『 (設定Memo) 』 (@中学2年?)
2007年5月4日 連載(2周目・地球統一〜ESPA)◎二人はごくあたりまえな普通の人間でした。
その二人に、人をしてとんびが鷹を生んだと言わせるような美しい娘ができました。
その子の顔立ちはやや異常と言えるほどによく整っていて、赤ん坊nふさわしい愛らしさというものには欠けていましたが、十年後、二十年後の姿が今から予想されました。
上品ぶった、(もう少しで一級市民権に手の届く)二級市民夫人が思わせぶりに言いました。
この夫人には今年三歳のドラ息子がいたので……。
二人はつい最近やっと二級市民権を得たばかりで、まだ気の遠くなるほどの借金が残っていました。
そんな中で子供を育てるのは楽ではありませんでしたが、一生懸命働き、むだなお金は使わず、役人の目をごまかせそうな時にはぬかりなく立ちまわって、そでの下をきかせることも覚え、小さな二人の商店は着実に収入(あがり)を額を増やしていきました。
夫は、よく娘の寝顔をながめて言ったものです。
(未完/レイの乳児時代のエピソード〜☆)
二、記 者 団
サキたち三人は一瞬ソレル女史の言った意味がわからずにキョトンとした顔になりました。
地球連邦の会議はリスタルラーナ側と同じ時間に行われたはずです。
と、いうことは、地球側の会議の結果がリスタルラーナに届くのは、早くとも今日の夕方までということになるのです。
『なにをそんなに驚ろいているの?』と、ソレル女史。
こういう時の女史は、ケイがいたずらを考えている時と同じ目をして笑いました。
『だけど女史、いったいどうやって……?』とレイ。
『まだ地球国内にも公布されていない時間ですよ。』
『私の勢力範囲がリスタルラーナだけだと思っていたのなら間違いですよ。古来から自分が行く事のできない場所に代理人(エージェント)を置くのは当然の事とされていますけれどね。』
ソレル女史はいったん口を切って三人が納得したかどうかを確めました。
『ケイの試作したテレパシー感知器の性能がいいと言って喜んでいましたよ』
わあっ と、三人は喜びの声を上げました。
『それじゃわたしたちの“仲間”なのね!?』とケイが言いました。
『どんな人なんですか。名前は? 年は?』とサキが言いました。
『何級能力者なんですか』と、超能力者を別段珍しいとは思っていないレイが落ち着き払って聞きました。
『そうですね。正確には計った事がないけれど、だいたいBの上かA級ぐらいでしょうね。』
ソレル女史は最後の質問にだけ答えました。
その話は食事をしながらゆっくりすることにしましょう、と言うのです。
『今はその暇がありませんからね』
女史の言う通り、四人が歩いて行く先、連合本部ビルの表玄関には、多勢の新聞記者がたむろしていました。
「ギャア!!」 レイがいつもの癖で叫びました。
「ひょっとしてあの連中、あたしたちのこと待ってるんじゃない!?」
「そりゃしかたないよ。なんていったってレイが今日の会議の主役だったんだから。」
「そうそう。ね、サキ、わたしたちは先に行って反重力車(くるま)を出して来ましょうよ。」
「う……ん。そうだなァ。わたしらは今のところ関係ないんだし……」
サキはしばらくためらっていました。レイを見すてるのも悪いんだけど……。
でも結局、目の前の記者陣にはかないません。
ケイに引っぱられて走りだしたサキにレイが一言、
「裏切り者ぉ!!」
ソレル女史が笑いました。
「さ、行(ゆ)きますよ、レイ。話していい事と悪い事と、うっかり言葉じりをとられないように気をつけなさい。なにしろ総会専門の記者のしつこさと言えば、ことわざに引用されるぐらいのものですからね。」
「だいじょうぶですよ女史、間違えやしませんから。……しっかし、議員集団の次は新聞記者か……。ウエーッ。」
ソレル女史が、かつてはいつでも動いていたリスタルラーナ式の自動回転扉を手で押して一歩外へ踏み出すと、……わっ、と記者の群れが押し寄せて来ました。
(☆Gペン入れた「挿し絵風」絵柄の正装の女史とレイのイラストあり)
初めの十分程はレイもあまりひどい目に合わずに済みました。
記者たちが、異星人に好奇の目を向けながらも、まず取材しなれているソレル女史に話しかけたからです。
彼らは、かつての地球の新聞記者ほど無作法ではなく、質問を始める前にはかならず挨拶を交わすことになっていました。
ことにソレル女史には礼儀正しく振る舞います。
彼女が優れた科学者であるということより、彼らにしばしば特ダネを提供するということのために。
ソレル女史は彼らに、レイの母国ジースト星間帝国のことや、レイが女史のもとに来た時のてんまつ、ジースト星系で産出される多量のそして地球=リスタルラーナにはないエネルギー鉱石のことを、かいつまんで話しました。そして、会議で話したと同じ演説をもっと手短かに、わかりやすく話し、最後にこう言って口を切りました。
「わたくしは、リスタルラーナの頭脳たる連邦議員のみなさまが、母星の利害などにひきずられて判断力を失ってしまうようなことはしないと信じています。」
もちろん、この言葉が活字になり、各議員が母星と連絡を取る前に目を通すことを予想した上でのセリフです。
いつも自星の首脳陣としめし合わせて来る何人かの議員に、先手を打ってクギをさしておいたわけです。
ともあれ、これでソレル女史が話すことはなくなりました。
レイは(内心嘆息をつきながら)にこやか〜に笑って、やつぎばやな質問に答え始めました。
4年前、10の時です。女史の宇宙船の中にいきなりはきだされた。
はい。ええと、ジーストはあまり科学が発達してないんです。それで宇宙での事故がよく起こるんだけど、その時できた空間のゆがみではじきとばされて来たらしいんです。まあ、一種のワープみたいなものだと思うんだけど……
実は、あたしにもよく解らないんです。事故の時のケガでところどころ記憶がなくなっちゃってるんですよね。
はい、一度目の呼び出しの時に。
ジーストは身分制度がうるさいんです。帝政ですから。それであたしみたいな身分の低い人間は、元首と会うことは許されない。
レイ。シスターナ・レイズです。
かなり鋭い質問から愚問としか言いようのないものまで、実に延々と長々しく質問が続きます。
最初のうちは落ちついていたレイも、20分もたったころにはすっかり混乱してしまいました。
『女史!!』
ぐあいの悪い質問に黙秘権を行使しながら
『この連中、いつもこんな早口なんですか。』と聞きました。
異国人というのはこういう時に便利です。都合が悪い時は意味がわからないふりをしていればいいのですから。
『そうですよ。むしろ普段より遅いくらいですね。』
いつもこんなのとつき合っていられるなんて、女史はいったいどういう神経をしているのでしょう!!
