょうぶ。あの子はかならず生きのびる。
「いとしいディビー……」
木製のバルコニーに火がまわり崩れ落ちるまでたいした時間はかからなかった。
「……母さま……ぁ……っ!」
わずか五歳で少女はすべてを失った。
のちに地球系開拓惑星連邦(テラザニア)の星間警察において史上最年少の女神(ミニマム・ディーヴァ)として活躍するディヴィニア・ミニストラエの、幼い日々のこれは物語である。
.
アンダーヘルへようこそ
土岐真扉(とき・まさと)
(あらすじ)
最終戦争の後、千年にあまる時代が流れた地球。地底深くに埋設されたシェルター都市で細々と生き残った人間たちは、自分たちの暮らす空間を「地獄(ヘル)」と呼んでいた。
その「地獄」でさえ生きることを許されず、人口の減少とともに使われなくなって久しい更に下層の「地獄の底(アンダーヘル)」へと、惨殺されて、あるいは生きながらに遺棄されていく、ストリートの浮浪児(こども)たち。
ある時、その群れに紛れこんだ白髪の少女ディーは、幼い頃には「地獄」の外、「大地(アース)」と呼ばれる広大な空間で、幸福に育った記憶を持っていた……。
実は地表では、既に生き残った人類による文明が復興し、惑星とその周辺に浮かぶ多数のコロニーまでが統一されて、地球統一連邦(テラザニア)と呼ばれる政府による新しい理想的な時代が始まっていたのだ。
それを知りながら、しかし閉じ込もって暮らしてきた長年の特権を失いたくないが為に、「天井の上(ヘヴン)はいまだ死の世界。出て行っても何も良い事はないぞ……」と、偽りの情報を市民に流し続ける「地獄」の支配者たち。
開国を勧めに訪れた使者を人質にとられて、連邦政府は今のところ手も足も出せない状態だった。
ディーの落ちてきた地核変動による亀裂を逆に辿り、「大地」の上へ、そして宇宙空間へと、生きて脱出を果たす子供たち。
……のちに地球系開拓惑星連邦(テラザニア)の星間警察において、〈最年少の女神=ミニマム・ディーヴァ〉と讃えられる事になる、少女の成長の物語……
一、アース
街の名門であるミニストラエ家の総領娘として、仲睦まじい夫妻である両親と、その双方の祖父母に伯父や叔母たち。すべての愛と期待に包まれて、その赤子は生まれた。
黒い豊かな髪に、明るい赤褐色(ティー・ブラウン)の瞳。艶のある焦げ茶色の肌が美しいディヴィニア・ミニストラエの将来に何か不幸が起こり得ようなどと、その誕生の瞬間には、誰ひとりとして想像することも出来ないに違いなかった。
炎上。
「姉さんが、あんな馬鹿な考えになんか、カブレさえしなければ!」
ヒステリックに叫び続ける女の声には、それ以上の注意を払わず、マデリーヌは、もはやただ一人で遺して去かざるを得ない最愛の娘のもとへと、必死の想いで床を這い渡った。
血痕がながく尾をひく。
「いいこと、ディヴィニア。お外へ出たら、他人に女の子(ガール)だとバレてはダメよ。……これからは、知らない人から名前を訊ねられたら、〈神の御寵(ディヴァイン)〉と名乗りなさいね。それなら、男の子の名前だからね……」
「母さんを許して。どうか、あなただけは生き延びて幸福になってちょうだい……決してガールだと知られてはダメよ!」
その言葉だけを最後に、背中を押されてディヴィニアは燃え落ちようとする家のドアから強く放り出された。
わずか五歳で、少女はすべてを失った。
二、ヘル
その子供は、
そしてとうとうある日、子供はオヤ達の手によって、穴から落とされた。
「どっちが大きい? じゃあ五歳だ」
「……《ゴー・アウェイ》(あっちへ行ってろ)!!」
やがて子供はポツリと呟いた。
サールは一瞬ひるんだ顔をしたが、辛抱強く重ねて尋ねた。
「それは名前じゃないだろう?」
しかし子供は今にも泣き出しそうだった。何と言われても、「オヤ」たちからそれ以外の言葉をかけられた覚えなど、彼には無かったのだ。
「……《ゴー・アウェイ》(あっちへ行ってろ!〉……」
「レッド、何か良い名前はないか?」
困り果てたサールは参謀格の子供に視線をまわした。
少年はしばらく考えていたが、やがて重い口を開いて、
「……《ゴー・ファー》(大物になれ)……」
サールはニヤっと唇のはしを吊り上げて賛成すると、これからは、それがおまえの名前だと、子供に告げた。
三、アンダーヘル
ある日、そのゴーファーが新しく落ちてきた人間を見つけたと言って来た。
