エスパッション外伝・?
ブラインド・ポイント
by 尊貴 真扉(とき・まさと)
一、盲目宙域(ブラインド・ポイント)
二、影(かげ)の船
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一、盲目宙域(ブラインド・ポイント)
三次元映像(スクリーン)はもやがかかったように見えにくかった。
深宇宙。
光点がひとつ、するすると逃げていく。
「ちょっとォ〜〜! なに、してんのよ、もっとスピード上げてっ!!」
星間連盟保安局から借りうけた超速探査艇の操縦室だ。
地球人、アリニカ・デュル=セザール警部は銀行強盗のニトロよろしく、自慢?の癇癪玉を破裂寸前にさせて叫んでいた。
「無茶いうなよアリー。こっちだって精一杯やってんだぜ」
部下のひとり、小柄な東洋系人のダイムが細い黒目をつりあげて言いかえす。となりで焦茶色の肌のバムボロウが落雷をおそれる熊のように太鼓腹のうえで首をすくめている。
「だって、逃げちゃうわよ? 逃げちゃうっ」
ドン! ぐら。
「たのむから制御卓(コンソール)は殴らんでくれっ☆」
「ごめん!」
重力方向が逆転しかけて立っていたアリニカは一瞬宙に浮く。
操縦士たちは泡をくって航路たてなおしを入力した。
それでなくとも艇はさっきから奇妙な動きをしている。
あいての航路を計算・予測して常に邂逅点を設定しながら最短コースをえらぶという宇宙空間での理論(セオリー)を無視しきって、文字通りに追跡する むこうの航路をそっくりなぞっているのだ。
警部としては異例に若い二十六歳のアリニカは、赤い巻き毛にふちどられた日焼けしない白い肌に点々とみごとなソバカスを浮きたたせ、新緑色の大きな両目を山猫のように光らせていた。 ?
はやく! と、もういちど叫びだしたいのを、アリニカはなんとかこらえる。
このあたりの星区にはところどころこういう場所があるのだ。
盲目宙域(ブラインド・ポイント) 連盟のことばでは、“鉱石戦争の傷跡(リ・カン・ザリア・ソルテーン)”。
五千年前に恒星系ふたつを消滅せしめた星間連盟(リスタルラーナ)の技術力をもってしても、未精製の鉱石(ソルテーン)の残滓を回収しおわるにはあと一万年ほどかかるという。
大気圏外に飛びだしてからわずか千五百年の地球人には想像の難しい数値ではあるが。
問題は、ばらまかれた粒子のおかげで電磁波から赤外線から、およそすべての探査機能が麻痺させられてしまうのだ。
いまの頼りは非常用の光学式船外カメラだけ。
それも、微小な隕石群がバリアにさえぎられて燃える炎で、ぼうっとした紫色に曇ってしまう。
自動障壁(バリア)で処理しきれない大きな岩塊にぶつかればそれでイチコロだった。盛大な花火におくられて冷たい宇宙に散ることになる。
他の場所でなら一、二隻は見られるソルテーンの回収船も、ここは政府の実験宙域に指定されているとかで入っていないし。ここで遭難した日にはだれも探しにも来てくれない。
警部としては異例に若い二十六歳のアリニカは、赤い巻毛にふちどられた日焼けしない白い肌に点々とみごとなソバカスをうきたたせ、新緑色の大きな両目を山猫のように光らせていあ。
小粒でぐっとくる(コンパクト・グラマー)と評される彼女のすぐわきで、くつくつと喉(のど)で笑う場違いな音がする。
連盟保安局のロルー刑事だ。
無重力用の密封容器にはいった飲料(ティレイカ)を手渡しながら、
「まあ、そんなに焦ってみても仕方がありませんよアリーさん(ミズ・アリー)。とりあえず今は見失なわないことだけ考えて、ここを無事に抜けないと」
「ロルー、あなたね。」
「それからならあなた好みの派手な銃撃戦でもなんでも自由にやって下さって結構ですよ。わたしは余計なことは上司(うえ)に報告したりはしませんから 」
「よくも言えるわねえ他人事(ひとごと)だと思って!!」
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ブラインド・ポイント
by 尊貴 真扉(とき・まさと)
一、盲目宙域(ブラインド・ポイント)
二、影(かげ)の船
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一、盲目宙域(ブラインド・ポイント)
三次元映像(スクリーン)はもやがかかったように見えにくかった。
深宇宙。
光点がひとつ、するすると逃げていく。
「ちょっとォ〜〜! なに、してんのよ、もっとスピード上げてっ!!」
星間連盟保安局から借りうけた超速探査艇の操縦室だ。
地球人、アリニカ・デュル=セザール警部は銀行強盗のニトロよろしく、自慢?の癇癪玉を破裂寸前にさせて叫んでいた。
「無茶いうなよアリー。こっちだって精一杯やってんだぜ」
部下のひとり、小柄な東洋系人のダイムが細い黒目をつりあげて言いかえす。となりで焦茶色の肌のバムボロウが落雷をおそれる熊のように太鼓腹のうえで首をすくめている。
「だって、逃げちゃうわよ? 逃げちゃうっ」
ドン!
