P1. 序章 大地の手 (この世のおこりから)
 
 ドロドロとした金色の溶岩がたがいにぶつかりあい、うずをまいて流れていました。
まだ誕生したばかりの若い大地、若い世界の中心で彼女は目をさましたのです。
 彼女は大きな石の上に一人で横たわっていました。
不思議なことに、見渡す限りの黄金色のうねりの中で、ただ彼女と彼女の石だけが動きもせずに わずかな白光をはなっています。
 そして彼女は背の下の石を通じて、伝わってくる大地の鼓動を、まるでその手で触れているかのようにはっきりと感じることができました。
 しかし彼女はそういったまわりの風景を気にもかけず、横たわって両手を胸の上に組んだまま、ただその深い漆黒の二つの瞳だけを開いて考えていました。
 まっすぐに上を見上げた彼女の瞳には星も雲も何一つとして映りません。
それもそのはず誕生したばかりの世界にはまだ「空」という場所すらできていないのです。
あるのはただ空虚な暗黒のひろがりだけでした。

 彼女が目覚めてから すでに長い長い時が過ぎていました。
そして彼女は 目覚めた時からずっと同じ事を考え続け、いまだに思い出すことができずにいるのです。
 その事は幾千回も彼女の頭の中をかけ巡り、そして いつも答えを得ることなく、また出発点に戻るのでした。
  「私はだれで 何処から来たのだろう。そして何のために
   ここに こうしているのかしら。」
 今も鈍い黄金色の照り返しの中で彼女は同じ質問のために自分の記憶を探っているのでした。

 ふと気がつくと、今まで音もなくうねる金の波以外動くものとてなかった世界に「何か」の気配が表われ始めていました。
それはまるで草原の中をかけぬける荒々しい風のように、それがまきおこす草のうねりを見、体に触れられたのを感じることはできても目で見ることはできないのでした。
 その「何か」がかもし出す不思議な感覚は彼女に母親の胎内にいるような安心を与えました。
「さあ、次には何が始まるのかしら?」
彼女は確かに何かが始まるに違いないと思いました。
背中の石はあいかわらず規則正しく大地の鼓動を伝えています。
 と、突然 はるかかなたの波間がパッと輝いたと見る間に、もり上がった大波を二つに裂いて青い明るい光が地の底から上りました。
そのただ一条の光線はだんだんとその輝きを増し、ついには常人の目ではとても正視できないだおるというほどに明るく輝いたのです。
そして、さらに高く、まるで純粋な光でできた塔のようになって上へ上へと伸び続けて行きました。
 彼女は別段眩しいとも思わずにその異様に美しい光をながめていまいsた。彼女にとってはその不思議な光景はごく当然のなりゆきのように思われ、それどころかそうなることをあらかじめ知っていたような感じさえするのでした。
 光線は天空高く真直ぐにつき進んで行きます。
距離もわからぬ程 遠くにあるにもかかわらず、その上から下までを一時にとらえるのは不可能になっていました。
彼女が、「これ以上 高くなるようだったら完全に視界を突き抜けてしまうわ」と思ったちょうどその時に、まるで何物かに突きあたりさえぎられたかのように進むのをやめました。
そしてその地点から水平な円盤状に広がり始めたのです。
 地底からの光はやみ、ただ光の塔がぐんぐん上昇しては広がっていきます。
そしてあれだけ強烈だった光もひきのばされるにつれてじょじょに弱まってくるのでした。
 
 うねっている波の上の暗黒界は消え去りました。
今は深い藍色の美しいけれど冷たい夜空が世界を覆っています。
 そしてまだ月も星もない空の下(もと)で それ自身の創成よりもさらに不可思議なできごとが起りつつありました。
先程あの光が発せられた ちょうど 同じあたりから大きな とても大きな かるく握られた《手》が地中深くよりさし出されたのです。
 たしかにそれは《手》だと思いました。
彼女には最初それが見えなかったのです。
 それは金色の波をかきわけるでもなく、かといって突き抜けているわけでもなく、波と同時に存在しながら けして交わってはいませんでした。
金色の溶岩と まったく同じものであいr、そしてまた まったく異なるものでもあったのです。
 そして光に対して反応しませんでした。
つまり目で見る形としては何も見えず、心の瞳を開いて心像(イメージ)としてそれをとらえなければなりません。
 それは大いなる者の持つ《手》、……もしかしたら大地そのものの手であったのかもしれません。
《手》はその大きな手のひらをじょじょにとき放ってゆき、手の上の指と指の間より光り輝やく者たちが翔び立ちます。
 彼らは光り輝く丈高き美しい人々でしたが、それらもやはり心像(イメージ)で、心の瞳を閉じて目で見ている限り何一つ見ることはできないのでした。
一人、二人……、彼らは次々と翔びたっては思いおもいの方向へと去って行きます。
 全部で二百人ほどもいたでしょうか、最後にひときわ明るく輝やく黄金(こがね)と白銀の二人が、開ききった手のひらより高く弧空へと翔び去って行くと、大いなる《手》は彼女に優しく会釈して再び地中へと姿を隠しました。
 大いなる《手》より放たれた輝やかしき聖霊たちによって、地上には力が満ちあふれていました。
聖霊たちは空間より力を吸収し、また自己の内より発散させ、おのおのまったく違った動きを示しながら、なおかつ注意深い瞳には彼らが一連のひどく複雑で巧妙な踊りをふんでいることに気づくのでした。
 彼らは、それぞれ自分がやるべきことをこころえているようで、みな 忙しくたちはたらいていました。
 そのうちの一人が 踊りながらツイと彼女の石のそばへやってくると彼女が瞳をひらいているのをみつけて、やわらかく微笑して言いました。
心像(イメージ)だけで実体を持たないのですから、その声ももちろん耳には聞こえません。
ただ 心地良くすずしげなひびきが 直接 彼女の頭の中に流れ込んでくるのでした。
 「おやすみなさい」と、その人は云いました。
 聖霊たちの話す言葉はとても複雑で、そしてまるで音楽のように詩のように リズムを持ってひびくのでした。

