幅50cm程の、半ばひからびかけた小川の跡に危うく落ち込む所だったのだ。
「なんでもないわ  ご免なさい。ちょっと考え込んじゃってて」 真里砂は慌てて溝を踏み越えた。
「さっき話してた、鳥人とかの事?」後ろの鋭に尋ねられてあいまいに首肯する。
「ここがどこでおまえが何者かって事だろ」
つうかあで雄輝が言い当てて、真里砂の顔をさっと紅くさせた。
「ええ。」怒ったように真里砂彼女が答える。「馬鹿みたいだわ。六年かかって思い出せなかった事なのにだって言うのに」
「さあ、そいつはどうかな」と再び雄輝。
「おまえが何者かってのはさて置くとしても、ここがどこかってのは今一番の大問題だぜ。おい鋭、おまえはどう思う?」「さあね」
鋭は生返事をしてつけ加えた。「土台、判断を下そうにも、僕はマーシャの髪が緑色って事以外、何(なん)にも知りゃしないんだからね。」
 すねんなよ、と、雄輝が笑った。当の真里砂もそれ以上の事など何も解っていないのだから。
「だけど多分、  十中八九  ここがどこであろうとおまえの生まれた所だ、って言うのは俺が保証してやるよ、マーシャ」
その言葉を聞いて、瞬間、真里砂と鋭は眉間を寄せた。
真面目に言っているのか  それとも何かの冗談なのか、判断即座には判断がつきかねたのである。もう一度無言の質問を雄輝はいたずらっぽく笑ってうけ流し、鳥人と話す時に使った言葉で『お母さん』と言えるかと真里砂に聞いた。
「まいま  るんなまいま。」 真里砂が少し考えるようにしてから答えるともう一度雄輝は満足そうな笑い声をたてた。
「そりゃ、もちろん真里砂は覚えていないだろうけどな。」と、あとの2人が腹を立てたくなるぐらい秘密めかしてこっそりゆっくりしゃべる。
「6年前、マーシャが朝日ヶ森の奥で熱出して倒れていた時  第一発見者は俺だったんだよな」
 あ! とどちらも察しの速い真里砂と鋭が同時に叫んだ。
「そう。その時マーシャはうわ言でその“まいま”を繰り返し呼んでいたんだ。」
 
 
 

 まゐま
 まるま
 まいま
 るんなまいま
 マイマ
 ルンナマイマ

 
(つづく)         .

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