(p16)
 
「八甲田山になっちまう」
「雄輝!遊ばないでよ!」
 わけのわからない情勢に、兄弟同然に仲がいいとは言え自分の出生にはなんの関係もない2人を下手をすると生命にも関わりかねない巻き込んでしまった内心の罪悪感のおかげで、ついつい真里砂の口調はとんがってきた。
 不機嫌の原因を考えれば本当におかしな話だが、なぜだかやたらに雄輝に当たり散ら八つ当たりしたくなってしまったのであるだ。かろうじて真里砂は抑えていた。と、同時に、(更に矛盾した事には)、2人  特に雄輝が一緒である事を感謝せずにもいられなかったのではあるが。
女の子、という条件は保留するとして、いかに気が強く、勇敢で、年齢以上の判断力を持っているにしても、真里砂はやはり12歳だった。もし2人が来なかったら、あの鳥人の坊やに取り残されたあとの自分がどんなに取り乱していたか  真里砂には容易に想像がついたつく。
だからこそ自分の頼り無さに腹を立てていたのである。挙げ句の果てには(雄輝の後にはりついている限りその要もないのに)辺りの枝に当たり散らして八つ当たりして、荒っぽく押したり引いたりしながら歩いて行った。たのだ。挙げ句の果てには辺りの枝を押したり、引いたり、雄輝の後ろにはりついている限りその必要もないんだのに、やたらに当たり散らして歩いて行った。
 
 一行、わずか3人でそう呼べるものかは知らないが、は、見知らぬ森と雪の中でいたずらに円を描いてしまう愚を避ける為に、鋭の名づけて“3本の樹による直線の書き方”  をで進んでいた。つまり何の事はない、家庭科の時間に物差しの長さが足りなくなるとやる、あの手である。
 
 ↑.....↑.....↑.....↑.....
 (※さし絵ページの説明※)
 
 雄輝と鋭とが真里砂を見つけられたのも、2人が目をさました倒れていた2点をつないで、先に例の“穴”に先に飛び込んだ雄輝の方向に延長してみたおかげだという。
 大体の所要時間の割り合いから自分の推論、というより勘の正しさを証明してみせて、鋭は盛んに一人で得意がっていた。
 
 サワ。サワ。サワ。
 
 

(つづく)          .

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