『 タイム 』 (@高校?)
2007年3月4日 連載(2周目・地球統一〜ESPA) コメント (1)タ イ ム
サキは、どこか遠く離れた意識のどこかで、畏ろしいと感じていた。
自分がつね日頃おもしろがって、スポーツとして訓練したものの結果がこれなのだ。初陣の、しかも絶対的に不利な条件下での撃ち合いに参加していて、何らの精神的プレッシャーを受けもしないで人を殺している。護るべき相手を背後に控えているとは云え、その事に対して恐怖感を覚えないというのは少し異常に過ぎる状態だった。心の中にうずくかすかな異和感。
「バカヤロウこのボケ。殺されたいか!」
しかし生まれついての熟練した戦士であるレイには、やはり初心者の危なっかしさが目に余るらしい。例によって口汚くののしられて、思わず言い返そうと意識をそちらへ振り向けた一瞬
「アホ
レイの絶叫がヘッドスピーカーの間で狂気のように反響する。だがそれにも増してサキの心に爪をたてたのは、ギリ、ともビリ、ともつかぬ不吉な運命のきしみだった。肩先の装甲が熱線に吹きちぎられたのだ。
ぞっ、と背筋が凍りつかんばかりの数秒間。初めはかすかに、徐々に裂け目を押し広げながら、空気がもれだして行くのが感じられる。
(宇宙デノ戦イノ時ニハ銃ノ目盛リハ絞ッテオク)出がけにレイに注意されたのだ。(えねるぎぃガ長持チスルシ、当リサエスレバ効果ハ得ラレル)。効果
レイが前面に踊り出て、楯となって狂ったようにビームを乱射している。後方から誰か必死で呼びかけて来るようだったが、もはや空白になったサキの心にはどんな強力なテレパシーですらとどいて聞こえてはこなかった。ぐらり。宇宙震のように世界がゆがむ感覚がある。意識がすっと遠のく。
「バカヤロウこのボケ。殺されたいか!」
しかし生まれついての熟練した戦士であるレイにはやはり初心者の危なっかしさが目に余るらしい。レイによって口汚くののしられて思わず言い返しそうになりながらも、サキは油断なくレイ・ガンをかまえてあたりに目を配っていた。
と、まるで予知していたようなタイミングで、目を遣った方角から熱線が来る。サキがやりなれた動作でそれをよけると、背にとった残骸の一部が一瞬輝いて少しばかり溶けた。
「はッ!」 急に透視能力が働き始めたようだ、サキは今撃ってきた奴の心臓を一撃のもとに貫くと、無意識のうちに銃のゲージを引き上げて正確な連射をくり出し始めた。
絶対的な暗闇の中、大小の残骸が無数に散らばる中にあって、それから後、サキに急所の貫通以外の傷を終わされた者は一人もいなかった。
頼まれてレイが小型の衝撃銃を作ってやったのは、その事件からひと月程過ぎてのことである。サキは戦闘中の奇妙な重複感、一瞬の夢ともつかぬ恐怖を夢現つのうちに記憶していた。
「なんか最近あいつヴ気味じゃない?」
いくらからかっても平然と笑っているようになったサキの事を、レイはそう評してひとしきり首をひねっていた。
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コメント
……サキに「時間遡行(タイムリープ)」の能力が芽生えた最初のエピソード、のつもりで本人は書いたのですが、高校の文芸部周辺にこの草稿を回覧したところ、みんな「わかんない」とのことで、不評でした………………
うわははは☆
今、読むと、やっぱり「わかんない」な、そこんとこ………………
(^◇^;)>"