家族構成
 
父 リーオ・アークトゥールス=ラン 39歳
  地球(テラ)本星厚生省所属、民生に関する行政勤務。
  過去、極東地区代表として地球系星間連邦議会議員二回。
  (サキにとっちゃ空気か水みたいなもん)
 
母 サエム・ラン=アークトゥールス(死亡・39歳)
  言語、及び、神話民俗学者。
 
姉 サユリ・ラン=アークトゥールス 15歳
  地球(テラ)星連立 舞踊学校(バリエナス)所属。職業舞踊手。
 
 
 現在9歳、あと一と月足らずで10歳になろうというサキは、いつものくせでツァツァツァッと舌打ちして、
「あー、なんてへたくそな字だろ!」
と、ぼやきつつ、それでもせっせと、入学手続きの書類の中に入っていた身上調査書に書き込んでいた。
 頃は初春。
ユアミ市外縁部のこのあたりでは、すでに傾き始めた西陽がゆらゆらとかげろうを舞わせていて、閉めきった部屋の中ではむしろ汗ばんでくるくらいだ。
サキは行儀の悪いことに、器用に足の指で窓を押し開けて、最後の一行を書きあげると、窓わくの上に引っ越して声をあげて読みなおした。
「名前、サキ・ラン=アークトゥールス。女子。9歳。生年月日SP元年4月3日。本籍地……アジア・極東地区北列島……あ、ここ間違ってる。」
サキは書きなおしながら、ふっと手をやすめて、はるか窓の向うを見やった。
下書きが終ったらやはり姉さんのところへ持って行かねばならないだろう。
彼女の字は公の文書を書くには幼稚すぎるのだ。
 それでも、やっぱり、せっかく受験地獄(!?)  もっとも彼女は好きでファーツアロウを受けたのだから試験勉強も楽しかったが  をくぐり抜けて入学資格を手に入れたことでもあるし、サキはこれを機会に、ずっと母親代わりだった姉の管(監)理下から完全に独立してしまいたかった。
いや、それよりも何よりも、サキには最近のサユリ姉さんがわからない、いや、わかりたくない。
不信に陥っていると言っていいだろう。
そんな姉に対して自分がどう思っているのかさえはっきり捕めていなかったから、できる事なら近寄りたくなかった。
 ……が、書類も下書きは全部終ってしまい、明後日にはその書類をたずさえて入学式に赴くのだ。
サキはすぐに、思い切りよく立ちあがり、階下へ行ってくったくなく姉さんにたの……もうとは思ったが、実際にやったのはぶっきらぼうに書類の束をつき出して、
「これ、明日までに清書して。」
つまりは必要最低限外の口は一切きかずに、逃げだしてしまったのだ。
サユリはもうせんからと同じ深い悩みの瞳をして、ただうなずいてうけとっただけだった。
 
   サキが、実のところ、サユリが何を悩んでいるのかわかっていることを、当のサキ自身が一番良く知っていた。
事の次第もなにもかも。
しかし、彼女のその分裂した想いを是認することは、つまりは自分の存在を否定する事になる  と、サキは固く思い込んでいる。
9歳という年令に不相応な程の鋭い感受性と洞察力を見につけてしまっているサキは、年齢から来る未経験さで、まだ、人を思いやるゆとりというものは持っていなかった。
 
本当に、サキにはわかっていたのだ。
サユリの心の中に、平静の彼女のサキに対する態度からはおよそ考えもつかない葛藤が渦巻いている事を知ったのは、まだたった3歳の時だった。
物心つくかつかぬかの頃だったのに、その時の事ばかりは、わからないままにサキの心に“世界”に対する最初の不安として長く留められている。
 
 
                .
 
 地域別教育期間中は、虚弱体質とか特別な理由がない限り、その地区内で初等課の教育をうけるのが普通になっている。
サキもまた例外ではなく、バレエを習うようになってからは、午前中は地区の学校で体育実技以外の普通授業をうけ、午後にはユアミ市内の別の地区の、星立舞踊団(テラ・バリエナス)附属学校へ通って、バレエ始め古今東西のありとあらゆる舞踊を基礎からたたきこまれた。
サキは踊る事が好きだったし、周囲も彼女に期待していた。
舞踊団の人間はだれもかも、サキが12歳になったら舞踊実技を選択し、姉サユリがそうであるように、大御所のだれかの内弟子になって、義務教育課程が終わりしだい職業舞踊手になるのだろうと思っていた。
 が、サキはそうしなかった。
彼女は、地域別教育終了と共に行われる、頭脳ランクによる進学校ふりわけにおいて、地球系星間連邦ずい一の英才をもって誇るアロウ・スクール編入を希望したのだ。
正に驚天動地。
サユリを始めとして、バレエ界の教師たちはこぞってサキの才能をなげきおしみ、また、本当に秋を知らない人々は、気でもふれたかとあざわらった。
いや、アロウ・スクールどまりならばまだよい。
サキの最終目的は、リスタルラーナ星間連合の、最高教育機関S・S・Sへの留学資格を得る事だったのだ。
地球系星人何十億かのうち、サキと同じ年にアロウ・スクール編入を志ざす者約一億。そのうち運よく合格する者1000名。交換留学生の枠は……60名。
さして勉強していなくて、どの科目もまあ中の上から上上までとれるサキにしてみても、針の先ほどもない可能性だ。
が、サキは、とにかくはげみにはげんで勉強して、ついになぜかアロウ・スクールに合格してしまった。
あとはまあとにかくがんばって、来年の資格審査試験1000分の60に喰いこむべく努力するしかない。
たとえまわりの人間全てがどんな反応を示そうと、
 
 
             (未完)
 
 

1
2
3家庭
4 教育
5  期間
6初等
7 教育
8  期間
9(入試)資格
10 基本科(ファーツアロウ)
11 (SSS)
12 (実・応)
13高等
14 教育
15  期間
16(実・応)
17

  
 たぶんサキはその、一生のうちでも最も古い記憶を、死ぬまで忘れることはないだろう。
 サユリの前から逃げだしてきたその足で、サキは川べりの土手から砂利を水面につかみたたきつけていた。
 ざっとつかむ、ぶんと腕ごと放り出す、石が跳ぶ。
10個、20個とまとめて空を切っていくうちのいくつかは、毎回きまっておかしな飛び方をした。
自然な放物線をえがかず、定規をあてたようにまっすぐ、他の石をたたき、追い落としながら直進すると、あるていど行った所から不意に、ほとんど垂直に落下するのだ。
どうやらサキが興奮すればするほど落下開始点が遅くなるようだが、サキは、学校で力学から相対性理論までもマスターしているにもかかわらず、別段その奇妙さには気がつかなかった。
 ただ、投げている。
彼女は熱心に投げる事にだけ専心しようとした。
つかんで、投げる、つかんで投げる。
とうとう春の川べりのサキの右手のあたりだけ、砂利がうすくなって湿った砂地が出てきてしまった。
「ツァッ!」
サキはまたもや舌うちして、少し上の草地に身を投げだした。
頭上はるか、かたむき始めた陽の光の空のどこかで雲雀が鳴いている。
サキは心を落ちつけて「いつもの幻想」の中に溶けこもうとしたが、あまりに自分の中味の人間臭さが鼻について、ひばりのように空の中には飛びこめなかった。
サキは目をつぶった。
涙があふれ流れてくるのを止められなかった。
始めて空高く心を飛ばしたのは3歳の時。
姉さんの心の中にある、どろどろしたものが、なんとはなしにただ恐ろしくて哀しくて、母がその時期再々入院を繰り返していたからかもしれない、その頃住んでいた、人家一つない高原の、お花畑の真っただ中で、大地にくるまって火がついたように救いを求めて泣き叫んだことがある。
その時はまだ何も知らなかったから、ただ純粋に悲しかっただけ、ひとしきり泣いた後には、気がつくと母から教わった古い古い、「本当の幸福になれるよう願う」呪文の唄を、いざまづいて唄っていた。
その時、  サキ自身にはよくわからない  一陣の突風か光かが吹いてきたように感じると、次の瞬間に彼女は、どこだか大宇宙の涯(は)ての、涯ての、一番はずれからとびだして、おびただしい数の“魂”の流れを見た。
後で父が倒れているサキを見つけた時、死んでいるのかと思ったという。
サキが母  もう逝ってしまったサエム  にこの「幻想」のことを打ちあける気になったのは、まる一年たった4歳の秋。
母は以前から知っていたようにうなずいて、12歳になったら読むようにと、古い伝承の本を一冊くれた。
そうして、それから母が死ぬまでの2年間、サエムは折にふれてはサキに、心を澄ませ腹をすえて、そうしたいと思う時に見たい所へ心を「飛ばせる」術を教えてくれた。
サエムは  サキがくれを「空想」とか「幻覚」と呼ぶたびに、とまどうような悲しいような、幽かにあいまいな微笑をうかべるのだった。
 
