"界来行列" ……もともとは定まった姿形のパターンと、ただ練り歩いて舞うだけのものだったのが、明治時代に外人教師がハロウィンとごっちゃにした上に "生徒の創意工夫" に賞金をかけてしまったので。……あとは推して知るべしである。


 『 祭! ……大野大祭(おおのおおまつり)見聞録
                     始末記…… 』に、ついて。

 主人公は、大野という土地柄、それ自体である。<むしろ清や好は出て来ない。

 柱として、以下がぐちゃまらしている。

1.(子供)
 『白天狗(宇宙人!)レイ・ライン仮説』をぶちたてた中坊(こども)どもが郷土(ばば)のナゾを探すべくあっちこっちで御法度破りをやる。>山と山間、農村部。

2.(中年)
 町内会と学校組織(いいとししたおとな)が毎年恒例の "大野大祭・界来行列" 準備で対抗意識を燃やして走り回っている。>下町(商・工地帯)

3.(壮年)自称シティガイの「とっちゃんぼうや」ども
 大野市に新交通路を開いてリゾート化し、ひともうけをたくらむ杉谷資本は、大祭のテレビ放映を企画するが、地元商店会の取材拒否をくらってあっちこっちに泣きつく。>新興諸地域。

4.(青年)
  "新路開発に反対して大野の風土を守ろう(婦人の)会" でゆかり姫あたり中学生を組織化してかねない。>お屋敷町。

5.(老年)
 昔ながらの人脈で、会田家は市政を私(わたくし)してでも保護条令を通し、杉谷を退ける予定である。


 会田正行と杉谷兄妹は出るのか? かなり微妙な立場だが……
 杉谷Gをヨソとして書くか、身内の裏切り者として書くか?


6.
 それらを把握し、描く、"眼"としての、京都か大阪(か神戸)の大学生、磯原広と、その婚約者、琴音まき子ちゃん。
 
 大野市の束(たばね)となる各本家。それぞれの分家筋が3〜7位あって、各戸に2〜3人の子(食糧供給の限界による避妊技術)で、大野住民の原型をなしていた。(だから全員で秘密を共有できた)。
 間来は会田の主筋であり、大野市外の日野庄森に住んでいる、半人外の一族。翼家は、戦前の一時期に、 "天皇家より起源が古い" ということで特高に狙われてしまい、欧州へ逃れて財を築いている。
 → 翼 雄輝。
 
(主) 翼(つばさね)・間(はざま)・間 来(はざまく)
                 (稲架幕)(はさまく)

(政) 会田・大鳥・白鳥(分家筋に竹中・井筒など)

(祭) 出来良(できら)・去行(さりゆき)

(行) 杣屋(とまや)・居築(いつき)・道守(みちもり)・樹森(いつきもり)

(農) 畑司(はたし)・稲司(いなし)

(工) 炭(すみ)・彫手(ほりて)・塗部(ぬりべ)・織戸(おりと)


(杣屋 忍)
 
 磯原家の末弟は典型的な登校拒否で、小学校を卒業させてもらったのは殆どお情けだった。学校へ行くのを嫌がるようになった理由を、本人は口をつぐんで云わないが、クラスでは清が混血だということへのからかいや、かなり悪質ないじめもあったのだと、かばおうとして一緒に泥玉をぶつけられた子供が証言している。
 なめらかなココア色の肌にくせの強い巻き毛。
 つり上がった大きな茶の瞳もイキゾチックな、大層きれいな子供で、いつでも少し不思議そうな表情をして、一歩さがって友達の遊びを見ているような、温和しくて、優しく、成績も良く……当然、周囲の大人のウケもよいけれど、そういった無意識のひいきが重なるほどに、クラスの乱暴者たちの反感は大きくなっていくらしかった。
 
 ひとりの始めたいじめ、というやてゃ面白半分に周囲へ伝染する。なにをされても告げ口も仕返しもできない、物静かでシンの強い子供ではあったけれども、5年生の半ばから理由もなく吐いたり、腹痛を訴えては保健室へ逃避するようになり、欠席が増え、6年のクラスがえで仲の良い子と分けられてしまうと、もう完全に、他の子のいる間は教室に姿をあらわそうとはしなかった。
 
 混血で、外見が日本人とは違うということで仲間はずれの対象にされたのは、3人いる兄達も同じ条件だったが、彼らがいずれも体力や反射神経にものを言わせて仲間内での地位を確保できたのに比べ、もともとがいくぶん病気がちで内弁慶に育ってしまった末弟には、どうやら黙って耐える以外の打解策は見出せずにいるらしい。
 
 
 さほど人の出入りのある町でもないので、引っ越しを手伝ってくれた御近所の口から噂はすぐに広まったらしい。入学式の日、母につきそわれて出かけた清はすっかり見せものというか、そぼくな好奇心の対象で、教室の近い新入生はもとより、他の校舎からも好奇心にかられた上級生たちが短い休憩時間にぞろぞろと見にくる始末。
 緊張とい縮のあまり発熱して、タクシーで帰宅。翌日は、けっきょく枕から頭が上がらなかった。
 
 
 
