『 (無題) 』 (@たぶん中学2年。)
2007年6月21日 連載(2周目・最終戦争伝説)鋭(えい)のトランクを持ったまま、真里砂(まりさ)は一息に階段を飛び降りた。
「大体の所はママから聞いたわ。
真っ黒なストレートヘアがぱさりと顔にかかるのをうるさそうにふりはらって彼女は振り向いた。瞳がわずかに緑がかって見えるのは気のせいなのかな。
無用心に朝日の中へ出てしまった鋭は目がくらんで一番下の段を踏みはずした。
「うわっ!!」
悪気でなしに真里砂は笑った。
「ほうら、ね。やっぱりトランクはわたしが持っていてよかったでしょう。鋭! あなた疲れているのね。緑衣隊(りょくいたい)の追跡をまいて来たんじゃ無理ないけれど。」
彼女はまだ彼がどんな目つきで自分を見ているのか気づいていなかった。気づいていたとしても信じなかったろう。
彼女のまわりにそんな物の考え方をする人はいなかったから。
屈託なく手をさしだした真里砂に対して、鋭はできるだけひややかな薄ら笑いを浮かべて見せた。
「結構。女の子なんかの手を借りなくても起きられるさ。」
「え!?なあに、鋭。」
真里砂は一瞬彼のいんぎん無礼さに鼻白んだ。
鋭は言葉通り一人で立ちあがると服のほこりをはたきながら言をついだ。
「……それから呼び捨てにするのはよしてほしいな。なれてない。」
「あらっごめんなさい。気にさわって?わたしたちはいつも名前かあだ名で呼びあっているものだから……じゃ、清峰(きよみね)君ね。これでよくて?」
鋭は返事をしなかった。
冷静なふりはしていても彼も内心かなり面くらっていたのだ。
彼は落ちつくためにざっとこの一風変わった女の子の観察記録をまとめてみた。
○髪、黒。眼、黒。身長−やや小柄−20cmくらい。やせ型。はだの色、かなり白い。ぼくと同じ混血(ハーフ)か?
○運動神経かなり良し、おてんばというべきか。頭も良さそうである。
○性格的にかなり風変りである。ぼくと同学年であるなら11〜12歳。ああもずうずうしく堂々と男子の手をつかもうとする女子は見たことがない。
○典型的なおじょうさん育ちらしい。
以上。
真里砂は真里砂で、鋭が不気嫌なのは一ヶ月近かった逃避行で神経がとがっているせいなのだろうと勝手に納得していました。
奇跡的にここへたどりつくまでにはそれこそ命がけだったのでしょうから。
この次点でかなり重大な誤りを犯してしまったことに二人は気づきませんでした。
「じゃ、清峰君。先に寄宿舎へ行ってこの荷物を置いてきましょうよ。その後(あと)で構内を案内してあげる。……どうしたの?今日は土曜日だから一般授業はお休みなのよ。」
鋭は彼女と並んで歩き始めた時から苦虫をかみつぶしたような顔をしていましたが、彼女が一日自分につきあうつもりだと聞かされた時には苦虫どころかワサビとカラシとコショウとタバスコを一時(いちどき)に飲まされたような顔になりました。
「ご免こうむりたいね、おじょーさま!」
「え!?何か言った?」
「……別に。」
早朝であたりに人影のないのが鋭にとっては不幸中の幸(さいわい)でした。
女と並んで歩いてるなんて!
転校初日からひやかされるはめになるとはなんたる不運だ! こいつよく平然としてるな。どっかおかしいんじゃないか
「あらいけない。まだ7時前なのね。」
鋭の心配など気にもかけないようすで真里砂がつぶやきました。
のぞきこんだ腕時計の下、白い手首に薄く静脈が浮いています。
「ここでは朝7時から夜の十時までしか異性の寮には入れないの。」
「へえっ。普通は女人・男子禁制だろうに。」
言ってしまってから鋭はあわてて口をつぐんだ。
(未完)
(Okinaの20x20原稿用紙、シャーペンで縦書き)
大地世界物語・皇女戦記編
記憶の旅・序章
体育祭の二日前。
裏朝日から
大地世界
水球世界
大地世界(ダレムアス)物語シリーズ 前書き
「よーし、一応似て見える
僕と背恰好の似た奴が、鏡と僕の顔とを見比べながら最後に言った。「眼鏡は?」と僕。まったく見事なものだった。
「それはない方がいいんだ。全部同じにしちゃうとかえって細かい違いがバレやすくなる
「
それから、僕に化けた奴のそばに座って変装の手伝いをしていた女の子
みんな僕と同じ
「だけど君は
そりゃ、あの場合、僕と僕の荷物の安全が第一だって事を、解って
「大丈夫、彼は上手くやるわ。鋭は心配しなくて良いのよ。」
手伝っていた女の子の方が、チラッと男の子と見かわしながら言ったので、僕は一応彼らを信用して納得する事にした。かの女が、一目で人を安心させてしまうようなきれいな笑い方をしたからだ。
「
「どっち……?」おかっぱの女の子が素速くそちらへ立って行きながら問い返す。
(☆「おかっぱ頭の女の子」のボールペン描きのイラストあり☆)
「にせ緑じゃない、おじ様
「よっしゃOK! おっかないおあにいさん方が来る前に、“にせ清峰”君、A計画発動」
一応
「all right! マーシャ、有澄夫妻に何か伝言は?」
「そうね、パパにお仕事がんばってって、それからママに、明後日
「わかった。行って来まーす」
「気をつけ
ポーチの方で二言三言しゃべっている声がして、車は直ぐに走り去って行った。
「ボヤボヤしない、置いて行くぞ!」さっき有澄氏の事を“おじさま”と呼んでた奴がどなる。
別に僕の動作が鈍かったわけじゃなかった。連中の方でそれこそあっという間に姿を消してしまったのだ
どうやら僕は、今度はホームズやらルパンやらの世界に迷い込んじゃったみだいた。どう考えても、ここ、ごく平和な高級住宅街の中だと思うんだけど。
「このあたりはね、もともと 藩の出城のあった所なの。」
僕があきれているのに気がついたのか、隣を走っていた、
「君、あの、 有澄、さん? ここ、君ん家?」
「真里砂よ。マーシャでいいわ。」
僕、こと清峰(きよみね)鋭(えい)が初めてマーシャという女の子に出会ったのは
事の起りは僕にIQがその当時でさえ225もあった事、そして今も変わらぬ科学気違いだった事。
(未完。大学ノートにボールペン書き、直しの嵐の、おそらく第一稿。そして多分、「数学の授業中に」書いていたという気がするな………………(^◇^;)>”)
.
