1.その男
 
 その男がやって来たのは僕がちょうど小学校の4年生だった時の19××年の夏休み、7月31日のことだった。男は痩せぎすで、眼つきが変に鋭く、セミの声が一面にやかましいほど響きわたっている中でダークスーツの三つ揃いを着こんで更にその上から目が痛くなるほどのバリバリの白衣を羽織っている。
その一見して科学者か医学教授と解る男がボディーガードを従えて園の前の砂利道を歩いてやって来た時、鋭(えい)はちょうど門の前の木陰に店をひろげてハンドメイドのラジコンに挑戦していた。
無論、設計図から自分で引いたのだ。
 「  きみが清峰 鋭 (きよみね・えい)君かね、坊や」
 男が僕の目の前で立ち止まる。
 「そうですけど」
 「自分のIQを知っているかね、きみは」
 「                           」
 何か用かと鋭は云ってやりたかった。なんでこいつは僕のことを知っているんだろう、どこか気にくわないところのある人だけど。
しかし鋭は年長の者には礼儀正しくしなければいけないと園長先生に注意されたばかりだったし、はんだづけが一刻も気の抜けない所にさしかかったせいもあって、尋ねられた通りに大人しく園長先生の居所を教えて再びラジコンの方に注意を戻した。
 鋭、清峰 鋭 10歳。この時まだ小学校の4年生である。へその緒も取れるか取れないかという頃に雪の積もった門の前で拾われて、以来ずっとこの青光愛育園で育てられている。
 一目見て欧亜混血児らしいと知れる美しい顔だちの子供である。真っ直ぐで素直な髪も、そっくり同じ色合いの瞳も、やわらかく明るい薄茶色、肌は少し陽に焼けて、内側から光が透けてみえるような淡い象牙色に輝いている。ただ、その表情だけはいかにも子供こどもした可愛らしさにはおよそ遠く、みごとなオデコやよく動く大きな目でさえが、見かけ以上に大人びている少年の頭脳的な性格の方をより一層良く表現していた。
 
 数10分か、それとも1〜2時間は経ったのだろうか。鋭が一段落終えてさあ川へ泳ぎに行こうと思いつつなんとはなしにぐずぐずしていると案の定園長室の方から奥さん先生が呼びに来て、何か緊張した顔でお客さんの話を聞きに行くようにと告げた。
勘が当たったな、少年はそう思いながら  彼の予感はいつでも大抵的中するのだが  少年は漠然とそう思いながら敏捷に立ち上がり、散らばしたままの部品の山にちらりと一瞥をくれて落ちつかない原因へと歩きだした。
 雑木林の上に純白の積乱雲が盛り上がっている。  ゼミが泣き止んで、今は  ゼミがうるさく   と騒ぎ始めていた。
 
 「  さて。きみはきみ自身の能力を知っている。わしはきみの好みや考えを傾向として知っておるつもりだ。そこで  じゃ、つまらん前置きは抜きにするとしよう。
 きみは国立科技研究所について何か聞いていることがあるかね」
 案に相違して園長先生が席を外してしまっている部屋の中で、男は鋭が腰をかけるなり睨めつけるようにして話し始めた。
 「科技研  わしらは単に“センター”と称しておるが、数年前に設立されたばかりの国立科学技術開発研究所のことじゃ。これは世間にもあまり知られていないことじゃが、ただ国立と言うてもこれは政府の直轄になっておってな、設備資金面研究内容共にその充実度は他の弱小研究所群に較ぶべくもない」
 男  その話し振りから見かけよりははるかに年寄りであることが知れる  は続けてその科技研とやらの具体的なアウトライン、敷地面積・年間予算額等を列挙してみせたが、それは“他の弱小 ”を知らない鋭にも容易にその秀度を理解できる内容を示していた。
研究所と云うよりは、むしろ何かの基地であると形容した方がふさわしい。
 「研究者にはどんな人がいるんですか? 僕は近所にいる大学生のおかげで普通の科学雑誌だけでなく各学会の会報なんかも良く読ませてもらっているけど、それだけの規模を誇る研究所にしては何の記事も見た覚えがないですね」
 仕付けられてきた通りに行儀よく腰をおろしている奇妙に冷静な眼をした少年が、やはり仕付けられた通りに丁寧な質問を返す。少し開いた膝の上にきちんと両手を組み、背筋を良く伸して、対峙している大の大人の尊大さにも負けない落ちつきぶりである。それでも一応興味を引かれてはいるのだろう、心持ち前に乗り出して、熱心に科学者からの答を待っていた。
 「わしらの予測通り、なかなかに抜け目のない性格のようじゃな」
 男が、それこそ抜け目の一片も無さそうな双眼を満足げに光らせる。
 「名を挙げてみたところで君は知らんじゃろう。指摘の通り、わしらは  左様、一般の学会とは殆ど関係を持たずにやっておる。何故なら我々の知識・技術は彼方と比較すべくもなく発達しておるし、“センター”の豊富な予算は他の研究施設との協同を必要とせん。多岐にわたる研究部門が相互に協力しあうこともできるしな。実際、“センター”がここ数年に仕遂げた業績を一般学会の輩が嗅ぎつけた日には、わしらは賞 よりもまず混乱と反論、 難と  を受けることになるじゃろうよ。
それが何よりもまず  という原始的な感情に基づいたものであることは疑うまでもないが。」
 「“センター”は、わしも含む30余名の独立研究者によって運営されておる。独立研究者は各々多岐に渡る学識と研究分野を持ち、
 いつの間にか窓の外には積乱雲が発達し、一人の老科学者と一人の子供のいる清潔だが擦り切れた感じのする室内は薄暗くなりつつあった。
遠くで雷の音がしている。
 男は更に生物科学、原子物理学、宇宙工学等、《センター》における研究分野とその研究課題を説明し、概略が握めたかと尋ねた。「ええ」鋭はうなずく。
 「では本題に入ることにしよう。
 わしらは  つまり《センター》における主要な研究者たちの事じゃが  は、ここ数年各部門の共同研究として、心理学・電子工学・生化学などを基盤に教育科学とも云うべき新分野を開発しつつある。
今や理論的には9分通りの完成を見たと言ってよいのじゃが、未だ実験データが足らん。とりわけ高知能児における専門教育課程がどの程度効果を上げ得るかについての  な。それというのも、IQ250以上・指導者による早期教育を施されていない学齢以上12歳以下の子供、という条件にあてはまる者が、殆ど見つからぬからじゃ」
 男は話す間中ひとときも目をそらさずに鋭の表情を観察していたのだが、しばらく言葉を切って巧みに誘いをかけてみても少年からの反応は何ひとつ得られなかった。無論、その頭脳の卓抜さからして科学者の云わんとしている事を悟っていない筈がないのであるが、見事に自制し切って眉ひとつ動かさない。
わずか10歳の子供にして、これは恐るべき精神力だった。
 ややあって、少年はわずか10歳の子供とはとても思えない、奇妙に疲れ切ったような重々しさでゆっくりと立ち上がった。そのまま戸口の脇の、電気のスイッチの方へ歩いて行く。雷鳴がすぐ近くまでせまり、世界は暗く蒸し暑く耐え難い程になっていた。
 電気をつける。
 鋭は今、男に背を向けて立ちつくしていた。
 カッ! と一瞬、部屋の外が青く白く輝やき、空気をつんざいて音が光を追う。
 「僕をモルモットにしたいというわけですか」
 美しいボーイ・ソプラノは、しかし震えたり怖えたりする気配もなく、むしろ悠然として事態を楽しんでいる感があった。「僕の方にメリットは?」
内心の動揺を 覚えた のは老獪な科学者の方だった。
 「  ふん。……まず第一に、正規の科学教育が受けられる。それも最高・最新の内容と方法でじゃ。第二に、まず第1に、思うような結果が得られるか否かに関ず、わしらは十分な額を礼金として支払う気でいる。第2にきみは卓越した指導者陣の管理のもとで正規の科学教育をうけることができる。それも最新・最高の方法と内容でじゃ。加えて希望通りの実験成功が得られた場合には、きみは実験終了と共に、特に優れた研究者の一人として《センター》に迎え入れられる事になっておる。」
 「  ……“正規の科学教育”ですか。あなたは僕の弱点をご存じなんですね。他の2つは後で考えることにするとしても」
 苦笑しながら振り向いて鋭は言った。
 
 「もう1つ質問をいいですか? 僕のことをどこで調べたんです? 僕はマスコミとかに名前が載るようなことはしてないし、学校の成績も中の上より上には行かないように気をつけてました。僕があなたの云う高知能児  そういって良ければだけど  だということをはっきり知っているのは、園の先生達とさっき話した近所の大学院生だけの筈なんです。」
 「5月の  表向きは文部省主催ということになっている……」
 「ああ、あのIQテストですか? でもあれはちゃんと、113になるように計算して  ……」
 「手を抜くべきではなかったな」
 男は、鋭の反応の早さを喜ぶような、憎むような、奇妙にゆっくりした言いまわしで一言云った。
 「あれの出題と解析は実は《センター》によるものだったのじゃ。あれだけ明確な解答パターンは、単なる偶然から出てくるものではない」