 はなしの始めにさかのぼれば、それは二月のまだ寒い夜、おやじの、転任が、決まった。
 「まあ、じゃ、やっぱり本当になりましたのね」
 ちょっと古風で正確な日本語を使う異国生まれの母は心なしか嬉しそうにそう言い、かなりの田舎なその地方へ当然ついて行くつもりで、単語帳かたてに飯を食っていた俺は試験に受かればどのみち下宿の予定だったしと、わりあい冷静に受けとめた。
 複雑そうな面持ちでたがいに顔を見合わせたのは高校と中学の2年生をやっている、なかの良い三人の弟たちで、親父は例によって少し申し訳なさそうな物解りのいい口調で残りたいのなら何か手だてを考えるし自分達で決めなさいと、言う。
 しばしの沈黙のあと、みなの視線が集まった先では、
 「……ぼく、転校、できるのかな……」
 見ひらいた目をひたっと両親に向けながら、信じちゃいけないと自分に言いきかせるような、ここしばらくですっかり痩せてしまった六年生の末っ子が箸をもったままの細い手を胸に握りこむようにして小さく小さく、ポツンと呟やいた。
 「転校、したいかい?」
 中学の教師でもある父がおさえた声で尋ねる。その瞬間、残りの兄弟には全てが解った。このために両親は、住みなれた家からの引っ越しを受け入れたのだ……と。
 もちろん、末の弟、清にも解っていただろう。
 「ぼく、学校、行く」
 弱い声で、でもきっぱり言いきった。
 「ぜったい、行く。」
 ……そうだ。こいつは約束したことは必ず守るんだ。
 となりの席の
 
 
 
 
 

(第2稿)
 しんしんと雪の降る港の丘のよる、兄弟たちの育ったたいそう古い洋館には暖炉の薪のはぜる音が静かにひびいていた。
 「まあ、じゃ、やっぱり本当になりましたのね」

(目次)

 まだ、
 まだまだ、
 もうすこし、
 ……きっと、


 桜の日 …… 転校初日は三日目
 蛍の夕
 祭の夜
 雪の朝

 
 
☆ 大野市を舞台として磯原家の清をとりまく諸相、

・ 母の特殊性、
・ 自分の特異な力と体験 …… 対人恐怖に至る、
・ 異民族の血をひくこと …… 登校拒否に至る、(Y市での思いで含む)

・ 兄弟間(おもに広、厚、)の交流、

・ バックグラウンドとして、母を訪ねてくる荒々しい力をもつ人々と、
  国際的な人脈。

・ 日本国の時代的な閉鎖性、入れるんですか?

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

・ 地方の小都市
・ 地理的に閉鎖性を保ちながら、古くから、

 

 田夫野人(でんぷやじん)といえばイナカ者の代名詞だが、
 双子で生まれた俺たちに田夫(たお)と野人(のひと)と、
 名付けた曾祖父はいったいどういうつもりだったのだろう。


 磯原岳人氏の夫人・マリセは異国から嫁いで来た人で、肌色の濃い砂漠の民の容貌をいちばんよく受け継いだ末の息子の清(キヨシ)は、そのせいで、いつかクラスのなかで除け者のいじめられっこになっていた。
 「どうして?」
 おかあさんが、よその国の人だったらいけないのか……と、新しい服をドロドロにされて泣きながら帰ってきた息子の問いを抱きとめて、母・マリセには、かけてやる言葉がなかった。
 かつては、国籍などまるきり無視した組織のなかで、看護婦として難民のために働いていた彼女だ。我が子を、自分の母国へ連れて帰ってやること、あるいは、世界のどこへでも連れて引っ越して行ってやることは、いつでも出来たけれど、だからこそ、幼ない子供を餓えさせず、病気に冒させもせず、安全に護り育てることのできる国がどれだけ少ないかも、よくよく承知していた。
 「あなた、お話があるのですけれど」
 ある晩、いつも帰りの遅い夫を出迎えて彼女は相談をもちかける。いまでは珍しくなったほど正確な、古風な日本語で。


 
    磯原岳人 = ミーニエ・ブランチェスカ・マリセ
  Aやぎ1/20  |  B水がめ2/14
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|     |     |     |
広     高     厚     清
A     B     B     AB
19か20   17     13     11
水がめ   カニ    牡牛    天びん
2/3     7/21    4/7    10/10

類似と相異を煮詰めて行くと、だいぶん濃くなるね。


1990.08.24.高山ビジネスホテル泊(<ここは比較的夜の遅い町。)

  "プライバシー" の為に3,000円の差額を払える人間になってしまった(これは2人で泊まれば2分の1である)。単に天照寺YHが好きくないという事もあるのだけれど。
 一泊二食付7,000円で時間帯の不自由な旅館よりは食事ヌキ5,000円で先払い、何時でも出られるBHの方がリーズナブルである。おかげで今夜の夕飯は途中で買ったクッキーとトマト(無添加・無農薬♪)だが☆
 
 アルミサッシの防音の窓とクーラーと、いつまでも灯りを付けていられる時間的自由さ、社交会話に気を配らずに私事(原稿)に没頭していられる精神的自由さ、……の相乗効果は3,000円に値するか否か。
 ……単に5,000円札をパッと払っちゃった自分におののいているだけではあるが。(<これってほとんど自主的な取材とカンヅメ☆ はやく編集さんにたかれる身分になろう☆)
 