いつしかサキは寝入っていた。
いや、寝入ったのはサキの体が、だろう。
思考に没頭するあまり、サキはしばしば自分の体の世話をするのを放りだしてしまう。
死んだように横たわって空虚(うつろ)に空を見あげたまま、見る人が見れば、サキの瞳の中をサユリと、生前のサエムの姿が交錯してゆくのが見えたかもしれない。
サキは、幼ない頃からの思い出を全てひっくりかえして、母の一言一言、姉の一挙一動の中から、自分自身への解答を見出そうとした。
 
 
              .
   サキはサエムの病状を知らされていなかった。
自分が生まれた時の様子も、母の死に至る先天性疾患の事も。
だから母が床についていない日には、いつでも散歩や鬼ごっこや、母さまお得意の「古いお話」をせがんだ。
そして更に決定的だったのは  「幻想」。
生まれつきその能力が備っているサキと違って、サエムはとても弱かった。(※)
それでも最後の病の床から、サエムはせがまれるままに「幻想」を思い通りにあやつる方法を教えた。
そして  サエムが冷たく眠りについたその朝、何も知らずに起きだしてきたサキにむかってサユリは、あなたが母さんを殺したのだと、たたきつけるように叫んだのだった。
 
 
 すっかり笑わなくなったサキが、正式にバレエ学校に入学したのはそれから間もなくの事だった。
基礎はできていたから、習い始めるとすぐに群を抜いて上達し、なにかをふっきるように打ちこんで、いつか子役としてのサユリ・ランの妹サキは、姉の水のような叙情性とは違った、激しい人間性で将来をうわさされるまでになった。
 意外にも、サキをバレエの道に入れたのはサユリ自身だった。
罪滅ぼしの気もあったのかも知れない。
母の死後1ヶ月もして、思い出深い家を去り、現在のユアミ市郊外に引っ越してから後、サユリは心を閉ざしたままのサキを気にかけて、誠心誠意面倒を見た。
思えば彼女がその時12歳。現在のサキと同じ。
母親の死で動転して、自分でも思いもかけない事を口走ってしまう事もあっただろう。
 サユリが、ある意味でサキを憎んでいたのは確かだった。
けれどそこがサキの不思議な所で、血のつながりだけではない、どんな人間でも、サキを心底あげて憎むことなどできなかった。
とりたてて美点があるというわけでなく、後年、やはりその同じ事がサキの身の上に悲劇をもたらすのだが、憎んで憎み切れない心の不安定さが、サキの誕生以来、母の死ぬその日まで、サユリの心をおびやかしつづけたことは確かだった。
だからむしろ、サエムの死はサユリに安息をもたらした。
始めのうちこそ、純粋にサキを愛するという感情にとまどってぎごちなくはしていたものの、引っ越しによって完全に母から逃れでると、一切の邪念はサユリから離れていった。
サキは、年と、いつも年齢以下に見られる外見に似合わぬ、実に鋭敏な感受性と理解力の持ち主だったから、この時も、最初の衝撃から覚めると徐々に姉の意思をを理解し、半年もたつ頃にはようやく生来の明るさをとりもどした。
 が、それは周囲の人間が見るように、もとに戻った、あるいは前より元気になったというわけではなかった。
サキは人生の裏表を見るようになり、自分がどう振るまい、何をすれば他人はどう考えるのか、無意識のうちに頭のすみで計算するようになった。
秘かに自分の出生時の事を調べ、一人になるとサキは、どうしても深い方、深い方と自分の、人間の、本質的な問をかきわけていった。
そして  生まれて始めて人間の不条理さに気づいた日から2年。
8歳の 春 に、サキは大好きだったバレエを捨てた。
 
 
 それは、確かに、子供の未経験さから来る思い込み、ということはあったかもしれない。
 それだからこそ、迷いつづけて答えをだした後には、ひたむきな一途さで打ちこんだ。(※)

「何が弱かったのか主語入れた方がいいんじゃない?」
「平仮名の「る」と感じの「子」が見分けつかんぞ」
「ひたむきな一途さって重複じゃない?馬から落馬したとか小さな小人とか」……May.19……(by姉)


 姉、キライっ★ ( ̄^ ̄;)( ̄^ ̄;)( ̄^ ̄;)( ̄^ ̄;)( ̄^ ̄;)
 
               .
 
  3歳、海辺。
なんの時だったか忘れた。たぶん姉さんの9歳の時の、舞踊の発表会の帰りだろう。
「……母さん! わたしを見てよ!」
波打ち際で遊んでいたサキの心に、不意に母とサユリの言い争う声が聞こえてきた。
その時までは、世界は、ただ愛と慈しみと、優しさだけを持ってサキを迎え入れていたのに。
「今日はわたしの日よ! わたしが踊ったのよ! なのになぜ母さんは、いつもいつもいまも、サキ、サキの話ばかり」
母はただ謝罪した。
人間として、自分の欠点を許して欲しい。あなたはあまりにも幼ない日の私に似ていて、まるで自分の悪い点をそっくり受けついでしまっているのです。私にはあなたが、何を考え何を見て、どう成長するのか、手に取るようにわかってしまう。
あなたは私の愚かさをそのまま再現したようで、時として私には耐え難い。その点サキは……
ふっと視線をはずして、空の一点にサエムは何を見ていたのだろう。
彼女は、サキが「我々とはまったく違う」人間になるだろうと、その未知性に母として人間として、魅(ひ)かれてしまうのだと言った。
サユリが何故そんなに苦しんでいるのか、そのわけもすべてわかるとも。
  サキには、わからなかった。「何か」大事な点を見落としている。
「わかったわ。母さんはわたしを愛してくれてはいないのね。」
冷たく、冷たく、冷たく、サユリは言い放った。(※)
9歳にして、母親の愛を求める娘という役割を断念し、彼女は一人の女として、サエムとの戦いを開始したのだ。
「これだけは言っておくわ。……サキに、舞踊の道を選ばせないでね。あの子には才能があるわ。  もし、サキと、舞台の上でまで争わなければならなくなったら、わたし、耐えられない。」
  ああ、なぜ二人は岩かげにサキのいることに気づかなかったのだろう。

その日すぐにサエムは発作を起こして入院し、サキは始めての「幻想」の驚きで、長い間この日の事を忘れていた。
いや、覚えてはいられない抑圧となって、彼女自身が無意識のうちに、記憶の底に封じ込めていたのだ。
 それが、再び現実となってサキの世界に戻って来たのは6歳の早春。母サエムが遂に逝ってしまった時だった。



「サキならまだしも並の女の子が9歳でこんな事、言うかねえ アムロだって15だったぞ May.19」という姉からのチャチャが書き込んであり、
「返信;サユリが並の女の子であるわけがないでしょ〜!」と、反論?が書いてある…… (^◇^;) 

 
(*「サユリ16歳」という但し書きのレオタード姿の憂い顔の半身イラストあり、姉が「26歳とゆーても通るわ、この表情★」とかウルサク書き込んでいる……★( ̄^ ̄;)★

 えぇ。ハンパに優秀な「姉」と、
天然で規格外な「妹」(私)の葛藤……つーネタは、
まんま実話(実体験)が、下敷きに決まってますとも!! (-_-;)>"


                .