レイは(もともと短気なので)もう質問を聞くのもいやになりました。
(未完)
(※推測するに、コレ書いてたのは『指輪物語』(原典)を読んだ後で、アニメ映画版を見る前。かな? 竹宮の『地球へ』と萩尾の『11人いる!』の影響モロうけまくり……ていうか既に「模写」状態だった……から脱却して、「海外児童文学または海外幻想文学(翻訳ファンタジー物)の挿し絵風絵柄で、「自分で文章書いて挿し絵も描く!とか、考えていた頃のやつ……☆(^◇^;)☆)
一、総会本部
リスタルラーナ星間連合本部の最上階にある総会会議場。
臨時総会を終えて退場して行く各星代表の通るロビーからは少し離れた、専ら参考のために会議に招待される学者たちが使用することになっている小ロビーの一つで、今度のような重大会議に関係を持つにしてはおよそそれらしく見えないような少女が二人、じれったそうに立ったりすわったりしながらだれかを待っていました。
一人は、海のほの蒼い夜霧のような長い灰色の髪に、不思議によく光る黒い瞳をした一四、五歳の、背の高いスラリとした少女で、頭を動かすにつれて髪の間から見え隠れするやや黄色みのかかった白い丸い耳から見て、地球人のようでした。
そしてもう一人の方はまだ十一、二歳、小柄でかわいらしい少女で、やわらかくカールした薄茶色の髪にふちどられた色白の顔に、大きなエメラルドの瞳が並び、そのななめ上につきだしたつんととがった幅の広い耳が、彼女がリスタルラーナ人であることを証明していました。
「遅いなあ。なにをやってるんだろう。」
背の高い方の少女がまたつぶやきました。これで三度目です。
「あわてても仕様がないわよサキ。」
「だけどケイ、会議が終ってから十分はたってるんだよ。」
ケイと呼ばれた方はそんなやりとりをしながらもゆったりとソファーに腰かけて悠然と本を読みつづけていましたが、サキの方は立ったり座ったり、一時もじっとしてはいられません。
「あ、来た!!」
会議場の自動扉が静かに開いて、連邦屈指の女性科学者であるリスタルラーナ人のソレル女史ともう一人、青い髪にチラチラ光る金色の瞳(め)をした背の高い少女が出てきました。
この二人こそが今日の会議の中心だったのです。
「や!サキ。はてたよ〜〜。なにせお偉方の面前で一時間も説明させられてさ。言葉使いは気をつけなきゃならんし思わぬ質問は飛びだすし……もう冷や汗のかきっぱなしよ。」
そうサキに話しながら、なおも持っているレポートで顔をあおいでいる少女は、名前をシスターナ・レイズと言い、その瞳の色や細長い耳の形から、地球・リスタルラーナのどちらにも属さない種族であることはあきらかでした。
『ごくろうさまレイ。で、どうでした?ソレル女史。』
ここからが重要会議です。サキは預かっていたバッグと上着を二人に渡しながらテレパシーを使いました。
『まあまあのできですよ。ほとんどの星は賛成しましたし、あと二、三の案件が改正されるのを待って……そうね。順調に行けば次の臨時総会には九十九パーセント決定するでしょう。』
やはりテレパシーで答えながら無造作にコートをはおったソレル女史は、今度は口を使って、どこかで食事でもしましょう。と三人を誘いました。
大ロビーほどではないとは言え、けっこう人の通るここで、テレパシーだけの会話を交わしていてはあやしまれます。
「それとも」と、女史は笑ってつづけました。
「“果ててしまった”レイは一刻も早くエスパッション号へ帰りたいのかしらね?」
これを聞いて三人とも笑いだしました。
あとはもう例の“あやとり会話”のやりとりです。
これは、サキが始めてこの訓練を受けた時につけた名前で、一つの話題をテレパシーで、他の話題を声を使って、たがいちがいに切り換えながら並行して話すのです。
普段から彼女たちがよくやるゲームで、たとえば二人組でスムーズに会話を進めようとしたりすると、声で話しながらテレパシーを聞き、すぐまた交替して……ということになり、しかもことばの長さはまちまちなため、へたをすると同時に両方を使ってしゃべるはめになる、というわけです。
けれどこの場合は四人で気楽に話しあえばよかったので、ともすれば“心”の話題と“声”の話題を取りちがえるクセのあるサキも、一度もとちらずに続けることができました。
『この廊下一つ見ただけで、いかにリスタルラーナのエネルギーが不足しているかがわかるでしょう。』
表玄関へと通じる主要通路の一つを歩きながら、ソレル女史が言いました。
『この連盟本部ビルは50年前、リスタルラーナの経済最盛期に建てられたものです。そして愚かなことに私たちはエネルギーを使いすぎました。』
彼女は広い廊下の動かない自動送路(ベルトウェイ)を、始めのうち常に働き続けていたその送路を、廊下に人がいる時のみ動くように調節した機械を、そしてその機械すらここ十年来停止させられたままであることを3人に示しました。
『わずか50mたらずの通路にまで送路をつけて、物質文明の便利さにのぼせあがっていた人たちは、エネルギーには限りがあるということを失念していました。
『今でも覚えていますよ、』
そう言って、女史はさもおかしそうにクスクスと笑いだしました。まるで、なにかおかしい思い出でもあるようでしたが、幼ない時から女史のもとで教育されたケイにしかその理由はわかりませんでした。
『……それが』と、女史は続けました。『ちょうど20年前のことです。』
『それ以来、私たち科学者は新しいエネルギー源の開発に努めて来ましたし、政府は惑星開発に力を入れました。』
『ついでに地球にまで足を伸ばしてね!』
ケイがチョロリと口をはさんで笑いました。
『ま、わたしもサキもそのおかげでこの世に生まれることができたのだけど……』
『そう。13年前にリスタルラーナの代表が始めて地球へ訪れ、その1年後には地球・リスタルラーナ両連邦間に友好通商条約が結ばれました。
でも、地球から送られてくるエネルギーはとても少ない。リスタルラーナ産のエネルギーと合わせても最低限必要なだけしか使うことができません。』
『エネルギーさえあればもっともっと科学を発展させることができたのに……』
「本当に、物事ってなにが幸いするかわからないなあ!」
サキが始めて知ったとでもいうような大声を出したので、隣を歩いていたレイは大急ぎでサキをつねらなければなりませんでした。
ついに“あやとり”を“取りそこね”たのです。
しかし人気の少ない通路には、痴話ゲンカの合間のこのとんきょうなセリフに特に注意を払うような人はいないようでした。
『すみません。』サキは素直に謝まってから話を続けました。
『実際、もしリスタルラーナにエネルギーがありあまっていたとしたら、13年前にわたしは生まれることができなかった。ケイだってたぶんそうだろう? そして今度はエネルギーの不足が原因で、女史の作戦がスムーズに運んだ。この作戦がうまくいけば、わたしたちの“仲間”が大勢できて女史の夢が実現できるようになるし、レイは故郷(ふるさと)に帰ることができる。』
『宇宙嵐で歯医者がもうかるような話ね』と、ケイ。
『あとは地球連邦議会の方の決定しだいか。
『無理よォレイ。いくらソレル女史でも手紙一本じゃ地球政府を説得できないのよ。……せめて音声だけででもじかに話せれば別だけど……。』
そう。リスタルラーナ連邦がこんなにも早く賛同を示したのは、まえもってソレル女史が説得して歩いた結果でした。
連邦屈指の科学者で、しかも政界・財界通して知人の多い女史は、連邦会議の議員一人一人の性格や主義を計算に入れて、暗にほのめかしたり正面切って頼み込んだり、実に巧みに持ちかけるので、ほとんどの人はあっというまに説き伏せられてしまうのです。
これは、彼女がかなり強力な超能力者だったおかげなのですが、知らない人はこれを、彼女の若さと美しい姿態のせいだろうと思っていました。
実際、もし彼女が超能者ではなかったとしても、物静かなアルトで熱心に話す女史に向って反論しようとする人は滅多にいなかったでしょう。
そのソレル女史が謎めいた笑いかたをして言いました。
『地球連邦中央議会の方針はもう決まりましたよ。賛成するそうです。』
(※「アラク星とリスラエル星が戦争」……(^◇^;)げっ……。
えぇ。言うまでもなく、コレ書いた当時は、昭和の「オイルショック」の直後でありましたとも……☆☆(^◇^;)☆☆
でも、なんで「イラクとイスラエルが戦争」なんだろう?ヨルダンの立場はどーなる…………??(^◇^;)”??
