……《碧天(フェンテル)》王家の七恋歌 ……
− あるいは、星よりきたる青銀の船のこと −
口上 ・ 剣士にして吟遊詩人 …… 一、
一の歌・ 星華蘭の雅歌
星華蘭 − ひともとの花にまつわる雅歌(うたがたり) −
まえの村で売られようとする薄幸な孤児(こども)たちのために有り金ほとんど投げ出した。その結果がこれである。
「財華の入市税はひとり七ソル(銅貨)。一年前にはそうだったはずだが」
憮然として腕を組む男は徒歩(かち)での長旅に汚れた姿に長剣を吊り、荷駄の一頭も連れてはおらぬ。
市門を守る兵たちはあからさまな表情を浮かべて逆手に槍を構えた。
「あいにくと昨秋の祭りから、ひとり三ラソル(銀貨)になってな」
「暴利だ。財華は自由な商いが自慢の都邑(みやこ)だろう」
「さればこそ、食いつめ者など市(いち)には無用、治安が乱れるだけとの、大公様のおおせよ」
紋章をカサにきて言いたいことを口にする。富裕な都に雇われるだけあって腕も確かであろう衛兵隊は数も多いし、片手で黙らせて押し通るというわけにも行かぬ。
「〜〜〜〜っ。やつの言いそうなこったぜっ」
もとより知り人のいる街で無用な騒ぎを起こすのは本意ではないのだ。そうこうするうちにもうしろに検門の順番を待って、行列ができはじめる。
どうする? と、まだ若い旅の戦士は背後の連れをふりかえった。
若い、女である。
こちらもわずかばかりの荷を背に負って長剣と小弓をたずさえただけの仕度。
ほこりと陽光をさけるためか薄布をまぶかくかぶっているが、均整のとれた長身の肢体といい、かいま見える切れながの黒瞳といい、兵たちの関心をひくには十分にして過ぎる。
その、まれにみる美女と二人連れであることで自分への風あたりが余計にきつくなるのだとは、呑気な本人は気づいてすらいないが、女の方にはしっかり自覚がある。
「金はないなら作ればよいのであろう?」
苦笑を秘めたまなざしで問い返すその指には、ごくごく小さな銀づくりの竪琴がいつのまにか握られていた。
「放たれた故郷とはいえ我らは本来《谷》の民。ひさびさに伝来の技で生計を立てても路銀を稼いでも、バチはあたるまいと思うぞ」
とたんに男は嫌そうな顔になる。
「戦士たる身が大道で、歌舞で路銀を得るとはを売るしかないとは情けない……」
「それを私に言えるのか、おまえが?」
剣の技倆においては彼女のほうが格段に上である。
「オレに唄わせるつもりか?」
「当然だ。よい声なのは知っている、隠すな。
……そうだな、せっかく二人いるのだから……、『星華蘭の雅歌』がいい。覚えているだろう?」
「おい、待てよ、オレはまだやるとは……!!」
連れの抗議など黙殺して、さっさと歩き出した女戦士は城壁を背にとって隊商たちと向かい合う。
「お聞きのとおりの故(ゆえ)にてかたがた、吟遊詩人の最初の一弦、一刻ばかりのお耳よごし、御容赦願いたい。
……それは昔の物語。西のかたなるアルヴェの岬に《碧天》(フェンテル)という小さな国があり、」
和音。旋律……前奏。
しょうことなしに唄いはじめた青年の声が青空のしたに広がった。
星妃香蘭
星銀の星船
天碧き星よりの歌
天碧き地の者たち
尊貴真扉
東木真土
斎 真扉
朝 真扉
東輝真扉
尊貴真扉
− あるいは、星よりきたる青銀の船のこと −
口上 ・ 剣士にして吟遊詩人 …… 一、
一の歌・ 星華蘭の雅歌
星華蘭 − ひともとの花にまつわる雅歌(うたがたり) −
まえの村で
「財華の入市税はひとり七ソル(銅貨)。一年前にはそうだったはずだが」