 
 
 「……でも、ねえ、ヘレナ。好きでも憎んでいなけりゃ
  自分を保てなくなる時もあるし   

 「憎んでてもどうしても憎み切れなくて、愛しちゃって、
  サンドイッチになってつぶれちゃう人だって、いるんだよ。」
 
 

 
 

 Jrr.tolkien’s

 “The LORD of the Rings”
 
 (c)1978 Tolkien Enterprises.


 ……の、映画館で上映直後に買った!! 大学ノートを使用☆

 中学2年で、『指輪物語』の米国製?劇場アニメ版を見て、
「自分は絵描き(漫画家)は無理だ! 文字書き(小説家)に、
 なるぞっ!!」……と、将来の焦点を絞ってしまった瞬間から、
 
 ……大量〜〜〜〜に!! 「下書き」を書き散らしていた頃……☆

 (^◇^;)”
                .
 
 
     エスパッション・シリーズ 第一巻
     「サキ・幼ない頃」
 
 
 わたしは小さい頃からひどく変わった子供だった。
もっとも、今でもよく友人達から……あなたって変わってるのねェ……とジト目で言われているのだけれど、そのわたしから見ても、昔のわたしの風変わりさはたいしたものだった。 

 
   あれは、いくつの頃だったろう。
人間は死期が近づくと幼ない頃を思いだすと言うけれど、わたしは最近、二人の女の子が母親とつれだって海辺を歩いている夢を見るようになった。
それはわたしの記憶の中でも一番古いものの一つで、二人の女の子は姉さんとわたしだった。
 あれはわたしが3歳、ねえさんが9歳の時。
ねえさんの舞踊専門学校(バリエ・スクール)の発表会の帰りに、会場のそばの遊歩道をわたしたちは歩いていた。
たぶん、わたしが始めて舞踊(バリエ)に関心を持ったのもこの時だったのだと思う。
始めて見た本物の舞踊(バリエ)と、表彰式の時に最年少受賞者のねえさんといっしょに写真にとられたことで、わたしはすっかり興奮して普段の倍もはしゃいだ。
 冬の終りのやわらかい光が遊歩道のまわりの白樺林の中で笑っていて、あつらえてもらったばかりのよそいきが暑苦しいくらいだったのを覚えている。
 通りが終る所に白い石段があって、そこを降りるとぷんと潮の香が鼻をつく、波の静かな磯浜があった。
大型のロケットバスが、沖合のかなたに光っている白い人工海上都市(マリンドームシティ)から飛び発った。
碧(みどり)や青や所によっては銀色の小さな淵のあいだを探し歩いて、海に来るといつもやるように光っている小石や、確か宝貝という名だったと思うけれど大きいのや小さいのをポケットいっぱいにつめこんでいると、不意に岩の向うからかあさんとサユリ姉さんの言い争そう声が聞こえてきた。
二人は、わたしが遊びながら遠くへ行ったと思っていたのだろう。
わたしはなぜだか出て行ってはいけないような気がして岩かげで息をひそめていた。
 ショックだった。
まだ自分と母さんと父さんと姉さんだけが世界の大部分を占めていた頃で、わたしには年の近い友達もいなかったし姉さんとは年が離れていたから、自分でかんしゃくをおこしてあたりちらす以外、
 
 
              (未完)
 
 あははっ。あはは。
 ほほほほほほ……
 
 ただ一面の草原(くさはら)の中、秋の日の草の実草の穂かきわけて、二歳と半のアキはあちらへ走り、こちらへ走りして、追いかけてくるサエム夫人の手からひょい、ひょいと上手に体をかわしながら、いまだ音程のそろいきらない幼い声で、鬼さんこちらを歌っていた。
 「かーさま、こちら、おーにさん、こっちら。かーさまこちら、おーにさんこっちらっ!」
 サエム夫人はと言えば、絹のハンカチで上手に目隠しをして、少し身をかがめるようにサキの頭ほどの高さに腕を伸ばし、透けるほどのきゃしゃな白い指先をひらひらとさせながら、美しい灰色の部屋着のすそが風になびいて、早いや麦わら色になり始めた草々に打たれてゆくまま、それはまるでそのまま空気の精ででもあるかのように、さらさらと流れて、サキの後を追ってゆくのだった。
 サキはそんなかあさまをすごく美しいと思い、それで少し走っていっては後ろを振り向いて、ぴょんぴょんと前かがみにはねながら、ひじから腕をぴったり胸につけるようにして、小さなあごのすぐ下の所で、あの子供独特のリズムのとりかたで、ぱあんぱん、と手をたたいた。
 ぱあん ぱん。 かあさまこっち
 ぱあん ぱん。 かあさま、追っかけてきて!
 
 ぱあん ぱん。 ぱあん ぱん。
 サキの手の指が右や左やすぐ後ろで鳴るたびに、サエム夫人は驚くほどの素速さと正確さで愛する娘のサキの方へ手を伸ばすのだが、いよいよとなるとサキはひょいと地面にすわりこんでは、その手の下をくぐりぬけてしまう。
 それで、このゲームはさっきから終りもなく続けられているのだった。

 ぱあんぱん。ほほほほほ。
 ぱあんぱん。あはは、ほほほ。

 そこは金糸色の草原の中、どこまでも続く二人だけの世界だった。
 遠くからサユリが、この世界の中に入って行けずに、草原の端に立って呼んでいた。
 「サキ、だめよ。母さんは心臓が悪いんだから。
  母さん、母さん、また発作が起きるわよっ!」
 発作という言葉を聞いて、サエム夫人はあきらかに不快の色を示して立ちどまった。
 淡い金色の世界はこわされてしまったのだ。
 現実の世界で、彼女は、あと数年、いや悪くすればこの瞬間にも停止するかもしれないと医師に保障された心臓を背負って、愛する家族に迷惑をかけながら暮している。
 サキも発作と聞いて、なんとなくはしゃぐのをやめた。
 サエム夫人はいまいましげにハンカチーフをほどいて、のろのろと家へ向って歩きだした。
 体が急に重くなったようで、足を動かすのがおっくうだった。
 サキがちょこまかとかけよってきて、長い部屋着のすそにまとわりついた。
 「ね……お話聞かせて。おはなしい!」
 はねるように元気な娘の体の暖かさを感じて、サエム夫人の重いほおはようやく少しばかりなごんだ。
 「ええ、そうねサキ。お話してあげましょうね……」
 仲よく寄りそって歩く背中を、サユリが、彼女に似合わぬ激しさで見送っていたことに、二人はついに気がつかなかった。
 
        ×     ×     ×
 
 新暦 3年 10月 2日
 
 二人種の邂逅より四年の歳月が過ぎ、新時代の娘、サキに関するマス・コミュニケーションの関心もようやく薄れてきたようです。
二歳半から始めた、幼小児教育過程も、日頃私とともに家にいる時間の長いせいもあり、本人も好きでやっていて、あと半年もあれば修了させてしまうことができるでしょう。
母親の欲目を抜きにしても、通常3〜5歳の三年間で修めるべきことを、
 