ほの暗い部屋の中、そこだけが明るい机の上で、一人の少女が手紙を書いていた。少女の名は白蘭(びゃくらん)咲子(さきこ)。戸籍には単にサキ・ランと記(しる)されていた。
それというのも、彼女の故郷(ふるさと)地球では、すでにこの雅(みや)びな言語が公用語として使われなくなってから久しかったのだ。
彼女は、その長く伸びすぎてしまった髪の、陽光のもとでは銀ねずみ色に輝やき闇の中では蒼暗い夜の海の灰色となって目をふさぐ、ひたいにかかった邪馬なひとふさを左手で払いのけながら、なおも右手でペンを走らせていた。
彼女は、古風にもペンと紙で書いていたのだ、録音転写機を使わずに。
彼女の、やや右上りかげんにかっちりと整(ととの)えられた文字は、なおも書き進められた。
わたしは安全な所にいるし、健康状態も良好です。
ただ、なんのためにここに来た、いえ、来なければならなくなったのか、
あれだけ愛した学校からなぜ離れたのか、それは聞かないで下さい。
いずれ
その時に話します。
突然の失踪でずい分みんなに心配をかけたろうと思います。
でも姉さん、こうしなければならなかったのだと言うことを
わかって下さい。
まだたったの12歳にしかならない、しかも他人(ひと)よりも
はるかに無邪気に育ってきたわたしには、これ以外に取るべき道が
見つからなかったのです。
サキは、ここでしばらく筆を止めた。
あらかじめ書くべきことを考えていたとはいえ、あの恐ろしい事件にふれずに事を説明するのは不可能だった。
書くにつれあの時の恐怖、宇宙の深遠にいきなり放り出されたような恐ろしさを思い出して文章あ脈絡のないものになってくるのだ。
しかたなく彼女はあきらめた。
自分自身が、あれ以来強制睡眠剤なしには眠れないような状態の中で、あの敏感な姉を安心させられるような手紙を書けるわけがない。
とにかく。と、彼女は再び書き始めた。
現在わたしはソレル女史の小さな特殊研究所の一つで暮し、女史の
保護を受けています。
今後の教育はたぶん、ずっとここで受けることになると思います。
わたしの他にもここで暮している女の子が二人いるし、ソレル女史の
部下の数人の研究所員と、ひまな時には女史自身が話し相手になって
くれると言っていましたからさびしくなることはないでしょう。
それに、ソレル女史の秘書の糸がわたしたちの学課と生活の管理を
しているから、今までいた学校と大して生活に差はありません。
サキは、再び読みかえしてため息をついた。
今はこれ以上ましなものは書けないわ……。
レイが部屋の中へ入ると、赤い非常灯だけがともっている暗闇の中でサキがかすかに動いた。
「だれ?」
それには答えずに照明のスイッチをひねって、レイは
「ここはあたしの部屋でもあるんだけどね。……はん。また泣いてたの」
(※「録音転写機」……自動口述筆記とプリントアウトをしてくれる未来機械のこと。う〜ん……。1970年代の中学1年生が考えつく未来像にしては、なかなかのセンスだと思うんですけど……♪( ̄ー ̄)♪ <自画自賛賞賛委員会@MIXI所属。w)
その日、後に“地球の目覚めの日”と呼ばれることになる四月三日。
地球と、月を始めとする十一の太陽系内開発都市、および七つの系外開発惑星の路上には人っ子一人見当りませんでした。
時に地球平和歴五十三年。
最終戦争後何百年にも渡った無政府状態に終止符が打たれてから半世紀が過ぎ、新しい地球統合政府による計画的で安定した政治は人々に輝やかしい未来を約束していました。
そう、万事が“計画”に基づいて順調に進められていたのです。
地球統一者リースマリアルの後、歴代の連邦総長が全力をそそいだのは、いかに予定どうり“計画”を実行するかということでした。
ところが、突如、“計画”を計算する際に予測されなかった一大事件が持ちあがったのです。
そう。一ダースにものぼる恒星系に足をのばした地球人たちが今だにその気配さえ感じとれず、若者や子供らの夢の中にしまわれたままだった
彼らが現れたことによって予想、いや計画されていた地球人類の未来像が大きく変わることになったのです。
.
