2. 森の中で
「これは……なんだ?」
不思議な霧はまだ消えてはいないので、あたりの様子はまったくわかりません。
ただその山小屋だけが目の前にぬっと建っていました。
「見たことのない建築様式だな。」
何年か前に焼けたらしくて、右手の方が黒くなった土台石だけになって草がはえていましたが、残った半分は(建築技師志望の雄輝の意見にしたがえば)日本の合しょう造りとギリシアのコリント様式のごたまぜに上から中世ヨーロッパ風をぬったくったような、風変わりな建物でした。
「ねえ雄輝、この建物……本物だよね」
「本物でなけりゃなんだって言うんだ? 本物に決まってるじゃないか」
「これが本物なら、移動したのはぼくらかな。この家かな。」
「少なくともおれたちじゃ……」
ない。と言おうとして、雄輝は不意に自分がどこに立っているか気づきました。
いえ、正確に言うならば、自分がどこにも立っていないことに気がついたのです。
足の下にはもやっとした霧があるばかり、その上に30cmほど離れて自分の両足が浮いています。
よく見て見れば、普通の霧な
(没原稿のバッテンマーク入り。)
コメント