 
 「しばらく、考えさせて下さい」
 
 男が無言のまま立ち去ってゆくと、先ほどの威厳はどこへやら、まだわずか10歳のか細く華奢な少年は全身の力が抜けてしまったかのように手近な椅子に座りこんだ。ドアの外で心配げな院長の声と横柄な  言葉こそ丁寧だがハナから相手を見下しているとはっきり解る  男の声とがなにやら言い交わすのが聞こえ、やがて二人の護衛を従えて帰ってゆくらしい気配。
 雨が降り始めたようである。
 それでも鋭は両手に顔をうずめたままじっと座り続けていた。
 コンコン、と遠慮がちなノックの音。しかしドアを開けて入って来た院長の目に入ったのは、いかにも分別臭そうな顔にちらりと茶目っ気のある笑顔を浮かべて、
 「どうぞ」と大人のように椅子を指し示す、いつもの通りの少年の姿だった。
 「あの人と何を話してたんですか?」
 「一週間したらまた来ると言っていた。来る気があるならそれまでに荷物をまとめておくようにと。鋭  きみは、行きたいのかね?」
 「はい  たぶん。なんでそんな顔をしてるんです、院長先生まっ青ですよ」
 「あの男は  その  何と言ったか、きみを連れて行きたいと言っていた施設の事を、“日本のNASAのようなもの”と表現していたよ……いや、それはともかくとして、わたしはきみを朝日ヶ森学園へ遣りたいと思っていた……。鋭、考え直してくれないかね……」
 予想外な院長の態度に鋭はわずかにたじろいでいた。蒼白になった顔に、ほとんど悲痛とも云うべき表情を浮かべて話しかけてくる。
 「朝日ヶ森……ああ、あの、全額免除の奨学制度があるとかいう学校ですか? 先生が昔、通ってた。でも、そこは確か文化系の授業が中心なんでしょう。僕  僕は、科学者になりたいと思っているし  そりゃ……でも……」
 少年はもごもごと口ごもると下を向いてしまった。これはいつでも大人顔負けにきちんと話す彼にしてはとても珍らしい事だったが、なぜか怖えているとさえ思える院長にはそれに気づく余裕がないようである。
 「それになぜ、“NASAのような施設”というのがいけないんですか? NASAは宇宙開発にかけてはずい分進んでいるし、宇宙工学っていうのは僕が一番やりたいと思ってる分野です」
 話をわざとそらすように口早にしゃべってしまうと、顔を背けるように立ち上がった鋭は「失礼します」とも言わずに部屋から出ていった。
 廊下のつきあたりから一歩外へ踏みだそうとするといつの間にやら激しい夕立ちが降り始めていた。鋭はけぶりたっている雨をすかして先刻までいた門の脇の木立ちを見る。  どうやら、誰も鋭のラジコンの存在に気がついてはくれなかったようだ。きびすを返して自分の部屋へ戻る。
来月のお誕生会でプレゼントにしようと思っていたのだが、どのみち一週間では仕上がらないだろう。
 
 古くなった蛍光灯がみすぼらしい調度類を照らしだしている。
 院長は窓わくにしがみつき、声にならないうめき声で何事かつぶやきながら我を忘れてすすり上げていた。
 院長夫人である“奥さん先生”が1人娘の三重子を抱いて静かに入ってきた。
 今年3歳になる三重子の胸部には、たくみに整形された手術の後が3回分、薄桃色になってまだかすかに残っている。
 
 




マーリェ・エンゲル
レーニ・ポリシェ
 
 能力開発研究所(→広辞苑)
  > 特殊能力開発研究所(特研)
 
 独立研究者(30余)

 
 「  《センター》へ行くわ。手続きをしなさい、北沢」
 報告書の最後の行に目を通し、既処理のマークを押しながら云う。
 「視察ですか、何日ほど」
 「引っ越しよ。当分むこうに居つくわ。出発は明後日。」
 「承知しました」
 北沢は軽く一肯してすぐに出て行く。身長190cm近い、痩身の、有能な男。
 「……なにか不服でも?! 遠野!」
 うっそりと部屋の隅からこちらを見ているのは、いつもこの男の方だ。
 「……別に。」 低い声でぼそりと答える。
 「だったら、早く行って、あたくしの荷物をまとめなさい!」
 
 あたくし、野々宮奈津城(ののみや・なつき)。表向きは旧華族・野々宮家の唯一の嫡子ということになっている。表向きは。
 精子銀行というのは知っているわねでしょうね。そう、米国の、ノーベル賞科学者とIQの高い女性とを人工的にかけあわせて、優れた資質を持つ子供を得ようという実験機関。
あたくしも、それに似た団体によって造られた。純国産  つけ加えて云うなら人工子宮成功例の第1号。生粋の、試験管ベビー。
この事は物心つく以前から知っていたように思う。
 なんにせよチューブの中で、まだ大脳が形成されるか否かという時期からはじめられたあたくしの早期全人教育
 

 
 「う、ぅっわ〜〜お。おわお!」
 おれ、あくびしてやる。めいっぱい思いっきり。い〜い気分。
 なんつったって休日だもんな。もろ、ひと月ぶりの。なんにもない日。
 
     ×     ×     ×
 
 朝おきて顔を洗ってマラソンして朝ご飯を食べて歯をみがきました。
 (あ、おれ正明ってんだ。よろしく)
 で、いつもならこの後「訓練開始!!」っつうがなり声が響く。……はずなんだけど今日は休暇なんだよな。さて、何するべェ。おとなしく基地ンなか探検したってもいいんだが、きのうの今日なんで、やめた。
やっぱを見てこよう。
 てんで外出許可証とりに廊下へ出る。
 うえ、いつも思ってたけどこーやってちんたら歩いてみると……ひでー所だね、ここは。上から下まですべからくこれ人造! もろ直角と直線と  おまけにブルーグレーと銀色ばっかだぜ、見てるだけで寒い。
 と、角をまがった所で人間が2人。
 「お、おたくも外出?」
 ガキの方  細っこいんだぜ、これが  来るとき車でいっしょだった奴。
 「燎野(りょうの)さん。」
 心もち首かしげてこっち見上げる。
 「わお。覚えててくれたわけ、感激」
 ……すこ〜〜し、苦笑? ホント表情のとぼしいやっちゃ。
 「……そりゃ、覚えますよ。一度聞けば」
 おれ忘れたぜ  、おたくの名前。
 「清峰くん。そちらは?」
 神経質なんだが気が弱いんだか、のぞいただけで目、まわりそうな眼鏡かけた男。まだ若いな〜〜清峰  あ、鋭  ったっけ? のオブザーバーらしい。
 「あ、おれ……」
 「燎野正明さんです、西谷助手。多分宇宙飛行士(アストロノウツ)訓練生  なんだと思いますけど。正明さん?」
 「あ? うん。おたくは? やっぱ高知能児なわけ?」
 「  ええ。」
 「清峰くん。」
 西谷・青白きインテリ氏がかたい声をだす。
 おーおー、わーってるよ。《センター》の独立研究助手としちゃ、大事な大事なモルモットちゃんにはあまり雑菌を近づけたくないわけ。
 「じゃな。」
 まだ話したい気もしたけど  ひょいと片手上げて別れる。
 
 「ありゃ、何してんだよ、おたく」
 左翼の実務室で外出許可と通行証を手にいれて、戻ってきてみるとボーヤがまだいた。この間約30分。ひとり、だ。
 「……西谷助手が……」
 少し困ったみたく笑う。
 ここ、今いるところは、おれが放りこまれた《教育・能力開発法実験研究棟》てェ長々しい名前の建物の、一階中央。廊下がちょい広がってエントランスになってる、棟の出入口にすぐtの場所だ。ブルーグレーとシルバー一面のすみっこに、
 
     ×     ×     ×
 
 「ありゃ、何やってんだよおたく」
 左翼の実務管理室で外出許可証と正門(ゲート)の通行証を手に入れて、鼻唄まじりに正明が戻ってきてみると鋭がまだいた。西谷助手とやらはどうしたものか、ひとるつくねんと壁ぎわのイスに腰かけている。


 

第1章 ナツキ
第2章 ティシール
第3章 律子
第4章 緑の炎
 or
第1章 ティシール
第2章 逃亡

 
 
◎ 全体のテーマ; 無感動な水の子・鋭が
          皮肉っぽい“コンピューター”に
          成長するまでの過程
 
6月 ・ナツキ、《センター》へ。鋭(10歳)に会う。

8月 ・鋭、外出日に正明に出会う。
   ・ナツキ、鋭の記憶力を知りショックを受ける。
   ・姫小路と同衾のところを鋭に見られる。

9月 ・鋭、ナツキに教えられてティシールに会う。
   ・スィンセティック・コンピュータ完成。
 
(オムニバスにするか、長編にするか?)


 ナツキ
 リツコ
 鋭
 ティシール
 燎野

 森の少女
 アイン・ヌウマ
 朝日ヶ森
 旭学園

 緑衣隊
《センター》
 国立科学者養成センター

 聖光愛育院長


 第1章 起承転結
 ・ ナツキと鋭の出会い  邂逅
 ・ ののみやなつき。   展開
 ・ なつき、鋭をにくむ。 破局
 ・ 終焉         終焉

 
 五月。いち早く夏を告げる太陽の下で、青い風が窓辺の新緑の中を渡って行く。新入部員たちもそろそろすっかり雰囲気に慣れ切ってしまい、ここ風間中学の演劇部室  と、言っても、弱小部の事ゆえ裁縫室を間借りしているだけだが  は完全にまんねりムードに立ち返っていた。
 部員数は新旧取り混ぜて女ばかり20人位。毎日の練習課題も一応ある事はあるのだが、「お芝居」が面白くて入った連中には体力作りだの発声練習だのは楽しくないらしくて、文化祭の準備に入るまではほとんど出てこない。
 10人程の比較的熱心な“常連”のうち、今日は六人が顔を見せていた。
 もっとも、ちゃんとジャージに着替えてトレーニングをしたのは、その更に半分である。後はそれが終った頃にのこのことやって来て、鞄を放り出すなり雑談やら落書きやらを始める。かけ持ちのマン研のコンテを取り出す者もいる。ようするに、ここは彼女らのたまり場なのである。今日は全員そろってトランプを楽しんでいた。
 「ヘイ、リツコ、順番だよォ」
 「リッコ先輩」
 律子と呼ばれた少女は、何度か促されてから気がついて、心ここにあらずという態で1枚をポンとめくった。神経衰弱である。
 「2〜〜? 2って何処にあったっけ……」 およそ気が入っていない。
 「あ〜〜、これだもの」  いい加減あきれた、と、向い側に座っていた一人が机の脚を勢い良くけった。派手な顔だちの、かなりの美少女だ。
 反動で椅子が後脚立ちになりそうになるのを慌てて押えながら、
 「面白くないんだったら抜ければいいじゃないの。気分害するったら……」
 「ハーミ、それは言い過ぎだよ。リッコさん、今日、どうかしたの?」
 「そうですヨ、リッコ先輩。神経衰弱って得意の筈なのに」
 「ん〜〜、ちょっと、変わった事があったもんで  
 律子は、困った、という風に頭をかいた。こういう風な事は第三者には余り話すべきではないと彼女は思っている。殊に、ここにいる連中とは必ずしも親しいというわけではなく、毎日同じ部屋で顔を合わせているとは言っても、ハーミなど犬猿の中と言った方が正しい。しかし……
 頭の片すみでは“話すべきでない”という警告を聞きながらも、誰にでもいいから全部ぶちまけてしまってグチャグチャになった頭をすっきりさせたいという欲求に押されて、気がつくと、律子はとつとつとその事を話し始めてしまっていた。
 「つまり、ね。ラブレターをもらったんだ」
 