三、中央委員長フォーラ
フォーラは、地球留学生歓迎のために広い集会室に並んだ生徒たちの中央に、ひどい頭痛を抑えながら立っていた。
中央委員長として留学生歓迎の準備の指揮をしてきた彼女はここ数日間ろくに寝ておらず、そのためにちう30分前にも貧血を起して倒れたばかりだった。
にもかかわらず彼女は強制覚醒剤を服用してでてきたのだ。
実際、歴代のただの中央委員長たちならいざしらず、フォレル第三百五十二代委員長の出席しない重要式典などとても考えられない。
フォーラの後見人であり、先程気を失った彼女を医療セクションまで運んで行った星間屈指の女性科学者マリア・ソレル女史も、親友のティリーと共に医師(ドク)の注意を無視して起き出してきたフォーラを見つけると、まだ顔色も青いままなのに、と思ったが、無理に休ませることはしなかった。
それにしてもフォーラの頭痛はまったくひどいもので、フォーラは、彼女を心配してそばにピッタリとついているティリーにまで頭のガンガンいう音が聞こえるのではないか……と、混乱した頭で考えるともなく思っていた。
(未完)
二、地球留学生
リスタルラーナ連合政府がS.S.S.(スリーエス)への地球留学生の編入を認めてから三年。地球の教育制度が改変されてから五年。
今、第一回留学生の乗った船がS.S.S.(スリーエス)内部に入ろうとしていた。
ファーツアロウという名のその船は地球系連邦から選び抜かれた精鋭、100名の学生たちを一年間かけて運んで来たのだ。
(※「金色に輝く弓と矢の形の宇宙船」と、それを司る
宇宙のトリトン神(?)みたいな色鉛筆のイラストあり……☆)
(ていうか、この原稿は挿し絵が多い「絵物語」形式です☆)
(^_^;)>”
「どうしたの、サキ?」
ヘレナが、ぼんやりしているサキを優しくつっついた。
「足をはさむわよ。」
彼女たちは、ファーツアロウとS.S.S.(スリーエス)をつないでいるベルトウェイを、ファーツアロウの生徒たちの先頭になって通っていた。
なぜなら、彼女たちは生徒会役員だったので。
とりわけサキの方は一年生にして生徒会長になった人気者で、今年13歳のヘレナと11歳のサキは、いつでもいっしょにいた。
というより、一人っ子のヘレナにはサキが妹のように思え、一方、地球にいるサユリと別れてきた姉さんっ子のサキは、なにかあるたびにヘレナの所へ相談に行った。
二人とも見かけによらずさびしがりやなのだ。
(※制服姿のサキとヘレナのツー・バストショット。)
「どうしたの?」
もう一度ヘレナが聞いた。
サキがすぐに返事をしないとは珍しい。
「ん、ちょっとね。」
ファーツアロウの一行はベルトウェイから降りて歩きだした。
いよいよS.S.S.(スリーエス)の内部に入ったのだ。
広いロビーで身分証明書(カード)との照合。
(※ セイ・ハヤミの正方形のカードのイラスト。)
なにしろS.S.S.(スリーエス)は政府が経営しているにもかかわらず、政府の干渉を許さない。
学生と教師だけで独立した国、より良い教育環境を造りあげることだけを目的とした完全に自由な場所なのだ。
照合といってもコンピュータが処理するのだからたいして時間はかからないのだが、それでも一度に百名となれば大変だ。
コンピュータにカードをさしこみ、各自の指紋、網膜、声紋と照らし合わせて本人かどうかを確認する。
最初に済ませたサキが、次に検査機(チェッカー)から出てきたヘレナに言った。
「ねえヘレナ。わたし心配になってきちゃった。」
「? ……なにが?」
いつも用件ぬきで結論を言ってしまうのはサキの悪癖のひとつ。
「ほら、あの……なんていったっけ!? S.S.S.(スリーエス)の生徒会長。」
「ああ、たしかフォ……なんとかベルアイルって名前よ。それがどうかしたの?」
. (※悩みをうちあけるサキと応じているヘレナの絵。)
「……うん。つまりねェ、聞くところによるとそのフォ……なんとかさんってすごい超人的な人らしいじゃない。」
実際、そのフォなんとか、つまりS.S.S.(スリーエス)の中央委員長フォレル・シェットランド・ベルアイルという少女は、ある日突然、転入不可能といわれていたS.S.S.(スリーエス)に現れて以来、毎期毎期全科目首席という離れわざをやってのけ、さらに、だれにでも優しいその人柄と適格でいつも冷静な判断からおして、これも毎期連続で中央委員長をつとめていた。つまり、地球で言う生徒会長のような役である。
(※ 自信なげに首をかしげていじけるサキの絵。)
「それにひきかえ、わたしの方は苦手科目は及第ギリギリしかとってないでしょ!? もし生徒代表ってことで比較されたりしたら……」
「バッカねえ!!」
要するにそれが不安なのだ、とサキが話しを続ける間もなく、後ろからマーメイドとセイが割り込んで来た。
(※ 手にカードを提げて勢いよく歩いてくるマーメイドの絵。)
マーメイドは遅刻常習犯ナンバーワン。生徒会新聞の腕利き編集長、兼、生徒会書記だ。実際どちらが本業なのか本人にもわからない。
そのマーメイドがバンとサキの背中をたたいて言った。
「そのくらい心配しなさんな。会長は悪くても生徒は優秀なんだから。ファーツアロウの生徒はS.S.S.(スリーエス)なんかにひけはとらないわよ。」
それでもサキの気は晴れず、彼女は抗議するように言った。
「
「え!?」
「なんだかわたし、すごおく嫌な予感がするのよ。それにそのフォなんとかって生徒会長のことが頭から離れないの。」
サキのその真剣な口調に三人は一瞬しんとなった。
なぜならサキの予感の的中率といえば生徒間でも評判で、試験前ともなれば多勢で出題のヤマを聞きに来るぐらいなのだ。
(※ 「悪い予感」を訴えるサキの顔。)
しばらくしてからセイがほがらかに、(それでも少し心配そうな顔をしながら)断固とした口調で言った。
「心配するなよ、なにかあってもオレたちがついてる。」
(……そうとも! オレのサキを泣かせるようなやつがいればオレが許さん!!………………)
実際、背が高く色のあさ黒い、スポーツマンタイプの生徒会副会長セイ・ハヤミは、半年前の生徒会役員選挙の前後からサキが気になりはじめ、今では心の中でサキの名を呼ぶ時、必ず「オレの」と修飾して呼んでいるのだった。
もちろん、体格、精神年齢ともに成長の遅いサキは、およそそんな事を考えたためしもなく、セイとしても当分うちあける気はなかったが……。
(※ とか言いつつサキの肩に手を置いてカッコつけてるセイの絵……☆)
(^◇^;)”
……セイに言われたサキは、自分が彼らを心配させていることに気がついたので、大急ぎで今までのゆううつそうな顔を引っこめ、さも安心したという風ににっこり笑って一言、言った。
「それもそうね!!」
(※ にっこり元気なサキの絵)
サキがあまりにも自然に、本当に必然的とでも言えるぐらいにごく当然という顔をしてそう言ったので、マーメイドやそばで四人の話を聞いていた他の生徒会役員たちはすっかりだまされてしまい、ファーツアロウの中では一番良くサキを知っているセイやヘレナでさえしばらくはその自然な不自然さに気づかなかった。
つまり、まるでセイの一言で本当に安心したように見えるサキが、実際は自分を愛してくれている二人
実際、巧みに話題を切り換えて、セイといつもの(面白いと評判の)痴話ゲンカを始めたサキはとても無邪気にかわいらしく笑っていたので、仮にサキの本心を知っている人がいたとしてもかえってその事を疑いたくなっただろう。
それでも、にぎやかなだじゃれの応酬の合間にサキがふっと遠い目をしたのをヘレナは見逃さなかった。
ヘレナは心の中で大きなため息をついたがなにも言わなかった。
サキがわたしたちに心配をかけたくない……と思っているのなら、だまされたふりをしていなければ、今度はサキがよけいな気を使うようになるわ。
(※ 憂鬱に落ち込むヘレナの絵。)
やがて生徒全員の照合が終り、生徒たちは再びベルトウェイに乗った。
次のエアロックを通りぬければ、そおにはS.S.S.(スリーエス)の生徒が待っているのだった。
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一、スクール オブ 宙間中継基地(スペース・ストップオーバー)
地球−リスタルラーナを結ぶ長い長い、二年間にも渡るワープ航路のちょうど中間点、つまり地球から一年行程のところに巨大な人工衛星があった。
それは長い航海の際に燈台の役目をし、また疲れた船の修理やエネルギーの補給をすることも可能だった。
そして、二星間国家(地球系星間国家連邦とリスタルラーナ系連合国)間の国交樹立とともに建造されたこの宙間中継基地にはもう一つの機能(システム)があった。
すなわち、リスタルラーナ最高の教育機関であるスリナエロス・ソロン・スレルナン。
各国の学生たちは、地球語の『スクール オブ スペース・ストップオーバー』と掛け合わせて、三年前にリスタルラーナ首都惑星上から移転して来たこの学校をS.S.S.(スリーエス)と呼んでいた。
S.S.S.(スリーエス)には幼児科(3〜5歳)と基本科(6〜8歳)を除いた全ての教育施設といくつかの専属研究所があり、位置の関係から必然的に全寮制、両連邦最高の教育を受けられる上に、授業料その他は一切無料である。
ただし、この学校に入学するには、基本科卒業の際に全星の生徒が受ける学力適性検査をへて、およそ千倍近い競争率の各星立の特殊要員(エリート)養成学校(スクール)に入学し、その中からさらに二百分の一の割合で選ばれるのを待たねばならなかった。
しかも、こうして入学した百二十名の生徒も、半年おきの進級試験のために、卒業時には3分の2の八十名に減っているのだった。
(※「天上にかかる雲の上の道のはるかかなたに輝く虹の橋の向こうのお城」……という、実にハヅカシイ絵が色鉛筆で描いてあります………………☆(+^◇^;+)☆ )
(*ついでに言うなら日記や作文用の「たてがきノート」使用だ!!)