 (ひとつ気がついたのだが、ねまきとタオルがいらないとなれば荷物が大分減らせる。あと、お風呂が自由に使えるので、洗濯(と簡単な調理!)も可能な訳だ。……これって大分おいしくない? (お湯もあるので、お茶っ葉も持ってくればなお良い)。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 標高900mの美濃白鳥〜庄川(牧戸)は、美しいコースであった。("桜喫茶"は写真とれば良かった!)(涼しくて水が清い!)稲穂はまだようやく形を整えたばかりでややくすんだ淡緑。とがった葉先のそよぐさまがまだ硬い感じで美しい。サルスベリの紅とオレンジの洋花。大型の紺色の蝶が風に乗って回遊している。とにかく水! 水の音!! 街路のはざまに水路がある、というのは大野に似合うかどうか? 美濃白鳥の長良川をロープで仕切ったプール、というのは、必ずあると思う。庄川〜高山間のバス1時間コース(1,800円)はもう1度逆行してみる価値があるかも知れない。(途中に Owk Village !) 白鳥神社も見に行きたい。
 
 建築は幅広で低めの、屋根の傾斜のゆるい入母屋造りが主体になっている。屋根をささえる基部の板の曲と彫り飾り(sのようなの)が、特徴的で良い。白塗りの壁に明るい茶色か黒に近い濃茶の、、太い柱と腰ばめ板。屋根は紅い金属か黒がわら(辞書も持って来るべきね★)。白塗り部分の多い羽振りのよさそうな建物など、小京都なぞというよりスイスの山村の風情がある。二階部分の窓の手すりに布団やはちうえがカラフルである♪
 

 庄川村の "桜喫茶" の、超簡単なスケッチ。
 上、和風。下、洋風。色の統一が美しい♪

 
 現在、こちらの世界大野市(大野藩4万石、幕末期、藩政改革に名君出る。言葉はきっぱり京系の関西弁。)にいる。少なくとも、「どこが違うか」「何が見えてないか」は見えてくる。ちなみに大野高等学校は文化祭準備の真最中。スキー場のある地方であるからして、夏休みは既に終了している模様である!!
清たちは、部活は?

 あちらの大野より気温・湿度ともに高く、耕地(稲作)面積は比較にならぬ位まったいらに広く、城の天主部分だけが突出した小高い丘の上にある。8月下旬現在、田んぼは淡緑から緑と茶の消え残った薄黄金色にかけての豊かなグラデーションであり、もう半月から一ト月のうちには刈り入れが始まるだろうと思われる。淡紅色からピンク、白のサルスベリが咲いていてあざやかである。四囲の山並は、高低差こそあるものの、標高は低い。
 
 私の大野市はありそうで、ありえないもの、になるだろう。
 閉鎖社会であり、地理的に隔離されており、かつ広い空間を専有している。電波社会への対応の遅れから『現代化』こそ遅れたものの、近代西洋文明の導入はいち早く、幕末・戦後ともに商魂たくましく乗り切った。資源・技術力ともに優れており、産品への誇りも高く、また、外部に売れなくても食っていけるだけの食糧自給量もある。都市との遠さ、交通の不便さを、むしろ好んで保っているような風潮もあり、江戸期土着文化、明治の西洋建築と習慣、現代を先取りした思考が混在している。(地域的には下町及び周辺山間部、城跡周辺のお屋敷町、駅周辺の商業・観光竹、が、 "大野" であり、新興外部資本系住宅地はヨソと見なされている。(ナカの友達がいればナカになる。)

 
☆ 大野市 概容

○ 地方(かなり山間部)の小都市。とはいえ、駅前にはデパートの数軒とビジネスホテルがあり、中小工場団地もある。

○ 地理的に閉鎖性を保ちながら、古くから東西に海-山-海の中継地として南北にひらけた街道に沿って海〜京間文物の交流は盛んであり、その後、山間地のためTVセットの普及は他地方に比べかなり遅れ(教育的配慮もあり)たが、電話、衛星放送、CATV、LAN等の導入には熱心であり、県下では独自の行政と文化を誇って(異名をとって)いる。旧藩主・会田家以下の、はたからは異様にも思える地着の団結力がポイントになっている。
 近年、K市通勤者のための新興住宅地やK重工(杉谷傘下)の研究所、寮等の建設があい次いではいる。離農・離山率も増化一方の傾向ではあるが、他地方に比べてはやはり低く、また、O市自体から転出する例はまれであり、都会に一旦は出ていった者も半数以上はUターン組になる。非常に珍しい街である。
中小規模の良質な伝統工芸工房が多く、国定公園に隣接してもいることから、民芸品を扱う土産店、民宿、中規模の旅館郷土料理店等多く、また風土を愛する芸術家がところどころにアトリエをかまえていたりもする。
 市政のモットーは "温故知新"

○ 全員一致でお祭り好きである。最終日の出来(いでく)神社の例大祭にぶつけて10月1日から1旬間まるまる遊んでしまう大野大祭(おおのおおまつり)を最大のイベントとして、観光客寄せでない本当の祭りをしている。キーになっているのは各学校を柱とした地元町内会と、出来、去来、大鳥天宮の三神社、稲架幕(はざまく)、出来良(できら)の両神祇家である。

○ 白天狗(大鳥天狗)→鳥人伝承
 「界と界との狭間を通って白い天狗がやって来て、(<女性形)
 白鳥姫を嫁にとり在の者らに智恵と力を与えた」のが、
 大野庄成立の由来。
  現在に至るまで、去来神社の奥洞内には大地世界の上空、聖美白都を
 見降ろすポイントに界橋があいている。

  ……ハンググライダーで飛び込むバカ<七木千あたりやるんじゃない?も出るだろーなー……。鋭と気があいそーだなー……
 
 
 

 栄田商会が潰されたあと、運送業はいま誰が担っているのか?
 まさか杉谷運輸ではあるまい。

◎ ストーリー・プロット …… 仮定として。

1.くっちゃんが無理な生活をしている。
2.ユミちゃんの高橋くんへの捜査依頼によって事がおこりはじめる。
   (<ユミちゃん催眠術?)
3.高橋くんへの日常生活。姉上文江さんの片恋。
4.ユミちゃんの日常生活。チョコレートケーキをはしで喰う
  好くん。
5.清クンがくっちゃん相手にちょっかいかける。先輩ぶって。
6.高橋くんとデートの清。
7.