 
 
             (未完) 
 
 

 
   中略。
   ダーナー船長の独断。
   ケティアの激怒。
   地球側の感謝。   うんぬんくんぬん……。
 
 かくて、536対20という圧倒的多数をもって開国に賛同がなされ、細かい条約の討議・調整の後、全人投票により可決された上で、調印が行なわれる事になった。


 
 

 前略、ケティア・サーク様。
 未だ病床にあります由、母の代筆にて便り致します非礼、どうか御容赦下さいませ。
この度、複雑な政界の事、諸々問題も御座いましょうに、曲げて、私ども親娘(おやこ)のために御尽力お申し入れ下されました事、まことに有難く、感謝の言葉も見つかりませぬ次第で御座います。
おかげさまでこの命を長らへる事もでき、横では、安らかな寝息をたてて、私どもの娘が寝入っております。
本日をもって既に三週間ともなり、医師様の生後の御処置のおかげでございますが、母に似ぬ健康なみどり児にて、私ども一同皆安堵到して居ります次第。
名を蘭咲子(ランサキコ)
私ども一族の古い言葉で『咲く』とは花の開く意に御座います。
本来ならば、このような場合、恩人であるあなたさまに名付け親となって下さるようお願い申し上げるべき……
長女紗由里(サユリ)ともども、次の世代を担うべき子供らの一人で御座います。
貴女様の星との交流の中に、新しい文化の花を開かせる、そのような子に育って欲しいと、心からの願いをこめて、こう付けさせていただきました。
 では、全人投票に向けての各地遊説で、かなりお疲れの様子とうかがいました。どうぞお体おいとい下さいませ。
                       かしこ。
 とり急ぎ御礼まで。
             四月二十四日 蘭冴夢(ランサエム)

                              』
 
 
 書き文字に慣れていないうえの達筆で、文体そのものがやや擬古文調なもので、ケティアが読むのにはかなり骨がいったが、自分より年上の女性からの礼状の巧さに内心下を巻いた。
 
 読みおわって、ケティアは嘆息をついた。
 「やっぱり、謝りに行くべきかしら……」
 
 後日、ケティアとカートが盛大な式を挙げた時、キャプテン・ダーナーが賓客の一人として招かれていた事は言うまでもない。 
 
 
 


 Memo
・リースの挿話どの程度まで入れるか。
 家族構成聞いとくこと。住所も。

 
 


 
 砂 小 早 紗
 遊 夕 有 木優 結 幽 悠 由
 利 梨 理 里
 
 砂由里
 砂由梨
 紗木綿里
 小由梨
 早由梨
 紗由里
 紗由利
 紗由梨
 小由里
 
 冴由利
 冴由理
 

……結構重要な登場人物であるサユリ(蘭小百合)の名前(文字)がまだ決まっていなかった、ということは、どうもこれが栄えある第一稿?のようですな……A^-^;)
 
                .
 
     プロローグ
 
 三月末日……深夜。
 地球系星間連邦議会の特殊臨時総会に出席していたアークタス議員は、会議の合い間に呼び出しをうけ、自宅の主治医からかかってきたテレビ電話に出て……愕然とした。
 彼の妻、サエム夫人に陣痛が始まったと、言うのである。
 そしてそれは、とりもなおさずサエム夫人の死を意味することだった。
 生まれつき病弱で、加えて長女サユリの出産の際に完全に心臓をこわしてしまったサエムには、出産などはとんでもない。三ヶ月の時点での中絶手術にすら、耐え得るだけの体力がなかったのである。
 すぐに帰って来いと医者は言った。あたりまえである。
 が、アークタスは必死の思いで首を振った。
 全地球系連邦の行く末に関わる会議中に、たとえどんな小さな地域のであろうと、その代表であるのに、自分の家族のことで仕事を放り出すことはできない。
 かつて恋の上での競争者(ライヴァル)であり、今も変わらぬ親友のドクター・ヤマはこのひとでなしと思いきり怒鳴って、たたきつけるように電話を切った。
 現在サエムは妊娠6ヶ月目である。
 それが陣痛と言うのならば、それは、多分、異星人来のデマに怖えて、ショックを受けたのだろう。
   そう、異星人。
 異星人(リスタルラーナ)は、確かに来ている。
 会議再会10分前のベルが、議事堂全体に響きわたったとき、アークタスは精神的な打撃ですっかり平衡感覚を失くしてしまった脚と体を、かろうじての所で壁にささえていた。
   だが、それがどうだと言うのだ?
 サエムはもう死ぬのだ。 死・ぬ・の・だ!! ……自分のせいで。
 彼は打ちひしがれて自分の議席へと戻って行った。
 そんな彼の姿に不審を抱いて、何が起ったのかと受けつけに尋ねていた男がいることも知らずに。
 その男は、わけを聞くとすぐ、その場でアークタスの自宅へと電話を入れ、出てきたアークタスの義父母から、サエムの病名と容態とを詳しく聞きだした。
 
 
 「どこへ行ってらしたんですの、ダーナーさん?」
 ケティア・サーク大使が、例のつっけんどんな調子で問いただした。
 「今はあたくしたち一人一人がリスタルラーナ星間連盟の代表なのだってこと、お忘れになったようですわね。あまり不審な行動はとらないでいただきたいわ。」
 ケティア・サークは25歳。同僚のカート・エレンヌ大使と共に、リスタルラーナ星間連盟を代表して、二年間の宇宙旅行の末、国交樹立のための全権大使として地球へやってきたのだ。
 どちらの国家にとっても、異星人との接触は始めてのことである。
 神経がピリピリして、つい文切り口調になるのも無理はない。
 が、それだけではない。
 もともとケティアはキャプテン・ダーナーをけぎらいしている。
 理由はと言えば、2年の航海を通じて彼が一度でも笑うのを見たことがないというだけのことなのだが、それは彼女に言わせれば「人間として重大な」情緒欠陥であり、「笑わない人間を見るとゾッとする」のだそうだ。
 あいかわらずムスっとして口を利かないダーナー船長に向ってケティアはいせいよくまくしたてているが、まあ、所せん相手が悪い。てんから無視して何か考えこんでいる様子を見て、ケティアのぐるぐると元気のいい赤っ毛は、文字通り怒髪天をつかんばかりになった。
 くすり、とカート大使が笑うと、すかさずケティアのあなおっそろしいひとにらみが飛んでくる。
 「なにがおかしいんですのっ!!」
 「え! あ、いや……」
 カートは慌てて手を振った。
 「そうではないんですよ。ただ……」
 「ただ?!」
 「その……あなたのように気性の激しい女性(ひと)が、よく外交官をやっていられるなぁと、……あ、いや!」
 前々から思っていたことでもあったので、つい本音が出てしまい、カート大使はあわてて口をふさがねばならなかった。
 ケティアの方はと言えば、最大級の侮辱を受けとって、(とは言え、言った本人はむしろ好意と賛美をもってのことだったのだが。)、その髪の毛よりもまっ赤にふくれあがったあげく息がつまって黙りこんでしまった。
 26歳独身のカート大使が、この失策(ヘマ)を大いに後悔したことは言うまでもない。
 