『 一、 』 (@これも中学1年?……だと思うが……)
2007年6月19日 連載(2周目・最終戦争伝説)一、
遂に鋭(えい)は力尽き、深い森の中で意識を失ってしまいました。
暗黒よりもさらに深いかと思われる闇があたりを押し包み、左腕(鋭は左利きです)の銃創を縛った布からさらにあふれ出した赤いものが小さな流れを作ってゆきます。
鋭にはもう、規則正しく一定の間をおいて命がしたたり落ちてゆくかすかな響き以外、何も感じとることができませんでした。
手も足も痺れて冷え切って、体の自由が利きません。
先程までの豪雨を否定するかのように、森はこの上もなく深く沈黙し続けています。
(
言葉に現れない意識の奥底で鋭は思いました。
(明日の朝には確実に、僕は冷たくなっている。)
胸の方で、何かかすかなおき火のような存在が、それでも生きたい生きたいと懸命にもがきたてているのを、鋭自身は静かに見つめていました。
“死”はなぜか恐しくはなかったけれど、それでもやはりこんな所でたった一人、濡れた草の上に体を投げだしたまま古くなった雑巾のように冷たくなっていくのを待っているのは、たとえようもなく哀しい事でした。
なぜ、こんな所で、たった一人で
それを思うと、鋭の見開かれたままの瞳からつつつと涙がこぼれました。
体の心も冷え切っていて、それと同じように冷たい冷たい涙でした。
(生まれてすぐに親にさえ見捨てられた僕だけど)
(それでも友達がいた。先生達がかわいがってくれた。結構幸せに暮らしていたのに)
ナンデコンナコトニナッタンダ。ナンデ。
(初めて憧れた優しい女の先生だっていた。
人よりずっと大きな夢を持っていて、
どこまでも追いかけてゆくはずだったのに)
ナンデコンナコトニナッタンダ。
鋭は実の所まだたった12歳の少年でした。
幼ない頃いつもおんぼろプレイヤーにしがみつくようにして聞いた、あのすり切れたレコードの中の小さな子守り歌を、
(死ぬ前に一度っきりでいいから)
やぶや下枝をかきわける、かすかにガサガサいう音がした時も、鋭にはもう聞きとるだけの力がありませんでした。
いつの間にか彼の目の前に、白いぼうっとした優しい人影が立っていました。
鋭は残された最後の力で泣きそうにかすかに微笑み、さしのべるつもりで傷のない方の右腕をわずかに持ち上げました。
「うれしいな。迎えに来てくれたの、母さん……?」
そうしてそれっきり、鋭の意識はふっつりと途切れてしまいました。
鋭は残された最後の力で泣きそうにかすかに微笑(ほほえ)み、さしのべるつもりで傷のない右腕の方をわずかに持ち上げて、
「うれしいな。迎えに来てくれたの。母さん……?」。
そうしてそれっきり、ふっつりと意識が途切れました。
鋭は幾晩もうなされ、うなされて、意識の深みの泥沼にひきずりこまれ、また浮かびあがり、そんな風にしてかすかに目を開く度にのぞきこんでいる白い顔を意識しました。
その白い顔は自分と同じ年頃の風変りな顔dちの美しい少女で、不思議な事に豊かな緑色の髪で縁どられています。
鋭は夢現の中で、その少女が見た事もない生みの母か、さもなければ血を分けた姉か妹ででもあるかのように感じて、苦痛が走り抜ける度に救いを求めてその少女を呼び続けました。
少女は始め鋭の体の脇にぴったり沿うように横たわって、冷え切った少年の体を暖めました。
体に熱が戻り、ほとんど瞬間的にそれが高熱にうかされる状態に変わると、今度は枕辺につききりで汗をぬぐい、額を冷やし、たまに姿が見えなくなったと思うと、次にうっすらと気づく頃には薬湯や冷たく冷えた何かの液体を用意して、再び心配そうな優しい瞳を鋭の方へ向けているのでした。
車のエンジン音が聞こえたような気がし、重い扉の開く音と男女の静かな話し声があたりの静けさに波紋を投げかけました。
(未完)
『 四、 』 (@たぶん中学1年の。)
2007年6月18日 連載(2周目・最終戦争伝説)四、
「……へえ!それで!?」
「だから見つからないようにひとまず森はずれのパパとママの別荘にかくまって、総監の許可をとりつけてからパパに連絡つけたのよ。ここ(朝日ヶ森学園)に直接つれて来ても良かったのだけれど、万ヶ一にでも緑衣隊に踏みこまれるような事があったら、これはもうまずかった、失敗でしたではすまされないものね。
で、戸籍身分証明履歴書その他転入手続きに必要な書類一切偽造して裏づけを準備して、後は折良く帰国してらしたパパとママに御協力願いましたわけ。」
真里砂は養父母である有澄(ありずみ)夫妻がある日沖縄滞在中の親友夫妻の死亡通知
それからいたずらっぽく片目をつぶって、
「もちろんわたしはその事は全部、母親からの手紙で知ったのよ」。
相手の、一つ年上の幼ななじみ雄輝(ゆうき)も、そのあたりはちゃんと心得ていて、真っ白い歯でニッと笑い返します。
「そこまでで二十日。そこでお優しい我が母上様は両親を失ったばかりの傷心の清峰鋭殿を、心づくしの手料理で十日かかってお慰めもうしあげ、休暇のあける一週間前に愛娘ともう一人の親友の遺児翼(つばさ)雄輝がいる全寮生の学校に少年を連れて転入手続きにやって来る
言葉通りそこへ下級生の一人がやって来て、大至急学長室へ来るようにと伝言を残して去って行きました。
さすがの真里砂も息をついで、汗をかいてもいない額を手の甲でぬぐいました。
「万事良し、計画終了。……これでどこのだれが出て来ようとも鋭と朝日ヶ森学園に手出しをする事は不可能になったわ。」
「確かな裏づけをもってここに入学している限り、朝日ヶ森の生徒を学園の意志に反してどうこうできる人間なんていやしないからな。肩の荷が降りたろ?」
「あっは、まあね。」
なをも話している間に二人は学長室の前までやって来ました。
真里砂が先に立ってノッカーをたたき、
「……失礼します。翼雄輝、有澄真里砂両名参りました。」
扉を開けて一歩中に踏み込むと、真里砂が想像していた通り重いかし材の机をはさんで、上品な二人の婦人が談笑していました。
一人はこの朝日ヶ森学園学長。
推定年齢六十余歳、一見して英国のエリザベス一世を想起させる銀髪の老婦人。
もう一人は真里砂の養母で、32歳とはとても見えない少女のような容貌と華奢な体つきの児童文学作家有澄冴子(ありずみさえこ)。
かつてこの学園を現在の有澄建(たける)氏と共に主席で卒業した、朝日ヶ森の次期学長候補でもあり、言語学の大家として実に38ヶ国語を巧みに操って外交官である夫をささえているその聡明な美しさは、各国上流社交界からいつも多大な好意をもって迎えられていました。
有澄夫人のすばらしさといったら、本人でさえ分不相応と自覚する程におそろしく誇り高い真里砂自らが、人前で平然とマザー・コンプレックスを自称して恥じない程だったのです。
この二人とはやや離れた所に、中型のトランクを一つ脇に置いて鋭が実に居心地悪そうに腰かけていました。
真里砂がやって来てよほどほっとしたのか、二人が初対面である事を忘れて声をかけて来そうにしたので、真里砂はそのすきを与えないよう慌てて巨大な学長机へ歩み寄らねばなりませんでした。
「ママお久しぶり、お変わりありません。学長教授難かご用ですか?」
真里砂が白々しくもにこやかに微笑(ほほえ)みますと学長も百戦錬磨の古強者らしく大いに楽しんで、口の端にニンマリとも形容できる表状を浮かべました。
「ええ用と言うほどの事でもありませんが、転入生を紹介しておこうと思ったのですよ。」
「
真里砂は納得したというようにうなずき、独特の顔だちをした頭を斜めに傾けて、茶目っけたっぷりに、興味しんしんといった目つきを見知らぬ少年に投げかける
「母から話はうかがっております。
学長はそうだと言うようにうなずき、かわりに有澄夫人が立って彼を紹介しました。
「清峰君こちらへいらっしゃいな。……娘と、あなたと同じように数年前に御両親を亡くされて、私たちが後見役をしている翼君。」
初めましてと真里砂が言った時の鋭の顔と言ったらありませんでした。
「真里砂ですよろしく。マーシャで良くてよ。手続きがもう済んでいるのだったら一緒に行きましょう。学内を案内するわ。」
「……あ、はあ……」
「僕は雄輝。荷物はこれだけ?」
「え!ええ。あの……そう……です……」
こうなるともう完全に真里砂は楽しんでいました。
「大人しくていらっしゃるのね。さあ行きましょうか。……それじゃお母さま、また後で。」
後ろで有澄夫人が懸命に笑いを押さえている事は気配でわかります。
扉を閉めた後も二人はわざと生真面目そうな顔をとりつくろって歩いて行き 校舎を出た所で、ついに大爆発を起こしました。
ここまでは、
・真里砂は何も知らずに、森の中で走り回っていた時、
道に迷っていた鋭を見つけて有澄夫妻の別荘に送りとどけ、
・書類偽造等して鋭を朝日ヶ森につれて来たのは有澄夫妻。
「まったくもって気に喰わないわあんの奴!」
真里砂が頭から湯気をたてんばかりに言うと、雄輝が額を押さえて笑いながら半ばあきれた口調で言いました。
「まったく大した奴だよあの鋭っての。おまえをつかまえて『女なんかくだらない』って言ってのけるんだからなァ…… このおまえをさ。」
「笑い事ではないわよ。ええい、もう!
広大な国立公園に隣接する、これもまた迷い込んだら生きては出られない(おまけに所々原因不明に磁石が利かなくなるというごていねいな)大原生林・朝日ヶ森を、そっくりそのまま国から買い受けて敷地にしている世界的な名門私立校朝日ヶ森学園。
(未完。)
『 三、 』 (@たぶん中学1年の。)
2007年6月18日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (1)三、
「……ふう……ん」
真里砂が、やや上を向いた上唇に右手親指をくわえこむようにし、目線を斜め下方向に投げやってつぶやいた。
「じゃ、あなたが機密回線(シークレット・コード)で捜索命令の出ていたエイ・キヨミネなのね?