 事の起りはこうだった。今年3年の律子が演劇部に入ったのは2年の半ばからで、彼女はそれ以前から弱小の文芸部にも籍を置いていた。その文芸部に、今年三年生の新入部員が入ったのである。
 名前は加鳥洋介。律子のクラスへの転入生で、どうやら教室で文芸部の事を話しているのを聞いて興味を持ったのが入部の動機らしい。

 
 誰であろうと、どんな不都合があろうと、とにかくこのグチャグチャした心の中味を洗いざらい打ちあけてすっきりしてしまいたい  ……律子は、自分のそんな気持ちが自制心を打ち負かしてしまいそうなのが恐しくなって、いつものように冗談で誤魔化しながら逃げ出した。
 
 
 
 .
 
 「リツコ。ねえ律子ってば!」
 考えにふけっていた彼女に督促の声。
 律子はあわてて相手のさし出すカードを抜き取ろうとして、自分のカードをそでにひっかけてしまった。
 バササッ。
 手札が全部ひざの上へ落ち、ポーカーフェイスで巧みにかくしておいたババまでが、堂々と顔を並べている。
 「ドジ! まーたやった」
 「あはは丸見えだ」
 あや〜〜。律子はいつもの癖で、ツァッ、ともチッ、ともつかない舌打ちをしてカードを拾い集めた。
 まったくあの野郎のおかげで今日はろくな事がない。
 一枚ひき、一枚ひかせた後、律子は背もたれに重心を移して椅子を後足二本で立つ格好にし、ひざで机につっかえ棒をあてて腕をざっくり組んだままぶ然として足をゆらしていた。
 数人でババ抜きをやっている最中だったので、一人がふてていれば当然、他の連中の興味を引く。
 「どうしたん。めずらしくまともそーに悩んでるじゃん」
 真っ先に首を突っ込みたがるのは小野えりゆ。
 斜め前から身を乗り出して来るその隣りでは、一級上の宇野洋子がいかにもお人好しげに首をかしげて、心配事ならいつでも相談にのるよという眼をしているし、レイラ・ジュンがばっさりした亜麻色の髪を風になぶらせながら、机にひじをつき、手の甲にあごをつっかけて、例の横眼で律子をながめている。
 律子は軽く握ったこぶしで額をコンコン叩きながらしばらくうつむいて考えこんでいたが、もとよりこういった腹にたまる物事を人にぶちまけずにおくのは性に合わない。
 「ん〜〜〜、実はね」
 律子が話すと見て全員がカードを放り出した。
 面白い話題がないとなればトランプも百人一首も喜んでやるが、元来ここ朝日ヶ森学園の生徒って連中は、ひたすら話し合うのやなぞかけが大好きで、悪趣味で低俗なうわさ話以外なら、どんな事でも話の種にして2時間3時間話し続けられるのだ。普段は男子も女子もごったになって、それこそ政治論からSF談義、禅問答まがいの人生論まで、それこそずれにずれこむ大討論会になるのもめずらしくないのだが、今日に限ってなぜか教室には女子しか残っていなかった。
 律子は二つに結んだ髪の房の先をいじりながら芝居っけたっぷりに間を置いてから、言った。
 「実は、このわたしめにラブレターをよこしたバカが一匹おりまして  ……」
 「ええ〜〜っ!?」
 全員が全員、一瞬信じられない顔をして問い返したので、律子は面白くもあったがやや頭にも来た。
 「なによ。人がせっかく真面目に……」
 「あ、悪い悪い、ちゃんと聞く」
 一人がそう言い、みんながガタガタと座りなおした。
 「それで? 相手だれよ」
 
     ×     ×     ×
 
 ウラジミール・パブロフは亡命ロシア貴族の血をひくフランス人。13歳。律子に端的に言わせれば「いけすかないキザったらした、うらなり野郎、」で、一年落第しての小等部最上級生。
 特待生クラス  俗称『金持牧場』  の生徒であり、例のお茶会の主催者の一人でもあった。
 特待生クラスと言うのはその名の示すとうり、世界的な名門私立校朝日ヶ森学園が、苦学生に支給する奨学金を捻出するために開設しているクラスであり、成績順は下位でも寄付金額は上位という人間が多く集まっている。
 
 
                        次号に続く。
 
 
(※注: 続いてません★) (-_-;)d"
 
 


 香山 秋  朝日ヶ森学園中等課2−E
       テニス部/ミュージカルクラブ

 立川アンナ 朝日ヶ森学園中等課1−F
       ミュージカルクラブ/志望サークル:ピアニスト

 宇野洋子  朝日ヶ森学園中等課2−A 
       ミュージカルクラブ副部長

 清瀬律子  朝日ヶ森学園中等課2−B/図書委員
       バレエ部/ミュージカルクラブ/志望サークル:作家


 

 『パラレルワールド・千一夜』 主人公: 山吹サラ


号年 ダレムアスにおける主要事件  西暦 地球における関連事項

危機皇
24年 ・皇女マーライシャ誕生   1982(九紫火星)
25年               1983(八白土星)
26年               1984 “青い鈴の花の草原”
27年               1985(六白金星)
28年               1986(五黄土星)

29年 ・“大変動”起こる     1987(四緑木星)
    ・諸侯会議、招集される。

30年 ・皇女マーライシャ、    1988 ・ 翼 雄輝 誕生(8/6)
     西皇子クアロスと婚約。    (三碧木星)
    ・皇子マリセトウィト誕生
                     ・清峰 鋭 雪の日に
                      聖ユリティア孤児院
                      の門前で発見される

31年               1989 ・磯原岳人、行方不明
                      “水精”(仮題)

32年               1990 ・磯原岳人、発見さる
                     ・11/7、鋭、生まれる

33年               1991 ・清瀬律子、生まれる

34年               1992(八白土星)

35年               1993 ・楠りまと一之木 宮、
                      “昏いもの”

36年               1994 ・楠りま、朝日ヶ森へ
                     ・冴子夫人流産、有澄
                      夫妻別荘に引篭もる

無皇代
 0年・ボルドム軍、皇都マルライン    ・有澄夫妻、別荘にて
    に襲来。事実上、統一皇朝が     記憶喪失の少女発見
    崩壊す。              マリサと名付け、                       養女として引き取る
 1年 ・マシカ、エリファーリより 1995 ・有澄夫妻、外交官と
     宝玉を託される(宝玉物語)    して欧州へ。真里砂
                      雄輝と出会う。
                     (@アロウスクール)
                     ・会田正行生まれる
                     ・杉谷好一生まれる
 2年               1996 ・会田ゆかり生まれる
                     ・磯原 清 生まれる
                     ・翼夫妻飛行機事故死
 3年 ・ミアテイネアに鬼王出現  1997 ・翼コンツェルン崩壊
    ・落ち武者皇子マリシアル      野々宮に吸収合併
     マシカに出会う。死亡。     ・雄輝、日本へ帰国
    ・鬼王城崩壊           ・楠木律子生まれる

 4年               1998 ・真里砂、朝日ヶ森へ
                     ・杉谷ユミコ生まれる
                     ・鋭、《センター》へ
                     ・磯原 清 生まれる
 5年               1999 ・清瀬律子朝日ヶ森へ
                     ・ナツキ死亡、
                      “マザー”となる。

 6年               2000 ・鋭、センター脱走。
                      旅を経て朝日ヶ森へ
                     楠木律子生まれる
    ・ミアテイネア地方に       ・朝日ヶ森にて
     不思議な子供達出現        三生徒が失踪

 7年 ・皇子マリシアル没、    2001 ・清、魔を視る
    ・鬼王城崩壊(宝)        ・杉谷好一(5歳)、
                      侵入者2人を殺す
                     ・杉谷一家NY移転

 8年 (この前後『記憶の旅』)  2002 ・『風の中の律子』
                       シリーズ
                      (清瀬律子、中1)
                      (楠木律子、中3)

 9年 ・皇女、鋭、マシカに会う  2003
    ・道果て村、崩壊
    ・マシカ、村を出る
    ・皇女、髪を切る

10年               2004(五黄土星)

11年               2005(四緑木星)

12年               2006(三碧木星)

13年               2007(二黒土星)

14年               2008・杉谷ユミコ、帰国
                    ・杉谷好一、帰国

15年               2009・磯原家、O市に移転
                    ・磯原清、杉谷好一、
                     中学入学、出会う。
                    ・清、高橋広文と友人
                    ・杉谷好一、緑衣隊に
                     遭遇。会田正行に会う

16年               2010

17年               2011・『落日』清のESP、
                     好と山籠もりする

18年               2012・清、好、O高に入学
                    ・好が清に手を出す

19年               2013

20年               2014・例のメンバー、一斉に
                     未来へ吹っ飛ぶ。

21年               2015・『俺と好・2』
                    ・O市における緑衣隊の
                     活動、表に出る
                    ・一行、再び行方不明と
                     なり以後、還らず。