報告を聞いたサールは眉をひそめて、
「さいきん多いな。しまいには〈エサ〉が足りなくなるぞ」
何とはなしにいつも首領の周りに群がっている子供たちはそれを聞いて不安げに互いを見回したが、レッドは肩をすくめると、こともなげに上着を脱ぎ捨てて、
「生きてりゃ使えるし、腐ってなきゃ喰えるだろ」
そう言って〈海〉に飛び込んで行った。
拾い上げたのは奇妙な真っ白い髪をしたボロクズのような姿の子供だった。かすかだが、まだ息があった。落とされる前にすでに気を失っていたらしい。水を呑んだ訳でも溺れたわけでもなく、しばらく放っておいたら勝手に目を覚ました。
骸骨のように痩せ衰えた顔のなかで、紅みの強い茶色の瞳ばかりが、ギラギラと熱病めいた強い光を放っていた。
「おまえ、コトバはしゃべれるか?」
「……あ?」
質問の意味のほうが解らないという意味に、きっちりしかめられた表情を見て、レッドは安堵した。
このところ手を焼かされていた金髪の赤ん坊をゴーファーからもぎとって、新入りの腕に押しつける。
「このチビにコトバを教えてやれ。それが、ここでのオマエの仕事だ」
「仕事……? なに?」
「その代わり、オレがオマエに泳ぎを教える。自分でエサが取れるようになるまでは毎日、みんなが一口ずつ自分のエサを分ける。
……それがここでの掟(ルール)だ。いいな?」
四、ウォーター(沼地(マーシュ)または海(シー))
数日たって〈窯のフタ〉から何かが落ちて来た。サールだった。
すでに人間とは呼べない形に壊されていたそれが、潮に連れられて姿を消すまでも、消してからしばらくも、誰も〈沼〉には入ろうとしなかった。
飢えた腹を抱えたまま、放っておけばいつまででもベソをかき続けそうなチビどもを力づくで水の中に放り込んで、
「自分でエサをとれ!」
と、叱るレドウィンの姿を見ながら、ディーは一つの決意を固めたのだった。
「……あんた達の女神に会わせてよ!」
五、スカイ
ヘル組とアンダーヘル組とを含めて百数十名にのぼる保護者のない子供達は、それぞれの都市から名乗り出たボランティアの里親たちや、公共の養育機関へと、分散させられて引き取られる事になった。
「オレ、ぜったい頑張って文字も覚えて、手紙って言うのも書くから。オレを忘れないで……。オレの男になってっ!」
「……悪いが俺は変態(ほも)になる趣味はない」
「なんだとーっ! オレ様は女だーっっ!!」
六、ヘヴン
野蛮な育ちのおかげで培われた、平和な社会で育った連中の水準をラクに上回る、反射神経と、必死のガリ勉の甲斐あって、望みどおり星間警察の刑事となった。
多忙な職務の隙を見つけては通い続けた男のもと。
「給料の大半と愛のすべては男(レディ)に捧げているもんねっ!」
「レディは止めろ、レディは!」
「だって他のやつらと同じ呼び名じゃ悔しいじゃんかっ」
と断言して周囲に砂を吐かせまくる。
「ボーナス出たからな。……おまえ、指輪はしないと言ってただろう。薬指のやつの代わりにしとけ」
「……それって……それって……」
「オレ、嬉しいよ〜っ!」
と、恥も外聞もなく大泣きされて道の真ん中で往生したレドウィンの顔が、それはそれは見物だったと、ぐうぜん目撃したゴーファーは語る。
そのうちアンダーヘル出身者で横の連絡をとって、世間で言う「同窓会」のようなものでも開きたいねと互いに話しあっている。
それでも時折、アンダーヘルこそが本当の意味での楽園(ヘヴン)だったのだと、ふと懐かしく、彼らは想い起こすのだ。
劇 終
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「シュウ」という彼の名前には「愁いの雨(ブルーレイン)」という意味の文字をあてると聞いた。正確な発音は「シュウ・ウ」だ。シャレててイイと思うんだが、本人はこの名前を嫌う。アル中だった日系の母親が産辱で息を引きとる寸前、最後に呟いた言葉から付けられたってんだから、由来を聞けばまあ無理もない。もとより父親が誰かなんぞ娼婦の息子に知るすべはない。結局、彼はMドームの施設で十四歳まで育った。
牧 愁雨(まき・しゅうう)
アダン・マックギルベリー
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牧 愁雨(まき・しゅうう)
アダン・マックギルベリー