本名を呼ばれてぎくりと体を起こそうとした鋭を見て、彼女はくすり、と笑った。
「ご免なさい。別に驚ろかすつもりではないのよ。」
「
はね起きようとしたところを、その細い見かけによらず力の強い腕で押し返されて、鋭は首だけカマキリのように持ち上げてすごい形相で尋ねた。
「なぜ君が緑衣隊の機密命令(シークレット・メッセージ)の事を知ってるんだ!」
「緑衣隊やら何やらの事ならあなたよりよほど詳しいわ。なぜ知っているかと言うと、
「あー、わかったよ命の恩人殿!ひとには洗いざらい話させといて
「ストップ!」
わめきたてようとする鋭を真里砂が手をたててさえぎりました。
一瞬静かになると、かたわらの泉の音が急に大きく聞こえます。
遠くで鳥たちが鳴き、小さな草地の上を昇り始めた朝の光が金緑としずくの銀青色に染めわけていました。
「あんまり興奮するようだといくら待っても回復しないわよ。わたしの事について言えばあなたに話す義理はないんだし、あなたは助けられた立場上、わたしに必要な情報を提供する義務があります。それから後なら、あなたが今後どうしたいのか言ってくれれば、できる限りの便宜を計るわ。」
「ひでえや恩の押し売りだ。あ〜あ、またとんでもない奴に助けられちまったもんだなあ」
言葉とは裏腹に、まんざらそうも思っていないくちぶりで鋭がぼやきました。
連日の命がけの逃避行の後に、昼寝の夢のような穏やかな時間が不意に訪れたもので、彼はすっかりくつろいで見ず知らずの少女を全面的に信用する気になっていたのです。
鋭の気持ちを感じとったのか、真里砂が真珠色の歯列をのぞかせてニッと笑いました。
「ねえ、何だか初めて会ったんだという気しないわ。」
「あれ、僕もだよ。既視感(デジャ・ヴュ)てやつかな?
「ええ、そうなの。」
真里砂が急に真顔になってうなずきました。
「ねえあなたが10月7日まで科学者養成所(センター)に居たと言うのだったら……。ルディ・遠藤と言う人を知らないかしら?」
「ル・ルディの事かい!?」
三度目の正直で今度こそ鋭は飛び起きてしまいました。
体中、特に腕の傷がひどく痛んだ様子でうっと声をあげましたが、それにもかまわず、
「あいつのおかげで脱走できたんだ。あいつが、あいつは、
それだけで真里砂には察しがつきました。
ああ、かわいそうなルディ……!
緑衣隊の手でどんな拷問を加えられていることか。今ごろはもう、きっと無事な姿ではいないでしょう。
真里砂はきりりと唇をかみしめました。
「……一刻も早く助け出さなくては……!」
その声に鋭がはっと顔をあげました。
ルディに教えられた逃げのびるためのただ一つの方法。
朝日ヶ森学園の数多い生徒の中で、山河を越え自由に森の中をさ迷い歩くことができるのは、不思議な力を持つその少女だけだと言う。
「それじゃ、もしや君が……」
あっけにとられているのを見て、真里砂はまたくすりと笑いました。
輝やかしい朝の森の光の中、心の奥底から突き上げてくる不思議な衝動で体中からいたずらっぽさが湧き上がるようです。
どこからくるのか得体の知れない、奇妙な歓喜したいようなかつて味わった事のない気分に、真里砂はもう一度高く声をたてて笑いました。
「そうよ、わたしがマーシャ、朝日ヶ森のマーシャよ。やっと気がついたのね!」
「ルディから話を聞いて逃げて来たのだったら、あなたがこれからとりたがっている行動は察しがつくわ。それだけ元気があるのなら一人でいても大丈夫でしょう?戻って来るまでそこの岩影で待っていてね。お腹が空くようなら左手の洞(うろ)に乾した果物が入っているから。」
「待ってくれよ!君はどこへ行く気なんだ?」
「あら。ふふっ!密告しに行くとでも思ったの?! それならご安心なさいませ。山狩りが始まったら泉(ここ)はあまり安全な場所ではないもの、仲間に連絡をつけに行くだけよ。」
言いながら、真里砂はもう走り出していました。
「こういう荒っぽい仕事には、慣れているからご心配なく!」
小川を飛び越え、樹間を走り続けながら、真里砂は自分の衝動が狼の遠駆けに似ていると感じました。
それにしてもわたしったら!
何がこんなにうれしく感じられるのかしら……?!
.
『 二、 』 (@たぶん中学1年の。)
2007年6月17日 連載(2周目・最終戦争伝説)二、
清峰鋭(きよみね・えい)は捨て児でした。
秋の終りの冷たく澄んだ朝、泣きもせずじっと空を見上げていた赤ん坊を、見つけてくれたのは院長先生です。
一目で混血児(ハーフ)とわかる顔だちと、貧しいけれど一針一針の細かい手縫いの産着の「Α」の縫い取り。
利発そうな瞳をしているからと、てっとり早く頭文字に漢字をあてて、始め彼には鋭子という名前がつけられたそうです。無論おしめを替える段になって、慌てて下の一字は取り払われたのですが。
とにかく一目見て誰もが女の子だと信じ込んでしまう程の透けるような美しさと、理知的とでも言うべき瞳の光を持った、珍らしい赤ん坊ではありました。
名前にふさわしく、彼が類い稀な高度な知能を持って生まれた事に周囲の人間が気づき始めたのは、彼鋭が小学校へ入学した頃でした。
入学時の知能検査でIQ300という数値がはじきだされた時にはまさかと笑って130の間違いであろうと考えていた大人たちも、どこで字を覚えたものか一年坊主が生意気に大人の新聞を読み始め、稚拙ながらもかなりまともな「見解」を熱心に話すようになった時、“これは!”と思ったそうです。
彼の興味は最初からもっぱら科学に向けられていたらしく、童話や絵本の変わりに難解なSF小説を読みあさり、近所の大学生の所へ入りびたっては、相対性理論やら万有引力やらを聞きかじって帰るようになりました。
彼の夢は科学者となり大宇宙船を建造する事。
そしてそれが災厄をまねいたのです!
その男がやって来た時、園庭で鉄棒をしていた鋭は一目で不吉なものを感じとった。
それがどこから来るものだったか。
もしかしたらそいつの蛇のようなてらてらと光を反射させる眼に原因があったのかも知れないが、なにも世界中に蛇眼が奴一人しかいないわけではなし、わけのわからない異様な恐怖を感じた事の方に、かえって鋭は疑問を感じた。
そう、何かを恐れる必要などありはしなかったのだ。
男は設立されたばかりの国立科学者養成センターの事務官の一人であり、IQ300という類い稀な知能を有している鋭を、全額支給の特待生という形で編入させたいと申し入れて来たのだ。
願ってもないこと。
科学だけが目的の孤児である鋭にとっては、正に福音の鐘の調べのような話である。
否も応もなく鋭は承知し、
「では明後日。」
迎えをよこすと言って男は帰って行った。
鋭は降って湧いた幸運に日頃からの成人顔負けの冷静な洞察力を失ってい、帰り際に男の見せた不吉な笑いにも気づく事なく、ただ彼を我が子同様にかわいがってくれた孤児院の院長だけが、苦渋に満ちた青い顔をして凝っと額を押さえていた。
.
『 序章 一、 』 (@たぶん中学1年の?)
2007年6月16日 連載(2周目・最終戦争伝説)序章 一、
深夜、満月の晩。
人間言う所の妖精の輪(フェアリー・リング)に繰り広げられる饗宴の、お祭り騒ぎの中央ややはずれ、一つの大きな車座の一環に、真里砂(マーシャ)は歌い、手を打ち、笑いさんざめきながら座っていました。
なにも世間一般には普通の人間で通っているところの連中が彼女の他に混じっていないわけではなく、それどころか同じ朝日ヶ森学園の仲間たちなど一人二人に限らず、(全地球的に見れば)かなりの高率でまぎれ混んているに違いないと彼女は踏んでいたのだが、それでもやはり誰かにその場を目撃されたとしたら、
「気が狂っておりました。」
以外思いつける言いわけはなかったでしょう。
けれど無論、彼女はそんな事を心配してはいなかったのです。
なぜか磁石(コンパス)の利かない人跡稀な大森林。
とりわけ険しい山崖に囲まれて、自然の力で十重にも二十重にも注意深く隠されているからこその集会場です。
仲間、友人、もしくは味方でも客でもない人間に発見される可能性は万に一つもありませんでした。
あかあかと篝り火は燃えさかり、虹の火花の尾を引いて、極彩色の虎が天空高く駆け上りました。
それを追うかのように別の一角から極楽鳥が舞い上ります。
魔法の大家たちが、余興にとその技を一部披露し始めたのです。
青い帽子に銀のスカーフを身につけた、かの老魔法使いの姿も見られるようでした。
夜空が彩られる度に、気のいい野次と、嘆息と、掛け値なしの喝采が上がります。
森の彼方の小さな街(まち)に、もしまだ起きている人間がいたとしたら、雲一つない星だらけの空の、小さな雷ほどにも見えるのでしょうか。
だれかが舞い装束の真里砂を描きだして見せたので、返礼に彼女は、その術の主の頭上に銀の流星を十ほども降らせました。
その流星の最後の一つが地面に落ちて、青色のほっそりした草に姿を変えた丁度その時です。
真里砂の脳裏、心の奥深くに、誰かの救けを求める声が響きました。
その声を捕えた途端
いきなり目の前の空間に現われ出た人物に皆は騒然となりました。
年の頃十二・三の、真里砂と同年代。
一見して黄白混血とわかる顔だちと、日本人にしては明るい髪の色。
包帯がわりに巻かけた血に染まったシャツの切れ端が痛々しい大腿。
飢え渇き疲弊した青く冷えきった体
誰?