  (綾子)
(起) 無茶な生活
(承) ユミのちょっかい
(転) 原因の判明
(結) ユミとの友情
 
 
◎ このストーリーにおける人物相関図♪ (※省略※)
 
◎ O市概要

  日野城川
  日野白川
☆ 日野代川(ひのしろがわ)について。

  日野代、とはもともと大野の旧名である日野庄川から来た言葉
 で、日野庄はまた秘の城(秘めの庄)<姫(日女=ひめ)の城(依り代)ともいい、山のなかの隠れ里であったと推察される。



 どんけあらん、どんけあらん、せん、せん……

 古い不思議な鈷や鼓が鳴る。

 「善き(おお)野の大祀(おおまつ)りじゃ……」

 「白天狗さまがお通りになるえ……」
 
 


国鉄廃止!! 古い線路とトンネル♪
バス路線のみ。<第3セクター転換。
ほぼ1時間に1本、K市まで約2時間。反対側は日に3〜4本。



   K市
    ↑
  (※隣町および幾つかの市町村を経て)

   くぎり谷

      北斜面林の中にO野中学(寮制)あり。

   「峠」<ドライブ・インと、「スナック・トーゲ」

      南斜面に私立大野学園高等部



   善き野(おおの)はお客が好きなのヨ。
   好きなモンはほどほどにしておくのが、
   智恵じゃもろう。」

            と、おばばは笑った。
 


1985.2.28.
 

  "俺と好" シリーズ学園版。
 

      くっちゃん、ほか脇役キャラを中心として。
 
 

 何でもいいから "俺と好" 関係の設定ノートに使っている。

 
       1990.03.23〜
       遠海(仮称)真扉
       ○外海真扉
 
 
        Door, Entrance or Gate
         for Truth
           on Fasest Shore    外海真扉☆


 

◎ 本編との主要な相違点。

○ 近未来という設定をあまり色濃く出さない。
  会話の片端などに、ちょっと「あれっ?」と思うような
  言葉がはさまってもいいかな、という程度。ほぼ現代。

○ 会田・生徒会長と影番・杉谷くんの親密なつながりはなし。

○ 会田さん3年生、清、ゆかり姫など2年生、ユミ、まりくつコンビ1年生。
  高校4年制度はたぶん無し。

○ 清クンは主役に出さない。くっちゃん、ユミちゃんを中心に。

☆ くっちゃん……奨学生の下宿(ひとり)暮らし。まりにつきあっての
  ソフト部補欠マネージャー。気がつくと図書館にいる "ヌシ" という
  イメージと、どう折半させるか。
  ユミと親しくなるまでは、やや偏向して暗い。
  画家志向。O高へは越境入学、片田舎F県、K県の境、の
  24時間(よろずや)スーパーの子。

☆ ユミ……かなりヤクザな兄上とその親友である片恋のBFをもつ、
  サバサバした性格の、かなり変人風フツウの女の子。資産家令嬢
  のはずなのだが何故か親の顔を覚える暇もなく家事一切にあけくれる。
  看護婦志望の行動派。新体操部所属。

☆ まりィ……健気で愛しい女のコ♪ クッキーとケーキは焼ける
  けど魚料理は出来ないという手合い。前恋愛段階でくっちゃんに
  べったりはりついている。単純な憧れからくっちゃんを巻きぞえに
  ソフト部補欠マネージャーをつとめる。コンピューターと手芸に
  特異な才能あり。
  くっちゃんとの関係は……なんなんだろう?
 
☆ 清クン……ユミちゃんの片思いのBF。サボリ癖のある堅気のO高生。

☆ 好 …… ユミの兄。O市の影番。硬派。
  チョコレートケーキを箸と番茶で(いやいや)喰う。

☆ 高橋博文(ひろふみ)……清クンの中学時代の親友。
  私立O高の奨学金を受けようと無茶をして体をこわした、
  暗い過去つき。清風高生。
  高橋豆腐店の息子で、新聞記者志向。
  ユミちゃんのBFのひとり。

☆ 高橋文江……博文の姉、評判の豆腐屋小町。以前、酔漢にからまれた
  ところを杉谷好一に救けられたことがある。

☆ 栄田晴樹……通称「狼」(おーかみ)、別名ひょーきんウルフ。
  この人、出てくんのかなあ。硬派(?)暴走族 "009" のヘッド。
  杉谷好一の子分。

 
(※かなり精密なO野市街地図が作製されてるのですが……以下略。
  今現在、アタマの中にある地勢図とは、けっこう違っちゃってる☆)
 有 澄 真 里 砂 様

 久しく会っていないけれど、
あなたの事だから、たぶん元気で
いるのでしょうね。
こちらはろくに雪もふらず、
ごく平凡な毎日です………………
…………あなたは、なんで私が
こんなにしらじらしい書き方を
するのか首をひねっている事でしょう。
実を言うと、今は国語の授業中で
一度先生に提出しなければなら
ないのです。
 したがって秘密の話もできないし、
ましてこの間ついたリーナからの手紙
を同封する事もできないのです。
(中継役はつらいなぁ)……
…………あら、いやだ!
はげしく話が飛んじゃっ
たわね……………………
 前文終り、次へ