 一行が今いるのは、地球本星にある連邦本部総会議場のVIPルームの一つだった。
 本来ここは司法局長    の専用であるのだが、連邦本部にかつて来賓というものの来たためしもなかったため、彼女がどうぞと言って開け渡したのだ。
 最高頭脳の一人の部屋にしてはつつましい調度で、国のしくみの根本を司(つかさ)どる女性の、その人となりがうかがわれた。
 青い服でしっとりと部屋の中に溶け込んでいるような彼(か)の女性(ひと)が、一行を迎え入れた後に一礼して部屋を辞す時、ケティアは部屋を占領(のっとっ)てしまった事に対して、ひどくうしろめたいものを感じた。
 とにかく彼女らが地球にやってきて丸二日、敬遠して口をきこうとしない者も、屈託なく親しげに微笑みかけてくる者も、様々いたが、総じて若手の多い政府要人の全てに、一見して、すなわち「誠実な人」だという印像を与えられ続けているのである。
 これは、自国(リスタルラーナ)のひとくせもふたくせもありそうな政治屋(たぬきおやじ)ども相手とは、大分勝手が違うな、と、正使のケティア・カート始め、大使一行のだれもが感じた。
 相手(むこう)が私情を交えず直截に話しかけてくる以上、こちらも腰をすえて、腹蔵のないところを答えなければならないのである。
 「いや、若い国なんですよ。若い国なんですねえ」
 カート大使は、また妙な所に観点をすえて、しきりに感激しているようすだったが、ケティアはと言えば、自分のような若輩の、しかもだれからも言われるように感情が豊かすぎて、かけひきや腹芸の苦手な、外交官としてはかなり型破りな人間がわざわざ正使に指名されたりしたのは、その辺が理由だったのかしらんと一人で納得した。
 
 さて、一行がここで何をしているかと言えば、待っているのである。二日前に地球連邦の勢力範囲に到達し、その時点で連邦政府との正式な交信(コンタクト)。半日後には一応歓迎という形で地球本姓への着陸を許可されて、各星間にとびかっている異星人来襲のデマを鎮めるため、ということで、ぶっつけ本番同様に、政府専用の通信帯(チャンネル)を通して、全星域に向けて『友好の辞』というものをしゃべるはめになった。
 その後、今朝方の事だが、夜どうしかけて集まってきた全議員の前で、リスタルラーナ代表として言うだけのことは言い終えると、ハードスケジュールにかえって地球側の方が同情して、「正式な宿舎が決まるまで」、このVIPルームでお休みを、と、事の次第が運んだわけである。
 総会議場では、30分の休憩の後に今しも「国交を開くべきか否か」についての大論戦が再回されようとしていて、使節団一行は備えつけのパネルで、その様子  賛成・反対のどちらの意見に傾くか  を、かたずを飲んで見守っているわけだ。
 が、何か手違いでも生じたのか、休憩時間を5分まわっても、内閣の主要メンバーの入場がない。
 「おそいわね」
 ケティアがイライラした様子で椅子のひじかけを弾(はじ)いた。
 10分たった。なかなか始まらない。
 カート大使は不意に言いだした。
 「    さん、先程はどちらへいらしてたんです? 特に行動を制限されているわけではないですが、やはり責任者としては知っておきたいので……」
 ケティアとはうってかわった、落ちついて丁寧な言い方だ。
 「ふむ……」
      は、相かわらず無愛想な声でぶすっと言った。
 
 


 マリシェーラ・ダエイン
 ヤスルミ・ダエイン


 
 一つ、 始めから書くこと。
 
 一つ、 話の完成度など気にかけぬこと。
 
 一つ、 自分に生直であること。
 
 一つ、 飾らず、偽らぬこと。
 

 
 
                .
 
    3.
 
 彼は混乱を極める市街の、既にこの騒ぎの余波で異常を来たしたものか数メートル進んではガクガクとベクトルに変調を起すロードベルトの上で、とにかく目をむいて前方をにらんでいた。シゾカ市(シティ)の全ドーム群が一斉に喚き立てているような喧噪の中では、他に何をしようにもする事が無かったのだ。
怒号、悲鳴、火の付いたような子供の泣き声。山のような荷物を抱えて路上に湧れ出した大群衆の間で、これも狂ったように警報を鳴し続ける空陸両用車(エア・ジェット)の長蛇。
千年の星霜を経てようやく再統一が為されたばかりというこお地球上に、まるで再度最終戦争(アルマゲドン)が訪れたかのような光景である。
それでも彼はとにかく手荷物一つ持たない全く平静なスタイルで  冷汗じみた油汗を顔じゅうににじませてはいたもの  かなり有効なコース選択を行って一路郊外を目指していた。
 
 
               (未完) .
 
    2.
 
 ユーラシア大陸、極東。海に面したシゾカ・第三ドームシティの郊外……。
 かつて  一千年前までは、そこには巨大な休火山がそびえていたのだという。最終戦争の時に地殻破壊兵器の余波を受けて、今は跡方とて無いが。
 崩壊した百万都市の上に火山灰が降り、次いで何万tという土砂が雪崩れ落ちた。雨が降り、土中の人々の死骸が分解し、雨が降り、初めての草が芽生えた。小百合は一度だけ、その恐ろしい話を淡々と語る母の口から聞いた事がある。今、そこには見渡す限りの原野の花園とそれに続く豊かな後背丘陵。かつての汚濁にまみれた広大な湾をも数百メートルの地下に眠らせて、“地球統合政府”の手による若々しく美しいドームシティの建設が進められている。そして  ……
シティの郊外の外れ、後背農地の開拓もここ当分は行なわれないであろう、大自然との狭い目に、その家は建っていた。
 
   ……姉、蘭小百合(ランさゆり)、六歳。……
 小百合は、いつもガラス越しに母さまを見ている。いつもいつも見ている。母さまは蘭(ラン)冴夢(サエム)、二十九歳。十八で結婚し、二十三で無理と言われていた出産をしてからは、すっかり心臓を弱くして、殆ど毎日が寝たり起きたりである、長い美しい灰色の髪をした婦人だ。小百合は寂しくなると必ず、母さまのいるサンルームの前の庭に出てきて部屋の中の彼女の似顔絵を描く。
切れ長の、いつも彼方を見はるかしているかのような灰色の眼。ぬけるように白い肌。すらりとした長身にかならずまとっている青灰(あおばい)色の祭司の服。  いつもゆったりと揺り椅子に腰かけてお祈りをしている。時折り小百合の方に眼を向けて、微かに笑う。
 母さまのお腹が少しづつ大きくなっているのが自分の妹の為だなんて、小百合は少しも知らなかった。周囲の大人達が知らせようとしなかったからだ。何故なら、それはtだ妊娠初期に肺炎を併発していた冴夢には中絶手術に耐え得るだけの体力も無かったというだけの事であり、三ヶ月後にひかえた出産は、妹よりは母の死を子供に与えるだろうと思われていたからだった。
小百合はそんな事は知らない。大好きな母さまは御病気なのだ。だから無理を言って困らせてもいけないし、母さまの見える所で心配をかけるような危ない遊びをしてもいけない。いつも学校から帰った後は、母さまのいるサンルームの前の庭の中で、宿題をしたり母さまの絵を描いたりして過しているのだった。
 冴夢が妊娠している事が判明してからは、彼女はずっと無菌室に改造したサンルームの中で暮らしている。お医者様はその消毒機構が子供にはよくない影響を与えるからと言って、小百合が中へ入るのを認めてくれなかった。だから小百合はもう半年以上も、母さまの腕に抱いてもらっていない。……
 
