第三次世界大戦が無し崩しに終結せざるを得なかった“大天災”後の混乱時代、なかば鎖国と化した日本国で、なおかつ健闘を続ける『朝日ヶ森』勢力のもとに、帰界した2人はいったん身を寄せた。西暦2100年代終盤。清峰 鋭 にしてみれば記憶にある地球界から100年以上の後、律子にしてみても知己の人間がすべて老齢と化した時代である。
 
 が、『朝日ヶ森』の体質がその程度で変わっている訳では全然なく、使える人材はすべて活用されまくる宿命で、帰国後早々に2人は月面都市へと出向?させられた(この辺の動向は不明確)。そこでしばらくの新婚生活?を営むが、律子が妊娠を告げる間もなく、地球の“水”の危機を抑えるべく、清峰 鋭 は慌ただしく母星へ戻って行った。
 
(このへんの時間軸が計算すると少しヘンである。いま気がついたが、“息子”だと思っていたアルヤさんは、水の息子の娘(アトル・ウルワー・ウルワニ)の子、つまり“孫”かも知れない★)
 
 地上では生命の母である水の太霊が、ヒト族もろともに全てを滅ぼそうと最後の崩壊?の準備にかかっていた。惑星上のすべての精霊族がまきこまれて悲鳴をあげる中、自らの出自をようやく悟った清峰 鋭 は、母?である水霊の末娘とともに海中?に赴き、水の太母を説得し、なだめる役割を果たす。これによって太母は長い悲嘆を清算するために帰天し、末娘が次代の水霊の束ねとなるが、荒れきった海の苦悩?をおさめる為に力を使い果たして、海底深く眠りにつくことになった。この後、ほとんどの精霊族は休眠?し、ヒト族の命運を遠くから監視or見放す?立場となった。
 
 この経験の後しばらくして、長寿であり容姿がまったく変わらない清峰 鋭 は、『朝日ヶ森』の一部にのみ事情を打ち明けて、知己のいない地中海地方に拠点を移した。
 『朝日ヶ森』の姉妹校である旧スイス領(この次代、EUなんかとっくに消滅し、延々と広がる西欧文明の廃虚の間に、わずかに国家or行政機構と呼べるシロモノが3群ばかりほそぼそと機能しているだけである)にしぶとく生き残っていたアロウ・スクールを指令塔として、生き残った人類の救援活動や、頻発していた略奪行為の鎮圧などの部隊に参加していた。
 
 欧亜混血風に見られる外見のおかげで、『朝日ヶ森』での周囲の評価は“大人になりかけの天才少年”、だったのが、白人だらけの間では完全に“少年兵”扱いとなり、その環境に甘えが出たのか、本人の性格にもだいぶ変化が生じた。汚れきって死に果てた海を目にしては泣き、海が見えない地域に行けば海が恋しいといってはまたメソメソしている奇妙な“少年”を気にかけた隊長達からたいそう可愛がられ、生まれて初めて他人に甘えるという状況を味わった。
 (……この頃、月面では律子が一人で赤ん坊を育てつつキャリアウーマンしている……★)

 やがて、歳をとらない容貌を簡単な変装ていどでごまかし続けるのも無理が出て、名前と髪や瞳の色を変えて「清峰 鋭 のイトコ」とか、適当にでっち上げて再び『朝日ヶ森』の管轄である太平洋地域へ戻って行った。
 
 『朝日ヶ森』コネクションに月面から人探しの目的で派遣されてきたチーム(隊長?の名前は杉谷好一だ★)の案内人として、ユーラシア大陸の地表横断という無謀な旅に参加する。道中、地表の汚染度や汚染物質・汚染細菌の種類などを測定するという、監視衛星からでは収集できないデータを拾って来いという危険な任務つき。「不老長寿なだけで、不老不死ではないぞー」とボヤキつつ、けっこう気軽に指令を受けたのは、一人で長生きしなければならない事実に、早くも少し厭き初めていたのかも知れない。
 
 ところがギッチョン、事実は小説より奇なり?で、名前しか知らなかった実の父?の、実の息子(つまりは異母?弟)である磯原清と、双方ともに生まれた時代からは200年ばかりの時差を経て出逢い、お友達してしまう。退屈してる暇なんかないなぁ!という現実?を実感し、その後、また少し性格が変わってしまった★
 (つまりはノーテンキ?になった……単に清クンのが染っただけか?)