 (改頁)

 さて、いよいよ先生の言う所の
本文に入ったわけですが………………
あなた…………やめた! およそ
しらじらしい敬語なんてもうつかわ
ないわ。
マーシャたちがそちらへ行ってから
1年以上……2年近くかな……
たちます。
あのとき私もいっしょに行けばよかった。
そうすれば ずっとあなたたちと一諸に
いられたのに。
こちらの生活は単調で退屈で
ほとんど変化がありません。
安全すぎるのです。
「それがこちらのいい所さ」
と言ってしまえばそれっきりだけど……
 本当にマーシャが
  うらやましい。

 (改頁)

さて、いよいよ「重大な用件」
に入るわけですが………………
 別にないなあ。
だって先生が目を通すものに
本当の用件を書けるわけがない
 でしょう?(リーナからの手紙は
定期便の方で送るわね)…………
あ!あったあった!
最近また本の中の気に入った詩
やセリフを集め出したの。
少し書き送るから、鋭や雄輝たち
に聞かせてあげて。
 
   地球を発つ恋人へ
そんなに遠くへ行けば
 あなたは私の事を忘れるわ
そんなに長い時間がたてば
 あなたは私の事を忘れるわ
だから行かないでここにいて
だから行かないでここにいて
 
     萩尾望都「少年よ」より

  ハンプティ・ダンプティ
  死んでしまった白ねずみ
  くだけたガラス
  たべちゃったお菓子
    すべてもとにはもどらない

         萩尾望都

船よ帆かけて進め
 空の下
 星の下
東へ 黎明へ

 私の心は
はるか …… あの果てを行く

         萩尾望都

妖精人の国は
 どこにあるのかしら
そこでも星は同じかしら

          花郁悠紀子

バラの小道たどって
白いドレス着て
 あなたに会いに来たの
早く来てキスして
 パパにもないしょよ
 ママにもないしょよ
 牧師様にもないしょよ
早く来てキスして

        萩尾望都

また今度 いいのがあったら書くわね。
鋭や雄輝たちによろしく。
             かしこ
1月27日
           □屋○△子
有澄真里砂 様

P・S サキからの手紙も送ります。

 
 
 
 


 リツコへ。

 理事長に就任したとの報、聞きました。まずはおめでとう。大人しかったきみが、そういった組織に携さわることになっていたとは少なからぬ驚きだったけれど、たしかに僕はきみを覚えていました。よく気にいった本を貸してくれたりしてましたよね。給食の時間いっしょに食べましたよね。
もう大昔のことです。
 きみが、キヨセ律子が、(ごめんなさい字を忘れました)、そちらの、代表としてこの大地世界を訪れたいと言っていると、マーシャ……旧名、有澄真里砂……から聞かされた時には、僕は、まだ小学生だったあのきみにもう一度会えるものだと一瞬なつかしく、それから、地球という世界における50年という歳月の意味を思い出して、おばさん(失礼!)になったきみを想像するのに苦労をしていました。ところが門を抜けて姿をあらわしたのは、ぼくの記憶にあるままの、頭に白いリボンをつけた女の子だったわけです。
(※>p.2.)きみの、息子さんの、お嬢さん……孫、ですね、つまり……タカハラのほうの律子、責任を持ってお預かりします。僕自身にかえても次の月踊の蝕には再び門の前へお返ししますので、安心して下さい。……もっとも、この手紙はその高原律子ちゃんへ託すわけですから、このノートが手元へ届いた時には、僕の言葉は実証されているわけですが。
 それにしても、ほんとうにきみにそっくりです。僕自身がまだ少年と言って通る外見でいるうちに、かつての幼ななじみに、僕の妹で通るようなのようなとしの、孫がいるとは!!
 ……かつて決裂の3マグチュアリ(大歴または上歴とでも訳せばいいでしょうか、1マグチュアリは約4000年にあたります。)の昔以来、相似た文化と文明を持っていたはずのダレムアス(大いなる母神ダーレム=大地、の世界ウアス)と地球(ティカーセル)(ころがる世界ティクス・ウワセル)が何故ここまで違ってしまったか。結論はここにつきるような気がします。
 神を喪った地球の人類は、世代交代が早い!!
 現代医学、なる術のすべてをつくしても僕がいたころの平均寿命の公称は男女とも80歳前後だったと思います。先進国の日本で、です。一方ダレムアスでは病気や事故で(ご存知の通りこれに近年は "戦争" が加わりますが)でなく200歳を迎える前に死ぬ者というのは、ごく稀なのではないでしょうか。 "統計" だの "戸籍調査" だのは、そもそも概念からしてありませんから正確かつ科学的なことは何も言えないのですが。つけ加えるならマルクス(王族、つまりダレムアスにおける創世主、女神マリアンディアの子孫)の直系であるマーシャなどは、前例からして400年前後はかるく生きるのではないでしょうか?
 