.
エスパッション・シリーズ 第一話
仮題 S.S.S.の悲劇
第一章 第一節
1.
「……“まず心があって……それから行動がある”か、……ふーん……。」
通信室のデスクでティリス・ヴェザリオこと通称ティリーがハンドタイプをほっぽらかしにしたまま本に読みふけっていた。
「えい! やっぱ設定が甘すぎるんだ。主人公の性格がはっきり決まってもいないんじゃ、ストーリーの展開だけになっちまう」
彼女は本来ここの中等部の生徒なのだけれども顔慣染(なじみ)の通信士がデートだとかで、無理矢理交替させられたのだ。
ツーン ツーン ツーン ツーン ビーッ!!
彼女が私淑と仰ぐ作家の書いた“小説論”に熱中していたおかげで、相手(むこう)が完全に周波数をあわせてくるまで呼び出し音(コールサイン)に気づかなかった。
「わっ! はいっはいっ!}
ティリーはこの時間、通信のくる予定はなかったはず……と思いながら通話スイッチを入れようとしてハッとした。
コールサインがこんなに大きいということは発信源が近くにあるということになる。
「まさか
とびつくようにスイッチを押すと、目前のスクリーン一杯にまちかねたように映像がひろがった。
「アルウ。S.S.S.(スリーエス)! こちらファーストアロウ。こちらファーストアロウ。……S.S.S.(スリーエス)、聞こえますか?」
ファーストアロウ号の通信士はティリーさんがあまり幼ないので驚いたらしい。
実際、ティリーは年よりも3つ4つ小さく、せいぜい10〜11歳くらいにしか見えないのだ。
突然の事に、あ然としていた彼女は内心すっかりあわてながらも、やっとこれだけ、自分でも結構堂々としてるなと思える調子で言った。
「アルウ。ファーストアロウ! こちらS.S.S.(スリーエス)、感度良好。あいにく通信士は不在ですが、あなたがたの無事到着をお祝い申し上げます。……少々お待ち下さい。ただいま司令室に切りかえます。」
これは正体がバレないように内線のモニターは切って司令室に報告し、了解を得た上でスイッチを切りかえる。
ふ
ティリーは手の甲で額(ひたい)をぬぐった。
「三日分もよけいにワープするなんて! さすが地球系だ、エネルギーの使い方がハデだね!」
それから彼女は、通信室には自分一人しかいないことに気づいてニッと笑った。
窓からは遠くの恒星以外なにも見えなかった。
しかし、そのどこかに、
(未完)
この話はわたししか知らない。
まだ、だれにも話していないから。
彼の所へ2度目にでかけたのは、ある
この話とは直接関係しない所に少々差し障りがあるので日付はふせます。
たぶんみんなはその日の事はよく覚えていると思う。
あの時期には珍しく、ゆるゆると安心感のあった一日で、かなり多勢がエスパッションに集まっていたから。
おかげでわたしはだれにも見つからないようにと思っていたのに、見つかってあらぬ詮議をかけられてしまった。
無理もない。
このわたしが、公用で出かけるのでも正装でもない、全くのプライベート・タイムにスカートはいてでかけようというのだったから。
(……しかしみなさま発想がせまいね。デートと信じて、てんから疑わないでいらっしゃる。)
別段、何を着ていっても、それはかまわなかったのだけれど、わかってくれるかな
ついでながら風景を描写。
空はまっ青。はるかに白いひつじ雲が部分部分を群れ歩いていて、旧市街へ向けて車を飛ばしていく間も、わたしは辺りばっかりながめてた。
既に葉を残さない白い街路樹が冴え冴えとして、冬の午前中のあの透徹した風が、空とこずえとの間を不思議なほとはっきりと染めわけ染めあげて、それがどこまでもからからとかすかに高い音をたてながら、前にも、後ろにも、ずっとずっと、はるかに見はるかす程続いていた。
もっとももちろん心象(イメージ)で、実際にはすぐに街はずれまで来てしまったけどね。
わたしは
ちょっと古代地球風のふんいきの布の流れがあって、お気に入りの一つだった。
(* 街着スカートはいてるサキのシャーペン描きイラストあり。)
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虹 夢
1.
サキが最初に彼に会ったのは、秋の終りの暗く寂しい夜だった。
その晩、サキは闘って、深い傷を負い、無数にはりめぐらされた敵の目に、仲間との連絡を断たれたまま、ずたぼろになった身体(からだ)と心で深夜の街をさ迷っていた。
傷の出血はひどくなるばかり。もうろうとした意識の中で、ビルの一画の、ただひとつ灯(ともしび)の薄明るくもれちた彼の部屋に援助(たすけ)を求めた。
彼は、サキが示した身分証明カードにさして驚く風もなく何一つ聞かずにだまって傷の手当てをしてくれた。
その手馴れた様子に、医学生ですかと、傷のためのにわかな熱の下からサキが尋ねると、いや、と彼は少しさびしげに答えた。
「自分が病弱だかr、医局通いのうちに自然に覚えたんだよ。」
壁がはげ落ち、ドアのゆがんだ、その殺風景な部屋には、雑然と積みかさねられた幾十枚ものキャンヴァスと、油絵の具と、イーゼルとが、使い古されて置かれていた。
少し落ちついてからそれに気づいたサキはああ、と思った。
「迷惑をかけてしまったみたい。徹夜で描いていたのでしょう。このお礼はきっとするから……」
お礼という言葉を彼は否定した。
彼の方でサキに感謝したいくらいだと言った。
なぜかとサキが問い返すと彼は、言いにくそうに暗い顔でちょっと笑って、
「君が来なかったら、今ごろおれはこの世にいなかったからさ」
そこのコードで首でも吊って
サキのよく知っている名前を彼はあげた。
それは確かにサキのよく知っている名前だったので、サキはぼんやりとうなずいた。
わたしの生きざまを知っているから、それで自分が恥かしくなって死ぬのをやめたと言うの?