誰だ。
この少年は誰!?
すぐさま、その場を取りしきる立場にある、不思議の長老たちが中央に歩み出て来て声高に呼ばわりました。
「静かに。皆静かにしてくれ! この者をここに呼び寄せたのはだれ。この少年は何者?」
「私です。」
真里砂は立って素直に前へ出てゆきました。
「突然の非礼おわび申し上げます。救けを求める声が聞こえたので咄嗟に呼び寄せてしまいました。いったい誰なのかは存じません。
彼女は振り返って呼ばわりました。
「すみません。この人が危険と感じているものが何なのか、教えてもらえませんか。
フィフィシス。
フィと呼ばれたその女性は、足もとまでも長く流れる緑の髪をひいて盲いた瞳で横たわっている少年のそばへ歩り寄り、ひざまづいて、すっ、とさしのばした両手の平を、ぴたりと彼の額に押し当てました。
「……(キ・ケ・ン……)」
少年の頭から読みとれる、きれぎれの思考の断片が、低い少女の声で語られました。
「(見ツカリタクナイ)……(見ツカレバ、記憶ノ消去)……(洗脳・科学者養成せんたあ)
フィは立ち上がると、出て来た時と同じように静かに人の輪の外へ戻ってゆきました。
事情の飲み込めた者(主として混じっている人間たちですが)たちの間に低いざわめきが起り、長老たちが再び真里砂の方へ向き直りました。
(……で? どうするつもりですか?)
真里砂は考える時の癖で少し右の眉をつり上げていましたが、すぐに
「……呼び寄せた以上、わたしには責任がありますし……それにどうやら、どのみちわたしの仕事のようですから。」
それだけ言うと一礼して、少年の体を負い上げて歩き出します。
有難い事に少年の体は思ったより重くなく、真里砂は楽に歩く事ができました。
はるかに年上の友人たちと別れの挨拶を交わし、草地を横切って岩まで来る頃には、背後では再び歌と踊りが始まったようです。
ひとまず少年の傷の手当てができる泉の所まで歩くつもりで、12歳の美少女は慣れた足つきで真暗な地下道の中へ降りてゆきました。
(☆「人間言う所の妖精の輪」と、「魔法の大家たち」だの「青い帽子に銀のスカーフを身につけた、かの老魔法使い」(^^;)”……たぶんこのフレーズが出て来るということは、甲斐悠紀子の『フェネラ』を読んだ直後で、英文直訳体である「〜ところの」を習ったばかり、くわえて既に『指輪物語』の影響下にもある……、中学1年後半(二学期以降)時点の原稿です……☆ A^-^;)” )
鋭ほか『朝日ヶ森』およびアロウ系の数名が、お得意の隠密行動で情報を収集した結果、遺伝子や文化・文明・言語のパターンに、かなりというよりは必然以上の一致点を発見しまくった結果
この時、無用な摩擦を避ける為に、一般市民に対しては本人たちにも記憶操作を施して、それが事実だと思いこませたので、その後の数百年を経て正式に地球文明圏との国交樹立を巡る問題が政治上の重要な争点となった頃には、実は自分の曾祖父(ひいじいさん)は地球人で……なんて事を知っている人間は一人もいなかった。
が、血筋はやっぱり争えないのか、美天地人(リスタルラーノ)にしては喧嘩っぱやいと言うか感情的で、理屈ぬきの勘と行動力を備えている親テラズ派の連中は、たいがい地球系の遺伝子を多めに持っている……★
居所と名前と経歴を点々と変えつつ、地球系移民のその後の生活をさりげなくフォローしてやりつつサンタクロースな気分ではあるがけっこう孤独をかこっていた清峰 鋭 は、地球圏との国交樹立を裏から密かに支援はしていたが、原則として政治向きの事には手も顔も出さないように気をつけていた。
が、サキ・ランという有名人が“芸術系の交換留学生”として活躍しはじめ、地球圏の最終戦争伝説についての再現映画を撮影する……とかいう企画を耳にするに及んで自制心を蹴り飛ばし、
そのついでに、サキたちの副業?やら何やらにも巻き込まれ、政治的暗殺未遂事件(ソレル女史が殺されかけた騒ぎ)だの、麻薬密輸団取締事件(『黄金指輪の物語』)だの、両文明圏における気波技術者(エスパッショノン)の社会的立場の確立運動などにも、期せずして一役買っている。
対アンガヴァス戦役と続くジースト革命、国交の樹立と安定を経て、エスパッション・スクールの創立後、以後の運営には心配なしと見たサキ及びレイが、リステラス特務部隊員として深宇宙探査の船に乗り込んだ時には、コネを使ってちゃっかり同行している。
対《邪魔》(ジャマー)戦でサキやレイなど数名が落命した際に一緒に行方不明になり「生存は絶望」と記録には残されているが、実はこの時、サキら気派技術者(エスパッショニスト)とのみ接触をとり、共に作戦行動をとっていた“遍在文明”(オーヴァー・ビーイング)からの“ガス漏れ修理員”(もしくは水道管破損箇所点検人とか……そういうニュアンス★)たちに拾ってもらって、上級文明圏に遊びに行ったのだった。
そこで多脳人類だの無移動存在だの無形遍在だのという、よく判らない連中とお友達になりかけるが、やっぱり途中で退屈?してしまい「次元落ち」して、タコだのアメーバ型だのいわゆる“普通の異星人”文明をあっちこっち漫遊?した後、結局ホームシックになって、その当時“リズヴェッサ(遺伝子管理機構)体制”を名乗って破竹の勢いしていたリステラス星圏に帰還した。
この頃になると、数万年・数十万年を旅に生きているヘンな存在も自分だけではないと判り、期せずして幾度も再会してしまう顔見知り?や、転生しても覚えていてくれる友人?も増えて開き直っているので、もはや通常の“人類”とは言い難いメンタリティ……に、なりそうでなっていないのが、この人の不思議なトコロ。
幾つかの短い旅を経て、未開惑星の神聖王として奉り上げられたりしていたらしいが、かつて皇女マーライシャであった転生体の少女の養育を任された経験(誰にかと言えば、多分またぞろ、戦士・黒百合のおねーさまだろう……この人もほんとに長生き★)を経て、自らの旅の終わりが近づきつつある事を知る。
永遠不変のように思われていたリズヴェッサ体制が、一部指導者層の辺境星域への理由なき?亡命という裏切り行為によって内部から崩壊した後、銀河系の混迷と衰退のながい黄昏の時代の中で、かつて《地球》と呼ばれていた小さな惑星が、素朴な農業王国として再建され、そしてまたその支配者や所有企業が転々と変わり、戦乱と政争に巻き込まれ、恒星の寿命が短化されて不毛な岩漠惑星となった。
恒星の爆発と超新星化によって惑星群が消滅するまでのカウントダウンが始められた頃、すでに通常の人類ならば生存不可能な状態と化している地表に個人用宇宙艇で降り立った清峰 鋭 は、そこでやはり地球と命運を共にするべく……と言うよりは、彼ならおそらくそうするだろうので、そこで待っていれば同行できるだろう……という推測と期待に基づいて降下してきた、かつての妻・律子の転生記憶をもつ少女と再会を果たした。
その地表に停泊させた宇宙艇の中での静かで穏やかな共同生活の間、清峰 鋭 と、かつて律子であり幾度かの転生記憶を持つ少女は、互いの記憶や知識を突き合わせつつ、知る限りの喧々と史実とをたわむれに書き留め、書き残すことにした。超新星の爆発に呑まれてなお、その記録が誰かの手に渡る事がもしあるならば、それもまた宇宙の“波”の一つであろうという事で……
いよいよの爆発が予告されたその日、惑星の死に立ち会うために訪れた地球にゆかりのある他の長寿人たちとは通信で別れを交わし、結局、彼らからの要望に従って書き残した史料を譲り渡した後に、二人は泰然として静かな眠りに就いた。