 なにはともあれ、タカハラのほうの律子、責任をもってお預かりします。僕自身にかえても次の月踊の蝕には再び門の前へお返ししますので、安心して下さい……もっともこの手紙はその高原律子ちゃんへ託すわけですから、手元へ届いた時には僕の言葉は実証されているわけですが。
 
         今日は見張り番の時間ですので、このへんで。
 
 
 
   第二日、

 孫のほうの律子嬢はよく眠れたようです。 "リツコ" という音はダレムアスの言語体系にはなじみにくいもので、早速に愛称がつきました。 "リーツ" 。平野にいる小動物です。このあたりでは見られないようなので絵に描いて説明したところ、本人も気にいってくれた様で、ふだん、口語で呼ぶときにはこれに接頭の美辞がついて "マリーツ" になります。
 
 それにしても、そちらから律子=マリーツに託された "さし入れ" がこのノートと筆記用具だった、という事実! ……あいかわらずの洞察力ですね。朝日ヶ森は。
たしかにダレムアスには、紙の製法は知られていないわけではないのですが、あまり流布していません。街道をゆく隊商や一部の商人は和紙と不織布のあいのこのようなものを帳簿として使っていますが、一般のダレムアトは "樹が泣く" と言って、そのような加工法を好みません。昔の日本画のように絹布をその都度洗いなおして使うか、木簡、石板、あるいは交易路ぞいではイムエレ樹の広葉。ダレムアスにおける文盲率はいたって低いのですが、おおむね、 "すぐに消すものなら書く必要はない" 式の、口頭伝達の方が好まれます。優れた記憶力であるからこそでしょう。
 
 で、話は戻りますが、朝日ヶ森の洞察力と親切が、しっかり下心に裏打ちされたものであることも忘れていませんでしたよ、僕らは。どうせこちらに "物書きぐせ" があるのを見込しての(ずい分長いあいだ忘れてましたが!)ことでしょう。それに、こちらの国内で広く保存・利用するには、シャーペン、消ゴム、安価な紙、という三種の神器は、文明のレベルも文化の質も違いすぎるものですし。

 暗黙裡の御要望通り情報入力の後、そちらの世界へお返し致します。
三者協議の結果、マーシャはダレムアスの代表たる女王の公文書として、ダレムアスの歴史(神話と)のあらましと現在の地誌、情勢、それらを含んだ対地球との関係をどうありたいと望んでいるか……を、雄輝は将軍メイデリオの資格でもっぱら現在の対 "地球・ボルドム連合軍" 戦争の経緯を、そして僕は、あくまでも在地の地球人として僕ら3人自身のこと、こちらでの文化・生活など気づいた事をルポとして片はしから補足する……という分担が決まりました。
 まぁ実際には、身辺雑記を兼ね、私信を兼ねているのは御覧の通りです。
 なにしろ日本語で長文など書くのは数十年ぶり(たいていは3人で話す時にでもダレムアナロクです……地球の言語類は、まぁ "暗号" ですね)、間違いがいっぱいあると思います。
 あと、残りのノートは 3人協同で、ダレムアナロク<>日、英、の、簡易文法書と主要語辞書をあむことになるでしょう。出来上がりがいつになるかは判りませんが。


 
 
 
 ……さて。
 まだ小学校高学年〜中学2年までの間に、漫画家になることを目指して書き溜めていたイメージイラストや絵コンテもどきがかなり残っているのですが、それはまた、スキャナの使い方をマスターした頃に、改めて……(笑)。

 予定通り、沈没原稿のサルベージあんど虫干しの、「大地世界編」は、これにて終了です。

 明日からは、「地球世界の日当たり編(プラスアルファ付き)」行きます♪

 (^_-)☆
 
 彼らの間を結んでいる精神的きずなに最も近い間柄を求めるとすればそれは《姉弟たち》という言葉であっただろう。彼らはかつて4人おり、今では残るものは2人になっていた。始源の世にあってリーシェンソルトとマライアヌと呼ばれていた、2柱の女神たちである。はるかに年長である姉・リースは妹を確かな信念から教導し、女神マリアンは師でもあるその相手を深く敬愛し、敬慕していた。
 彼ら4姉弟が  女神リーシェンソルト、男神グアヒギルグ、女神マライアヌ、男神ティアスラアル、の4柱が  2女神に減じるまでには長い複雑な経緯がある。とまれ、現時点で彼女たちは隣りあう次元に位置する銘々の世界を持ち、それを管理するという仕事を持っていた。しかし決してそれは容易なものではなく……なんとなれば2つの世界の住民・人間たちは悲常にやはらかな未熟な精神の持ち主であり、しかもひとつの巨大な力、《樹》という言葉に象徴される存在の思念波の影響をうけつつあったのである。
 
 
.
 
 たまねぎ小唄

(たまねぎ(ニー)の みそしる(テル/エル)の 歌(トルタ))
 
 
1.たまねぎのおつゆは 不思議と甘い
  不思議と甘い
  不思議と甘い
  たまねぎのおつゆは 不思議と甘い
  あの娘の作った
  たまねぎのおつゆ。

2.たまねぎのおつゆは 冷めてもそれでも
  不思議と甘い
  不思議と甘い
  たまねぎのおつゆは 冷めてもそれでも
  あの娘の作った
  たまねぎのおつゆ。

3.たまねぎのおつゆは 薄めて飲んでも
  不思議と甘い
  不思議と甘い
  たまねぎのおつゆは 薄めて飲んでも
  あの娘の作った
  たまねぎのおつゆ。

4.たまねぎのおつゆは なぜだか苦い
  なぜだか苦い
  なぜだか苦い
  たまねぎのおつゆは なぜだか苦い
  自分で作った
  たまねぎのおつゆ。
 
 
※ ダレムアスでは歌は多く即興で作られ、自分で定めたその歌のパターンの中において、わずかな歌詞の変化と歌い方で、どれだけ豊に感情を表現できるかが、その良し悪しの基準になる。(ダレムアスには上古のものを祭祀の場合を除けば、叙事詩(クアルト)というものでさえ、あまり発達していない「事」を目的に歌われるのはまれである。この小唄(トルタ)はわりあい古いもので、地球(ティカーセル)の叙事詩(クアルトン)からの...
 