サキは語りかけはしなかった。
横たわったままじっと彼のうつむいた横顔を見つめていた。
もっと何か話したかったのだが、疲れて、体がいうことを聞かない。
それに、眠って、少しでも回復しておく必要があった。
彼女は戦わなければならないのだから。
サキはふうっと目を閉じた。
夜半、サキはひどくうなされて、眠ったまま、声をたてずに泣いた。
深く眠っているのにも関ず、サキは、声を秘めて泣いたのである。
彼はじっとサキを見つめていたが、そのうちに思いついたように画帳をとりだして彼女を描きはじめた。
そうして時折サキがひどく苦しそうな時には、手を休めて、サキのきつく握りしめられた指を優しく解き放してやった。
彼の眼は一瞬閉じられ、それから床の上n、彼が今日破り捨てたばかりの一枚のカレンダーの上にそそがれた。
彼はカレンダーを拾いあげた。
彼自身が口に出して認めたごとく、サキが来るえの死のうと思った気持ちは不思議におだやかに静まり、ただ静かな決意だけが胸の中を満たしていた。
残されたわずかな時間、やれるだけはやってから
なぜそんなにもあっさりと覚悟が決まったのか、彼自身にもわからなかった。
翌朝、夜明けてすぐに受けとった緊急事態発生(スクランブル)信号のために、サキは熱の引かない、わずかに出血が止まっただけという状態をおして出て行った。
出際に、
「一ヶ月、待っていてもらえるかな。あと一ヶ月以内には、わたしらが今追っている
きびしくこたえているに違いない傷の苦痛をおして笑うことのできるサキを彼はただ見つめた。
「それじゃ。」
サキは一歩さがって右手をさしだした。
まるで、けがをしたのが左手でよかった、とでも言うように、自然に。
彼はその手を両手で握りかえし、目顔で、なぜそうしてまで戦いに行くのかと尋ねた。
サキはふっと笑って、
「本業は、
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2.
1ヶ月後、何年かぶりにサキは完全に自由な休暇を得た。
スクランブルでたたき起されることも、活動費かせぎにアルバイトに出かける必要もない、まったく自由な時間。
この上もなく空の美しい一日を選って、サキは出かけることにした。
透みわたった空に銀の風が吹き、既に葉のひとひらもない白い木々のこずえには、かんくああん…… サキはついに見ることができなかった、収穫祭の鳴る子が、置き忘れたままに冬の朝を響いていった。
サキが古びたドアをたたいた時、彼の部屋にはもう一人、サキの見知らぬ青年が来ていた。
妙に騒々しくにぎやかな男で、サキがあっけにとられ、彼が苦笑いしている中で、一人で景気よくしゃべり続けた。
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ユリスがサユリに育てられ、アリサがエリーの娘であると考えられないこともないのじゃない。
いや、エリーが結婚しちゃまズいのかなァ、逆でもよい。あるいは“ソレル女史及びエスパッション・スクールの保護下”ということで、ユリスはだれを養母としても育たなかったかもしれない。
地球リスタルラーナ 1500光年
1年 25 35
2年 30 30
3年 35 25 15 20
ユリスの育ての親ってケイじゃなかったっけ? May.19 (by姉)
アリサは放っぽらかしても、ユリスには誰かついてた方がいいんじゃないかねぇ May.19 (by姉)
広大な宇宙のまっただなかに浮かぶ、巨大な中継所(ストップオーバー)。それは、片道2年に渡る地球
ファーツアロウの地球人留学生団は、まず宙港(ポート)で簡単な人員照合をうけ、無重力地帯である中心部のスリップダウンを利用して、2分たらずでS.S.S.側の玄関ホールにたどりつく。
サキを始めとした中央委員30名を先頭に、一同は厳かに、かつ胸をはって堂々と、そのS.S.S.全生徒の待ちうけているホールの中へと歩みでて行った。
転入式、対面式、歓迎パーティーと、にぎにぎしい歓迎騒ぎの中で、ある一瞬からずっと、サキは、だれかに“視られ”ているという感じから逃れられなかった。
首筋をつかむような視線を感じて、油断なくあたりを見渡してみても、騒がしさの中でだれ一人それらしい人物は見当たらない。
それでいて、“見つけた”“捕まえた”といった感じの視線が体じゅうはっしりと抑えこんで、息苦しいくらいなのだ。
耐えきれなくなって、サキは早めに歓迎パーティを抜けだした。
疲れたからと偽わると、心配して、サキの憂慮の的だった現S.S.S.生徒会長フォーラが部屋まで送りましょうとついて来た。
一見して評判どうりの超人としれる彼女は12歳。3年生。実際にはサキと一つしか違わないにもかかわらず、体格、頭脳、対人の折衝など、全ての点で、4つか5つ分は差をつけられているなァとサキは思い、年不相応に大人びた物腰に、9ヶ月前に別れて来た姉、サユリと共通する、一種の冷(れい)らかなふんいきを見出して、深層心理に複雑な波がたつのをふせげなかった。
『なにか一種、離れている。』
と、サキはこう日記に残している。
『ガラス張りの向うから、眠ったままの心で“優しさ”を造り届けているような感じがする』と。
この時から半年後の中央委員会選挙※までの間の、この二人の会長候補の心の経移こそが、後々の悲劇をひきおこすことになるのである。が、これはまだ当分の間表面に浮かんではこない。
※ S.S.S.に生徒自治は発達しておらず、生徒会は存在しない。
二週ほどの間、サキの日記にはしばしばフォーラに関する酷評が書かれた。
セイ・ハヤミの事も含めて、S.S.S.に来て以来、急に、他人(ひと)には言うべきでない秘密がふえたサキは、平常のおしゃべりは前にも増してにぎやかになたのに、もう容易に実のある真の心をこぼさなくなって、その分、おもしろいほどのスピードで、“雑記帳”ノートが増えていった。
そんなサキが、ノートを人に見せなくなって、以前の、イラストとだじゃれでいっぱいだった頃からの愛読者たちは、つまらないと文句を言っては、「反抗期ね」とからかったが……
(未完)
S.S.S.名物の教課委員長、通商ティリーさんことティリス・ヴェザリオである。
「……ねえ。」
眠くなって、なんとはなしにpけらっとしているサキのかたわらへ、つつつっと一人の少女がよってきた。
長い黒髪を二つのお下げにした、S.S.S.名物の教課委員長、ティリーさんことティリス・ヴェザリオ。
2級上点つまりヘレナたちと同学年の彼女は、背の低さにおいてサキと張り合っている。
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第一章 スリナエロス・ソロン・スレルナン
1.
