● ◆ ● ◆ ●
 
一方レイもジースト星の宇宙空港に着いていたが、レイの心は彼女の部屋と同じように殺風景なほどさっぱりしていた。彼女は1年以上もジースト星に来ていなかったが、感傷などにはつきあわず宇宙船の中で練った計画どおりに動いた。
幸運なことにレイはワープの真っ最中でも考えごとにふけることができたし、それは彼女の自慢できるものの1つである。
レイはこの手を使って今まで何度もサキをへこませてきたことを思いだし、ひそかにほほえんだ。しかし口からもれたつぶやきはまったくちがうことを言っていた。
「まずは大使館のトリーニ・ユウさんね」
大使館に住んでいるということは考えに入れる必要はない。住みこみのそうじ婦から大使その人まで実にさまざまな人がいるからだ。
レイは受け付けへ行くとソレル博士の使いだと名のり、トリーニ・ユウさんを呼び出してほしいと言った。ソレル女史の名も、また、かなり知れわたっていたからである。
レイは応接間へ通され、数分彼女を行った。表われたのはまだ17、8才の少女だ。レイは立って彼女と握手した。地球からもたらされたこの奇妙な風しゅうは非常な親しみを呈する。
「私がトリーニ・ユウです。」自己しょうかいによると彼女は大使の秘書ということだった。
「シスターナ・レイズです。よろしく」
2人は向かいあってすわった。レイはユウの目を見つめた。ユウの目は困惑の色を浮かべた。レイはユウの心に触れ、その強さを確かめた。大丈夫、これならまずいことが起こっても記憶を消してしまえる。
「失礼。さっそくですが、あなたは超能力者ですね?」
これはユウにとって困惑どころではすまされなかった。
「は…………? あなたは私をからかってらっしゃるのですか? ジースト人ならだれでも……」
「そのことではありません。ではあなたは自分の力に気づいていないのですね。あなたは超能力者です。ためしにその花びんを浮かせてごらんなさい。」
「何の事です!? 私はそんなものじゃないわ!」
『でも、私の声が感じられるでしょう?』
レイはごく弱い思考波をユウに向けて投射してみた。そしてユウの顔色がそれとわかるほど変わっていくのを見ながら、彼女の能力をどれだけひき出せるか、不安に思った。
「そんなはずないわ! 私がそんな……ああ!」ユウは叫ぶなりテーブルに突っ伏して動かなかった。彼女が泣いているのをレイが知ったのはだいぶ後になってからだった。ユウの落ちつくのを待ってレイは熱心に説得した。初めは夢の中の悪魔見るような顔つきだったユウもだんだんうなずくようになった。レイはすべてを説明し終わりテレパシーで賛成を促した。ユウもさっきのような激しい表情は見せず、落ちついて思考波を送り返してきた。
『わかりました。わたしも協力させて頂きます』
 
     ●     ●
 
コーナ・フレークスはもっとちがっていた。彼女は大きなひとみでレイを見つめ、何も言わず部屋にまねいた。そしていきなりテレパシーで話しかけた。
『私にご用ですか?』
レイは驚いてひと言も発せなかった。コーナ・フレークスはさびしげに笑った。
 
 

                        (未完)
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コメント

りす
りす
2006年12月23日22:49

この頃の最大の愛読書がすべて、
翻訳ものの児童文学だったので、
文体が、いかにも翻訳調ですねぇ……☆ (^_^;)”

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