 三月二十七日、その日、蘭冴夢は既に彼女の職とも言うべきものになっていた“祈り”をも忘れて、一心に心眼を凝らしていた。
かつて味わった事のない不可思議な予感  奇妙に恐しいような、なつかしいような、胸騒ぎが心の中を一杯に占めていて、とても精神を統一して祈るどころではないのである。
その感じは、朝、目覚める以前から意識の片すみを刺激し続けて、冴夢に何事かを告げて止まないのだ。“何か”が近づいて来る  何かが。
しかしそれがどんなものであるのか、果たして善いものであるのか、悪いものであるのかさえ、判断する事ができない。
幼ない頃から“部族”の語部(かたりべ)=神官として霊感の強さを得ていた彼女にしては、それは生まれて初めての経験だと言っても過言では無かった。
 夫ヨセフィア・アークタスは、小一時間程前に地球統合政府からの緊急呼び出しを受けて出掛けて行った。彼はシゾカ・シティ区域代表の総会評議員なのである。
  まったくだし抜けに臨時総会が招集された。……もしかしたら冴夢の予感も、何かその事に関係があるのかも知れない……。
 彼女は再び目を閉じて意識を瞑想レベルにまで拡大させた。自己の内外に漂う全ての情報を捜査・点検して、何とか一刻も早く不安の源を突き止めようとする。
もうこれで朝から幾度目になるのだろうか? 日頃の“祈り”でさえも実の所は医師から止められている程精神の統一を必要とするものなのだが、それでも今日のこれの比ではない。だが冴夢(サエム)は、例え著しく精神エネルギーを消費してしまう幽体脱離や未来予知を行なわねばならない事になろうとも、必ず自分が感じているものの正体を見極めて見せるつもりだった。
夫が留守であってかえって良かったのだ  彼女は息を緩めたほんのちょっとの隙に、自分のふくらんだ腹部に手を重ねて思う。
心配して必ず止めに来たであろうから。
 彼女  蘭冴夢は、様々な意味での素晴らしさを併わせ持つ女性だった。
“地球統一者”である、かの人リースマリアルが四十二歳の若さで他界されて十年。今、地球及び太陽系内・系外の何処を探そうとも、冴夢より深い教養と天性の気高さとを維持している者は他には居ない  と、病弱の為広く世間に出る事はせずに家に引きこもって暮している彼女に対して、名だたる学究や施政家達が賛意をおしまない。
まれにその風評を聞きつけて、若さにまかせて彼女の実態なるものを観破すべく押しかける若者達も存るが、その大半は以後彼女の謙虚だが決して物事に動じない静かな眼の色に魅かれて、秘かに師と仰ぐようにさえなるのだった。
 滅多に汗をかく事のない彼女の全身がじっとりと重く熱い湿り気を帯び、レッドアウト寸前になった額を指で支えながら、冴夢は懸命に整息法を行う事によって失神状態に陥いる事を防ごうとしていた。
何かが「見えた!」と思った瞬間に、心臓発作が彼女を襲ったのだ。「何か」は一閃して水面下に消える銀のうろこの魚のように、彼女の心の届く範囲からは姿を消してしまっていた。おそらく二度と再び捕える事はできまい。
 彼女は「絶望」に近い感情の逆巻きに足をとられてしまった様だった。
“何か”  がやって来る。何かとてつもない大きな波動、歴史を揺り動かす嵐のようなものがやって来ようとしているのだ。その最初の波は彼女をその渦動の中に抱き込み、未だ胎内に眠れる彼女自身の「約束の子」の一生に何か途方もない方向を付与してしまうだろう。波は今正に冴夢の頭上で砕け落ちようとしているのだが、彼女はその本質を見失ってしまったのだ  永遠に。
 ずるずると滑り落ちるように絶望の暗黒の淵に向いながら、蘭冴夢はいつの間にか泥沼の眠りの中へと引き込まれて行った。
 
 
                .
 
 エスパッションシリーズ・超少女たち
 年代:C E A! ’0年〜72年まで
 
 第一部邪魔樹(やまじゅ)編魔邪夢樹編  サキ
 
 舞台:地球・リスタルラーナ・ジースト
 主人公:サキコ・ラン=アークタス
 対立者:シスターナ,レイズ
 
+++++++++++++++++++++++++++++++
 
 第一章第一話  邂逅・宙暦(C・E)0年
 
    1.
 
 「航法チェック終了」
 「ワープ転位完了。あと十秒で通常空間に戻ります」
 出発以来2年に渡る訓練と睡眠学習とで、既に航宙員(クルー)達までが、難解な専門用語を地球(テラズ)標準語で操つれるまでになっていた。
 「よし、出ると同時に全チャンネルのバリヤー全開(オープン)。見つからんようにしろ」
 例によって無愛想な、キャプテンダーナーの声が響く。転位終了の声。前面のスクリーンが揺らぎ、一つの惑星が姿を現わした。  青い星。彼ら一行の目的地である、太陽(ソル)星系第三惑星。地球(テラズ)。しばらく沈黙が流れる。誰かが秘やかに嘆め息をもらす。
 「Mr.ダーナー。」
 いきなり感動シーンを叩き壊したのはケティア,サーク。全権特使という大任を負うには、およそふさわしからぬ若年である。二十二歳。感情を極端に制御しようとしている為、硬化クリスタルのような声音がかえって彼女の不機嫌さを表明してしまっていた。
 「失礼ですがMr(ミスタ)」彼女は再び呼びかける。
「何故レーダー用のバリヤーまでお張りになるんですの?!」
 ダーナーがその冷徹な眼を動かしてギロリと彼女の上に一瞥を投げかけた。
  不用意に発見されて攻撃を受けたいとでも言うのですかな、ミス?」
 会話は全て地球語で行なわれているのだが、おういう時、ダーナーは、覚え違えたものかそれとも故意に間違えているのか、必ず敬称であるミズ(女史)をミス(失敗)と発音する。ケテイァはそれは無視した。が、既に頬の色が鮮やかなオレンジ  髪の色と同じ  に染まっている。
「ですが地球系連邦にはどこを探したって武器などありませんわよ!あたくし達は地球に関する資料は全て頭に叩き込んで来ているのですからね。」
「なるほど」
航法の指示を下し続けながら冷然とダーナーが答える。「我がリスタルラーナ連盟に於ても、確かに軍備の撤廃条約は百年も前に調印されているが  実際にはほんの十五年ばかり前にも、互いに争ったスラレル(リ・スラレウ)とラク(リ・ラク)の二星が再興不能の状態になるまで行きましたな、ミス。確かあなたの星でも……」
「惑星クアリステ(リ・クアリステ)が当時“援助物資”なる物を大量に戦場に送り込んでいた事は事実ですわ。でも、それとこれとに一体なんの関り合いがありまして。」
「名目上、クアリステにも軍備など存在しない筈でしたな。『自衛の為を除いて』。」
「!」
瞬間、ケティアは自分の赤毛が帯電でもするかのような感覚を味わわされた。シートベルトに抑え付けられなければ、飛び上がって彼の頬を引っぱたいていた事だろう。
 別段、たとえそれが自分にとって愉快な事ではなかったにせよ、何かの事実を指適された位でケティアがそれ程逆上したわけではない。誰が見ても非はダーナー船長の方にあると思うのが普通なのではないだろうか。多少の嫌味に動じる様では外交官などとても務まらないが、ダーナー船長の物言いは全てに渡ってそんな生優しい代物ではなかった。ありとある事物に対して、侮蔑的な態度をしか取らないのである。
若く情熱に燃える、全ての素晴らしい物の信奉者であるケティアにとっては、その虚無的で陰険な言動や何もかもを見限ったかのような視線など、どうあっても生理的に受け付け得る筈がなかった。
 「駄目ですよ、ケティア特使。よした方がいい」
言いながら、ぶるぶる握りしめている彼女のこぶしの上に穏やかに手の平を重ねたのは、隣に座っていたエレンヌ,カートだった。肩書きとしては副使で、ケティアの最も近しい同僚である。
 「彼には我々使節団一行を無事に地球へ送り届け、またリスタルラーナまで連れ帰ると言う任務があるんですよ。長年辺境探査船の艦長を務めていれば危険に対して慎重になるのは当然だし、だからこそこの仕事に選ばれた訳でしょう?
これから始まる交渉は、我々にとっても地球にとっても始めての経験  異人種とのファーストコンタクトで、友好通商を求める事はかなりの困難になるでしょう。成功の是非を請け負わねばならない特使が神経過敏になっているのはわかりますが、先は長いんです。心を落ち着けてかからなければ体の方が持ちませんよ。」
 彼は常に穏やかな落ち着いた口調で話すのだが、それは単に温厚であるとか冷静であるとかに留まらず、寄せては帰す海の波のような静かな説得力と底力を持っているのだった。
彼の方に理があるのは解っているので、ケテイァは何も答えない。きつくなっていた心が不思議に軽く、沈静して行く。幾度か深呼吸をすると、すっかり視界に明るさが戻って来るようだった。
「すみません。ありがとうございますエレンさん、もう大丈夫ですわ。以後気をつけます」
 ケティアの言い終るのと、ダーナーの「なるほど」とが、重なるようにして室内に響いた。
 「通信室の方で、メッセージが送れるよう回路を地球の一般周波帯に調整し終ったと言って来てますな、エレンヌ大使。恐らくリスタルラーナでは正副間違えて任命するという誤りを犯したんでしょう」
 ケティア特使は  それでも最大限の自制心を総動員して  一言も発しないまま、掛けてあった上着を掴むとコントロール・ルームから飛び出して行った。
 