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2.十数年後。隠雀族出身の戦奴として飼われている戦士ベルガ。
かつての砦城地には今、皇帝の広壮な“総督行政府”が構築され、一応の完成と更なる拡張を祝って今日は盛大な祝典の張られる日である。ベルガも常の獄舎から連れ出されて、総督府の前庭で、かつて隠雀の男達の腕前を誇りあう儀式であった“バッファローならし”を、久方振りに実演させられる手筈だった。
その事を聞きつけたすばる、「食わしておくれ」と云ってどこからともなく現れ、後宮の下働きとして生活しているまだ幼い少女だった。周囲の下女たちも殆どが穏雀族である。そろって同族の拳闘士に声援を送りながら、時折り夜の酒宴にそなえて美女狩りにやって来る下級捕吏司たちの目をさけ、応援と非難とに使いわけるしきたりの、真ン中で赤と黒に染めわけられたヒモを数本集めてその場を抜け出す、すばる。『貧民・隠雀族 立ち入り禁止 』の場所をかいくぐってベルガの姿を捜す。
いない。
やっと場末の小さなオリに他の隠雀たちとつながれているのを見つけ、「ベルガさまは今日のバッファローならしにお出になりますか。もしそうなら、わたしを助手にして下さい!」「勝算はあるのか」「はい。」それで全ては通ずる。全国に散らばった隠雀とそのシンパを集めて反乱を起こすとすれば、その首謀者たりうるのは今ではベルガしかいないのだ。(その割には粗末な扱い。)
けれどそんな2人の会話から意図を察した番兵が1人いた。彼は外見(怪我の跡か何かを赤い毛糸帽で隠している)から性的なコンプレックスに陥っており、孤独で、思想的に仲間とも上手くやっていけていない。
ベルガの出番を待ってブラブラし始めた美少女・すばるに、「寝てくれとはいわない。一緒に風呂に入って、体を洗わせてくれるだけでいいんだ。」 引きかえにベルガ逃亡の協力を申し出る。
「だってあなたを信じていいの?」 問い返す、すばる。
信じ、そして、「少し待っていて。」
中央広場へ向かって駆け戻って行くすばる。途中で“皇帝”の御車が着く。ひれふしながらも、じっと見守り。だが祭りもたけなわになる筈が、誰か重要人物の死、仮葬儀ということで、見物人たちは急遽、もがり場へ参列せねばならない事になる。事態の変化。
様子を見定めた すばる は、作戦変更をつぶやいて再び後宮下女だまりへ。古着と例のヒモを編んでロープにしたものをいくばくか、集めて、ベルガのもとへ戻る。
出入りの人気の無くなった今では、ベルガを人知れず連れ出す事は不可能だった。しかし番兵の多くも仮葬に狩り出されて行ったので、例の青年ともう1人の他は誰もいない。青年はすばるの姿を見つけるなり、もう1人を殴り殺してしまった。
安全な処理法を知っていると云って下水溝へ流す青年。小雨がふりはじめる。すばる、「この人にも親兄弟がいるわ。」 めいふくを祈る。
ひとまず青年の宿舎(もしくは兵員専用のセルフサービスの淫売宿)に身を隠したベルガとすばる、青年。すばるは例のヒモになにごとか書き記し、こよりにして、他の数本と共に何か複雑な形の編目に編みあげる。
青年が外へ見回りに行っている間に
「側門から1〜2kmのところに小さな街があるわ。その街の、ここよ、“がるもん”という店の裏口から入って、『すばるの洗濯物を届けに来た』と云って頂戴。後はそのバーテンが全て望みをかなえてくれるわ。」
ベルガは娘の予想外の能力に驚きながら、「おまえはどうするのだ。」
「いっしょに行っちゃったらあの人との約束が果たせないでしょ。かといって待っててもらったらあなたが逃げそこねてしまうかもしれない。」
「なぜそうまでして、おれを逃がしてくれる? おまえは隠雀ではあるまい。」
「隠雀よ。少なくとも心はそうだし。本当にそうなる筈だったわ。本当は、わたし、あなたの娘として生まれるのだったかもしれないの。」
驚きながらもベルガは去って行く。
青年、全裸でいるすばるを見て、「本気にしなくてもいい。」
すばる、「何故? 約束は約束だわ。」
おずおずと、すばるを愛しながら、自分も“彼ら”の仲間に加わりたいが、1兵卒とはいえ皇帝の兵ではスパイと思われるのがオチだろうという青年。すばるは青年の手に入れて来た上物の服に手を通しながら、「“仲間”にしてあげる。」
詰所に行って名乗る名は、
昴(すばる)・白礼亜・跡見来流(アトミラル)……。
.