22年               2016

23年               2017・清瀬律子、高原桂三と
                     婚約

24年               2018・高原(清瀬)笑・緑
                     生まれる

25年               2019
26年               2020
27年               2021
28年               2022
29年               2023
30年               2024
31年               2025
32年               2026
33年               2027
34年               2028
35年               2029
36年               2030
37年               2031
38年               2032
39年               2033
40年               2034
41年               2035
42年               2036・楠木(高原)律子誕生
43年               2037
44年               2038
45年               2039
46年               2040
47年               2041
48年               2042
49年               2043
50年               2044
51年               2045
52年・楠木(高原)律子ダレムアスへ 2046
53年               2047
54年               2048
55年               2049
56年               2050
57年               2051
58年               2052
59年               2053
60年               2054
61年               2055
62年               2056
63年               2057
64年               2058
65年               2059
66年戦女皇代          2060
67年               2061
68年               2062
69年               2063
70年               2064
71年               2065
72年               2066
73年 ・決戦           2067
74年 ・掃討           2068
75年 ・帰還           2069

戦女皇
 0年 ・女皇マーライシャ即位   2070 ・清峰鋭、楠木律子
                      帰還
 1年               2071
 2年               2072
 3年               2073
 4年               2074
 5年               2075
 6年               2076
 7年               2077
 8年               2078
 9年               2079
10年               2080
11年               2081
12年               2082
13年 ・皇女マーライシャ崩御   2083

異国皇
 0年 ・異国皇、慣例を破って即位 2084
 1年               2085
 2年               2086
 3年               2087
 4年               2088
 5年               2089
 6年               2090
 7年               2091
 8年 ・皇子達、行方不明となる  2092
 9年               2093
10年 ・異国皇、失意のまま崩御  2094

摂政代(無皇代)
 0年               2095
 1年               2096
 2年               2097
 3年               2098
 4年               2099
 5年               2100
 6年               2101
 7年               2102
 8年               2103
 9年               2104
10年               2105
11年               2106
12年               2107
13年               2108
14年               2109
15年               2110
16年               2111
17年               2112
18年               2113
19年               2114
20年               2115
21年               2116
22年               2117
23年               2118
24年               2119
25年               2120
26年               2121
27年               2122
28年               2123 ・最終兵器、作動
 
                    .

     




 1990.10.12.
 地球−ダレムアス間の時間的整合性が必要なのは
 もちろんのことだけど、なにぶんにも寿命と時間感覚が違う☆
 ので、地球決定後にダレムアス側のつじつま合わせをした方が
 早いと思う。

 
  第三次大戦前の朝日ヶ森学園
 
 政府側はそこに各国の重要人物の子弟を集め
 
 いざ開戦の時に人質にとる気でいた。
 
  しかし、やり手の女院長はそんなことはおみとおし。
 
 さか手にとって彼らにはでな反戦運動をやらせて
 
 隠れた、人民戦線内閣の前身であるカイ、レムなどの
 
 かくれみのにしていた。
 
  また国際色豊かなこの学校、セレンの天才美人科学者などの
 
 亡命・反戦主義者を多勢かくまったので科学力は連邦軍対抗

 できるほど。どんどん地下基地を広げてゆきます。
 
 (マスミもいずれ逃げこむことになりますが……)
 
 とにかく、大人の反戦グループが次つぎにざせつしたあと
 
 朝日ヶ森の一派とマスミら 緑の旗 とが合流して人民戦線、
 
 を結成。以後、文化保存や戦争回避、エスパー部隊による
 
 軍事力の破壊 をつづけてゆきます。
 
 
.
 

年代  事  項 (備考)


(21c.)「俺と好」

 10 〜ゆるやかに再軍国化。

 20 ・領土拡大開始。
   ・徴兵制、他国侵略反対の市民運動おこる。
   ・市民運動徹底弾圧。強力な階級統制始る。
  (・清瀬律子、朝日ヶ森院長就任。)

 30 ・世界的な人口過飽和。
   ・皇国の強制移住を皮切りに本格的な宇宙開発進められる。

 40 ・軍事圧制下、ゲリラによる地下活動続く。
  (・律子ジュニア、ダレムアスへ。)

 50 ・環太平洋地域を手中に納める。
   ・激減した資源、及び商業圏を求めて第3文明圏(※)を戦場に
    先進国同士の小競り合い。

 60 ・ようようにして超大国が本腰を入れる。

 70 ・戦火は本国に及び“第三次世界大戦”と呼ばれるに至る。
  (・このへんでアルヤが生まれている。)

 80 ・乱世にあって各国で革命・クーデター・独立・造反等が相次ぐ。
  (・ムーン?、アルバトーレ。)

 90 ・本国より途絶えがちの物資補給をカバーする為に、
    ムーンベースを中心に宇宙コロニスト連合宗主国、成立。
   ・旧超大国政府を中心として地球同盟政権、設立。
  (・鋭、アロウスクールへ。)

(22c.)「俺と好」
  (・アリサ・エフレモヴナ。)

 10 ・地殻変動装置発明さる。
  (・イタリアンあたり。)
   ・地殻変動装置、兵器に流用開発。

 20 ・アーマゲドン、起こる。
  (……ちゃんと五黄土星だ……☆)

  (「60年か……ずいぶん長い時間がたったように思えるのに……
    そんなものなんだな。」)


 (※「第三文明圏」=ここでは、「発展途上国」の意。)
 
宙暦 年(地球からの留学生に門戸 開放される。)

宙暦 年(映像集団 オリ・ケアラン 旗上げ。総団長:
アルサー・ジャン)

宙暦 年 試作的な風俗再現フィルムを連作で発表、名をあげる。
     特定出資企業を確保。

宙暦 年 “地球統一史”シリーズに着手。
     第一作『楽園再生』
     第二作『流浪〜興亡』
     第三作『都市出現』
     第四作『国家統合』
     第五作『灰色の一族〜人間』

宙暦 年 番外作『惑星の夜明け』で、サキ・ラン、正式メンバーに。
     “最終戦争”シリーズに着手。
 
     第一作
     第二作
     第三作
 
宙暦 年 リスタルラーナ前代史に着手。
 
 
.    
 
1.口伝・俗説・迷信
 
 地域により雑多である。“おそろしい戦争(災厄)があって地上は滅亡し、人類は地下か天上に逃れて楽園復活の日を待った”という根幹は共通しているが、早くに地上に戻った集団ほど代を重ねるにつれ神話化を重ねており正確でない。また、祖系の思想傾向の影響を受けているので見解もまちまちである。顕著なのは、アルバトーレ、コロニスツ、ゲフィオン等への感情で、地上中心主義者の言い分では前文明を滅した悪役そのものであり、一方でコロニスツ残党や灰色の一族等、彼らを始祖に持つことを誇りとする民族もある。連邦政府は、一応、中立の立場をとっている。超能力・巫司等の実在の是非は誰も断定しえていない。
 
  
2.考古学会編纂の既成資料(公式見解)
 
 人類史を4期に分けて史料を収集・解析。“史実”と“神話”の区分付けに全力をあげている。政府要人にダレムアス・エルシャム系の直系の子孫が多いので、科学偏重の史観にはならない。現〜近代史料以外の一般への公開は控えている。
 
 第?期 超古代文明(エルシャムリア)= 月面及び草星遺跡
 第?期  上 代文明 (アトル・アン)= 海底及び旧砂漠地帯遺跡
 第?期  前 代文明 (惑星・地球上)= 各シェルター・コロニー
                     (及び記録カプセル等)
 第?期  現 代文明 (テラザニア) = 口伝、各都の年代記、戸籍等
 
 
3.未整理・未訳・未検証の各地区古文献類
 
 連邦統合の際にすべて公式には学会の所有となり、勝手な解読や公開は禁じられている。(認可を得ればよい)。各地の神殿や禁域、旧家の倉などに古文書は数多く保存されているが、意図的な文化遺産カプセルとして質量ともに充実しているのは旧スイス及びオーストラリアのアロウ校シェルターで、この内容物は連邦成立後いち早く公開され、研究が続けられている。B.C.5000〜A.D.2050頃までの技術・芸術があらかじめ整理された形で収納されている。
 
(※通称は“学会”だが、正式には歴史分析局で、所轄は科技庁と文化庁にまたがる。)
 
 一方、灰色の一族の神殿等、最終戦争末期の非公開文書類は、現在の社会感情に影響が大きいとして公開はさしとめられている。A.D.2000〜2130までの個人記録の類が中心を占める、無作為・未整理の資料で、最終戦争の真相を解明する手がかりとして注目されている。
 
 ☆ 地球第4期文明の特徴 及び
   当時のリスタルラーナの技術水準 ☆ 

 
 ☆ リスタルラーナにおける“歴史”への関心度の推移 ☆ 
 → 年代記制作順 参照 

 
 
☆ 航時技術について ☆
 
 地球連邦政府統合後、太陽系内の植民者連合(コロニスツ)残党によって封印されてきた月面遺跡の所轄が考古学会に移る。歴史社会学的見地から十分に検証され、今後の世界に害になる存在ではないとの判定を下されて初めて一般の技術系科学者が解析にかかった。(宙暦二十年頃)。
 その後、命令系統言語にリスタルラーナ上代語との共通性が多く発見され、スリナエロスの全面協力により航時技術の解明が進み、学術利用を目的として装置が復元される。(宙暦五十年頃)。
 平行世界理論の計算ミスにより歴史探査メンバーのひとりアリサ・ランを失い、以後、人間による調査行は禁じられた。が、技術の応用によってリスタルラーナ星船遺跡の推進原理を解明。無時間航法が完成した。のち、リステラス星連時代、ESPによる古代調査が一部で行なわれた。
 
 
 月面及び木星岩石帯(草星)遺跡をのこした超古代文明を第一期、惑星地球上の失なわれた大陸の文明を第二期とする。
 
 二度の破局をのりこえ、海底に没した大陸を捨てて惑星全土に避難して散った人類が、地域によっては一旦、完全に原始レベルへ退行したところから、それぞれの集落ごとに独自に、てんでに再興したものを、無理矢理相互間で流通させ、あまつさえ武力づくで「統合」しようとさえし  ついには失敗して三度目の滅びへの道をたどった。それが惑星地球における第三期文明であり、その後遺症は第四期めの千二百年を経た現在まで続いている。
 