 異母弟の方はその事実を最後まで、たぶん知らなかったし、鋭の方でも最初しばらくは気づかなかったのだが、さすがに血は水よりも濃いとゆうのか(血の中に“水”の気配が濃いもの同士だったと言うべきか?)、出逢った当初より意気投合?して違和感なくつきあっていた。
 同時代の歌(20世紀末期に流行って?いた歌を、清クンは母親から、鋭は孤児院の園長先生から習い覚えていて、レパートリーが一致していた……環境だのボランティアだのやっている人間同士の音楽の趣味は、かなりの範囲で重なっている)を二人で合唱して周囲に聴かせるという共通の趣味を開発して、ユミちゃんと3人でバンドの真似ごとなどして、荒野のキャラバン御一行サマの、目と耳の保養になっていた。(清やユミちゃんと仲が良くなりすぎた結果、杉谷氏の秘かな不興を買っていた事は、言うまでもない★ ……ゆかり姫やひろと変輩などとは、普通につきあっていた)。
 
 ユーラシア横断から北米大陸まで渡り、南米経由でスターエア島に戻って月面に帰還した、会田正行おっかけツアー珍道中?の話は、もちろんの事、また別の長い物語である★

 磯原清が旅の途中で偶然拾い、『朝日ヶ森』に預けてすぐに出発してしまったおかげで、養父?になるべきだった清峰 鋭 が、長らくその存在を知らずにいた赤ん坊の成長の物語が、設定上の矛盾で今ちょっと宙に浮いている★ 結論から言えば彼は大地世界の最後の皇子で、つまりマーライシャと雄輝の孫に当たる……?
 
 その後のダレムアスはと言えば、界境を閉じて乱れた世の復興を図ったはいいが、世界に等分されるはずだった半神女マリステアの命数が清峰 鋭 個人に譲渡されてしまった為に生命の寿命(世代交代期間)が大戦前の10分の1程度に縮まってしまっている事実が、女皇マーライシャの治世の半ばに判明し、かつ、3界乱戦の際に次元階梯をさんざん乱されたせいで亜空間としての存在力も弱り、時場も狂い初めたために地球世界との経時差も発生し……で、一足早く崩壊した洞地世界に次いで、世界としての滅びの時を、今まさに迎えんとしていた。

(下線の用語の定義?については、そのうち『星圏史略』で書く★)
 
 生き残った大地の生命たちを救済する手段を求めて、かつて知神ヨーリャの再来と呼ばれた英雄を探しだそうとして、マーライシャ女皇が晩年(かなりの高齢出産★)になって夫・雄輝との間に産んだ双子の皇子・皇女が、異界への無謀な旅に出て行方不明になった。
 
 その双子が遥かな異界を点々とするうちに結ばれて生まれたのが(なんか竹宮恵子が似た話を描いたが、アレより古くからあった設定だ★)、あの赤ん坊……だった筈……なんだが……あれ? れ?
 
 七福神財団(※当時の実質的な“日本国”。)  (なんで私はこんな名前をつけたんだーっ?!)  に追われて逃げて、海洋汚染と気象異変が激しくてほとんど生命が残っていない南アジアの泥海(洪水の影響で海岸線がかなり上がっている)経由、インド亜大陸を横断して西進しようとするが磁気嵐?か何かに阻まれてヒマラヤ山脈の西端から旧ロシア領辺境地帯へ抜け、ウラル山脈の南端をかすめてアルプス山脈の“アロウ・エリア”へ。
 
