「でも大事な事なんだ、真里砂(マーシャ)。
きみが有澄家の前で泣いていたのはたしか
9年前  いや、10年前の今日だったね。
その日がきみの誕生日になったんだから。
きみは捨て子で、3才以下の時の記おくはまったく
わからない、それに髪の色がふつうの人とは
ちがう。」
「それがどうしたって言うの!! そんな事は
気にするなって言ってくれたのは雄輝じゃないの。」
さっきから歯をくいしばってふるえていた真里砂は
それだけ言うと泣き出してしまった。
「ひどいよ!先輩。いくら真里砂(マーシャ)が気が強く
たって、女の子にそうはっきり、言うことないじゃ
ないか!」 鋭は、まだ自分では気づいていなかった
が、真里砂が好きだった。
だから、真里砂が悲しむのを見たくないのだ。
「ちがうんだ。ぼくが言いたいのは真里砂(マーシャ)が  
真里砂(マーシャ)の両親が、この世界の人間  住人じゃ
ないかと思うんだ。」 恐ろしい沈黙が訪れた。
この考えはほかの二人の心にもあったが、
とても信じられない、いや信じたくない事だった。
「でも、  もし、それが本当の事だとして    
たしかに真里砂は妖精みたいに身が軽いし、
髪は地球人ばなれした緑色だからね    
なぜ、地球に 捨てられていたんだろう?」
「わからないわ。でも…………でも、私、本当にここの
この世界の娘なのかしら?」
真里砂が涙をふきながら言った。
あまりにもめまぐるしくいろいろな事が起ったので、
いまなら何を言われても信じられるような気がした。
「たぶんね、それも王家の血すじなんじゃないかな。
王女様(プリンセス)  。」
雄輝も鋭も王女(プリンセス)という肩書は真里砂にぴったりだと
思った。
たき火が音たててはぜた。
もう話すこともつきたように思われた。
「今夜は野宿だわね。」 真里砂が言った。
「うん。」 と雄輝が答えた。
再び沈黙が訪れた。
 
 
 
             

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