 三期文明の特徴として最大のものは、言語・信教・価値観などの極端なまでの不統一である。この原因は、二期文明滅亡の際に緊急避難として居住不適地にまで多くの集団が送りこまれてしまい、そこでの生存を試みねばならなかったこと、かつ、過酷な環境と労働によって成人が寿命を全うできず、文化や技能の伝承が困難あるいは不可能だったこと、くわえて、磁界の混乱と疑似氷河期の到来によって集団相互の交流がまったく断たれていたこと、などである。数万年に及ぶ惑星規模文明の消失期を経て、人類が再び行動半径を広げはじめた時、かつては単一ではないまでも共通の言語を持ち、ひとつの大陸上に暮らす遠い親戚同士だった彼らは、互いに相手を非・人類と考え、異なる文化形態を野蛮と見なし、居留地間に人為的な境界線を設定して区分を明確にする方法を発明した。一方で、現存人類の繁殖力に圧迫された旧来の土着の亜人族類は次第に衰退し、消滅していった。
 
 局地的ながらもある程度の技術水準と行政機能を持つ都市及び国家が複数成立すると、彼らは異なる文明間で最低限の意志を通じさせる為の手段を開発し、商業活動を行なうようになった。経済的な利害関係はやがて外交もしくは軍事力による相互の合併吸収をまねき、小国・小集落は次第に整理統合され、あるいは連立して、より広域多人数の国家へと成長する途をたどった。
 侵略・征服・逃亡・移住・同盟・統合・分裂・改宗・改革、等といった歴史上の必然をありとあらゆる局面で短期的かつ小規模に繰り返し続けた各大陸文明のうち、いち早く他の大陸へ侵攻する技術と経済力を確立した欧州大陸文化圏が、他文化圏に侵入・征服して惑星規模での一応の覇権を握るに至ったが、その段階においてさえ、欧州文化圏ひとつの中に十を超える主権国家と、それ以上の言語・民族が併存し、競合していた。
 
 その欧州圏を中心に、産業技術と物質偏重型文明が、急激かつ爆発的に発生・成長して惑星文化全体に影響を及ぼし、各国は産業による富の基盤となる地下資源の占有権を求めて、激しい競争を展開し、発達した技術力を軍事に注ぎこんで戦闘行為に用いた。被害者たる弱小諸国をまきこんでの、強国間における数度の局地戦と二度の大戦争を経て、あまりにも強力すぎる全人類規模の殺戮兵器が開発され、各国ともにその使用を恐れた為に、一時的に、武力行使より外交策をよしとする風潮が生じ、その間、文化及び商業的技術が飛躍的に発展した。また、惑星外へ進出するための技術開発が始まり、地表上の国境の枠組みから離れて、事象を地球単位で把えようとする思考法が発生した。
 
 
 
◎ 統一され、宇宙時代を迎えた未来の地球から過去の歴史を探る。

◎ キャラクターはほとんど無視して世界状態を追う。

◎ 超古代文明・ESP等、SF的な要素は史実として扱い、
  精霊等FT的な要素は注釈付き、あるいは劇中劇の形で挿入する。

◎ オリ・ケアのブリーフィング・シーンを入れて重曹構造にする。
    ……どこまでエスパ(オリケの日常)を入れるの?
 

 
 ☆ オリ・ケアの企画順序。
 
 1.「次は最終戦争ネタだね」という話が誰からともなく出て
   いつのまにか決定し、勝手にどんどん煮詰まる。
 2.企業からの出資申し入れが事前に来る。
 3.総団長、徹底的に凝ることを主張する。
 4.時代資料集めと平行して題材の作定と全体構成の企画会議が
   あわてて始まり……、実は誰も最終戦争前後の史実を正確に
   把握していないことに気付く。
 5.地球等第三期文明史のレクチャー( by サキ)始まる。
(ここまで、「序」)

 6.頭を抱える連中に、サキとティリー、共謀して
   文献「KIの日記」をネタ本に使うよう主張する。

 7.おぜんだてが整い、スタート。さて……
 

 
   C O N T E N T S 
 
 
 0. 序。
 
 1. 大野市のこと
 2. 緑慶年代の日本のこと。(朝日ヶ森勢力と世界情勢)
 3. 隣地球のなりたちと歴史のこと。(水太母縁起と四界神)
 4. 第三次世界大戦と精霊たちの死。
 5. ムーン?墜落阻止とアルヴァトーレ成立のこと。
 6. 宇宙植民者連合(コロニスツ)成立のこと。
 7. 最終戦争
(以上、巻之一、冒頭語り手:磯原清(資料記録者)、
        補記・翻訳:サキ・ラン=アークタス、
        総括:ラン=アグラス)
 
 そもそも年表書いてねーぞ!! 

 
 8. 最終戦争後
 9. 地球統一史略
 10. 対 リスタルラーナ 第一遭遇
 11.  リスタルラーナ史略
 12.  三世界均衡時代
 13.  エスパッション及びゼネッタ史
 14.  汎銀河協商加盟とリステラス統合
 
 
 .

 
 ☆ もうひとつの地球史物語 ☆
 
   最終戦争伝説  
 
 
 
 
      1991.02.10.再着筆(旧題:“俺と好”)
      湾岸戦争が早く終わりますように。
 
      presented by 柊実真紅(とうみ・まこ)あらため、
             外海真扉(とうみ)or塔之(とうの)真扉(まさと)
 

 
 
 1991.02.03
 
    “隣りの地球”について   
 
 
 困ったことに このお話は
 
 実在の地球上の できごと とは
 
 ホンットーに、関係ないんです。
 
 おおむねすべての設定は
 
 私が高校3年生だった、1983年頃、
 
 見続けていた 一連の白昼夢に
 
 起因しています。
 
 どうか、こんな物騒な物語が
 
 ただふたつ、大野市と朝日ヶ森の存在を別として
 
 現実の世界に まざっちゃったり、
 
 しませんように。…………
 
 
 
                            

 
 逝ってしまった岡村のばかへ。 

 
 ある晩あなたは見たんだ。
 夜中の三時にトイレに起きて、したへと降りる階段で、窓から漏れる月明かり。
   じゃない。
 鋭どく突きさす白光に、ついと立ちより、サッシをあけた。
 
 戦車が、走っている。
 眼下を戦車が整然と、列をなして行軍する。
 幾十台、幾百台?
 あまりの冷気に息が凍り、けれどあなたは寒さも忘れる。

 
 あまりの冷気に凍りつき、けれどあなたは寒さも忘れた。
 戦車が、はしっている。
 ひるまはあかるい国道沿いを、幾十台、幾百台の、砲塔の列が整然と、兵をしたがえ行軍する。
 サーチライトと緑の軍服。ビルの谷間を横断し。
 戦車は、音もたてなかった。
 特殊なゴムのキャタピラは、都会の深夜をのりこえてゆく。
 
 しずかに。
 中枢へと向けて。
 
 「誰だ!!」
 とつぜんライトが窓のあたりを狙う。あなたは突嗟に身をよける。
 「どうした。」
 「はっ。大佐殿、あの窓です!」
 哨戒灯がガラスをつらぬく。半分ひらいたそのうえを。
 「  このあたりの警備会社はすべておさえたはずだ。首都圏に、深夜に誰が居るはずが……
 「どういたしますか」
 「ひまがない。念のため、麻酔弾を。」
 「はっ!」
 撃ちこまれる、それを、投げかえすわけにもいかずあなたは昏倒し。
 
 翌朝、肺炎をおこしかけて発見されたあなたが確かめたときには、工事現場すらひとつとない、明るいいつもの首都圏だったけど。
 
 ある晩あなたは見たんだ。新聞には載らない、もうひとつの真実(せんそう)を。
 
 
 
     sect.1
 
 なんでだろうと思った。始め、好が俺にちょっかいをかけはじめた時。
 だっからBとAB型の親なんて嫌いだ。別にねー、放任主義も結構ですけどねー、
 転校初日の思春期の息子を、朝、起こしてくれるくらいしたっていいじゃないか薄情者っっ!!
 ……おかげで、2日間、学校へ行き損ねた。
 
