「おいマーシャ、どうする?」と、うねうねと折れ曲がり折り返しながらスロープの下へと続く道を指して、雄輝までが自信なげに尋ねた。
 直ぐ道の先に、村らしき影と松明の炎が見える。ぐるりに柵を築いてめぐらせて大して大きな集落にも見えないのに物見やぐら櫓までが築いてあった。とてもではないが、こっそりしのび込んで納屋かどこかで一夜を過ごしたりはできそうにもない。かと言ってこちらは真里砂以外は言葉も違うし通じないし、服装も、もしかしたら髪や目の色さえ  真里砂の髪が緑である事を考えれば  異なるのかも知れない。 「マーシャ?」
 雄輝と鋭が異常を感じ取るより早く、真里砂の体はぐらりと傾いたまま、雨に打たれたスロープの草地に足を取られて、声もなくころがるようにして落ちて行った。
一瞬、他の2人には、まるで無声の恐怖映画でも見せられているような感じがした。
 「マーシャ!!」
 落ちて行く彼女真里砂の手を捕まえようとして、鋭は自分もバランスを崩して倒れてしまった。雄輝がザッと草をなぎ倒して、ころがった鋭の脇を凄いスピードで滑り降りて行く。
 「マーシャ! おいっ!!」
 気を失っている彼女を膝の上に抱え起こして、雄輝ははっとなった。追いついた鋭を振り向く。
 「  鋭。  ひどい熱だ  …」
 そこへさっと松明の光が投げかけられた。「アルダムないまン!!」(見つかった!)鋭は思わず体を固くした。
 (見つかった!)雄輝と鋭は観念して振りかえった。
 「アルタムないまン!!」
 松明を手に現れた武装した村人たちは4〜5人くらいだった。おそらくやぐらの上から降りて来たのだろう。黒や茶の短い皮の胴着に『古事記』に出てくるような型の厚手の布の下衣を着け、思い思いに上着をひっかけている。翼はない。一人はまだ少女と言っていい若い女性だった。更に、村の中が騒がしくなったと思う間に、手に手に弓やそして、全員が手に手に弓をたずさえていた松明をたずさえてあっという間に男女2〜30人が問から飛びかけ出して来た。(ひえ〜!)鋭が小声でつぶやく。村人達の間では、ざわめいているうちに報告と伝達が終わったらしい。顔役と覚しき人間が数人、皆をかきわけるようにして前へ進み出ると、後を追うようにかけ出して走り出て来た若者たちが松明をかざして3人のぐるりを取り囲んだ。
 
 
(つづく。) 

 アルダンないまム! 

 
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