「推進装置全機停止。ガントリーロック着結。」
「安全(セーフティ)確認せよ」
「全機能O.K。異常ありません」
「よし、メインエンジンストップ」
「メインエンジンストップ!」
「アイ、サー! 出力9000……7000……6000…………200…………0。エンジンストップ」
「ドッキング終了!!」
ドッキング終了
この言葉と共に、大パネルに投影された船橋風景にかたずをのんで見入っていた生徒たちは、皆、安全ベルト解除の緑色灯(グリーンランプ)がつくのももどかしく、わぁっと一斉に立ちあがった。
「着いた!」
「着いたわ」
「S.S.S(スリーエス)だ!!」
まる一年かかって、ようやく留学先であるS.S.S.(スリナエロス・ソロン・スレルナン
加速が消えて無重量状態となった船内で、だれかが機密服(スーツ)のヘルメットを放り上げる。
「ヒヤッホ〜〜〜!」
「全員、5分以内に荷物を持って、大ホールに整列〜〜〜!!」
かんだかいサキのソプラノと、セイのテノールが、同時に船室内にひびきわたった。
「アイ・サー!!」
いきおいつけて宇宙遊泳をやった奴と、まじめに走って行った者とがかちあって、出入口で一騒動おこったが、とまれ全員、時間どうりに集合した。
「あなたがたの一挙一動がそのまま地球の評価につながることを……」
「いずれ君たちこそが地球を担う……」
教授たちの一言一言は、短く、はっきりと生徒全員の胸に根をおろした。
彼ら教授連の大半は、S.S.S.にはとどまらない。
このままリスタルラーナ本星まで、更に一年を費やしておもむくのである。
「一年という短い間でしたけれども、わたしたちの意気込みに応え、熱心に指導していただいて、本当にありがとうございました……」
答辞などというバカげた下書きは抜きで、サキは生徒代表として一生懸命お礼の言葉をのべた。
「健闘を祈ります。」
「ありがとうございました!」
短い一言に生徒全員が心をこめて、一礼すると、生徒会、中央委員会を先頭に、皆次々と憧れの巨大な構築物の中へと歩み入った。
「さあ、これからが本番だぞ」
「そうよ、地球人代表がどこまでやれるか、リスタルラーナに見せてやりましょうよ」
「その意気だ。この一年の特訓であたしたち全員、リスタルラーナの教育水準にちゃんと追いついているんだから」
「追いつけ追いこせ」
「ホント、あとはどこまで自分を磨けるかよね」
「努力あるのみ!」
「オ
アッハッハ
ほんの少し不安の入り混じった興奮で、だれもが口々に未来への希望を語りあった。
「1学年、10クラス、300名でしょ? なんとしても上位50位リストにくいこもうよ。」
「なんの。卒業までには総代になってやらあ:
「お
サキもまた例外でなく、ヘレナやセイ、マーミドたちを相手にして、一同の先頭でにぎやかに笑いあっていた。
が、慣れ親しんだファーツアロウ船内から出、さすがに緊張からぴんと静かになって、S.S.S.への移乗通路を渡って行く一行の先頭にあって、彼女はだれにともなくつぶやいた。
「S.S.Sの現生徒会長って、人間離れして優秀な人なんだってね……。」
サキが何を思ってそうつぶやいたものか、今となってはもう知るすべもない。
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1ヶ月が過ぎて、生徒たちが不慣れな宇宙船生活にようやく順応し始めた頃
開票結果、1位、生徒会長
「うっそお〜〜〜っ!!」
それが知らされた時、サキはひどくすっとんきょうな声を出した。
「あたしまだ1年だよ!」
次点だった、2級上のセイ・ハヤミも、あ然としてつぶやいた。
「
実のところ、セイは自分こそ次期会長であると期待していたのだが。
体が小さくて実際年齢よりはるかに子供っぽく見える可愛らしいサキと、『生徒会長』というちぐはぐなイメージをつなぎあわせようとして、ついにこらえきれずに吹き出してしまった。
「アーハッハッハ! ヒッヒッヒィ!」
つられて、まわりじゅうが笑いだした。
驚いたのと、笑われて頭にきたのとで、半泣きになって、ふくれているのは、当のサキだけである。
普段面倒見の良いヘレナまでが、お腹(なか)をかけて笑いころげていた。
と、皆がひととおり笑い終えたあとで、サキは気をとりなおして聞いた。
「他にはなにをだれがやるの?」
留学途上の宇宙船ファーツアロウ船内では、ほとんどの生徒がサキたちのいたアロウ・スクールから来ているので、生徒会のしくみもほとんど同じである。
生徒会長と寄宿舎の自治委員長、及び各種委員会の委員長は生徒全体の投票で選出され、構成委員は各クラスごと。
副や書記・会計などや
開票場から素速く情報を集めてきていたマーミドが、写しをとりだして次々と名前を読みあげ始めた。
「生徒会長: サキ・ラン(女)、1−A,11歳。
舎監生最高責任者: アリマ・スン(男)、実技課一年、15歳。
図書管理委員長: ロージェ・マーリ(女)、3−B、16歳。
教課委員長: キール・カース(男)、2−A、13歳。
生活委員長: ヘレナ・ストール(女)、3−B、14歳。
……そしてわたくし、マーメイド・ブルー(女)、生徒会新聞部長。1−A、13歳。……なにかご質問はァ?」
「……あら、わたし困るわ」
言いだしたのはヘレナだった。
生活委員の方をやると、サキの方の補佐ができなくなるというのだ。かといって、これは私情から辞退したりするわけにはいかない。
年少のサキを盛りたてて生徒会をうまく運営していくことのできそうな人間は、そうザラにいるわけでもないのである。
皆が思案投げ首、考えこんだところで、しまいにセイが言った。
「おれがやってもいいぜ。」
かくしてファーツアロウ生徒会が発足した。
そして1年……
マーメイド・フィン
マーメイド・ルカ
マーメイド・ホワイティ
……って、あぁた、『トリトン』の影響なの
バレバレのネーミングですがな…… ☆(^◇^;)☆
序 章
かの世界統一より32年目、C・P11年の春
地球系星間連邦国家随一の設備を誇る、ここ、冥王宙港(プルータス・ポート)は、初のリスタルラーナ向け一般留学生の出発のためにごったがえしていた。
今日、出発するのは第一期生、200名。
いずれも9〜15歳の、全地球星系受験者6億という、厳しい選抜のあげくに留学権を勝ち得た、勝利者たちばかりである。
洋とした未来への期待の方が先に立ち、別れの言葉さえもそぞろになって、むしろ見送る肉親たちの方が不安げに、くどくどと説教のしおさめをしている様子だ。
跳躍(ジャンプ)航法で往復二年という長い道程も含め、一度旅出ったら最低5年間は帰ってこられぬ時代の事なのである。
娘や息子たちの勝ち得たものへ、素直に笑って送り出すことができないのも当然の事であったろう。
昨日、11の誕生日を迎えたばかりのサキ・ランである。
正式名(フル・ネーム)はサキ・ラン=アークタス。言語改革以前には、すでに彼女らほんの数名を残すだけとなった古(いにしえ)の一族の言葉で、蘭 咲子 と呼ばれていた。