「たのむから制御卓(コンソール)は殴らんでくれっ☆」
「ごめん!」
重力方向が逆転しかけて立っていたアリニカは一瞬宙に浮く。
操縦士たちは泡をくって航路たてなおしを入力した。
それでなくとも艇はさっきから奇妙な動きをしている。
あいての航路を計算・予測して常に邂逅点を設定しながら最短コースをえらぶという宇宙空間での理論(セオリー)を無視しきって、文字通りに追跡する
はやく! と、もういちど叫びだしたいのを、アリニカはなんとかこらえる。
このあたりの星区にはところどころこういう場所があるのだ。
盲目宙域(ブラインド・ポイント)
五千年前に恒星系ふたつを消滅せしめた星間連盟(リスタルラーナ)の技術力をもってしても、未精製の鉱石(ソルテーン)の残滓を回収しおわるにはあと一万年ほどかかるという。
大気圏外に飛びだしてからわずか千五百年の地球人には想像の難しい数値ではあるが。
問題は、ばらまかれた粒子のおかげで電磁波から赤外線から、およそすべての探査機能が麻痺させられてしまうのだ。
いまの頼りは非常用の光学式船外カメラだけ。
それも、微小な隕石群がバリアにさえぎられて燃える炎で、ぼうっとした紫色に曇ってしまう。
自動障壁(バリア)で処理しきれない大きな岩塊にぶつかればそれでイチコロだった。盛大な花火におくられて冷たい宇宙に散ることになる。
他の場所でなら一、二隻は見られるソルテーンの回収船も、ここは政府の実験宙域に指定されているとかで入っていないし。ここで遭難した日にはだれも探しにも来てくれない。
警部としては異例に若い二十六歳のアリニカは、赤い巻毛にふちどられた日焼けしない白い肌に点々とみごとなソバカスをうきたたせ、新緑色の大きな両目を山猫のように光らせていあ。
小粒でぐっとくる(コンパクト・グラマー)と評される彼女のすぐわきで、くつくつと喉(のど)で笑う場違いな音がする。
連盟保安局のロルー刑事だ。
無重力用の密封容器にはいった飲料(ティレイカ)を手渡しながら、
「まあ、そんなに焦ってみても仕方がありませんよアリーさん(ミズ・アリー)。とりあえず今は見失なわないことだけ考えて、ここを無事に抜けないと」
「ロルー、あなたね。」
「それからならあなた好みの派手な銃撃戦でもなんでも自由にやって下さって結構ですよ。わたしは余計なことは上司(うえ)に報告したりはしませんから
「よくも言えるわねえ他人事(ひとごと)だと思って!!」
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コメント
全然まったく姿を変えて、こういうカタチに……☆(^◇^;)☆
でもってこのエピソードからは完全に消滅(?)しちゃった、
「ルイック」さんてば、哀れ…………☆ (後に別の名前で、
サキの保安局時代の相棒として復活(?)するけど……☆)
>アリニカ・デュル・セザール
……「走りっぱなし(ランエンドラン)アリー」さんに、
こんな立派な?本名があったなんて……これも忘れてた☆
(^◇^;)”
一応「作品」としては完成しています☆
(同人誌既発表作品♪)