3.袋のなかみ
 
真里砂、雄輝、鋭。
三人は焚き火を囲んで、わずかな食糧をせっせと口に運んでいました。
それというのも、先程パスタから渡された食糧には一人分しかなかったのです。  当然のことですが。
「ともあれ」と、そのことに気づいた時に鋭が言いました。
「これでこの事件の原因が真里砂にあるってことがわかったよ。ここの連中  さっきの有翼人種の仲間なんか  は、どういう方法でかは知らないけど地球にいる真里砂を呼びよせて……ぼくら二人は手違いでまきこまれただけなんだってね。」
これは事実に違いありませんでしたが、思いやりのある言い方とは言えないようでした。
むろん、鋭としては悪気があって言ったわけでなく、むしろ巻き込まれたことを喜んで、真里砂に感謝したいぐらいだったのですが、そこは人一倍責任感の強い真里砂のこと、自分のせいでこれから危険なめにあわせてしまうかもしれないと思うと、鋭の気持を知ってはいても、どうも落ちつきません。
今だって朝日ヶ森学園にいれば、体育祭後夜祭の御馳走をおなかいっぱい食べられたはずではありませんか。
 それに、なぜだかわからないけれど、これはいつも憧れていたお話の中の冒険のようには終らないだろうという予感がしました。
だからといって、どういう終りかたになるのかはさっぱり見当がつかなかったのですが……。
「さて、と。これからどうする?」
みんなが食べ終った時に雄輝が言いだしました。
もちろん議論好きな彼らの事、これは「会議を始めようぜ」の合図だったのですが、転校生で朝日ヶ森の流儀に慣れきっていない鋭は、彼お得意の“科学的な”好奇心をおこして、先にパスタの残していった袋の中味を全部調べてしまおうと


(☆シャーペン描きで色鉛筆塗りのマーシャのイラストあり。「有澄真里砂(マーライシャ)12歳・朝日ヶ森学園小学高等部3年A級」のコメントつき。)

主張しました。
さっきは、食糧と火打ち金を見つけた所で、真里砂が、お腹がすいたし、風が冷たくなったと言いだして、奥の方の品物はまだ調べ終っていないのです。
真里砂も鋭に賛成しました。
「もしかしたら、なにか手掛かりになるような物が入っているかも知れないでしょう。」
議論の種が増えるとあらば、雄輝だって反対しようとは思いません。
次々にひっぱり出した小さな包みや袋を、順々に開いてゆき、それを鋭が、運よくポケットに入っていた、体育祭用の得点表の裏に書きとめました。
 まず、さっきの食糧袋。
乾燥させた果物と、乾パンとおせんべいの合いの子のような固いお菓子が一包みづつ。袋に入った強飯(こわいい)の乾したものと干魚少量。
(肉類がないわ、と真里砂。)
小型の辞書ぐらいの大きさの木の箱には、火打ち石と火打ち金、それに塩とハチミツが入っています。
それから、ふたが深皿になる小さな白いゆきひらと、中華料理に使うような、おたまのような匙(さじ)。

 
 
 
(※没原稿マークのバッテン印で消してある※)

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索