そう、既にして彼女の出生は、歴史の流れの大きく変わる一幕に関わっているのである。
彼女こそ、リスタルラーナと地球とが国交を開くことの要因の一つとなった、あの子供であった。
昨夜、サキはほぼ一年ぶりに家へ帰り、やはり半年ぶりに姉と挨拶を交した。
父も混じえ、父娘3人が、本当に久し振りに集い、サキの出発と誕生日とを祝して、笑った。
無論、既に亡き母をはさんでの、父さえわけて入(い)ることのできない、16と11という年の離れた二人の娘の間の確執は、そのくらいの事で溶けて流れ去るはずもなかったのではあるが、サキは自分自身の心の中で何かが動き始めたのを感じていた。
堰(せ)いていた水戸(みなど)の上をあふれ打ち越して、雪解けの小川が流れ始めるように、わだかまったものが形を変え、少しづつ、心の表にしみこんでいった。
サキは、なぜだか顔中が笑いになって、見送りに来た姉に行って参りますを言い、昔々、よくしたように、首に腕をまわして抱きついてみたりもした。
気づかわしげに見ていたごく親しい幾人かの友人達は、自身、家族たちの見送りをうける中で、遠くからサキのそんな様子に心からの笑顔を贈り、サキもまた手を振ってそれに応えた。
もう大丈夫だとサキは思った。
もう、心の中の憎しみの重さに、耐え切れなくなる夜はないと。
離れて暮す年月が、きっと素直な感情を呼び戻してくれるだろう。
わたしたちはカインとアベルにはならなかったねとサキは笑った。
それは、姉サユリも同じ気持ちであるらしかった。
午前10時、留学生全員に集合がかけられた。
いよいよ出国手続きが始まるのである。
報道陣には退場が命ぜられ、広いホール内では、最後の別れを慌ただしく告げてかけだす者、どたんばになってから母子抱きついておいおい泣きたてる者、様々いて、サキにはその騒ぎが少しおかしかった。
「それじゃ、姉さん。」
さようならと言おうとしてサキは何も言えなくなった。
ややためらうようにしながら、サキの額の上にかがみこんだサユリの唇が触れたのである。
「
その時、視界にマーミドが入ってきたので、サキはこっくりと一つうなずきかえしただけで、すぐに彼女の方へかけだしていった。
「ふん!」おいおいとやっている一群れを片目でながめながら、マーミドは屈折した想いで声を発した。
「あの子、あれだけ母親を嫌がってたくせに……!」
サキはちょっと首をかしげて彼女を見ただけで返事はしなかった。
マーミドは生まれながらにして肉親の名さえわからないのである。
税関の入り口まで来た時、向うからヘレナが走って来た。
.
3.
授業開始からしばらくの間、ヘレナにはサキとゆっくり話し合う機会がなかった。
二人とも新学期を向えて、新しいクラスでいろいろと多忙だったし、夜、部屋に帰れば、明日の授業の下調べに復讐。
さらに半年後へ向けての受験勉強がきつくて、眠るのはいつも2時、3時。時には徹夜することもある。
二人とも勉強中は一心不乱。わき目もふらずに勉強した。
勉強は、楽しかった。
確たる目的が間近にせまって、なおいっそう張りが出た。
「あ〜あ! でも……」
一ヶ月して、ついにサキがベッドにひっくりかえって言ったものだ。
「みんな良くもつよ。連日連日3時間睡眠でサ」
「3時間?」
ヘレナに聞きとがめられて、あわててサキは口をつぐんだけれど、ヘレナをごまかすことはできなかった。
二人のスケジュールは、授業と勉強の内容を除けば、ほぼ同じになっていて、それによれば、特別な日に徹夜しない限りは最低4時間から6時間、きちんきちんとヘレナは眠っていた。
問いつめられたサキは返事に詰まって、だって……と言いよどんだ。
「言
(未完)
2.
寮母(ハウスマザー)はいたが、アロウの寄宿舎は起床・消燈から食事の献立てに至るまで、全て上級の舎監生による、完全な生徒自治区になっていて、ヘレナは幸いにも舎監委員会の方に「顔」が利いたので、サキと二人、具合い良く東棟の2人部屋におさまった。
翌朝、四月三日、
ヘレナはだまってショートケーキを二つ買ってきた。
むかいの部屋の、落第(どっぺっ)て再新入したという金髪の長い少女がお茶をわけてくれて、二人はやはりだまったまま、それを食べた。
この日も一日、二人はほとんど口を利かず、四月に入ってからほんの5〜6回しか話していない。
原因は、サキにあった。
四日、午前中、校内を見学。午後校外の地の理を見て歩く。
夜、夜ふけてサキが声をしのばせて泣いた。
隣のベッドに横たわったまま、ヘレナは何時間もそれを聞いていた。
五日、入学式、入寮式、新入生歓迎祭。
基本科生徒会長が面白い人で、身振り手振りも大げさに、今年の新入生は恐しくていけない。半年後の大難関を気にして今からライバル意識なんぞをむきだしにしていると、ペーパーテスト以前に性格審査で落ちるだろうにと嘆息してみせたので一同大爆笑となった。
サキが久し振りに笑った。と見る間に、何がおこったのかにわかにしゃべり始め、昔のこと、未来のこと、どうでもいいこと、大事なこと、話しつかれて寝入った六日の夜明けには、すっかり以前の快活さに戻ってしまった。
六日、生徒総会の間中、ヘレナはサキのことばかり、眠い目をこすりながら考えていた。
委員選びでヘレナは前期に続いて今度は会計委員長となり、サキは、なにかしらやりたそうな顔をしていたけれど、結局何にもなれなかった。
七日、授業が始まり、サキは生徒会新聞部に入部した。
.
1.
四月二日、早朝に、サキは誕生日も待たずに出発した。
サキが自分の誕生日をすっぽかすのは、これが最初だった。
サユリが、トランクを持って、門の所までついてきた。
ヘレナが時間どおりに迎えに来た。
「
「もう、寄宿舎の方には連絡しちゃったんだよ、姉さん。」
そう、そうねとサユリがつぶやいた。そうなのよね…………。
「それじゃ。」
サキの方が先に立って門扉を押し開け、そのまま振り返ってヘレナを待った。
サユリは……サキに何か言いたかったけれど、心の中の想いをどう言葉に表わしたらいいのかわからなかった。
「……ヘレナさん。」
「はい」
「あの
こっくりと、ヘレナはうなずいた。
一人っ子で育ったわたしでは役不足かも知れませんけど、お姉さんにかわって、わたしがサキをひきうけます。
その頼もしさが、この姉妹のすき間に橋をわたすことになるかもしれないと、ふと、サユリには思われた。
朝まだき、もやの中、サキとヘレナはだまったまま郊外の道を歩きだした。
始発の路線バス(リニアモーター)に乗り、地球外周鉄道に乗りかえ、一回途中下車して海べりを歩いてから行こうと言っていたのは、サキの方だった。
ユーロピアン大陸南西部、1000年のその昔、あの大異変のさらに200年も前からそこにあるという全寮制高等寄宿学校(ギムナジウム)
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