小型宇宙艇に備えつけの普及型生命維持カプセルが、超新星の爆発に呑まれた惑星の上において、その目的とする機能を果たし得るかは、はなはだ疑問である。そうではあるが、なおかつ、この特殊な歴史を歩んだ惑星の上で育まれた様々な想念や、その結晶化し特化した存在である精霊たちの残党が、二人の肉体(うつわ)をそのままの形で護ったのではないか……と、書き残された史料を解読・研究しようとする愛読者の中からは、一種の信仰とも呼べる仮説(伝説?)が生まれ、宝探しにも似た感覚でカプセルを探索する者がその後しばらくの時代にわたって散発していた。
また、人間の魂(記憶?)の中に転生・再生するものもあるという実証に基づき、彼らのその後の生命形態を予測・捜索する懸賞金のプロジェクトなども一部マニアックの間で続けられていた。
……そして星々はめぐり、歴史は流転する……
(うぁー、なんつー長い話だっ★)
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第三次世界大戦が無し崩しに終結せざるを得なかった“大天災”後の混乱時代、なかば鎖国と化した日本国で、なおかつ健闘を続ける『朝日ヶ森』勢力のもとに、帰界した2人はいったん身を寄せた。西暦2100年代終盤。清峰 鋭 にしてみれば記憶にある地球界から100年以上の後、律子にしてみても知己の人間がすべて老齢と化した時代である。
が、『朝日ヶ森』の体質がその程度で変わっている訳では全然なく、使える人材はすべて活用されまくる宿命で、帰国後早々に2人は月面都市へと出向?させられた(この辺の動向は不明確)。そこでしばらくの新婚生活?を営むが、律子が妊娠を告げる間もなく、地球の“水”の危機を抑えるべく、清峰 鋭 は慌ただしく母星へ戻って行った。
(このへんの時間軸が計算すると少しヘンである。いま気がついたが、“息子”だと思っていたアルヤさんは、水の息子の娘(アトル・ウルワー・ウルワニ)の子、つまり“孫”かも知れない★)
地上では生命の母である水の太霊が、ヒト族もろともに全てを滅ぼそうと最後の崩壊?の準備にかかっていた。惑星上のすべての精霊族がまきこまれて悲鳴をあげる中、自らの出自をようやく悟った清峰 鋭 は、母?である水霊の末娘とともに海中?に赴き、水の太母を説得し、なだめる役割を果たす。これによって太母は長い悲嘆を清算するために帰天し、末娘が次代の水霊の束ねとなるが、荒れきった海の苦悩?をおさめる為に力を使い果たして、海底深く眠りにつくことになった。この後、ほとんどの精霊族は休眠?し、ヒト族の命運を遠くから監視or見放す?立場となった。
この経験の後しばらくして、長寿であり容姿がまったく変わらない清峰 鋭 は、『朝日ヶ森』の一部にのみ事情を打ち明けて、知己のいない地中海地方に拠点を移した。
『朝日ヶ森』の姉妹校である旧スイス領(この次代、EUなんかとっくに消滅し、延々と広がる西欧文明の廃虚の間に、わずかに国家or行政機構と呼べるシロモノが3群ばかりほそぼそと機能しているだけである)にしぶとく生き残っていたアロウ・スクールを指令塔として、生き残った人類の救援活動や、頻発していた略奪行為の鎮圧などの部隊に参加していた。
欧亜混血風に見られる外見のおかげで、『朝日ヶ森』での周囲の評価は“大人になりかけの天才少年”、だったのが、白人だらけの間では完全に“少年兵”扱いとなり、その環境に甘えが出たのか、本人の性格にもだいぶ変化が生じた。汚れきって死に果てた海を目にしては泣き、海が見えない地域に行けば海が恋しいといってはまたメソメソしている奇妙な“少年”を気にかけた隊長達からたいそう可愛がられ、生まれて初めて他人に甘えるという状況を味わった。
(……この頃、月面では律子が一人で赤ん坊を育てつつキャリアウーマンしている……★)
やがて、歳をとらない容貌を簡単な変装ていどでごまかし続けるのも無理が出て、名前と髪や瞳の色を変えて「清峰 鋭 のイトコ」とか、適当にでっち上げて再び『朝日ヶ森』の管轄である太平洋地域へ戻って行った。
『朝日ヶ森』コネクションに月面から人探しの目的で派遣されてきたチーム(隊長?の名前は杉谷好一だ★)の案内人として、ユーラシア大陸の地表横断という無謀な旅に参加する。道中、地表の汚染度や汚染物質・汚染細菌の種類などを測定するという、監視衛星からでは収集できないデータを拾って来いという危険な任務つき。「不老長寿なだけで、不老不死ではないぞー」とボヤキつつ、けっこう気軽に指令を受けたのは、一人で長生きしなければならない事実に、早くも少し厭き初めていたのかも知れない。
ところがギッチョン、事実は小説より奇なり?で、名前しか知らなかった実の父?の、実の息子(つまりは異母?弟)である磯原清と、双方ともに生まれた時代からは200年ばかりの時差を経て出逢い、お友達してしまう。退屈してる暇なんかないなぁ!という現実?を実感し、その後、また少し性格が変わってしまった★
(つまりはノーテンキ?になった……単に清クンのが染っただけか?)
異母弟の方はその事実を最後まで、たぶん知らなかったし、鋭の方でも最初しばらくは気づかなかったのだが、さすがに血は水よりも濃いとゆうのか(血の中に“水”の気配が濃いもの同士だったと言うべきか?)、出逢った当初より意気投合?して違和感なくつきあっていた。
同時代の歌(20世紀末期に流行って?いた歌を、清クンは母親から、鋭は孤児院の園長先生から習い覚えていて、レパートリーが一致していた……環境だのボランティアだのやっている人間同士の音楽の趣味は、かなりの範囲で重なっている)を二人で合唱して周囲に聴かせるという共通の趣味を開発して、ユミちゃんと3人でバンドの真似ごとなどして、荒野のキャラバン御一行サマの、目と耳の保養になっていた。(清やユミちゃんと仲が良くなりすぎた結果、杉谷氏の秘かな不興を買っていた事は、言うまでもない★ ……ゆかり姫やひろと変輩などとは、普通につきあっていた)。
ユーラシア横断から北米大陸まで渡り、南米経由でスターエア島に戻って月面に帰還した、会田正行おっかけツアー珍道中?の話は、もちろんの事、また別の長い物語である★
磯原清が旅の途中で偶然拾い、『朝日ヶ森』に預けてすぐに出発してしまったおかげで、養父?になるべきだった清峰 鋭 が、長らくその存在を知らずにいた赤ん坊の成長の物語が、設定上の矛盾で今ちょっと宙に浮いている★ 結論から言えば彼は大地世界の最後の皇子で、つまりマーライシャと雄輝の孫に当たる……?
その後のダレムアスはと言えば、界境を閉じて乱れた世の復興を図ったはいいが、世界に等分されるはずだった半神女マリステアの命数が清峰 鋭 個人に譲渡されてしまった為に生命の寿命(世代交代期間)が大戦前の10分の1程度に縮まってしまっている事実が、女皇マーライシャの治世の半ばに判明し、かつ、3界乱戦の際に次元階梯をさんざん乱されたせいで亜空間としての存在力も弱り、時場も狂い初めたために地球世界との経時差も発生し……で、一足早く崩壊した洞地世界に次いで、世界としての滅びの時を、今まさに迎えんとしていた。
(下線の用語の定義?については、そのうち『星圏史略』で書く★)
生き残った大地の生命たちを救済する手段を求めて、かつて知神ヨーリャの再来と呼ばれた英雄を探しだそうとして、マーライシャ女皇が晩年(かなりの高齢出産★)になって夫・雄輝との間に産んだ双子の皇子・皇女が、異界への無謀な旅に出て行方不明になった。
その双子が遥かな異界を点々とするうちに結ばれて生まれたのが(なんか竹宮恵子が似た話を描いたが、アレより古くからあった設定だ★)、あの赤ん坊……だった筈……なんだが……あれ? れ?