 ここで清峰 鋭の案内人?としての任務は終了し、収集した汚染データを持って清たち一行とは別れる。

 ちなみにアロウ校にはヤニさん(お懐かしや……)の一人息子(ダンナは戦死)も預けられていて、当時12歳ぐらい。
 
 その後、どこでどうしていたのか詳細は不明だが、おそらくは、またしばらく欧州でウロウロ?した後、南米経由でスターエア島に渡り、月面世界にひょっこり顔を出し、会田先輩の奪還後、一度21世紀に戻ってから再び未来社会に移住?して来て社会的地位?を築きつつあった清たちと再会する。
 
 ついでにアルヤさんと初対面。(仕事がら、役職と通称ぐらいは当然知っていたが)、正式名称“水の息子の縁者”(アトゥルヤー・アィラーヤム)で名乗られて愕然とし、自分に息子(もしくは孫?)がいたという事実と、律子が若く(外見上は38歳ぐらい)して死んでしまっていることを知って、さすがにしばらく頭が混乱していた……が、せいぜい3日でキッチリ復活し、“アルヤさんで遊ぶ”という新しい趣味を開発してしまった……。
 
 『朝日ヶ森』と植民者連合(コロニスツ)を結ぶ非公式の外交官(ほとんど全権大使)的役割を、亡き律子に代わって果たす一方で、謎の情報源(大地世界で得たエルシャムリア文明についての知識)を持つ天才科学者(笑)として、政治面での業務で多忙を極めていたアルヤさんの肩代わりも兼ねて、月面遺跡(エルシャムリアそのものか、もしくは上古文明の遺構の一部)の発掘・分析に携わる。
 
 そこへ、例の大地世界最後の皇子?が何らかの手段(どうも戦士・黒百合という、皇女マーライシャに縁のあった別の不死人の助力らしい)で彼を探しあてて訪ねてき、助力を請われて一時的(ただし月面遺跡の移動装置を使ったので、当該《単還流》(タペナ)における時間軸との相関性はちょっと不明★)に、大地世界のその後を訪れ、月面遺跡で仕入れた超(笑)技術を駆使して、生き残りの大地民を移住させるための“船”、『精霊族からの贈り物』(フェア・リスティラーヤ)を幾つか建造して移民の出発を見送った。

 (この中の一隻で、先祖返りしてエルシャムリアの翼人の外見に近くなっていた飛仙の子孫たちを乗せていたやつが、航宙?中に時標を踏み誤ってしまい、数千年あるいは万年単位で時間流を遡ってから辿り着いたのが、後に“我らが美わしの天地”(リ・イス・スタル・アールラーナ)文明の母星(リスタルラーナ)と呼ばれることになる惑星である★)
 
 そのゴタゴタから戻って息つく暇(本人の主観時間で)もないうちに今度は、地球文明が完全に滅びるのを見て人類が虚脱状態に陥ってしまう前に恒星間移民をしてしまおうという“白の一族”(アルバトーレ)  (※アルバトーレという音は設定を作る以前から勝手に頭の中にあって、あまり英語臭い音でイヤだったので、“ア・ルーヴァ・タゥーレ”という上古風?の音に分解して使おうと思っていたが、語幹?の“alb”をある日なんの気なしに調べてみたら、ラテン語!で“白”を意味する単語なのであった★)、  の主張に巻き込まれ、本人は納得していないうちにアルヤさんの泣き落とし?にかかって、地球人用の移民船の設計施工を監督するはめになった。
 
 おかげで、移民反対派の筆頭である杉谷好一氏に何度も刺客はプレゼントされちゃうわ、結局、設計者の責任をとって一隻に乗り込んで地球圏を後にするハメになるわで、うっかり父性愛?に流されるとロクな事にはならないという教訓を体験した……。

 こちらは海路の日和?を得て、なんら事故ることなく数百年?ほどのコールドスリープをを経て、すでに文化の発展と崩壊とそこから復活した勢いを駆っての恒星間文明の繁栄を極めた後の、精神的な衰退期に入りつつあったリスタルラーナ文明圏の、端っこに到着した。
 
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