「だれかいるのかい!?」
おどろいてかけつけてきた二人が同時に聞いた。
「わからないわ、ただ……すぐ後ろでだれかどなったん
だけど、ふりむいたらだれもいなくて…………」
「ハハア、さては宙に飛んだか地にもぐったか……」
「まじめにやれよ、鋭。いったいなにものなんだろうな?」
「いくら話したって結論は出ないわよ、ここは魔法の森だもの。
いくらでも想像できるわ。」
真里砂が肩をすくめて言った。
「また真里砂(マーシャ)の童話狂いが始まったね!
 ぼくは別の惑星だと思うんだけどなァ」
それを聞いて雄輝がふき出した。
「それを言うならきみだってSF気狂いじゃないか!
 そんなことより真里砂(マーシャ)の荷物は全部見たのかい?」
「いいえ、まだよ。この方位磁石を見ていたら声がしたんですもの」
「じゃあ早いとこ調べよう。それから会議だ。」
彼がふくろをひっくりかえすのを見て真里砂はためいきをついた。
  <とにかく、方位磁石だけは無事だったわよ……>  
 
彼らは議論が好きだった。
それは、彼らが小さい時から通った朝日ヶ森学園が、すべて
生徒会議の決定にたよっていたせいもあるし、
ギリギリの瞬間まで頭を働かせて相手を降参させるのは
スポーツではあじわえない独特なスリルがあった。
 そこで、彼らはたき火をかこんですわると話し始めた。
「まず第一の疑問はここがどこかってことだよ。」
「それからなぜここへ来たのか、ね。偶然なのか、それとも
だれかにつれてこられたのか」
「……きみが王女(プリンセス)だってのも気にかかるな……
 それにこの荷物! どうも旅の仕度に思えるんだけど
 ……ここの住民  真里砂(マーシャ)の言う山羊足人(フォーン)や
妖精(フェアリー)  は、ぼくたちの事をどう思っているのかな。」
「きりがないわね! 紙と鉛筆があるといいんだけど」
雄輝がポケットから採点用紙をひっぱりだして、鉛筆と
いっしょに真里砂にわたした。
「今日はもう使わないからね。」



     疑 問          結 論
1.ここはどこか
2.なぜここへ来たのか
3.私が王女だということ
4.荷物はなんのためか
5.住民はわれわれを
  どう思っているのか




「まだあるわ。ねえ、あなたたちはここへ来た時、
こわかったって言ったでしょう? でも、私、たしかに
こわいし、おどろいたんだけど、同時に うれしくて
なつかしいような気分におそわれたのよ。」
しばらく沈黙がおとずれた。
パチパチと火のはぜる音がここは別世界なのだと
語っていた。そして、いつになったら両親のもとへ帰れる
のか、いや、帰れるのかどうかもわからないということを。
「こういう仮説がなりたたないかな…………。」
雄輝がふいにしゃべり出した。
「真里砂(マーシャ)、きみが今の両親  有澄のおじさんと
おばさん  の本当の子じゃないってことはみんなが知ってる。」
((真里砂の体がピクッとふるえ、鋭がするどくさけんだ。))
「先輩! そのことは………………。」
「わかってるよ、真里砂(マーシャ)が内心そのことを気にしている
 ことも、みんなが気づかって口に出さない事もね……。」
雄輝は言いにくそうに口を切った。

             

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