七福神財団(※当時の実質的な“日本国”。)
ここで清峰 鋭の案内人?としての任務は終了し、収集した汚染データを持って清たち一行とは別れる。
ちなみにアロウ校にはヤニさん(お懐かしや……)の一人息子(ダンナは戦死)も預けられていて、当時12歳ぐらい。
その後、どこでどうしていたのか詳細は不明だが、おそらくは、またしばらく欧州でウロウロ?した後、南米経由でスターエア島に渡り、月面世界にひょっこり顔を出し、会田先輩の奪還後、一度21世紀に戻ってから再び未来社会に移住?して来て社会的地位?を築きつつあった清たちと再会する。
ついでにアルヤさんと初対面。(仕事がら、役職と通称ぐらいは当然知っていたが)、正式名称“水の息子の縁者”(アトゥルヤー・アィラーヤム)で名乗られて愕然とし、自分に息子(もしくは孫?)がいたという事実と、律子が若く(外見上は38歳ぐらい)して死んでしまっていることを知って、さすがにしばらく頭が混乱していた……が、せいぜい3日でキッチリ復活し、“アルヤさんで遊ぶ”という新しい趣味を開発してしまった……。
『朝日ヶ森』と植民者連合(コロニスツ)を結ぶ非公式の外交官(ほとんど全権大使)的役割を、亡き律子に代わって果たす一方で、謎の情報源(大地世界で得たエルシャムリア文明についての知識)を持つ天才科学者(笑)として、政治面での業務で多忙を極めていたアルヤさんの肩代わりも兼ねて、月面遺跡(エルシャムリアそのものか、もしくは上古文明の遺構の一部)の発掘・分析に携わる。
そこへ、例の大地世界最後の皇子?が何らかの手段(どうも戦士・黒百合という、皇女マーライシャに縁のあった別の不死人の助力らしい)で彼を探しあてて訪ねてき、助力を請われて一時的(ただし月面遺跡の移動装置を使ったので、当該《単還流》(タペナ)における時間軸との相関性はちょっと不明★)に、大地世界のその後を訪れ、月面遺跡で仕入れた超(笑)技術を駆使して、生き残りの大地民を移住させるための“船”、『精霊族からの贈り物』(フェア・リスティラーヤ)を幾つか建造して移民の出発を見送った。
(この中の一隻で、先祖返りしてエルシャムリアの翼人の外見に近くなっていた飛仙の子孫たちを乗せていたやつが、航宙?中に時標を踏み誤ってしまい、数千年あるいは万年単位で時間流を遡ってから辿り着いたのが、後に“我らが美わしの天地”(リ・イス・スタル・アールラーナ)文明の母星(リスタルラーナ)と呼ばれることになる惑星である★)
そのゴタゴタから戻って息つく暇(本人の主観時間で)もないうちに今度は、地球文明が完全に滅びるのを見て人類が虚脱状態に陥ってしまう前に恒星間移民をしてしまおうという“白の一族”(アルバトーレ)
おかげで、移民反対派の筆頭である杉谷好一氏に何度も刺客はプレゼントされちゃうわ、結局、設計者の責任をとって一隻に乗り込んで地球圏を後にするハメになるわで、うっかり父性愛?に流されるとロクな事にはならないという教訓を体験した……。
こちらは海路の日和?を得て、なんら事故ることなく数百年?ほどのコールドスリープをを経て、すでに文化の発展と崩壊とそこから復活した勢いを駆っての恒星間文明の繁栄を極めた後の、精神的な衰退期に入りつつあったリスタルラーナ文明圏の、端っこに到着した。
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地球時間で約150年(設定未決★)にわたった、大地世界における彼の行動の詳細については、『大地世界物語・皇女戦記編』を参照されたい。
個人的な物語としては、大地世界で皇女の冒険にまきこまれ、行動を共にするうちに、マーライシャへの初恋を自覚するが、同時に、後に皇女の夫となった 翼 雄輝(つばさ・ゆうき)がいる限り失恋確定だという事実を認識し、かといって打ち消せるような半端な感情では有り得ず、その矛盾から逃れるまでは思考・行動ともに相当ヒネクレまくっていた。
早くから球の地(ティカーセラス)系勢力によって英雄として祭り上げられた雄輝(マ・ディアロ)に比べ、皇女の従者または医師としての立場しか認められずにいた自分への引け目もあったと思われる。
皇女の遍歴の半ば、大地の背骨山脈(ミアテイネア)の真奥・神都“始源平野”(マドリアウィ)への訪問に同行した際、かの地の火口で永遠の眠りについていた半神女マリステアと交感し、同じ半神人としての出自を初めて示唆されるが、「それはまた別の物語」として、詳しいことは語られない。
苦しみや疑問や、すべての謎に問いかけ続ける毅さを自ら望むのであれば、永遠無窮の旅をするがよい……と、半神女マリステアは自らが放棄した“神”としての寿命(の一部?)を彼に分け与えた。
(大地世界の伝承においては“不老長寿の秘薬”として語られているが、これはあくまでも現象界における象徴(イメージ)であり、物語の小道具に過ぎない)。
また、この事実は彼が大地世界で活躍していた当時は一般には伏せられていた。何とならば、この事によって大地世界そのものに割譲される筈だった“命数”が大幅に減ったからである。
その後、皇女が陣容を整えるに従って、懐刀である清峰(ジュンナール)の声望も必然的に上がり、また地球文明では基礎中の基礎である簡単な物理学(滑車やテコの原理)などを大地民にも解りやすい形で応用する機会が重なって、“知神ヨーリャの再来”として水神(ヨーリャ)学派(信徒)を束ねる存在になる。
が、地球からの諸勢力が大地世界への侵攻を開始し、大地・洞地・球地みつどもえの乱戦に突入すると同時に、立場は不安定なものとなった。
早くから大地世界への帰化を宣言していた雄輝に比べ、彼はいずれ地球に帰るものと自分でも思っており、長く離れていた地球での政情の変化などについて、大地世界でもっとも苦にしていたのは彼でもあった。
友人の苦悩を救う意図もあり、同時に政治的な必要性もあって、界間の通廊をその監視下におく月女神レリナルの協力を仰いだ皇女が、地球世界との架け橋として呼び寄せたのが、『朝日ヶ森』の当時の理事長を務めていた楠木律子の
彼女の経験については皇女戦記中に一章を設けて語られている。彼女にとっては出逢った当初は遥かに年上に感じられた清峰 鋭 は、命の恩人でもあり、憧れのヒーローでもあった。
その他、実は彼に心酔していた人物は相当数いた筈だと思われるが、当の本人はその美貌を自覚するというよりは、いまだ自分の女顔に対するコンプレックスを引きずっており、皇女以外には恋愛感情を抱けなかった(と言うより、日々に失恋し続けていた)せいもあり、いたって無頓着なボクネンジンだった。
一方で、地球圏からの侵略軍基地に潜入した際、大地世界には存在し得なかった悪しき?風習である同性愛?者によって強姦されちゃったりという経験もしている★ その後は少しは自分に対する認識が変わったようで……★
長きにわたった3界の乱戦時代が終わり、月女神によって界狭間の結界が閉じられる事になった際、皇女と雄輝との戴冠・婚姻を待たずに、清峰 鋭 と高原律子とは本来の所属世界へと帰還した。
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うちの主要キャラクター(?)のうちでは最長寿の部類ではなかろうか? 惑星・地球の滅亡(文化・文明ではなく“星の”消滅だ★)を見届けているので、少なくとも億単位で、同一の肉体(うつわ)を使って生存していたことになる。その旅の全貌……なんてものは作者にだって謎のままである。はっきり言って知りたいとも思わない★
惑星《地球》、西暦1900年代の終盤の生まれ。正確には人類ではなく、“半神人”に近いが、本人がそれを知るのは成長して後のことだった。
父親は普通?の人類(ひとぞく)である日本人戦場カメラマンの磯原岳人(いそはら・がくと)。内乱中のアフリカ(もしくは中東?)奥地の岩砂漠において乗っていたジープごと地雷を踏んで遭難した彼を、偶然(ではないが)発見し、興味半分で救ってしまった水霊の末娘(アトル・ウルワニ)が、岳人の精神の毅さに魅かれ、水の太霊である母親の意志に背く
磯原岳人は、近隣で活動中だったNGO『国境なき医師団』(たぶん☆)の看護婦であり、白の一族の娘でもあった第5の(ミーニエ)マリセに救われて日本に戻り、後に植民者連合(コロニスツ)世界を中心として歴史に名を残した磯原清らの父親となる(これはまた別の物語である)。
水の末娘は、史上唯一の“水の息子”(アトル・ウルワー)の養育を、父親?の出身地である島国の、山中の清浄な(水が豊富ではあるが海=水の太霊の版図=からは遠い)町に住む人類に託すことにし、水の姉娘たちの密かな協力と加護のもとで、その子供は育つことになった。
人界の用語?で言えば日本の長野(山梨かも)の田舎町のはずれにある、キリスト教会付属の愛護園(孤児院)の玄関先で、生後まもない捨て子として発見され、その雨上がりの朝、町を見おろす南アルプスの峰々があまりにも美しく峻険であったことから、園長によって“清峰 鋭 ”と命名された。質素ではあるが愛情と信仰心に恵まれた穏やかな環境であった。