                .
 
 「回線70−5275」
 と、キルが言った。
 「なにが?」と、セラ。
 「“紫昏のライラ”の捜査状況」
 つまり、警察内部のコンピューターの回線コードである、と。その他にもむろん、署員のだれがしの  
 「盗むのくらい、わけないんだろ?」
 その手の情報の操作に関して、セラにはしっかり前科がある、のをキルは知っている。
 「ちょっと待て。それは非合法行為だって  
 「は! なにをいまさら
 と、鼻で笑われてセラは口をつぐむ。
 「なーにをいまさら」
 他人の認識番号使って偽名を名のるのは、合法なのか? と、問われてうううとうなるセラ。
 「ちゃんと本人の了承は得たもん!」
 「連邦の謄本資料を勝手に書きかえたよな? 紫昏のライラの行方、探すんだろ?」
 がるるとうなって、セラは端末にとりついた。
 
 連邦の「まじめな」構成員を自称し、非合法だの犯罪行為だのを「原則としては」せっせと否定している彼女が、今回の一連の旅にさいして自分から偽名を使うと言いだし、あえて手を汚して危ない端を渡る理由を、キルは知らない。出会ってからこれまでの4年間、半分はリスタルラーナで、半分はジーストで、同じような旅をしてきたが。いつでも本名で通し、「有名人」であるリスクもメリットも受けとめてきた。
 
 数分と経たずに連邦警察の情報回線へ侵入を果たし、一連の資料をあたまに叩きこんで足跡も消して帰ってきたセラは、ニヤニヤしているキルにあかんべをして見せると、続けて別の回線にとりついた。
 そして  今、彼女らは、船上にあってホールドアップを受けている、というわけだ。

 
                .

 ふつうの人間よりははるかにとしをとるのが遅いようだが、さすがにもう容色の衰えは隠せない。自分を利用してのしあがったかつての少年が、うとましがって消そうとするのも当然とは言えた。

 

 ひとり分のスペースはトイレの個室より広いが、小さめのユニットバスより小さい。そのなかにカーテンで仕切る式の極限サイズのシャワーとトイレ、ソファ兼用の狭い寝棚と荷物置き場と洋服掛けに、机と電子端末と最低限の給茶設備に非常用の酸素タンクと発振器までがついていて、

 


☆ ライラは実はバイラであるが、影男は誰も知らない。(書かない)

☆ ライラは自首するつっといて逃げるが高飛びするが、
  セラたちはしばらく気づかない。(書かない)

☆ 影男は出てこない(名前だけ/バイラの最高幹部として)
 
 紫昏のライラ(ライラ・バイ・ライラ)
 
 犯罪結社・“闇(バイラ)”
         > ロベルガ語(ゲロン)
         > へたすると公用語よりも通用範囲がひろい。



 
 蘭(らん)家と蓮(れん)家はふたつながら斎姫(さいき)を輩出した家柄で、資質を貴ぶあまり、近しい親族婚を繰り返し、それが故に不妊の傾向を強めてしまった、不幸な血統でもあった。
 
 照執里 (テリトリー)
 照里執人(テリトリー)
 照執領域(テリトリー)
 手裡戸里(テリトリー)
 照人領域(テリトリー)


ねこのて貸しま証/ねこのて借りま証 <全然別のネタのメモ……☆
 
 

 
☆ セラ・レーン=エラ(蓮(れん)家の世良姫(セラキ))
・ リスタルラーノのふりができる。(もと留学生)
・ とっさに令嬢ぶりっこができる。
・ 首のつまった服装がキライ。
・ 育ちのいいわりに言動が雜である。
・ 旅をするのにお茶道具を持って歩く。
・ 雲のような灰白色のふわりと長い髪。
・ バランスのとれた優美な曲線の肢体。
・ 舞踊の練習を欠かさない。

☆ キリアス・ヤンセン=エラ
・ どう見ても男にしか見えない体格。
・ 長身で美形。(金色の眼、青い髪)
・ 男装を面白がっている。
・ じつは地球人ではない。
・ 暗黒街に片足をつっこんでいるゲリラあがり。
・ 嗅覚が鋭敏で、香をたく。
・ 暑さに弱い(極寒でもへーき)。
・ セラには優しい。
 
※ 実は二人とも強力なESPである。地球の伝説上の“力”に興味を持ったリスタルラーナの科学者にひろわれて、お仲間探しの旅をしている。
 
 
 視、夢、姫、妃、祈、念、 等、名に多い。

“子”はふつう斎姫には用いないので、蘭家の咲姫、咲視姫と
呼ばれることも多い。
 
 
 《斎姫(サイキ)》  “本家”と呼ばれる血統が十いくつある。
 斎の資格を持つものは初潮から婚礼までのあいだ共同生活をする。
 最盛期は常時100人ほどいたが、末期は出産障害により
 12〜3人にまで減った。
 
 蓮 家  蘭 家
  |   | |
  咲良姫=○ 冴夢=ヨセフィア
(サクラキ)|   | |
     世良姫 咲子 サユリ


 
 

 
☆ 公職登録 ☆
 
 テラザニアにおいて、全ての成人は予備役の公職員として特技・等級などが登録されている。(資格試験等のデータが自動的に送られる。その他、自己申告の義務。)
 臨時の公務(式典・天変地災の救援・通常の役員が急病の場合等)発生の際、“調整局”の要請によって動員される。拒否権はむろんあるが、“良識”としての協力が教育されている。企業等では一定枠内での有給として扱われ、別途必要経費として調整局から支払われる。
 長期に渡り、かつ本人の同意が得られた場合は、そのまま恒常的な公職員にくり入れられる。兼業(有給のボランティア)の場合も多い。
 

 
 

 
(地球系)開拓惑星連邦=テラザニア
 
 統一の達成から30年あまり。太陽系内の開発は最終戦争以前から行なわれており、他の太陽系との接触・開拓は統一事業と並行して企業・部族レベルでも着手されていた。それら全てを植民地ではなく“調整単位(ユニット)”として認め、一惑星一単位を原則に開拓を進める。恒星十七、惑星及びコロニー群、地球上の民族区等で調整単位(小さいものは人口3000程度)は300あまり。
 終戦以前からの継承技術としてワープ航法・惑星改造・生体工学等も持つが、各地での普及度はまちまちであり、かつ、“不必要な利便”は廃する方針(いまのところ余裕もないし。)である。
 
 
 行政機関=連邦調整局
 立法機関=連邦包轄会議
 司法機関=連邦星間警察
 
 
 連 邦 憲 章
 ・すべての戦闘行為の放棄
 ・通商の公正(通貨統一)
 ・選択・移住の権利。
 
 

 
 


 《エスパッション外伝》
 
 セラ・レーン=エラ,
 キリアス・ヤンセン=レーン,
 紫昏のライラ,
 星間連邦警察。
 
 紫昏の闇  セラとキルは犯罪結社“闇”の占術者ライラを探す。
 
 蒼黒の影
 蒼の星玉  ライラは自首しなかった。


 
 
 テラザニア
 ツェキロニア
 
              .