あらおまえ、学校どうしたの、くらい云いそーだなー、ここん家の親なら。

 
 あ〜あ。
 K県は都会のY市からいきなりド田舎……でもないけれど旧へーな空気のどどん、と残っている土地に引っ越しさせられて、自慢じゃないけどバリケードにできてるとはお世辞にも云いがたい俺の神経、かなり緊張してた。それでも花の中学1年生!の初日のゴタついた雰囲気に最初っから紛れこんじまえば“転校生”に向けられる奇異の視線もかなりは緩和もできようかってもんだ。なのに、俺が初登校したの、3日目だぜえ〜〜っ☆
 ええいっ! 俺は珍獣(パンダ)でも一角獣でもBEM(バッグアイドモンスター)でもないわいっ!!
 他人の視線が集中する、とゆー俺の最もニガテな事態に老い込まれ、ますます慣れない事に男女ともにから結構人気も出てしまったりして、環境適応不良のままひきつり笑いで世を過ごすこと1ヶ月! 1ヶ月もの間、不特定多数の相手から不特定多数として適度に愛される、などという境遇に耐えたんだ俺はっ!
 うっうっうっ。不得手なんだよー、これは。俺は特に親しい相手を作るか、さもなけりゃ1人がいい、ってタイプなんだから。
 そんなある日のことだった。
 定期的そううつ症状こと5月病も兼ねて、昼休みと自習時間とが重なったのをいいことに、ふら〜っと、そう、学校の裏山を散歩してみるつもりだった。緑がきれいだったから。
 緑、みどり。いや、“青葉”てのは本当にあるんだなー、ゆうのがその時の実感だった。Y市では、春を探そうと思ったらあっちこっち血眼になって街路樹あるきまわって、比較的廃ガスにやられてないとこ見つけて、やっと、あ、春だ春だ。ができるんだってぇのに……ここじゃそこいらじゅうにごろごろ転がってるんだもんな。
 なんて言ったらいいのかなあ。それは、ホントに“新緑”なんていう若葉の1部分を見つけて大げさに感激してみせる、ようなケチくさいシロモンじゃなくて……“青葉”が山ごと……どころか1山いくらのバーゲンセールで本当に無造作に呼吸している、って事なんだ。
 だから山歩きって好きだよ。俺自身は、それほど体が丈夫でもないし、ハードな登山とか不便な山小屋の生活には、耐えられそうにもないけど。暖かい山、が限度でちょっと厳しい顔されたら手も足も出ないだろうとは思うけれど。
 ……10分ほども歩いて行くと話には聞く市内観光むけ名所の滝がある。平日のこととて人気はなくて、センスのない滝名やら由来やらを記した安手の看板がちょっとイヤだったけれど……滝は滝。
 や、今日は。初めまして。俺だったら、そう貴女(あなた)の名前は……
 う〜ん。ま、いいや、保留にしとこ。
 その時ふっとなにかの気配に呼ばれたような気がして、俺は足の向くままに上流をすこし外れた方向へ歩いていった。
 ポケポケと梢の空気を楽しみながら行くと進行方向に誰かいる。待ち構えてでもいるような姿勢でこっちの方を透かし見て。
 あう☆ 嫌だな〜お。せっかくの久しぶりの1人っきりを楽しんでた所だのに。帰ろーかなー。だけど案外“お仲間”で、友達になれそうな人かも知れないし…… でも……
 例によっての優柔不断をし続けるうちに足は惰性で勝手に動いて行き。
 気がつくと、すでに俺は、そいつの領域(テリトリー)の中に踏みこんでいるのだった。
 「サボる奴には見えなかったがな、転校生」
 「さっ、サボりじゃないやい。5校時目、自習になったから、だから……」
 わ、タバコ。わ、不良!
 嫌だやだやだ、どーもどっかで見たことのある奴と思えば、転校初日にあげ足とられて、後で見るからに優等生ヅラのおためごかし連が、あいつには近づかない方が身のためだよとばかり、御忠告下さった当の 本人 相手じゃないか。わ〜〜★
 「5校時目? 桂木(かつらぎ)どうかしたのか?」
 「か、風邪だって。」
 「ふん、じゃ後で自宅(そっち)行くか。今日はもう学校に用はねぇな。」
 「今日はって、だって、おま……きみ……だって、午前中にだって居なかったじゃないかっ」
 「それがどーした」
 「どーした……って、そっちこそサボりだろっ!」
 うわ。まず。
 こんな人気(ひとけ)の無い所で不良(ふりょー)さんガンつけていいもんだろーか。呼んだって誰も来そうにない所なのに。そりゃ、昔っからイジメられっ子だったから殴られるのは慣れてるけど。にしてもこいつ腕っぷしは強そーだなー、身長なんて殆ど高校生なみにあるじゃんか、総身にまわりきる知恵があるかは知らんけど、あれ、こいつ、こんな所に本なんか持ち込んで来てやがる。学校フケて煙草吸いに来てたわけじゃないのか?
 そいつ……杉谷の左眼が狂暴な光を帯びてすぅっと細くなる。
 「おまえ…………」
 殴られるのはイヤだ。これはもう、叫ぶっか、ない。
 「わ〜〜っ!! ハインライン! きみS・F好きなのっっ?!!」
 へっへっへっやったね、ペースを乱してやったね、と喜んでばかりいられたのも束の間だった。ともあれその時は、
 「おまえ中学生(ガキ)のくせして英語の題(タイトル)読めんのかよ」
 「(なんだとそっちだってガキじゃないか)母親がもと国連所属の看護婦だかんね。一応初歩の英会話ぐらいは小学校で叩き込まれたよ。」
 て会話だけであと切りあげて逃げ出せたんだけど。それからが問題。(……今にして思えばあの時おとなしく殴られてやってた方が俺の一生ははるかに平穏だったのではないだろーか。)
 本当に、何でだろうと思ったね、急につきまとわれだした頃。
 つきまとうって云ったって好(こう)のことだ。他の、俺の混血(ハーフ)の外見や転校生に対する好奇心から、磯原クンお弁当食べましょー、磯原一緒に帰ろうぜー、の仲間に入って来るわけが無論ない。そうではなくってじゃあどうされたのかって云うと、別に、変わった事って何もなかったんだよなー。
 ただ、それから、ふっと気がつくと奴の視線がこっちを必ず捕らえてやんの。それも、ただ視る、なんて生やさしいもんじゃない。じいいぃっとばかりに、観察してやがる。担任の桂木センセと割に個人的に親しかったみたいなんで、勝手に人の成績やら、家族構成、前の学校での事、調べあげたりして。
 最初はやっぱ腹が腹が立ったね。直接こっちに尋けばいいだろー、とか、つっかかって行ったりしては鼻であしらわれて。どーせ俺は動物園の熊なんだと思って、スネたし。
 夏服になって、肌寒い程の梅雨時を耐えしのいで、ようよういきなり暑くなりはじめた、7月。
 「おまえS・F好きなのか?」
 教室のドアの所ですれ違いざまに杉谷に尋かれた。しっかり、左手に俺の図書カードぴらぴらさせて。
 「……どっちかってファンタジー寄りなのはそのカード見りゃ判ると思うけど?」
 「家にルイスやらル=グィンやらの原書がかなりあるぜ?」
 「!!」
 「……読みたけりゃ、今日の午後、家に来るんだな。」
 「読み……たい……けど……」
 逆接の続きを考える暇もあらばこそ。言うだけ言っちまうと既にそこに好の姿はある訳もなかった。
 断じて。
 行く気はなかったんだぞー、俺には。けど、学校から帰るには、1本道だったし、臨時の図書委員会で30分ほど遅れて、下校しようとするところを待ち構えられていたんじゃ、俺でなくたって…………
 ……えぇ〜い、全部どうせ俺の薄弱すぎる意志がいけないんだ。悪いのはみんな、俺なんだっっ!!
 「なにをうなってる。」
 「べつに。」
 おさげにエプロン姿の(考えてみりゃ今と変わらんな、)ユミちゃんに出会って、ヌケた話だけれど兄妹みくらべて初めて色の白さは混血(ハーフ)のせいだったのかと気づいて……
 ユミちゃん。混血(ハーフ)。俺と同じ2分の1。
 まだ小4だった妹姫が俺になついたと見るや、その晩のうちに奴はさっさか外泊しに出かけて行っちまい、俺は初めて自分が観察された理由をさとったわけだけど……
 可愛かったよ。男ばっかり4人兄弟の末っ子の俺としちゃ。くるくるっとして元気のいいのが本当の妹みたいで、責任感が刺激されて。
 ……だから好が俺を見ていた訳は解る。夜遊びがしたくて、だけど妹を1人っきりにさせるわけにもいかなくて。好が俺を選んだ訳も判る。同じハーフで、いざとなればブロークンながら英会話もこなすから、典型的帰国子女言葉の姫君の守役には最適。
 ……だけど。
 それだけ、なんだろうか、たったの。
 
 なんだかんだとつき合い、つきあわされ、滅茶苦茶な喧嘩騒ぎに巻きこまれ……酒煙草の類まで半ば強引に覚えさせられた、最初の1年間。
 だけど、好、知りゃしないだろう。俺、ユミちゃんは、好きだよ。それでも。
 中1の俺が小4の女の子(ユミちゃん)とつきあいたくておまえの無理難題に(ギャアギャア逆らいっつうも)ついて行ってた訳じゃない。おまえのやる事なす事、もの凄い反発ももちろん覚えていたけれど。それでも、俺は、おまえが…………
 
 偏よった育ち方をした俺にとって、杉谷好一って奴はどんどん“親友”という言葉の重みを、増していく存在だった。なのに、そいつには、外にもいくらでも……
 いくらでも俺より話の判る知り合いがいるんだもんな。
 ……そんな中途半端な状態に、気づいて、俺が長いこと耐えていられる筈も……なかった。
 
 好。俺は、単に便利なだけの存在なのか……?
 
 
 
     sect.2
 
 「……嫌だよ! 俺は!!」
 理由なんかもう覚えちゃいない。もともと大した事じゃなかった。ただとにかく爆発しちまったんだ、たまりにたまってた、奴への欲求不満。
 それは、単に“もっとかまって欲しい〜”式の、今おもえばガキの単純ないさかいだったのかも知れない。それにしても俺にとっては、他人に、はっきり自分の欲求や感情をぶつけるなんてのは初めての行為で……
 で、自分でもなに口走ったものか、覚えていないんだよね、よくは。
 ヒマな土曜日放課後の、夕方も遅くに連れだって帰る道すがら。人気の失せた校門を出るあたりから俺の突発的発作性愚痴り攻撃が始まって……だから、その日俺たちは前後に遠く離れて歩いていた。
 
 7月、2年目の1学期ももうそろそろ終りという時期だ。
 良く晴れ渡った暑い1日で、カラスが編隊くんでお家に帰ろうってぇともう7時近い時刻になる。無論、どんな運動部だってこんな辺境にある学校である以上、とっくに終って生徒は帰してる。……
 何故だかひどく追いつめられた気分で、言いたい事をとにかく全部言ってしまった後、好は、なにやらもの凄く怖い形相をしてズンズン前へと行ってしまった。俺はといえば、ま、虚脱状態。暗〜い顔をしてホケホケ歩いていた。
 町のドンはずれにある中学から市街地まで出て行くには1本道だ。日中は1時間に3本バスも走るけれど普通は歩いて30分。その、結構幅はある隣りの市へと通じる道  両脇は森。
 鮮やかな夕焼けが辺りを染めあげようとしていた。カーブや起伏の多い道路があかがね色に鈍く光る。
 夏の、丘陵地帯の逢魔が刻(とき)。
 不意に。直ぐ俺の後の小高い峠からダンプが1台、事故の名所だとは思えない猛スピードで現れ出た。直線下り坂コースをかっ飛ばし  
 (危ないなァ)
 横を通り過ぎる1瞬、俺は気づいちまったのだ。運転手、寝てる。酔っ払い運転。
 (好!!)
 ひとり先を行く好は直線コースの向う、ヘアピンの外側を歩きはじめる所。
 まきこまれる。危ない。カーブの下は崖だ。
 叫ぼうとして声が出なかった。呼んだとしても、いくら好でも、手遅れだった。逃げられない。死。
 難所での車の轟音がおとろえないのを、いぶかしんで好がふり向く。鋭い眼が一瞥で事態を見て取り  
 逃げられない。大型トラック。
 恐怖心なんて本能、欠落してんじゃないのかと思っていた奴の顔に、俺ははじめて驚愕が浮かぶのを見た。視た   と思った。その時には、好は既に車体のかげになっていたのだから。
 時が、凍った。
 
 
 
 
 
(……続……きは未だ、書いて無い……☆) (^◇^;)”

 
 1. 転校初日は3日目
 2. 合わせたくもない顔(ツラ)
 3. 家庭科は地獄の時間
 4. エプロンに三ツ編み……
 5. 豆腐屋小町の弟。
 
 番外編。無言の下駄箱争奪戦


 


 『 転校初日は三日目(仮)』 by 柊実真紅(とうみ・まこ)

 いー天気だなぁ……
 ぽっかりの見開いた両眼でかすむように青い空を見上げる。視界のすみで わずかにピンクがかった白い枝 ほぼ咲きそろった桜の枝が揺れている。
 い〜天……と。え!?
 
