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 「僕はまずあのブラックホールまがいの正体を突きとめてやろうと思ってたんだよ。それを雄輝が先に飛び込んじゃったんでやむなく……さ、」
 前半は真実だが、後半、特にやむなくの4文字はまったくの言い訳だった。
 “コンピューター”と異名をとる鋭ではあっても、バロウズの科学(S・F)的冒険小説(スペースオペラ)に憧れるくらいの人間味なら有り余る程持っていたちあわせていたのである。とは言え、興奮している真里砂はそんな事には気がつかない。
 「そう    ……」と真里砂。「なら、まあ、あなたは許してあげるわ。  雄輝!」
 「あん?」
 真里砂が凄まじい(例の口調の、かつて友人達から“母親みたい”と評された)剣幕でまくしたてようとした時である。
 「くしゃん! くしゃん! くしゃん!」
 不意に鋭がくしゃみを始めた。
 一旦は三回で止んだもので、真里砂が「あら、3でほれられ、ね……」と言おうとからかおうとした途端にまた「くしゃん!」
 後はたて居たに水の勢いで、くしゃん! くしゃん! くしゃん! くしゃん! ……くしゃみの大洪水である。
 そのうちに真里砂までが鼻をむずむずさせだしたので雄輝が笑った。しかし、
 「わ、笑っている場合じゃないわよ雄輝。  くしゃん! わたしもだけど、あなたたちの服だって濡れているじゃないの。それに、そうでなくってもここ、随分寒いと思わない?」
 それを聞いて始めて雄輝も少しばかり真面目な顔になった。
 「確かにこりゃ12月頃の気温だよな……」
 上下ジャージの雄輝はともかく、真里砂に到っては競技の時のままの短パン半袖姿でふるえていたのである。それから気づいて、
 「マーシャ、それは何だ?」
 抱えていた袋の事を尋ねられて、真里砂は今さっき起った事を手短かに説明した。
 有翼人種の話を聞かされて、雄輝と鋭は明らかに不信の色を顔に浮かべたが、とにかくその袋はおこに存在するのであり、その中味は役に立つものなのだ。
 「とにかく……」と雄輝が言った。
 
 
 
(つづく)           .

コメント

森砂千夏
森砂千夏
2007年10月22日20:15

なんか素敵じゃない?いいんじゃない?
そんな感じで書いてくといいと思うよ。

りす
りす
2007年10月27日1:10

どぉもぉ……☆(^^;)★

でもこれ、はる〜か大昔! ウン十年も前の高校生の頃に、
さんざんっぱら悩み苦しみながら、何度も描き直してた、
没原稿……なんですけどね……☆ (^◇^;) ★

(怨念が籠もってるもんで、
 こうやってネット上で曝して、
 「成仏」させてんですよ★)
 

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