その当時(西暦2000年代初頭)、日本国における政治?状況は悪化の一途をたどり、いまだ表面化はしていないものの、内部での武力によるクーデター(暗闘)の結果、『センター』と呼ばれる軍事(研究)機関が、多大な権力を握るようになっていた。
彼らは国民の総背番号化による動向の管理や、TVなど電子メディアへの介入(サブリミナル操作等)による思想の統制・方向づけを図ると同時に、優秀な素質を持つ子供を集めて早期教育を施し、次世代戦力の中核にしようという生体実験のプロジェクトを進行させており、その一貫として保育・幼稚園と小学校各学年における知能テストの普及強化が行われた。
清峰鋭は、乳幼児のころから異様に泳ぎが得意で、水難事故にあっても平気で生還するわ、寒中水泳に参加させれば何時間でも喜んで雪の降る海に潜っているわで、周囲の大人は少々肝を冷やすが、それ以外では従順で善良な性格の、おとなしい(無口な?)子供として、むしろ目だたないように振る舞っている。早熟で高い知能と人格とを持っており、小学校低学年にして大人の新聞を平気で読みこなし、園長名義で図書館から専門書を借りてきて読みあさるなどの芸当も、誰に教えられた訳でもなく弁えていた。
が、どうやらこれも謎の人物で、政治?の暗黒部分?の情報を、ある程度もっていたと覚しい園長の忠告に従って、その発達した知性を外部には漏らさないよう、注意して行動する習慣を身につけていた。学校のふだんのテストはもちろん、『センター』による統一知能テストでも、“やや利口”以上の点をたたき出すことがないよう、計算して解答していたフシがある。
しかし近所のマニアックな理工系の大学生と、ついうっかり“対等な”友人づきあいをしてしまった結果、口コミでその存在が『センター』に知られてしまい、『早期教育プログラム』の対象者として育った町から引き離されることになった。逆らえば園長の地位に圧力がかかり、つまり愛護園のほかの子供たちが行き場を失う事になるという脅しを受けて、やむなく『同意書』にサインを取られ、泣き伏す園長に簡単な別れを告げただけで、鋭は『センター』さしまわしの護送?車に乗せられた。彼本人の感覚から言えば、この時が、すべての“旅”の始まりとなっている。
これに間一髪で間に合わず、地団駄を踏んだのが『朝日ヶ森』の行動部隊である小学部の子供たちである。清峰鋭の天与の才については、『朝日ヶ森』関係者?である園長から早いうちに報告?がなされていたが、息子同然に愛情を注いでいた園長が、できれば手元に置きたいと望み、本人もそれに同意していた為、『朝日ヶ森』への編入は中等部以降という話になっていた(らしい)。が、『センター』の調査が身辺に及んでいると察知した『朝日ヶ森』が、しばらく迷った後に迎えの部隊を出した、その一足違いで、身柄を拘束(ほとんど誘拐)されてしまった訳である。
この迎えの部隊の謎の行動にひかれて救出作戦に同行したのが、清峰 鋭 に淡い初恋?を抱いていた同級生(小学4年生)で、当時は事故で両親を失ったショックにより言葉を失くし(全完黙症?)ていた楠木律子である。彼女には、その両親にからんだ別の物語において精霊族の不思議との関わりがあり、その血筋と才を見いだされて、救出作戦の後、『朝日ヶ森』に編入の運びとなった。後の『朝日ヶ森』第?代理事長である楠木女史その人であり、清峰 鋭 の息子(アトゥルヤー・アイラーヤム)を産んだ高原律子(たかはら・りつこ)を『朝日ヶ森』大使?として大地世界(ダィレムアス)に送り込んだ、実の祖母であり養い親でもある。
鋭は『センター』の北海道支部?へ護送の途中で、同じ車に乗り合わせた『朝日ヶ森』からの少年スパイ?、燎野(リョーノ)と知り合う。実験体として『センター』に捕らえられた精霊族の血をひく友人、ティシール・ティシーリアを救出する為に無謀とも思える『センター』侵入を敢行した彼は、ティシールとの再会を果たした後、脱出に失敗して二人ともに落命した。
この時、『センター』側の実験体として合成されながら、長じて実権を握る(少なくとも権力闘争で互角に渡り合う)までに成長していた少女(コードネームは無津城(NATSUKI))が、同年代の唯一の知り合いで、あるいは恋心が芽生えていたのかもしれない燎野の逃亡を助ける為に『センター』を裏切る行動をとり、絶命させられた。
彼女の生体脳を取り出して機械脳にリンクさせたものが後々『センター』の中枢頭脳としての役割を果たすが、ナツキの亡霊?の意志によって、キーワード『リョーノ』を知るものなら誰でも最優先で命令を下す事ができるという裏プログラムが付与された。
(このプログラムによって杉谷好一・当時13〜4歳?が会田正行に命を救われてしまい、結果として23世紀の地球文明の命運を分ける事になった。また、このパスワードを知る者が21世紀半ばで全滅?していた為、忘れられたまま消されることもなく存続しており、23世紀に入って再び杉谷に活用されている)。
この時の騒動に乗じて清峰 鋭 は『センター』からの自力脱出に成功したため、結果として楠木律子と同行していた『朝日ヶ森』救出部隊とは行き違う。
北海道は帯広南部?の川から下って海をわたり本州の北部まで?、ほとんど泳いで!(ほんとーか〜っっ!?)、逃避行を続けた彼は、さすがに体力?の限界を極めて行き倒れ寸前のところ、別の目的で山中を移動していた『朝日ヶ森』の有澄真里砂(ありずみ・まりさ)(大地世界(ダレムアス)での名称は皇女マーライシャ)らのグループに拾われ、何とか無事に『朝日ヶ森』へと辿り着いた。
そこで半年ほど休養を兼ねて学生として暮らした後、文系?である『朝日ヶ森』の姉妹校で、スイス?にある理工系の『アロウ・スクール(仮称)』へ転校(国外逃亡)するのが本人の希望であったが、直通の密航船が来るより早く、皇女であるマーライシャの迎えの魔法?に巻き込まれて大地世界へ抜けてしまった。この時、地球年齢で11歳ぐらいであった。
『 (年表) 』 (@高校〜)
2006年11月30日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (2)(宇宙暦) 公 私
元年 コロニスツ連合成立。 mr.豪田、宗主となる。
1年
2年 高原(楠木)律子、月へ。
リレキス・ジュン、シャンバラへ。
アルヤ・アラム生まれる。
3年
4年
5年
6年 ミネルヴァ・アルバトーレ誕生。
7年
8年
9年
10年 律子病没。アルヤ・アラム(8歳)、
宗主に引き取られる。
11年
12年
13年
14年 アルテミス・セイレア誕生。
15年
16年
17年
18年
19年
20年 アルバトーレ公女デメテル没。
ミネルバ公女(13歳)立つ。
アルヤ・アラム(17歳)、
アルバトーレへ。
21年
22年 マリー・セイレア没。 アルテミス8歳、アルバトーレへ。
アルヤ・アラム、2等監務官となる。
23年 宗女アルテミス(9歳)、
立太子。月の公宮へ。
24年 (“俺と好”第一部。)
(バカどもが過去から
ふっとんで来る。)
皇国スターエア方面軍壊滅。
25年
26年
27年
28年
29年
30年
31年
32年
33年 ミネルバ・アルバトーレ降嫁。
34年
35年
36年
37年
38年
39年
40年
41年
42年
43年
44年
45年
46年
47年
48年
49年
50年
51年
52年
53年
54年
55年
56年
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『告別式・栗原伸』
☆(ユミコから清へ)
「絶対的な、愛情なんてもの、信じてみたくもなかったけれど、兄さんとあなたを見ていると考えが違ってくるわ。心の中で声がするのよ。“もしかしたらそうじゃないかも知れない”って。あなたを見ていると、それが判るのよ、第三者のあたしにすら。
大丈夫、兄さんにも、いつかきっと通じる。」
☆「完全否定のぎりぎり一歩手前で、
本気で信じていらっしゃるのね、清さん」
☆「狼、ろう。あたしの小さな狼(ウルフ)。何処へ行ったの?」
「もう、“小さな”じゃないぜ、母さん。」
「本当に、あなたは伯父様によく似ているわ。
兄さんも、よくそうやって、あたしやエミリーを守ってくれた。」
「好が?」
「そうよ。意外?」
「いや納得する。」
どうどうと音をたててきしむ世界の中で、小さなちいさなおだやかな陽だまりが揺れている。
☆「ア・ルーヴァ・ターレの子供達よ」
宇宙放送の終了。ムーンIIの・力の砦では高い露台(バルコニー)に立って公女ミネルバが語りはじめていた。
「我がアルバトーレは宗主ゴウダとコロニスツ連合にじゅんじます。荷造りをなさい。子らを学校から呼び帰しなさい!