 ……でええええぇっ!!
 
 寝起きでかすれた、声にならない叫び。
 磯原清(いそはら・きよし)は飛び起きた。
 時計は、八時半を指している。
 「かーさん、恨むよ〜〜〜〜っっ」
 うめいたところで無駄である。一度は起こしてくれた証拠に、窓とカーテンはきっちり開いている。
 少し寒いが、良い天気だ。今は見とれる暇がない。
 どだだっ、と制服片手にかけおりて行くとダイニングには 早起きの 10歳違いの長兄がとぐろをまいていた。
 両親は、とっくに出かけた後である。
 「よー、なんだ中坊、おまえ、まだいたのか」
 「うるさい! 大学は春休み長ぐていーねっ」
 語尾がいちいち撥音になるのは弱冠11歳の彼が持病の胃痛に苛立っている証拠である。
 「そう云うな。これでも荷造り大変なんだぞ」
 「さっさと下宿でも寮でも行っちまえっ」
 「冷てぇなぁ……」
 大仰に胸に手をあてて嘆く彼は温厚な性格で周囲に知れている。
 「タマゴどーする?}
  自力構成 自給自足が原則の磯原家にあって、不憫な弟のためにわざわざフライパンを握ってやった彼の好意は、踏みにじられた。
 「ヒマないっ」
 虫歯ひとつない口の中を泡だらけにして叫ぶ。鏡をのぞき、長めのくせっ毛は梳かすだけ無駄なので指でかきまわして終わりにする。
 「……てきまっ」
 ばたーん、と凄い勢いでドアが閉まった。
 

 

 
 (俺と好シリーズ・学園編)
 
 『 桜の日。 』 …… 転校初日は三日目 ……  柊実真紅
 
 いー天気だなぁ……
 ぽっかりと見開いた黒褐色の瞳にかすむような青い空がうつる。
 雲かと見えるのは家の軒先までも張りだしている、ようやく八分咲きの桜の枝だ。
 白とピンクの濃淡が陽光のもと微風にひるがえる。
 ほんっとおに、いい天……
 え?
 
 「でえええぇっ!!」
 
 寝起きでかすれた、声にならない叫び。
 時計は八時半を指している。
 「かーさん、恨むよ〜〜っ」
 うめいたところで無駄である。一度は起こしてくれた証拠に、窓とカーテンはきっちり開いている。
  どだだっ、と制服片手にかけおりて行くとダイニングには十歳ちがいの長兄がとぐろをまいていた。両親は、とっくに出かけた後である。
 「よー、なんだ中坊。おまえ、まだいたのか」
 「うるさい! 大学は春休み長ぐていーねっ」
 語尾がいちいち切り上がるのは弱冠十一歳の弟が持病の胃痛に苛立っているせいだ。
 「そう云うな。これでも荷造り大変なんだぞ」
 「さっさと下宿でも寮でも行っちまえっ」
 「冷てぇなぁ……タマゴどーする?}
 自給自足が磯原家の原則だ。不憫な末っ子のためにわざわざフライパンを握ってやった彼の好意は、あっさり踏みにじられた。
 「ヒマないっ」
 虫歯ひとつない口の中を泡だらけにして叫ぶ。鏡をのぞき、長めのくせっ毛は梳かすだけ無駄なので指でかきまわして終わりにする。
 ため息をついて、兄はミルク鍋を火にかけた。手早く香料入りの紅茶を煮込む。
 「ほれ。飲め。」
 カップをさし出された時には遅刻者は、真新しい学ランのボタン相手に苦闘しているところだった。
 「もう歯、磨いちゃっ……」
 「いいから飲め。」
 ほとんどそのまま口に押しつけそうな態度と、猫舌用に放りこまれた氷のかけらを見て、しぶしぶ受け取る。
 ずずずずず。
 行儀悪く音をたててすすり込む。熱と糖分と、ハーヴの香気が痩せた体に浸みわたるにつれて、 ずっと、 しかめたままだった眉がふっと緩んで肩の力が抜けた。
 「……サンキュ、ヒロ兄(にぃ)」
 「おう。頑張んな」
 渡されたカップを卓の上に置いて、三年ほど前に制服から卒業した兄は襟のホックを留めてやった。
 ……長い登校拒否で中学に上がるのは無理かとも思われた。それが、自分から行く、と言い切って、努力をしているのだから。
 気を使われていることは本人も知っている。
 もそもそと靴をはくと、とっくの九時をまわった時計に恨めしげな視線を向けつつ、玄関を出て行った。
 

 

 
 彼、磯原清(いそはら・きよし)は、ちょっと複雑だ。
 日本国籍の十一歳。平凡な中学教師である父の妻はなぜか異国の女性で、それでも三人いる兄達はちょっと浅黒い肌にクセの強い髪……という、まあ日本人で通る顔立ちをしていたのだが。
 どんな遺伝子のいたずらか、金褐色の髪にミルクココアのなめらかな肌色、ぱっちりと吊り上がった深い輝きの瞳。
 母方の、少数民族そのままの外見を、末っ子は持って生まれてしまった。それをたぐい稀(まれ)な美童と見るかは、受けとる側の感性の問題だ。
 「やだー、きもちわるいーい」
 クラスの子にそう言われたのは、清が小学校四年のときだ。
 運の悪いことにもともと体の弱かったこの子 は前の学年の終わりにかなりの長期入院をしている。その間に、学区編成が変わった。
 おわかれ会もなにも経験しないままに見知らぬ学校へ連れて行かれて、最初の言葉が。
 [違う]ということは子供のあい……
 

 
 異伝子
 
 

 
 『透の日記より』   外海真扉(とうみ・まさと)
 
 「磯原家の四兄弟」といわれてずっと育った。正確には、男の子が五人いる。
 末っ子がからだの弱い内弁慶でめったに門から外には出なかったので、御近所はそれを外して数えていたのだろうが……[四]という数をきくたびにぼくは自分の名前を考えずにはいられなかった。
 ほかの兄弟は、上からヒロシ、タカシ、アツシ、キヨシ。三男のぼくは……トオル。
 これだけならべつにたいしたことはない、よくある子供の被害妄想を笑われてすむかもしれない。
 報道カメラマンだった父について異国からやってきた母マリセはチョコレート色の肌に縮れ毛の美しい女性で、四人は多少なりとその砂漠の民族性を受け継いでいたけれど、ひとり日本人としてさえ色白の部類のぼくは、「いっしょくたに寝ているとマーブルケーキのようね」と、料理を母に習いに来ていた近所の女性に他愛もなく笑われて、夏休みの一日、海岸でただひたすら寝ころがっていたことがあった。あげく……全身火傷にちかい状態で救急車に運ばれて三日も寝込んだ割に、起きだして鏡を見ればあいかわらずの生白い顔に、まっすぐな髪だけがみごとに日に褪せて赤茶色になっていた。
 五年分くらい、まとめて泣いたね。
 ぼくは母の子供ではないそうだ。そしてたぶん、父の子ですらないのだろうと、思う。
 
 

 

 
 [俺と好] the laugh sketches
 
 『 食 卓 三 景 』  by. 遠野真谷人(とおの・まやと)
 
 
 その1.……
 
 「あ、おはよう。おかえりなさい」
 ドアを開けると妹(ユミ)がお玉を持ったまま振りかえった。腹が鳴るような匂いの湯気で台所(キッチン)は白っぽく曇りかけている。
 「お兄ィちゃん、このごろ朝、どこへ出掛けてるの?」
 「……ロードワーク」
 首のタオルを洗濯場に放りこみながら答える。
 ばれたか。
 なるべく、ユミが目を覚ます前には帰ろうと思ってたんだが。運動不足=(イコール)欲求不満がたまってくるとつい時間をかけてしまう。おまけに、今日は妙な兄弟にひっかかっちまったし。
 ……明日からはきっともっと遅く帰るはめになるだろう。
 「あ、やっぱり?」
 おれの思考などにはおかまいなく、よく磨いてある歯並びをひょいと見せてユミは笑った。
 「じゃあ、お腹(なか)空いたでしょう。そうじゃないかと思って、特別メニューにしといたの♪」
 

 

 
 『ナジャと北王』
 
 それは俺のひそかな愛読書で、 俺の ほかにも 何度か読み返している奴らがいるらしい くりかえし読む奴らがいるらしいのは、見るたび手ずれていくその様子でも伺えたけれど、それが。
 俺がサボったある日のHR(ホームルーム)で文化祭の演目(だしもの)に決まっているとは思ってもみなかった。
 