                        1991.04.11.

 エスパッション外伝・スランナート禍・? 紫昏の闇

                     時室真扉。
 
 ? 映画視点(エスパ当時の一般人向け)+背景等説明
 ? 主人公・セラ、副主人公・キル(序列はつく)
 ? テーマ・テラザニア現況におけるセラの行動と心理
 ? ストーリー:紫昏のライラの逃亡と追跡
 
 ? 時、星史18年

※ NESICで「携帯」電話(当時の重量約2kg!!)の中継基地網設立の仕事(派遣)してた時にガメてきた裏紙使用……(笑)……というか、仕事中にメモった紙を、そのまま千切って持って帰って来たやつ……(^◇^;)…………だと思うが……、
  いや、それよりはるか以前の、JR鉄道路線を使った電話網(第二電電?)の時のやつかな……? を、使用☆

 
 

 
 リスタルラーナ全権大使ムベラ・ザンガ=ロイシ
 黒人、75歳位、小児性マヒによる片肢不随意、
 幼少時、バイラにたすけられる。
 >ラストでライラ逃走に協力。

 蘭 蓮 草 花 ++


 


 《紫昏》のライラ。
 
 おもてむきは惑星ワンゼルランの占術者。
 “闇”の小幹部で、愛人として影男を育てるが、自分のシマが対リ航路として一躍浮上したため、追い落としを図られている。が、まあ、失脚してやってもよいと、余裕。“白と青の二連星”によって大きく運命が変わると予知しているが、読めない。故意の失脚を仕組んで最後に二連星と会うが、「自首する」つっといて逃亡。実は“闇”本人である。実年齢は100歳を越えている?!




 影男  好が素直になったタイプ。のしあがりの欲求が強く、利用しようとして近づいた年上の愛人ライラは、家局のところ“オフクロさん”。

 
 

 
 予知能力
 
 予感(レイ)
   自分や身内の危機・運命等を漠然と察知する。
   出来事の具体的な時間や内容はわからず、
   「今、どうすべきか」がぱっと浮かぶ。

 未来視(ライラ)
   ある人物・事件・場所等に関して意図的に
   時間の経過する先を読む。
   的中率は“占い”と呼ばれるものと同程度で、
   関係する因子の多いものほど低い。
   時間透視とも。具体的なてがかりと、
   深い精神集中を必要とする。

 過去視(サキ)


 
9/2〜9/8

褐草原のバンガ族特有の風土病レイヒア(遺伝特性?)

 大使 ムベラ・バンガ=ロイシ
 妻 サディナ・バンガ=ンディワナ
 娘 アレワナ・バンガ=ロイシ

秘書官 バヘンガ・ザリ=イディク

アリスのトランプチーム 直属のダイヤ
 ? パリス・ジェス=オッペル
 2
 3
 4
 5
 6
 7
 8
 9
 10
 J
 Q アリニカ・デュル=セザール
 K JOKER
 
 
 
「失礼、ライラ・ミタ=マンデラ女史ですか?」
 少女がちいさく声をかけるより数瞬早く、《紫昏の》は、驚愕の表情で……
 
 
 

  紫昏の闇
  蒼黒の影
  碧草高原
  翠
  黄金
  朱
  紅蓮の星船

 

 登場人物: 主役2人と刑事と悪役の
 舞台: テラザニア辺境(対リスタ国境)
 あらすじ:

 サキの従妹にあたるセラ・レーン=エラ、2歳下。
 先天異状による病弱。気は強い。
 ※ シャーペンと色鉛筆のイラストあり。

 自信ありげで元気で行動力があって、
 知的で快活で上品ですらある。
※ セラに変装中のサキのイラストあり。

 よくよく見ればたしかに喉ぼとけがないので少年ではないかもしれない。
※ キルに変装中のレイのイラストあり。

※ メモ紙の裏面(プリント面)にわざわざ
  ちなみにこの紙は「0088」で仕事をしていた時のものであるっっ
  とか、書いてあるし…………☆ (^◇^;)”

 
☆ 『紫昏の闇』あらすじ
 
 セラとキルが占術師ライラを探して惑星ワンゼルランを訪れると、目指す家には星間警察が乗り込み、当人は犯罪結社《闇》の一員であることが発覚して高飛びした後だった。(次の情報を仕入れるために)惑星“大鼻”まで行く必要があるが、祭連船団通過の為に定期便欠航となっており、四日間の休養としゃれこむべく、極冠観光に出向く。氷河横断ツアーで現地休暇中のオッペル刑事のグループと出会い、つい盗聴機を仕掛けるキル。警察内部の連絡から記念式典のカラクリを知った二人は、変装の用意を整えて急ぎ会場に潜りこんだ。

 このところ世間を騒がせている異星産の幻覚装置の密輸現場を押さえるべくリスタルラーナ大使の護衛と称してその側近たちを星間警察は張っている。式典の会場である船は密室。接触の機会はこの時かぎり。万全の体勢を整えて待つ彼らだが、正体不明の民間人(少女)二人が一足先に不用意に近づいたため《闇》一味に疑いをもたれ、船をパニックにまきこんで見事に逃げられてしまう。
 公職登録の原則に基づいて救助活動にあたるセラとキルだが、《闇》の一味と誤解されてアリニカ警部補に逮捕されてしまう。連邦警察の支部のある惑星《大鼻》まで連行される途中も舞の練習を怠らないセラ。事情聴取と身元照合を受けて強制送還  という時に、わずか三日で司法職資格試験に通ってしまうセラ。大使ムベラの口添えを得て強引に捜査に参加する。

 一方、取引きに失敗した形のライラは影男に失策を責められて危い立場になる。が、本人は気にせず、影男の安全のために《白を青の二連星》を封じることにする。
 捜査活動の途中で襲われ、セラを傷つけられて激怒するキル。が、暗殺者のなかにワンゼルラン極冠ツアーで見た顔を見つけ(写真的記憶)、警察側の情報が筒抜けだったことを知る。「覚悟はあるんだろうな」と本来の非合法活動に転じて《闇》の下部組織をしめあげ、幹部の一人を星警につき出した。
 
 惑星《久別》は民族自治区で星警の手も及ばず、しかも祭連船団が訪ずれて二ヶ月の立入り禁止となっている。ためらったあと、“蓮家の世良姫”の名前で惑星首長“草家の皆無拓”に会談を求めるセラ。特別に祭礼への参加が認められ、潜入する星警特殊部隊。セラとキルはいちはやく姿をくらまし、祭連船団の奥深く、紫昏のライラと会う。影男との確執を洩らし、自首を誓うライラ。裁判での援助を約束し、やれやれ、と息をつくセラとキルだった。
 
 
              了。

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