  "たまねぎ戦士の歌" (女剣士「たまねぎ娘」の物語)("ルワブラダ・ミアニーア・エル・クアルトン" )(地球語=ティカーセルロク)(※)からの転作と言われ、「大地にそびえる木々たちの根っこの先から梢の先までの間(=大地世界ダレムアスにおける人間たちの住む地をさす)」のかなり広域の人々に親しまれている。この歌に限らず、ダレムアスでは歌詞の解釈ということに関してかなりの自由勝手が許されていて、一見平凡な恋歌風のものが歌い手の気分や社会的背景によって風刺から生の讃歌、祈り、深い哲学的思索を歌ったもの……と、それこそ千変万化をとげる。そのまったく同じ歌が普段は労働の際の口すさびとして意味などおかまいなしに繰り返される。また替え歌が、とりたてて「替える」という意識さえ持たれ得ない程に一般化しているので、ひとたび作者の口から出てしまえば、その詠まれた旋律は万人のものと化していくらでも新しい歌詞が付け加えられてゆく。(*)上代の古い旋律にのって最新の風刺が流行したり、逆に古詩(必ずしも曲つきのものとも限らないが)が編み出されたばかりの手法を用いて全く違った風に歌われるなどの例は一々か数え上げようなどという気を起こさせないほどである。

(※ 正確には、大地世界語地球方言が更に地球風になまったもの)。
(*歌詞の不出来なところ、旋律のなめらかでないところなどが情容赦なく改作され続けて、ついには題以外原型をとどめなかった極端な例すら存在する。この場合にも作者の作品を一方的に変える、という意識はなく、一人の提案したものを皆の協力で完成させる、といった雰囲気に近い。つまりダレムアスにおいては、歌の所有権は存在せず、( "持ち歌" という意味ではまた別である)、「誰々の」歌ではなく常に「どこそこの」歌なのである。)

 このニーテルトルタにしても同じ旋律(歌詞)の別の曲などはいて捨てるほどあり余り、まして少しづつもじったものに至っては「この世に現われては去って行き続ける」人々の数倍のオーダーに昇ることだろう。故にここにあげた4つに番号をふったのは単に便宜上の理由からであり、現在一般的原型と認められている一連の恋の物語の中から、前半分の特に好んで歌われるもの(つまりは優れている
このうち、約○万年前(※ダレムアトの平均寿命が約300年以上あることを考慮してほしい)に旧・大都(たいと)で作られた時の姿をそのままたもっているのは1番だけであり、それでさえむしろ非情に珍しい例である。
 ダレムアスにおいては、あまりに万人が歌舞音曲に通じている為にかえって吟遊詩人などの職業的音楽家が存在し得ない。食卓での会話の合い間に歌が混ざらない方がおかしい程、「音楽」というものが生活になじんでいるのである。(神楽者(かぐらじゃ)などのような神殿づきの音楽師も同様である。彼らも普通の神官であり、ただ祭祀の折に歌曲を奉納する役を負っているので失敗のないよう練習しているという名目である)。
 
            (ダレムアス民謡論試論)
 
 
モンゴルでは、すもう(?)の後、勇者がわしの舞をするのにあわせて
行事役の若い女性がろうろうと勝者をたたえる歌をうたう。

 
   1.浮く人
 
 浮く人はいるようでいないようで、何時(いつ)でも居るものだという。空に似ていて空でなく、空気そのもののようで空気でもないのだそうだ。
 浮く人が何処から来るのか、何処へ還るのか、誰も知らない。のほんとしたその顔を見ていると誰でもそんなことはどうでも良くなってしまう。
 大抵の場合そこらの空気の中をふわふわと漂っている。お日さんのある日にはのんびり横寝をしている事もあるが、一番よく見かけられる格好はといえば、あぐらをかいて頭を下に浮いているんだそうな。気が向くと木の枝に逆さにぶら下がっていたりもするらしい。
 ただ、雨はいけない。たいがいの事には平気な "浮く人" 族も、水っ気だけは大層苦手で、少しでも小雨のちらつく朝ともなると、銘々がお気に入りの農家の納屋や台所で、はりにつかまって1日過ごすのだ。
 そんな時に気のいいかみさん連中が食事に招んでやると、喜んでふわふわ降りて来て椅子に座る格好だけマネをする。実は尻は最後まで宙に浮いたまんまなのだが、そんな事は大した事じゃないし、浮く人は皆たいそう大人しい行儀のいい連中なので、誰も気に留めない。
 浮く人は口を利かない。喋らないし字も書かない。ので、浮く人が普段どんな暮らし振りをしているのかはまるで判らないのだ。
 別に働いているわけじゃない。果樹や小動物を捕っている所を見た者もいないし、踊りをするわけでもない。無論、口が利けないのだから小唄も歌わない。ただいつてもふわふわ空中を漂っているだけなのだ。
 
 
 
 
 南のアニャンワマンの国の田舎……暖かい空気がいい?
 