 「でええっ! おれっ!?」
 んで姫役(ヒロイン)だれ〜っと無責任に口にした質問への解答の反応が、これだった。
 「やだっ、おれ脚本のほうがいいっ」
 「脚本はすでに出来ている」
 どんとのたまうのは文芸部の御大だ。
 「陰謀だ〜女なんてやだ〜っっっ」
 モノはなにって数代前の文芸部OBが書き残したらしい個人誌で、たいして長くもないその話のタイトルは『北陵』。古代インドかどこかが舞台の悲劇の王とその侍女の、熱恋モノだ。
 

 
 アガラジャーダのナジュリシア
 


 
 二十一世紀。
 とはいえなにぶんにもいなかである。
 辺境への文化の伝ぱ速度はとうぜんのように遅く……
 はやいはなし、三十年まえの首都周辺とさしてかわらない、ってのがここでの生活だった。
 

 
 黒褐色の渦まくくせ毛が布団のはしからはみだしている。
 子供がひとり、寝ていた。
 いや、ぼんやりとだが目覚めてはいるらしい。ながいまつ毛にふちどられた濃い茶色のガラスの丸窓瞳に、まくらもとの窓ごしのぬけるような春の青空と、まだ三分咲きの白い山桜の梢が映じて、ちらちらと揺れている。……
 

 
 この街は、いままで住んでいた横浜よりも、寒い。
 早ければ卒業の時期には花吹雪の散りはじめる海港都市とはちがって、の染井吉野の並木道とはちがって、標高の高いここでは、入学式も済んだこれからが、いよいよ花見のシーズンなのだ。
 

 
 子供はまだ、意識がはっきりとは目覚めてないようだ。
 
 「清?」
 
 すえの弟の枕元を、広はそっと叩いた。いくどか瞬いてようやく焦点の合ってくるその表情を探る……今日は、具合がいいようだ。
 
 「時間、わかってるか? 起きるか?」
 
 
 

 
 ♪ のぺしゃんしゃん

   とわてんてん
   
   のぺしゃらてん ♪
 

 
 
 山あいをぬって奔る銀の清流を、囲むかたちで発達した盆地の、街道沿いに城下町、をもとにして拓けた大野市は、東のきわで山岳地帯の国立・国定公園に隣接し、往時よりすたれたものの、
 
 
 山あいをぬう一筋の清流を、囲むかたちで発達した盆地の、特産は日の木に杉、木材に炭、草の実で染めた手織り布。気性の荒い木びきの男衆、情の細やかな桑摘みの女たち。
 童は野山を自在に駆せめぐり、
 戦乱の世も年貢と飢えの苦しみも、知らぬげに生き続けるこの小さな山国を、代々の在の者たちは《善き野(おおの)》と呼んだ。
 
 ……やがて、馬籠の通った川沿いの街道にはじめての鉄路がはしり、汽笛がひびき、いつしかまたディーゼルへ、電車へと移り過ぎる足早な時節のなかを……
 
 変わらずに伝えられる、この野にはひとつの心があった。
 
 
 

 
 ♪ 久坂、長坂、
   はより坂〜 ♪
 
   はのせっさい♪
 



 おんなじ道路を歩いていても
 ちがう世界を生きている
 肌の黄色い17歳の
 普通の家庭の女の子
 おんなじ道路を歩いていても
 ちがう世界を生きている
 肌の黄色い17歳の
 家庭を持たない女の子。
 
 「晴樹、幼ななじみっていうだけでは……
  おせっかいをやく権利もないの?}
 

 

 
 遅い春がようやくに訪れて
 季節を楽しむのは今この時しかないというのに
 こやみなく脚を動かしつづけて行く
 ひま人たち
 

 

 
 ・ 小人のココム
 ・ 森の少女ルーンダダ
 
 山で木が
 伐りたおされている
 えつこの好きだった
 《ゾウキバヤシの木》だ。
 
 「もう、
  ハッピーエンドの話は
  書けないね。」
  と、
 えつこはぽつりと言った。
 

 

 
 《自然》がきれいなのは、本当にその言葉の意味そのままを具現しているからだ。都会の作られた人工のいこいの場のように、誰かに見てもらえてはじめて役に立つ、存在できる……というちゃちな存在ではなく。
 自然というやつはそのまんまで本当に《自然》なんだ。俺みたいに人工的にぎごちなく生きてるんでない、本当に自分の、自分だけがそうありたいと思えるように存在しつづけている姿なんだ。
 
 ……あたりいっぱいの山、また山、を見ているうちに俺はたぶん泣きそうな顔をしていたに違いないんだ。なぜって俺はそんな風にはなれない。なれっこない。なぜって俺は、しょせんは鏡だから。誰かに動いてもらって初めて、自分の中の模様を変えられる……鏡だから。それが、悲しかったから。
 
 それができれば泣きだいたい気分の俺に気づかずに、それとも、気づかないふりで、好は、帰る仕度をしていた。
 

 

 
 1986.12.19.
 
 ひとりじゃとべない
 つばさがほしい
 まわりはみいんな
 山羊のむれ。
 眼下をひつじが歩いてく。
 



 
 なだらかと見えてどこまでも、幾重にも折り畳みつづく峰々……
 
 
 
 1987.01.17
 
 晴樹は、らんかんから川を見ていた。
 
 ……翔ぶわよはるき。母さんも翔ぶわよ……
 
 白く、ひるがえる、ふくらはぎ。
 
 はるがすみ。
 
 どこまでも あおい、青い空。
 
 ゆきどけの水は深くはやかった……
 
 
 栄田(旧姓・御園(みその))奈津子。
 
 

(緑慶18年 6月)

☆ 清、徐々に学校になじみ、「梅雨祭」(仮称)をきっかけに、
  出来了、高橋、横河、千のグループに入る。「コアラ」のアダ名つく。
★ 好、偶然から《センター》末端の研究所に侵入、会田正行に救われ、
  日本の暗部での闘争を知る。

(緑慶18年 7月)
☆ 横河、「大野市のナゾ」究明に燃え、一同をひっぱりこむ。
■ Sグループ総合開発企画会議。
□ 高校生、測量阻止の見張りに立つ。杣谷 忍 など。

(緑慶18年 8月)
★ 好、正行らの行動に参加の意志表明。
  反対意見出て、まとまらず、正行の個人的な部下となる。
□ 会田翁、新路開発阻止に動く。
○ 盆送り。
☆ 広、帰省(?)。

(緑慶18年 9月)
☆ 学期始まりより大祭準備解禁。1−B、清主演(?)で劇の稽古。
■ Sグループ系列TV局、大野に来る。商店街の親父達とひともめ。
□ K市より一ノ木組、しめはりの交替に来る。

(緑慶18年10月)
○ 大野大祭(収穫祭)。

(緑慶18年11月)
☆ この頃から、清、よく杉谷家に泊まる。
○ 初雪。
□ 大野市、市条令により、開発反対を決定。
 
(緑慶18年12月)
○ 暮れの仕度。
 
 
(緑慶19年)
(1月) 正月
(2月) 旧正月
(3月) 卒業式
(4月) 2年に進級(もちあがり)。ユミ、第一中学に入学。
(5月) 梅雨祭、準備開始。
(6月) 田植え。梅雨祭。
(7月)
(8月) 盆送り
(9月) 大祭準備開始
(10月) 大野大祭
(11月) 初雪
(12月) 暮れの仕度
 
 
(緑慶20年)
(1月) 正月
(2月) 旧正月
(3月) 卒業式
(4月) 3年に進級(クラス変え)。ユミ、一中2年に進級。
     正行、大野高校入学。
(5月) 梅雨祭、準備開始。
(6月) 田植え。梅雨祭。

(7月) ☆ 観光バス事故。清と好、行方不明となる。
       清のESP発現(暴走)。山中で2ヶ月過ごす。

(8月) 盆送り

(9月) 大祭準備開始
     ☆ 清と好、下山する。好、ESPについて研究はじめる。

(10月) 大野大祭
     進路志望調査。高橋、猛勉はじめる。
(11月) 初雪
(12月) 暮れの仕度
 
 
(緑慶21年)

(1月) 正月
     高橋、倒れて入院。

(2月) 大野高校入試。
     旧正月
     県立高校入試。

(3月) 卒業式
     栄田晴樹、市外の福祉施設を卒園し大野モータースに就職。

(4月) 清と好、大野高校入学。高橋らは県立清風へ。
     清、剣道部へ入部。会田正行(2年)と合う。

(5月) 生徒会選挙。会田ゆかり、副会長となる。
     中間考査
(6月) 田植え。梅雨祭。
(7月) 期末考査
(8月) 盆送り
(9月) 大祭準備開始
(10月) 大野大祭
     中間考査
(11月) 初雪
(12月) 期末考査
     暮れの仕度
 
 
(緑慶22年)
(1月) 正月
(2月) 学年末考査
     旧正月
(3月) 卒業式
(4月) 清と好、2年進級。ユミ、O高入学。
(5月) ゆかり、生徒会長となる。
     中間考査
     梅雨祭準備開始。
(6月) 田植え。
     梅雨祭。「北稜夢」上演。好、清の相手役をやるハメに……
(7月) 期末考査
 
     ★ 清、好、正行、ゆかり他、
       例の10人、まとめて行方不明となる。    

(8月) 盆送り
(9月) 大祭準備開始
(10月) 大野大祭
     中間考査
(11月) 初雪

     ★ 好を除く9人、一旦帰還する。
       清、しばらく入院生活。

(12月) 期末考査
     暮れの仕度
 
 
(緑慶23年)
(1月) 正月
(2月) 学年末考査
     旧正月
(3月) 卒業式
     正行、関西(大阪)の国立大学に進学決定。
(4月) ゆかり、3年に進級。清は2年に留年。

     ☆ 清、高橋と再会。

(5月) 中間考査

     ☆ 清、夜遊び中、晴樹と出会う。

(6月) 田植え。梅雨祭。
(7月) 期末考査
(8月) 盆送り

     ☆ 清、晴樹と同居。

(9月) 大祭準備開始
(10月) 大野大祭
     中間考査

(11月) 初雪

     ☆ 晴樹、死。18歳。

     ★ 9人、再び行方不明となり、未還。

(12月) 
 
 
 
 
 

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