……………… 」
公女は去っていった。後を任された首席監務官アルヤ・アラムが露台の中央へと進み出た。
「・移民船の発進は第8月8日とする。
・抜けたい者はそのように申し出よ。同日、第2ポートから、地表への船を出す。
・移民船への配乗は地域別とする。…………」
遂に、音をたてて恒星移住計画(プロジェクト)は疾りはじめたのだ。
◎「父上の仇、覚悟っ!」
黄金色の髪をなびかせて女戦士セレニアは最後の部屋に駆け入って来た。
「よくぞ来た」
杉谷はボタンにかけた指に力をこめた。
「はうっっ!!」
一瞬の尖光が室内を襲った。セレニア・アルテミスの体が宙に飛んだ。
「マリアン! オーダ! キャスリーンっ!」
叩きつけられた壁の上からなおも必死に振り向いて部下達の名を鋭く叫んだ。
(自分に唯一欠けているのはこの不動性だ、好は思った。)
コロニスツ軍最精鋭を誇る無敵のアマゾネス部隊である。しかしそこに通廊の形はすでになく、放射光の乱舞だけがただ渦を巻いている。
「みんな!!」
弱々しく悲鳴をあげる娘もずるずると、叩きつけられた壁の上から無力に滑り落ちて行くのみである。内臓損傷で、放っておかれればとうてい救かり得ぬ傷であることを、戦場に慣れた杉谷の目は素速く見抜いていた。
「貴様」
なおも誇り高き純血種の少女は立ち上がろうともがく。それへ、冷たい一瞥を向けて、彼は床の一画の持ち手を引き上げていた。
脱出路である。
「3分で、楽になれるぞ」
彼は部屋の起爆装置を冷酷にセットして、脱出路のハッチを閉じた。
(注:セレニア・アルテミスのイラストあり。
「しっかりしたアゴと、濃いめの金髪と、
緑がかった茶色の瞳。享年二十二歳。」
“青狼伝説”
それはごくありふれた日常(いつも)の出来事だった。盗賊部隊と人の言う“青狼伝説”団の勢いを聞きつけて尋ねあてて来る血気にはやった若者を、首領自らが見分しては仲間に加えるか否かを決めるという。
今日のは吊りあがった黒い瞳をもつ極東系の少年だった。
「クォ・ハォといいます。こう書くんだけれど」
「ほう。」
少年が指で、床にまかれた砂の上に書く文字を見て首領は目を細めた。彼自身もいくらかは極東の血をひき、その文化をもあるていど受け継いでいる人間である。それが、精神の深さ高さを示す達筆であることは、見れば判った。そしてその他に
「好(ハォ)と、いうのか。」
彼が小さく呟やき、一瞬、なにごとかをなつかしむような遠い眼をした事に気づいた者は、おそらくあるまい。けれど彼はたしかに、そうしたのだ。
「いいだろう。まだ少し柄が小さいみたいだが、そんなのは放っておきゃいやでも育つからな。今どきそれだけの字がちゃんと書ける奴ってのは珍しい。オレでもそうはいかんぞ。……他には何処と何処の言葉を使える?」
「はい。」
少年が控え目に、だが威勢よく上げる言語数を内心舌を巻く思いでチェックしながら、これは案外ひろいものをしたのかもしれないぞと彼は考えていた。
その後刻である。他にもいろいろ首領としての雑事を片づけて広天幕を出た彼のあとを、逆側からすべり出るようにして追ってくるものがいた。
「狼(おおかみ)。」
彼は歩をゆるめて振りむいた。一団の首領としての彼の通称はあくまでも狼(ウルフ)である。かつてあった最はての島国のことばで彼を呼ぶ者はそれは彼の両親の母国でもあったのだから、昔のことは知らず今ではただ1人だけになっていた。同様の血筋をもつ、団の参謀格のひとり、まりこ・アニルである。
「好(ハォ)という言葉に、なにか思い入れでもあって?」
首領はかすかに顔をしかめて見せた。
「よく、見ていやがる。」
「あたりまえ。何のためのエンパス能力だと思っているの?」
真里呼(まりこ)
あなたの道が
あなた自身のもので ありますように!!
人は、生まれた時に、自分の名前をさえ名乗らない。
もっとも愛しい相手の名をこそ、呼びつづけているのである。
彼らは“過去”より女神たちの手により とばされた。
未来の運命をかえるために。
それはなんという皮肉であったことだろう。
神々の予定された計画をさえ無視して
思う力の強さのゆえに そなたの心はむくわれぬ
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”トライアングル・ラプソディー”
うぬぼれだっていいわ
彼に愛されてるのだと思いたいわ
錯覚だとしたって構やしないわ
だって すくなくとも あたしの方は
まちがいなく 彼を愛している
錯覚だとしたっていいわ。
うぬぼれだっていいわ
清、すくなくともあたしを嫌いになったりは
できないはずよ
あなたの手の内は みんな知りぬいている
錯覚だとしたって 構やしないわ
あたしはあなたを愛してる あなたも
覚悟をきめることね なんにせよ
言っておきますけれど
女って強いのよ。
女って恐いんですからね!
from ユミ♪
うぬぼれだっていいのよ
愛されてるって思いたい
錯覚だっても構いやしないわ
だって それでも あたしのほうは
まちがいなく 愛してる 〜
悲歌(ひいか)エレジー
彼女は銃を構えて言った。
「やっぱり……こうなってしまった、のね。」
「予測はしていたそうだろう?」
「えぇ。あなたも、ね?」
「ふふ……。」
赤いバラが7本、>窓際に飾られている。ゆかりはわずかにためらい、そして静かに背後の壁にもたれた。
「あなたがいなくなってしまったら、あたくしは誰を、敵として闘えばいいというのかしら。」
「すぐにいくらでも敵はできるさ。きみになら、」
「そうね。でもあたくしの最大最高の好敵手はあなたひとり。
さよなら。」
さよなら
つぶやいて、彼女はひきがねを引いた。
いきなりエスパッションっっ☆
「
唐突に叫ぶ声がしてその女の腕が清をつかまえた。
「え
清は振り向く。背の高い、暗い深紅色の髪をなびかせた少女
「ああ」と、言って、張りつめた表情のその女は笑うように、きつい目を細めた。
「何て名前なんだ? 今は」
時の流れを信じるな
あるのは
人間(ひと)の魂だけなのだから。
あごをつかまえて、言う。
「フン、いまはまだ、あたしのものじゃ
ないんだな。でも……」
(注:若き日の《星海女王》にクリソツな美少女?のイラストあり)
(※ サキが清の転生体=サキの「前世」が磯原清?=という設定は
仮定で未定です……☆)
覚えておおき
時の果てで
おまえをつかまえるよ
愛しい者よ
永遠の恋人よ。
覚えておおき
時の果てで
おまえをつかまえるよ
どこまででも
あたしは追って行くのだから
覚えておおき。
常にあたしとおまえは
ひとつのものであるだろう
覚えておおき
時の果てで
おまえをつかまえるよ
あたしは。
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「心配でしょうがない奴なんだ。何をやりだすのかホンット予測もつかなくて。常識なんて概念、カケラもないんじゃないかな。おれがついててやらないと、すぐに杉谷なんて不良にひっかかって
「
「O高? 私立じゃないか。なんで
「なんでって…… なんでだろ? なんとなく……」
高橋の家の豆腐屋の収入では、私立高の学費なんぞとてもまかなえたもんじゃない。それをどうにかするためには、奨学金をうけて入学する他はなく
理由もわからない恐怖感に追いつめられてガリ勉を続けた彼は、ついに、倒れた。
「なんか手伝うことある?」
「それは社交辞令ですか?」
「多分ね。あたしに実際あんたの仕事が代行できるとは思えんもん」
>本編没原 P.321
第2部 “好のいない日々” より。
「朝の
日曜はと言えば朝から晩までドラム叩いて
それじゃ一体おまえいつ体やすめるんだよ? 寝る暇だってロクにない筈じゃないか。音楽か、バイクか、どっちかやめれば仕事だってひとつだけで十分喰って行かれる筈だろ?」
「ボーヤみたくに四六時中眠たがってなくっても人間は生きてかれるモンなんですよォ」
「“狼(ろう)”っ! 俺まじめに言ってんだぜ。おまけにひっきりなしの酒タバコ
「おや、おたくだってやってるじゃん」
「俺はマリファナにまで手ェ出してない!」
「あれは無害ですヨォ。習慣性だってないし……」
「狼っ!」
めずらしくまともに
「あンねー、清。バイクっつーのはおれちゃんのいっちゃん大事なシュミで、音楽の方はおれちゃんのライフワークっつーもんなのよ。おわかりる?」
「そんな
だけど今に体こわしちまうよ。どうしたら
清はすこし顔をゆがめて真っ直ぐに相手の眼を見つめていた。
(注: 以下、×××ネタのお嫌いなかたを考慮して、自粛★)
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1984.09.27.
狼(ロン)、と その男は呼ばれていた。
アウトローにはありふれた名前だ。
だけどその男は、その男だけは違った。
本物の、誇り高い獣
馬賊とでも野党とも、好きなように呼ぶがいい。けれど奴らには、
そういった類には決っして見られないような輝きがあった。奴ら、
『青狼伝説』団には
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