P1.
 
 概 略 ・ 創 世 記
 
 昔々、神人(かみびと)の長(おさ)なる女神(ドライム)マライアヌがこの地に来たるる時、大地は、まだその姿を定めず、うなうなと優しいこがね色にたゆたい、たゆたい、見渡すかぎりにまどろんでおりました。
それから長いながい年月(としつき)のあいだ、女神はひとつの巌の上に一人で眠っておりました。
そうしている間(ま)に地は熱く猛(たけ)りまた凍(い)てつき、その繰り返しの内に、聖なる大地の霊から空とそれを司(つかさ)どる霊が生まれ、無慈悲な虚空を追い払って母なる大地の囲みをかためました。
それから、大地のおもてより、幾たりかの水乙女たちが抜け出でて白い雲、黒い雲、灰色の雲となり、星々の目から大地を護って、女神の目覚めのその時までひたりと動こうとはしませんでした。
うねり、また炎を噴き上げ、身震いをし、大地はゆるゆるとその形を整えてゆきました。
 
     ×               ×
 
 また長い時が過ぎて、ようやく女神の目覚めの日がきました。
女神が目覚めた時、東の地平から雲が退き、太陽は初めてこの世界を見ることを許されました。
彼女はやさしいままの姿で朝陽の祝福の輪の中に立っていました。
彼女にとって大地の新しい姿を見るのが初めてなら、自分の新しいからだを見るのもこれが最初のことでした。
彼女の名前はマリアンドリーム。
かつて、幾度も生まれ変り生まれ変りして、まだ普通の人間であった最後の一生に、彼女はその同じ名で呼ばれていました。
それから、彼女は記憶を失わない者、この世の外にあってこの世に含まれる者、不思議の探求者、彼ら流に言えば“真実を探す者”の一人となったのです。


P2.

 女神は、まず、空気から着物を作ると、そのまま歌いながら歩いてゆきました。
ちょうど六節歌ったところで三羽の渡り鳥が現われました。
「渡り鳥、渡り鳥、私(わたくし)の兄弟たちはどうしました。」
「姉君様は光の国(エルシャムリア)に」
「双子の弟君は地球星(ティカセルト)に」
「兄君様は空虚の洞窟(ボルドガスドム)に」
「それぞれ国造りを始めておられます」
それを聞いて、女神は真赤な血を燃やし、紅蓮の炎から三羽の鳳凰鳥を作って尋ねました。
「そして私(わたくし)はどこにいます?」
「大地(ダレムアス)に」
それから鳳凰たちは女神(ドライム)の目覚めを兄弟神たちに告げに飛び立ってゆきました。
 
(☆平城京風、というか山田ミネコ風のハルマゲドン・シリーズ風…A^-^;)…薄桃色の肌着に青碧色の衣装に、朱色の袖くくい紐と軽翠の地金に金の鈴が輪状になった飾り鈴クシロを身に付けた、黒髪巻毛に翠の瞳のマライアヌの図、あり。シャーペン描きに色鉛筆塗り。)
 

P3.

 女神は更に歩いて行って、土から六人の人間を作り、マルダノビメ、マライヒメ、サルルヒメ、クルスタカワケ、オルノミコ、アスタイラツコと名づけました。
これが今日の大地の国人(ダレムアト)の始まりであります。
女神はこの地をハジメノハラと名づけ、それから七十二たび、お山の上を太陽が横ぎるまで(※1)そこにとどまって、人間に食物を与え、言葉を与え、考える力を与えて、喜びと悲しみと愛することを教えました。
生まれる者、死んだ者、女神の庇護のもとに人の数は三十と六人になっていました。
 ある日、女神はさびしさ、と、いう感情を思いだしました。
大人が乳飲み児の世話だけでは生きていくことができないように、女神もまだほんのわずかな感情しかしらない幼ない人間たちの間では孤独な存在でした。
「いまぞ時は至れり。」
女神は立ちあがってそう言うと、まだごく小さい大地(ダレムアス)の世界をとりまく深遠なる淵を超えて、遠く、遠く、心の輪を広げ、深く、深く、呼びかけました。
 
 きてください
 きてください
 きてください
 きてください
  わたしの仲間たち
 きてください
 きてください
 きてください
 きてください
 

※ お山、つまり後に時の果てまで山と呼ばれるようになるかの山の頂上はハジメノハラから見ると、一年に一度、春分の日にしか太陽がかからない。
 
 
P4.
 
   真実を求める者よ
   わたしのそばへ
   わたしの国へ
   ただ束の間であろうとも
   一時(いっとき) この国 わたしと共に
   一つの道を
   共に
 
 それからまた長い時が過ぎて、女神は“誰か”が大地(ダレムアス)にやって来たことに気づきました。
一人、また一人。
別の世界、別の宇宙、別の大地より、さながらほうき星のごとく輝く尾をひいて、女神の呼び声に応(こた)える者たちが、次々と大地(ダレムアス)の懐(ふところ)に集って来ます。
遂に女神(ドライム)マライアヌのもとにそろった神々は三十と五(いつ)柱。
ここに大地の国(ダレムアス)の最初の神人(かみうど)、三十六神がそろったのです。
「我々は何をしたらよろしいでしょう。我ら六人をのぞけば、皆、我らの仲間に加わったばかり。何をなすべきかを知りませぬ」
「どうぞお指し図を、マライアヌ」
「……この大地(ダレムアス)は、生まれて間もない、若い国なのです。若い世界に若い者が来て国を造る。なんの怖れる事がありましょうや。
 わたくしとて国を造るような大いなる業(わざ)をなすのは初めてです。が、これが我(われ)らに与えられた課題ならば、必ずや見事になしとげてみせましょう。」
 
(女神のうしろななめ横顔のイラストあり)
 
 
P5.
 
 ここに至って、神々(こうごう)しい集団に驚いて物陰に隠れていた人間たちがようやく顔を見せました。
「まあ心配はいらないのですよあなたたち。このかたがたは、わたくしの仲間。これからわたくしと共にあなたたちを導びく役目をします。あなたたちは、わたくしたちから様々な事を学ぶでしょう。そうすれば、もう今までのような純粋な幸福を手にすることはなくなるのです。……この大地の国(ダレムアス)は人間の国。やがてわたくしたちに替わってあなたたちが大地の国(ダレムアス)を統べるようになるでしょう。
今、大地の国(ダレムアス)の歴史が始まるのです……。」
 
 
(誇らしげに語りかける女神のイラスト、描きかけ☆)
 
               .

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