 
 
 角を曲がれば待ってるだろうか
 ドアを開ければ行けるだろうか
 近くて遠い 魔法の国へ
 隣にあっても 見えない国へ
 
 峠こえれば 行きつくだろうか
 アーチくぐれば入れるだろうか
 近くて遠い 地球の姉上
 ぼくが暮らした魔法の国へ
 
 いつか再び行けるだろうか
 いつか再び会えるだろうか
 ぼくが暮らした第二の故郷
 ぼくが愛した あの少女
 
 角を曲がれば待ってるだろうか
 ドアを開ければ行けるだろうか
 近くて遠い 向うのこっち
 一度訪れ 再び去った
 二度と行けない ぼくの故郷
 ぼくが愛した あの土地へ…………
 
 
 
 
 
 
鋭はマーシャたちの結婚式の後、不老長寿となる「命の山」の「火の水」の入ったガラス壜を受け、エルシャマーリャから次元航海理論の記されたオリハルコンの記録器(テープ)をあずかって地球に帰ります。
「火の水」によって年をとらなくなった鋭は人民戦線に加って戦争回避と歴史的文化の保存につとめる一方(この時期、かの朝日ヶ森学園は一つの学園国家として人民戦線の根城になっています……これがのちのアロウ・スクールです)、記録器(テープ)の解読につとめ、遂に次元移送機を造りあげて再びダレムアスの大地に立ちます。
 しかしそこにはかつての面影はありません。
ボルドム軍との最後の決戦は、ボルドムの地を破壊すると共に
ダレムアスにも衰弱をもたらしたのです。
「命の山」はもはや息絶え、「火の水」の減少によりダレムアトの平均寿命はいちじるしく短くなりました。
 しかも決戦の際に多くの「力有る者」が死に、仮に生き残っていたとしても すでに聖霊自体の命数がつきようとしていたのです。
 ダレムアスはもってあと1000年、生存可能なのはせいぜい100年くらいでしょう。
賢者団は鋭と人民戦線に救いを求めました。鋭と次元科学者・宇宙航海学者たちは必死になって "ダレムアスの箱船(ノア)" たるフェアリスティラーヤを造ります。……間にあうでしょうか?!
 その間にも地球の状態は悪化し、最終戦争となってしまいました。
ダレムアト(エルシャマーリャ)の一部が自ら希望して「兄弟世界の復興」のために地球に残ります。
 また、幾隻ものフェアリスティラーヤが広い宇宙空間に飛びたち、あるものは別の惑星、またあるものは異次元へ、そして船のままさまよう者など(「白い砂漠の星」のマリアマースの母親の船もその一隻)、ダレムアスの末もちりぢりになるのですが、……ボルドムの生き残りがやはり恨みからそれを追っているのです。(小六の時の「話」のノート参照)
 不老不死の孤独に耐え切れなくなった鋭も共に旅出ち、銀河の星のあちこちを転々としていますが、どこにも落ち着くことはできません。
……地球がすっかり冷え、あとはただ凍りついたままくだけるのを待っている……そんな時に帰って来て砂の上をさ迷い、眠りにつこうとします。
 すると、もう一人の長寿人が遠くから現れました。
 「……やあ。君もかい?」「うん」
心の行き場、愛する相手を失った長寿人たちはこうして一人一人消えてゆくしかないのです。
 
 「……なんのために、闘っているのだろう。」
 そんなある日、死者の埋葬の終わらぬ草原を見渡しながら、リレク・イス参謀はぽつりと呟やいた。
 「なんのため? おいおい、人死にを見て弱気になっているわけじゃあるまいな」
 将軍マダロ・シャサが言う。
 「鋭はどうしてもそういった事を考えてしまう質(たち)なのよ。あなたより、少ぅしばかり思慮が深くできているのね」
 人の脂に鈍った刃を自らとぐ手を休めて皇女は茶々を入れた。
 「力押しの能なし将軍ですいませんなァ、陛下」
 
 皇女とそれにつき従う腹心の参謀とが陣の内を連れだって歩いている。
軍議も既にとどこおりなく終了し、夕闇の中、野営の仕度の騒しさに紛れる、しばしの静寂。……やがて、ことさらに沈黙を破るという風でもなしに、リレキスは云った。
 「別に、ダレムアトがボルドム軍をたおすことに関してどうこう言うわけではないよ、念のため」
 「判っているわ。仮に、責められたとしたって今更わたしは何とも思わないでしょうしね」
 
 「人が、生ける者が、何の為に相争うのか……そんな巨大な命題は、今のわたしにはどうでも構わない事だわ。多くの人の血を流させて、その罪と矛盾性を確かに自覚しつつもちこたえるだけの強さも、あるつもりだし。
 深遠な哲学など無用よ。戦って勝つ。大地の民のために大地をとりかえす。
……正義だとか、権利だとか、そんな大義名分も要らないし、まして信じてもいないわ。
わたしはわたしの民の……いいえ、わたし自身が生きのびるために、毎日毎日闘かっては相手をたおしていくんだわ。この手をどっぷり血に染めてもね。どんな罪の意識に耐えてでも、何があろうとも、わたしは生きていることが好きだから、生きていたいから。……
これが、唯一の殺人の正当性ではなくて?」
 「そうだね」
 適確な殺人指令を下す参謀は静かに微笑して肯いた。皇女は嘆息する。
 「あなたには、こういう考え方が出来ないんだわね。本当に何故かしら。
 わたし達、お互いの事なら全て解っている。かなり近しい魂を持っている筈なのに…………、視ているもの、生きている世界が、まるっきり別なのだわね。」
 長戦のさなかの、おだやかな夕暮れの一情景である。皇女も、リレキス自身も、彼の目が近頃しばしば空の彼方や心の深みに向けられてしまっている事実に、気がついているのだった。
 
 
 
 
 

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