※※ 翼人(よくんど) ※※
「待って! 待っ! ……」
自分の叫び声に驚ろいて、真里砂は急にはね起きた。「……あ……?……」
確かに何か大事な夢を見ていたのだ。が、夢の記憶はあっという間に飛び去ってしまった。
「思い出せない……あれは、一体なんなの?」真里砂は半ば状態を起しながら痛む頭を振ってつぶやいた。それから「えっ!?」
真里砂の目前すぐの所には、
真里砂は木のまたにしつらえられた、鳥の巣に似たプラットフォーム(舞台)に寝かされていたのである。
気絶したまま落ちてしまわないようにとの配慮からだろう。使い古した帯のようなもので上手に体が幹にくくりつけられてある。
「
手早く帯の結び目をほどきながら、
下には
かなり大きな森の中のようだ。
太陽はまだ傾き始めたばかりのところらしいが、真里砂のいる所まではほとんど光が届かない。
はえている植物は全て見覚えのあるものばかりであるのに、ここではもう落葉樹の葉は全て姿を消し、からみついたつたも黄色くなって小さな実を残すばかりになっている。
冬仕度はすっかり終っている
北と言えば、そう本当に寒い。初雪でも降りそうな温度ではなかろうか。くしゃん! 半袖短パンという格好では手もなく、鳥肌たった両腕をくんでしきりにこすった。はく息が白く流れて行く。
冗談じゃないわ。真里砂は思った。いきなり足もとの地面が失せた時のあの恐怖感。上も下もなかったあの灰色の空間。ぞっとする。なんだって……「あっ!?」
真里砂は心の中で小さく悲鳴をあげた。そんなまさか
それは真里砂が覚えている最も古い記憶だった。あの時までは、確かにそれ以前のでき事も自分の素姓もわかっていたはずなのである。そして、寒さ。
森の中を迷っているうちに10月の雨に打たれて、肺炎を起こした。熱のひいた後はもう何も覚えていなかった。
しかし
そんなまさか
そんな
(10/11分) .
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