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 第1章  森の中で 1.  ここは地球じゃない。
 
 「だれ!?」夢の中で真里砂は懸命にもがいていた。「わたしを呼ぶのはだれなの!?」
 呼ぶ声は高く、低く、遠く、近く、繰り返し繰り返し聞こえてきた来る。
 真里砂は不思議な呼び声だけが木霊する空白の中に閉じ込められていたのだ。わけの解らない不安となつかしさを同時に感じとって真里砂の心は耐え切れず、叫んでいた。
「ここよ! わたしはここにいるわ!!」
 すっと何かにひかれるような気がして、真里砂は自分の声に起こされて現実世界に立ち戻った。
 「あ……夢  …」
 気がつけば、真里砂は露の降りた枯草の上に横たわっていた。
 着ていた体操着もぐっしょり濡れて、体はすっかり冷え切ってしまっている。
 「よくもこんなになるまでのんびり気を失なってなんかいられたものね真里砂。」
 自分を叱りつつ立ち上り起き上り、辺りの景色を見るに及んで真里砂はしっかり腹をたててしまった。
 「いったい……何が起ったって言うの  !?」
 ここは、どこかしら  
 さしもの真里砂も、次第に声が小さくなって行くのは隠しようがなかったを隠す事ができなかった。
 実を言えば彼女はしばらくの間何が起ったのかを思い出せなかったのであるが、木、木、木、    一面の樹。だった。
 うっそうと頭上に生い茂る森の木々の梢が、陽の光さえもさえ切って真里砂を取り囲んでいるのである。
 それから、ようやく自分がとんでもない冒険に巻き込まれたらしい事にてしまったらしいと気がついた。あの灰色の虚空間の事を思い出したのだ。
 不意に頭上で激しい羽音がして、上を見上げる暇もなしに背中にとび色の翼をしょった少年が目の前に現われたのだ
 真里砂より3つばかり年下だろうか、地球ではギャングエイジなどと呼ばれるこの年頃の男の子にしてはなかなか優雅な動きかたで特有の礼のしかたをとった。
 「遅くなってすみません。マーライシャ様ですね?」
 
 
 
 
 (つづく)         .

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