『 (無題……夢より。) 』 (@高校だったかな?)
2006年11月1日 連載(2周目・最終戦争伝説) コメント (3)誰が
彼は横たわっていた。
「何故。」
と、彼女は地面を踏み鳴らした。
「なぜ、こんなことをするの、なぜ戦わなくちゃならないの。
人が死ぬばかりじゃない。次々死ぬばかりじゃない。」
誰もなにも言わなかった。誰もなにも言えなかった。
彼は
聞いたような気がした。重い沈黙。その陰にある、ひとつの想い。
「闘かわなければ
(殆どもう僕は死んでるな)
他人ごとのようにそう感じながら、それでも不思議と彼の声には
はりがあるような気が
誰も彼に「 しゃべっちゃいけない」とは、云わなかった。
今、彼が話そうとしていることは、明らかに彼の、『遺言』。
そして彼は、皆の沈黙を、代弁しようとしているのだった。
「戦争が起ったら。こんな風なレジスタンスの小競りあいでなく、
本物の戦争が起こったら。
死ぬのは僕だけじゃない。何百人、何千人の僕が
仲間にみとってもらうこともできず、僕は信じるとおりに生きた、と満足
しながらこの世を去ることもできず……肉体(からだ)も、魂も、
血みどろになって……
のたうちまわって……
僕が死ぬことで僕の弟は死なずにすむかもしれない。僕がここに
こうしていることで、もし、あの……僕の、生徒たちが きちんと大人になって
結婚して、子供……なら、
僕は
壊れた廃水管のような音がどこかでして、ひどく鮮やかなあかいろを
したものが、どこからこれだけ、と ぼんやり彼女に思わせるくらい、
華やかに床をそめあげていった。
僕は………
何だというのだろう。彼は、いなくなってしまったのに。
× × ×
「 あたし、田舎へ帰るわ。」
その言葉を彼女はとても静かに云った。
「 田舎へ帰るわ。もう疲れたの。
秋には柿がなるし、紅葉がキレイよ。あたしはもういちどチョークを
持って……彼の喪があけたら、平凡で、穏やかで、病気と交通事故
以外の死の心配なんかとはおよそ無縁な、優しい人と結婚し……
子供を産んで…… 孫の顔を見て……
平凡に老いて、死ぬわ。」
短い夏の終りだった。
「子供を産むわ。」
サヨナラのかわりに そう言いおいて。
日本が、世界にむけて進撃を開始したのは、翌年12月のことで
ある
.
コメント
祝!! 5000番突破!! !(^^)!
……って……。自分でコノ原稿UPした時に踏んじったよ☆