憮然として腕を組む男は
市門を守る兵たちはあからさまな表情を浮かべて逆手に槍を構えた。
「あいにくと昨秋の祭りから、ひとり三ラソル(銀貨)になってな」
「暴利だ。財華は自由な商いが自慢の都邑(みやこ)だろう」
「さればこそ、食いつめ者など市(いち)には無用、治安が乱れるだけとの、大公様のおおせよ」
紋章をカサにきて言いたいことを口にする。富裕な都に雇われるだけあって腕も確かであろう衛兵隊は数も多いし、片手で黙らせて押し通るというわけにも行かぬ。
「〜〜〜〜っ。やつの言いそうなこったぜっ」
もとより知り人のいる街で無用な騒ぎを起こすのは本意ではないのだ。そうこうするうちにもうしろに検門の順番を待って、行列ができはじめる。
どうする? と、まだ若い旅の戦士は背後の連れをふりかえった。
若い、女である。
こちらもわずかばかりの荷を背に負って長剣と小弓をたずさえただけの仕度。
ほこりと陽光をさけるためか薄布をまぶかくかぶっているが、均整のとれた長身の肢体といい、かいま見える切れながの黒瞳といい、兵たちの関心をひくには十分にして過ぎる。
その、まれにみる美女と二人連れであることで自分への風あたりが余計にきつくなるのだとは、呑気な本人は気づいてすらいないが、女の方にはしっかり自覚がある。
「金はないなら作ればよいのであろう?」
苦笑を秘めたまなざしで問い返すその指には、ごくごく小さな銀づくりの竪琴がいつのまにか握られていた。
「放たれた故郷とはいえ我らは本来《谷》の民。ひさびさに伝来の技で
とたんに男は嫌そうな顔になる。
「戦士たる身が大道で、歌舞
「それを私に言えるのか、おまえが?」
剣の技倆においては彼女のほうが格段に上である。
「当然だ。よい声なのは知っている、隠すな。
……そうだな、せっかく二人いるのだから……、『星華蘭の雅歌』がいい。覚えているだろう?」
「おい、待てよ、オレはまだやるとは……!!」
連れの抗議など黙殺して、さっさと歩き出した女戦士は城壁を背にとって隊商たちと向かい合う。
「お聞きのとおりの故(ゆえ)にてかたがた、吟遊詩人の最初の一弦、一刻ばかりのお耳よごし、御容赦願いたい。
……それは昔の物語。西のかたなるアルヴェの岬に《碧天》(フェンテル)という小さな国があり、」
和音。旋律……前奏。
しょうことなしに唄いはじめた青年の声が青空のしたに広がった。
星妃香蘭
星銀の星船
天碧き星よりの歌
天碧き地の者たち
東木真土
斎 真扉
朝 真扉
東輝真扉
尊貴真扉
コメント
……(笑)……☆ (^◇^;)”””
それまで使っていたルーズリーフの横書き四〇〇字詰め原稿用紙を、なぜか縦書きに使って、「左手で」書いているヤツ……☆
「縦書き」なのは、
「投稿原稿だぞ!」という意気込み(笑)の、
アラワレなんですが……☆
ワープロ入力専門の派遣オペレーターとして「24時間闘えますか?」的な残業三昧の仕事を片づける傍ら、家へ帰れば旧式のワープロ専用機「文豪」くん(だったっけ?……「書院」?)の遅さをののしり倒しながら同人誌原稿と格闘する毎日……を、続けているうちに、超極度の腱鞘炎になってしまって…… (T_T)”””
右手を三角巾で吊って固定して、左手でスプーン持って食事したり、シャーペン握って原稿書いたり……して暮らしていた頃の原稿☆
(^◇^;)d”””” げっ
はじめて左手で埋めた一枚の原稿用紙は、まさしく「小学生の書き取り帳」のような、超絶悪筆書体でもって、埋め尽くされております……☆☆☆★””
(^^;)”