   「 おやすみなさい、マリアンドリーム
     神々の仕事は まだないわ
     神々の時代(とき)はまだこない
     さあ おやすみなさい 目を閉じて
     あなたの目覚めの時代(とき)がくるまで
     大地に森が 茂るまで           」

 来た時と同じようにツイと踊りながら聖霊は行ってしまいました。
あとにはまた深い眠りに落ち込んだ彼女がのこりました。
彼女は聖霊の言葉の意味を考えようとしたのですが、聖霊の言葉には魔力があり、目覚めたばかりの彼女には抗(あらが)うだけの力がなかったのです。
 
 
 
 次に彼女が目覚めた時には すでに長いながあい時が過ぎ去り、目に見えない聖霊たちはその仕事の半ば近くを終えてしまったように思えました。
 それというのも彼らの仕事というのが天の下、地の上の空間に空気と海と固い大地を造って植物を育て、森を茂らせることであり、彼女のまわりには あちこちに高いむき出しの山が並び、遠くには鈍い灰色の無限の水面が広がっていたからです。
彼女はさむざむとした岩肌や冷えた溶岩のかたまりに目をむけました。
心の瞳でそれらを透して見てもどこにも聖霊の姿はありません。
 彼女は横たわったまま目を閉じて広く探索の輪を拡げました。
地の上を端から端まで探し、さらに地の下、空の上とじょじょに輪をひろげて、はるか地の下の方に(といっても大地の根底よりははるかに表面に近いところですが)膨大な量の熱エネルギーが貯わえられていることに気づきました。
 そして、聖霊たちの約半数がそこに集まってなにか忙しそうに立ち働いています。
なにをしているのかは遠すぎて見えませんでしたので彼女は聖霊の一人に焦点を合わせてその心に話しかけました。
 彼女は遠く離れたものを見、そして心と心で直接話すことができたのです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 森の木々たちに国造りを始めるべき所として示された土地についた女神は清らかな泉でのどのかわきをいやした。
 すると女神の手からこぼれた水から水人が、口からあふれたしずくから水小人が生まれた。
 
 
 
 
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 D−T(に似た創作文字) 略事典 3

 女神伝説  マリアンドリームの言動をしるした本、
       聖書のような役割をはたしている。

マリーシャ   マーイリーシャ
 マーシャ  マーライシャの愛称(地球風だと マリサ )

  マーイリシャール
 マーシャル  マーリシャルの愛称(地球風だと マサル )

  マーイリーシャ マーライシャ  マーイアルフ + リーシャ

  マーイリシャール マーリシャル  マーイアルフ + リーシャル

 リーシャ・リーシャル  娘・息子(エルフ風の発音、
             マリカル・ロックではライシャかレイシャル)

 マーイアルフ  マーイラ + エルフ、水面月の精(月乙女の一人)

 マーイア  水面(主として森の池や湖の)に映った月、水面月

 マドリアウィ  最古のダレムアト王都、また、その跡地

 フェイリーシャ  マーシャの母親の名 フェイラ + リーシャ
          (マーイアルフは尊称で、
           リーシャがかさならないようにした)

 フェイラ  森の花

 月乙女  レリナルディアイムの侍女たち(女神が地上にいるときのみ)。

 月立の国  レリアン・ダレム、東の荒野の手前、果て山の西斜面にある。
       月読峠に月の女神(レリナルディアイム)の神殿があり、
       エルフや神の末裔が多く住まっている。

 レリアン  月立(つきたち)、月出(つきいで)、

 ダレム  国、国土、土、大地、

 レリナルディアイム  月の女神、月と命運を共にするもの、
            天空をつかさどる二大神の一人。

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 『 創世記(魔法世界創世記)』

 …… 大地の誕生 から マドリアウィ王朝の確立 まで ……

 序章 大地の手

  ・ 女神の疑問、空の誕生、精霊たちの出現、眠りそして起きる、
    大地の変動、蒸気、雨、海や陸ができる、
    森が育つ、雲がきれる。

 