1.時代不詳。かの大地震以来『大東京荒野』と化した地での物語。
初め荒野には“隠雀(インジャン)”と呼ばれる赤銅色に日焼けした男たちが砦城を築いて原始共産制めいた暮らし向きで住みついていたが、ある日“捕吏司(ポリス)”の1団がその地を占有するためにやって来て、戦いになる。(捕吏司は白面赤髪)。古典的武器ながらも人数と戦意でまさる隠雀側の勝ちかと見えるが、2度目の攻撃に物量作戦を敷いた捕吏司国に敗退する。戦士の大半を捕え、丸腰にむいたまま占拠した砦に凱旋して来る捕吏司たち。
ちょうどその頃、風の吹くままという感じでふらりと砦城に現われたなり、居ついて隠雀たちと生活を共にしていた、小柄な黄色の女性がいた。彼女はやがて若き勇士ベルガを恋するようになるが、そんな平和な日々に捕吏司による破局がおとずれる。
「武器はなくても戦える。」
奇しくも、丸腰のまま連行されるベルガと、日本人なのに、かどわかされてここにいたと訴えて救いを求めると見せかけ、捕吏司側の総大将を刺殺した彼女とが、仲間たちに向けて呼びかけた言葉は同じだった。
勢いを盛り返すかに見えた隠雀たち。だが捕吏司を追い払い、疲れ切った彼らの所へ、新たに攻め寄せて来たのは“皇帝”の兵だった。
あっさり全滅させられる戦士たち。生き残った者たちをも『劣等人種』として量殺されようとして、“皇帝”に身を投げ出した彼女。
そうしてそこから隠雀たちの長い歴史が始まるのだ……。
.
『 (無題) 』 (@高校かな?)
2006年12月5日 連載(2周目・地球統一〜ESPA)年寄りたちがいうのには、世界は、ほろびたんだそうな。
してみるとここにいるオレたちは、なんだろう。
ユーレイかな?
いや、幽霊ならほかにいる。化けものも、死肉喰らいもいる。
草原にいないものといったら、生きてる人間くらいだ、
ってのが、婆さんたちの愚痴をやりすごすときの
オレの冗談なんだけど、
「じっさい、昔はもっともっと居たもんだ」
トラムばーさんときたら、しつこく食いさがる。
けっ。
知るかよ。
一部族、二百人もいたら十分なんでないかい?
それも役にたたない前世紀の遺物(ってのがなんだかオレは知らないが)ばっかりゴロゴロしやがって、アルマゲドンだかの後に生まれたやつっていや、オレをかしらに数えるほどしかいない。
年寄りどもを、やしなってくのも大変なんだぜ。
『 ドームシティ・82 』 (@高校かな?)
2006年12月4日 連載(2周目・地球統一〜ESPA)……時計が12時を告げ、今日も彼女の“子供たち”は静まりかえっていた。
グランマは今日もまた優しく語り始める。
「昔、昔、まだドームの外にも、世界があった頃のはなし……」
× × ×
“閉じた球”世界、ドームシティ82。それは、最も深く、最も頑丈に、最高の技術と頭脳によって、一番最後になって作られた世界だった。
当時の混乱状態から見れば、信じられない程のスピードでその建設は行なわれたのだ。だが、それでも完成するのが遅すぎた。知らせを受けとるなり各地の隠れ場所から飛び出して来た、学者、科学者に、その家族たちの大半は、中途にもさしかからぬうちに“最後の熱風”のえじきになった。骨も残らず、遺言も残らなかった。
ために、シティ82には予定の人員の10分の1すら集まらなかった。特に女と子供。シティに入っていた人間の大部分が建設にたずさわっていた技術員たちだったし、若い彼らは、おおかたが独身だったのだ。
.