エスパッションシリーズ・超少女たち
 年代:C E A! ’0年〜72年まで
 
 第一部邪魔樹(やまじゅ)編魔邪夢樹編  サキ
 
 舞台:地球・リスタルラーナ・ジースト
 主人公:サキコ・ラン=アークタス
 対立者:シスターナ,レイズ
 
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 第一章第一話  邂逅・宙暦(C・E)0年
 
    1.
 
 「航法チェック終了」
 「ワープ転位完了。あと十秒で通常空間に戻ります」
 出発以来2年に渡る訓練と睡眠学習とで、既に航宙員(クルー)達までが、難解な専門用語を地球(テラズ)標準語で操つれるまでになっていた。
 「よし、出ると同時に全チャンネルのバリヤー全開(オープン)。見つからんようにしろ」
 例によって無愛想な、キャプテンダーナーの声が響く。転位終了の声。前面のスクリーンが揺らぎ、一つの惑星が姿を現わした。  青い星。彼ら一行の目的地である、太陽(ソル)星系第三惑星。地球(テラズ)。しばらく沈黙が流れる。誰かが秘やかに嘆め息をもらす。
 「Mr.ダーナー。」
 いきなり感動シーンを叩き壊したのはケティア,サーク。全権特使という大任を負うには、およそふさわしからぬ若年である。二十二歳。感情を極端に制御しようとしている為、硬化クリスタルのような声音がかえって彼女の不機嫌さを表明してしまっていた。
 「失礼ですがMr(ミスタ)」彼女は再び呼びかける。
「何故レーダー用のバリヤーまでお張りになるんですの?!」
 ダーナーがその冷徹な眼を動かしてギロリと彼女の上に一瞥を投げかけた。
  不用意に発見されて攻撃を受けたいとでも言うのですかな、ミス?」
 会話は全て地球語で行なわれているのだが、おういう時、ダーナーは、覚え違えたものかそれとも故意に間違えているのか、必ず敬称であるミズ(女史)をミス(失敗)と発音する。ケテイァはそれは無視した。が、既に頬の色が鮮やかなオレンジ  髪の色と同じ  に染まっている。
「ですが地球系連邦にはどこを探したって武器などありませんわよ!あたくし達は地球に関する資料は全て頭に叩き込んで来ているのですからね。」
「なるほど」
航法の指示を下し続けながら冷然とダーナーが答える。「我がリスタルラーナ連盟に於ても、確かに軍備の撤廃条約は百年も前に調印されているが  実際にはほんの十五年ばかり前にも、互いに争ったスラレル(リ・スラレウ)とラク(リ・ラク)の二星が再興不能の状態になるまで行きましたな、ミス。確かあなたの星でも……」
「惑星クアリステ(リ・クアリステ)が当時“援助物資”なる物を大量に戦場に送り込んでいた事は事実ですわ。でも、それとこれとに一体なんの関り合いがありまして。」
「名目上、クアリステにも軍備など存在しない筈でしたな。『自衛の為を除いて』。」
「!」
瞬間、ケティアは自分の赤毛が帯電でもするかのような感覚を味わわされた。シートベルトに抑え付けられなければ、飛び上がって彼の頬を引っぱたいていた事だろう。
 別段、たとえそれが自分にとって愉快な事ではなかったにせよ、何かの事実を指適された位でケティアがそれ程逆上したわけではない。誰が見ても非はダーナー船長の方にあると思うのが普通なのではないだろうか。多少の嫌味に動じる様では外交官などとても務まらないが、ダーナー船長の物言いは全てに渡ってそんな生優しい代物ではなかった。ありとある事物に対して、侮蔑的な態度をしか取らないのである。
若く情熱に燃える、全ての素晴らしい物の信奉者であるケティアにとっては、その虚無的で陰険な言動や何もかもを見限ったかのような視線など、どうあっても生理的に受け付け得る筈がなかった。
 「駄目ですよ、ケティア特使。よした方がいい」
言いながら、ぶるぶる握りしめている彼女のこぶしの上に穏やかに手の平を重ねたのは、隣に座っていたエレンヌ,カートだった。肩書きとしては副使で、ケティアの最も近しい同僚である。
 「彼には我々使節団一行を無事に地球へ送り届け、またリスタルラーナまで連れ帰ると言う任務があるんですよ。長年辺境探査船の艦長を務めていれば危険に対して慎重になるのは当然だし、だからこそこの仕事に選ばれた訳でしょう?
これから始まる交渉は、我々にとっても地球にとっても始めての経験  異人種とのファーストコンタクトで、友好通商を求める事はかなりの困難になるでしょう。成功の是非を請け負わねばならない特使が神経過敏になっているのはわかりますが、先は長いんです。心を落ち着けてかからなければ体の方が持ちませんよ。」
 彼は常に穏やかな落ち着いた口調で話すのだが、それは単に温厚であるとか冷静であるとかに留まらず、寄せては帰す海の波のような静かな説得力と底力を持っているのだった。
彼の方に理があるのは解っているので、ケテイァは何も答えない。きつくなっていた心が不思議に軽く、沈静して行く。幾度か深呼吸をすると、すっかり視界に明るさが戻って来るようだった。
「すみません。ありがとうございますエレンさん、もう大丈夫ですわ。以後気をつけます」
 ケティアの言い終るのと、ダーナーの「なるほど」とが、重なるようにして室内に響いた。
 「通信室の方で、メッセージが送れるよう回路を地球の一般周波帯に調整し終ったと言って来てますな、エレンヌ大使。恐らくリスタルラーナでは正副間違えて任命するという誤りを犯したんでしょう」
 ケティア特使は  それでも最大限の自制心を総動員して  一言も発しないまま、掛けてあった上着を掴むとコントロール・ルームから飛び出して行った。
 

                .

コメント

りす
りす
2007年4月28日2:23

 え〜…………☆ (^◇^;)

 日付が4月1日だから、というわけではないのですが、
 ウソのような冗談の、じゃなくてホントの話でして、
 「ESPA関連」の「没原稿」ファイル、
 さらにもう1冊、発見(発掘?)して、
 しまいました………………☆(^◇^;)

 と、いうわけで、話が元に戻ってしまいました……
 
 (^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)””

 ま、私自身以外には、どーでもいいコトかもしれないけどね☆

 (-_-;)>”     ホントに多いなぁ〜☆ESPAの没原☆

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2015年4月1日11:22

あははははは…w

まさか、2015年(50歳!)の今になって、

「サキの前世が実は…!」なんて、

まだやってる私の脳ミソって…!!!

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