 
   女神の目覚め
 まず溶岩が流れ熱を持った蒸気が吹きつける中で女神が目覚めた。しかし女神は自分が何者で何のために目覚めたのかを忘れ、地が冷え、いくどかの大変動のあと冷たい荒野に大森林が育つまで思い出すことができなかった。
 やがて初めての朝日の中でマリアンはリーシェンソルトの呼びかけを聞き、自分が民を造り国を整えるために目覚めたことを思い出した。
 
   目覚めの森
 女神の目覚めを祝福しに何人かの聖霊があらわれた。
 そのうち春風の精が女神の「国造りを始めるにあたって何をしたらよいでしょう?」との問いに答えて森の木々たちを目覚めさせて彼らと相談することをすすめた。
(この時の会話が地上で最初に交された言葉であり、後に人間たちによって魔術語(マリカルロック)と名づけられた。)
 女神の呼びかけに答えて起き出した森の木々たちのうち何本かが《歩く》力を所望したので女神は願いをかなえた。
 彼らが《森人》たちの始祖であり、この森を《目覚めの森》と呼ぶ。
 木々たちは女神が国造りを始めるのによい土地を教え、木という木全てが女神の味方となることを約束した。

(※《森人》さんが「起き出す」様子が描いてあります……。
  ……まんま『ナルニア』の、パクリなんじゃんねぇ……☆ )

  (^◇^;)”
 
 はるか昔、

 四人の神あり、

 四人の神は兄弟にして、

 宇宙(あま)の神の子であった。

 四人の神は それぞれに

 別の世界を治めていたが、

 魔法を使い、行き来した。

 一番上の姉君は

 気高き女神 リーシェンソルト

 治める国こそエルシャムーリア

 天使が暮らす気高き国よ。

 二番目兄君 ダーギング

 世界でもっともおそろしき

 ボルドム軍を 指揮しておった。

 ああ ボルドム軍こそ悪魔の国よ
 
 
 
 三番弟 アスールは

 人間たちを治めていたが

 すごいよくばり、いばってた。
 
 
 
 最後の四番目妹君が

 治めていたのがダレムアス

 妖精、人魚、魔法使い、

 だれでもここに住んでいた。
 
 
 
 リーシェンソルトとダーギング

 たいそう仲が悪かった。
 
 
 ある時、ダーギング、

 女神に聞いた
 
 
「姉君リーシェンソルトよ、

 なぜ私(わたくし)のボルドム軍を

 エルシャムーリアより追い出したのだ?」

 女神は答えた弟に、

「私(わたくし)の国は天使の国

 そなたの家来の悪魔ども、

 入れるわけにはゆきませぬ。」

 かくてダーギングのいかりは はげしく

 ボルドム軍を使いて

 エルシャムーリア せめほろぼした

 しかしダーギングのいかりはおさまらず

 なげき悲しむ姉君を

 世界の果ての魔の山の

 氷の室(むろ)に閉じこめた。
 
 
 
 時の流れは ゆるやかに

 長い年月(としつき)運んで行った。
 
 
 
 
 

 
 
 序章 ダレムアスと三つの国々

 今よりも はるかな昔、まだ人間が空を飛ぶ術を覚えていたころ 4人の神々が 世界を 治めておりました。
そして4人は宇宙の神の名のもとに兄弟でありました。
一番上の姉君さまは その名も気高きリーシェンソルト あのお方が治めておられた エルシャムリアの人々は、物静かで学問を好み、魚の足と鳥の翼を持っていました。
二番目の兄君さまは気性の荒い方で、あの方の率いるボルドム軍は悪鬼と化け物の集まりで悪魔と呼ばれておりました。
三番目の弟君はアスール様とおっしゃって ティケの国を治めておりましたが 毎日々々遊びほうけて おりました。人々もそれにならい、ニンゲンと呼ばれておりました。
末の妹君は明るい方で、治めているダレムアスには生命(いのち)と活力がみなぎり、妖精や魔法使いが住んでいました。

さて、姉君リーシェンソルト様と兄君ダーギング様は もとより いさかいが たえなかったのですが
ふとした事で戦いが起こり、エルシャムリアはほろぼされてしまったのです。
ダーリング様はそれだけでは気がすまず、
リーシェンソルト様に深い呪いをかけて
世界の果ての「魔の山」の氷の室に閉じこめてしまいました。

それから数え切れぬほどの年月がすぎました。
アスール様は事故で亡くなられニンゲンたちは おのれの欲にひきずられて、この世の良い事を全て忘れてしまいました。
そしてボルドム軍の仲間に加わる者もおりました。
ただ一人、ダレムアスの平和を守る事ができた
妹君ドリーム・フェアリー姫は地球(アスール)やボルドムと往き来する事をやめ幸福な一生を暮らし1000年...
 

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